平成17年に三菱製紙(株)から分社・独立した北上ハイテクペーパー(株)では,創業以来岩手県内産を中心に広葉樹の国産パルプを製造し,写真用原紙,衛生用紙を生産している。
近年,北上ハイテクペーパー(株)では設備投資抑制の中で,固定費削減等さらなるコストダウンや作業効率改善を日々追求しているが,老朽化したパルプ製造工程の設備的な要因による停機事故が多発していた。突発的なマシン停機は対象機器の損傷程度だけでなく,運休転の操業ロス,後工程の生産調整等,工場全体で発生するロスは計り知れない。
場内設備の設計,保全・補修業務(工務部門)を担っている三菱製紙エンジニアリング(株)と共に,近年発生している設備事故の要因分析を行った結果,腐食・劣化配管の洩れ,各機器の軸受不良に起因した事故が多いことが判った。そこで,製造担当と保全担当で一体となり,事故発生原因を究明したところ,老朽化配管の監視不十分による腐食・劣化が上げられた。この他にも,保全技能伝承不足,保全作業項目の未実施,製造担当と保全担当との情報交換不足 等様々な原因が確認できた。
そこで以下4テーマを中心に,設備事故削減に対する取り組みや,仮に設備トラブルが発生した場合でも最小限に抑える取り組みを実施してきた。
1)老朽化配管管理表にもとづく計画的な部分更新の実施
2)相互点検の実施による設備異常の早期発見と保全担当のレベルの標準化
3)予兆カードの導入による情報共有化
4)給油作業の効率アップによる保全効率改善
その結果,パルプ工程の設備事故件数及び設備事故による停機時間は本取り組み開始時の平成19年時には16件,57.1時間だったが,平成25年には4件,20時間となり,どちらも70%程度削減することができた。本取り組みは有効であったと判断し現在も継続中であり,老朽化したパルプ工程の安定生産を目指している。
本報では設備事故削減への取り組み項目について実例を交えながら,報告する。
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