紙パ技協誌
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69 巻, 1 号
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新年のごあいさつ
第57回―2014年紙パルプ技術協会年次大会特集
第42回佐々木賞受賞講演
  • 池田 孝之
    2015 年 69 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    近年,どの産業分野においても,製品の安価化と品質要求の高度化が求められている。JFE電制株式会社ではこれらに対応するために,幾多の品質検査装置を開発し納入してきた。今回,製紙工場の仕上げライン向けに,積層紙の“折れ”“飛び出し・不揃い”“紙粉”の検査を行う装置の開発を行い実用化した。
    “折れ”の検出は,照明とカメラの配置に工夫を行い,折れ部が周囲よりも明るく輝く画像が撮影できるようにして,確実な検出を実現している。“飛び出し・不揃い”の検出では,レーザーマーカを利用した光切断法を採用することにより,飛び出しの位置・量を正確に把握できるようにした。また“紙粉”検査では,その形態より「毛羽立ち」と「粒」に分類し,毛羽立ちは存在することによって生じる模様を画像処理のテクスチャー解析を用いて面の状態を定量化し,粒は照明の照射方向から生じる特性を利用して正確に粒を抽出し面積の大小を評価した。
    開発した技術を用いた外観品質検査装置を,小判リーム用4ラインと大判スキッド用2ラインに納入し稼動している。いずれの装置も要員効率化と不良品流出防止の観点から,高い評価を受けている。これらの装置は“折れ”“飛び出し・不揃い”“紙粉”の不良を検出するようになっているが,今後は確立した検出技術や実機化の過程で得られた様々なノウハウをベースに,検出項目を絞ったより簡易な装置の提供を検討している。
  • 鈴木 英人
    2015 年 69 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    太平洋エンジニアリング(株)は,セメント関連のエンジニアリング会社として,セメントキルンにおける省エネルギー対策を長年実施し,キルン運転における省エネルギー技術を蓄積してきた。
    製紙会社における生石灰キルンでは,各社独自で種々の燃料使用量削減対策を実施してきており,一定の効果は得られているものの,大きな燃料使用量削減効果が見られていない状況である。
    そこで,弊社が保有しているキルン運転における省エネルギー技術に基づき,キルンバーナとクーラを併せてキルン燃焼装置として考え,キルンバーナ更新とともにキルン運転,並びにクーラ運転を最適化する以下の総合的な燃料使用量削減対策を実施した結果,燃料使用量の13~15%削減を達成した。
    1)キルン調査の実施:現状運転状態を把握すると共に,現状の問題点を明確にし,各キルン毎の最適な燃料使用量削減対策を立案する。
    2)キルンバーナ更新:弊社式TMPバーナ(Taiheiyo Multi Purposeバーナ)の導入し,1次空気量の低減と燃焼性の改善を実施した。
    3)クーラの運転調整:クーラ熱回収効率の改善として,冷却風量制御とグレート速度制御を実施した。
    4)キルン運転調整:窯尻O2濃度管理の最適化,キルン内原料充填率の最適化と窯尻散水量の低減を実施した。
一般講演
  • 内田 雅己
    2015 年 69 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    小判カッターで断裁され一定枚数積み上げられた紙山(リーム)の外観チェックは,従来,オペレータによる目視監視によりおこなっていた。しかし,目視監視では異常を見落とす恐れがあり,またオペレータが監視要員として固定されてしまうため操業効率が悪かった。一方,製品品質へのユーザーの要求は高まる一方であり,従来の目視による検査ではユーザーの要求をクリアするのが難しくなっていた。
    そこで,操業効率の改善,検査能力の向上を目的とし,外観検査装置の製造で実績のあるJFE電制(株)殿と,小判紙山外観検査装置の共同開発をおこなった。
    2004年から開発に取り組み,2006年末より順次,日南工場の各小判カッターへ導入していったところ,安定した検査精度を発揮しており,現在では操業に不可欠な検査装置となっている。
    本稿では,当検査装置の概要と設置効果,稼働後のトラブル事例等について報告する。
  • 髙辻 満
    2015 年 69 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    日本製紙(株)秋田工場は,KP苛性化工程において,1基のロータリーキルン(φ3.6m×85mL)を有している。当工場では,2008年に石炭ボイラーが稼働したことにより,最大の重油使用設備は苛性化キルンとなり,さらなる重油使用の削減を目的として,オイルコークス燃料転換設備を導入した。
    本設備は,全社で初の本格稼働であったため,過去の不具合箇所と現設備の徹底的な比較,メーカー経験や他社調査を実施し設備的に反映させるなど,事前に懸念事項を抽出し,それに対する対策を講じて設備導入に至った。
    2013年6月にオイルコークス燃料転換設備稼働し,初期問題を早期に解決し,概ね75%前後の混焼率を維持しており,順調に操業できている。
    しかし,10月にロット変更に伴うオイルコークスの成分変化で,NOx上昇の問題が発生した。対策として,キルン燃焼空気量の最適化及び,オイルコークス製品粒径のコントロールをすることで,NOx低減を図り,混焼率の維持に努めた。また,懸念事項でもあった搬送系詰りトラブルが冬季に発生し,オイルコークス風乾室の使用,最も詰りやすい箇所であるバケットコンベア落口の詰り対策を実施することで解消された。
    本稿では,オイルコークス燃料転換設備の導入までの経緯と稼働1年間の操業経験について報告する。
  • 渡邉 政嘉
    2015 年 69 巻 1 号 p. 48-49
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    アベノミクス「三本の矢」により始まりつつある経済の好循環を一過性のものに終わらせず,持続的な成長軌道につなげるべく,平成26年6月24日に「日本再興戦略」改訂2014が閣議決定された。
    今回の改訂では,昨年の成長戦略で残された課題としていた,労働市場改革,農業の生産性拡大,医療・介護分野の成長産業化等の分野にフォーカスして,解決の方向性を提示された。
    その中でも,セルロースナノファイバーに関する研究開発の推進は明示的に記述されている。
    そして,セルロースナノファイバーの研究開発の推進が成長戦略に位置づけられたことを受け,経済産業省,農林水産省,環境省等が中心となった関係省庁連絡会議が創設された。また産学官で構成されるコンソーシアムであるナノセルロースフォーラムの参加機関等は200を超えた。
    様々な取り組みが一斉に動き出し,2014年は「ナノセルロース元年」として位置づけられたとも言える。今後は,セルロースナノファイバーの社会実装をさらに進めるために,国際標準化活動を我が国が主導して戦略的に進めてゆくことも重要な一つのテーマとなる。
  • 伏見 速雄
    2015 年 69 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    セルロースナノファイバー(CNF)は木質パルプなどを微細化して製造される直径3~4nm,長さサブミクロン~数μmの繊維である。
    パルプの微細化によるCNFの製造においては,単に機械的なせん断力を加えるだけでは,繊維同士の強固な水素結合のため,微細化に必要なエネルギーが大きく,得られるCNFも不均一となる問題があった。当社では,パルプの微細化処理を容易にするため,酸化,エステル化などの化学前処理法を開発してきた。化学処理によりCNFの繊維径,繊維長のほか,表面性(カチオン化,アニオン化,疎水化,機能性官能基導入など)を制御でき,用途に合わせたCNFの製造が可能である。当社はこれらのCNFの様々な用途への適用を検討している。
    当社では化学処理により得られた繊維径4nmのCNFを使用し,CNF透明シートを連続的に製造することに成功した。CNF透明シートは全光線透過率90%,ヘーズ1%以下と高い透明性を示すほか,優れた機械的性質,有機溶剤耐性,フレキシブル性などのユニークな特性を有している。これらの特性から,フレキシブル有機ELディスプレイ,折りたためる太陽電池,フレキシブルTFT基板等への用途展開が考えられる。
    CNFと樹脂エマルジョンの混抄シートを樹脂と混練することで,CNF樹脂コンポジットの製造にも成功している。樹脂エマルジョンが脱水時に起こるCNFの凝集を阻害することで,CNFの樹脂中での分散性を向上させることができる。PEとCNFのコンポジットでは,CNF20%含有時に弾性率が2.8倍,強度は2.2倍に増大した。
  • 河崎 雅行
    2015 年 69 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    セルロースナノファイバー(CNF)の製造および用途開発に関する実用化検討が世界的に行われている。
    CNFはその大きな比表面積により触媒や吸着剤としての利用,熱膨張が小さく,軽量・高強度であることを活かして樹脂や塗料などに配合することにより高機能化が図れるなど,これまでにない新しいバイオマス素材として実用化が期待されている。当社のCNFの製造方法は,TEMPOと呼ばれる有機触媒を用いてパルプを化学変性することを特徴としており,これにより低い解繊エネルギーでパルプをナノレベルで均一に微細化することが可能である。当社は実用化に向けて岩国工場に実証生産設備に設置したが(平成25年10月),本設備は年間生産能力30トン以上で化学処理によるCNFを一貫生産する国内初の本格設備である。
    TEMPO酸化CNFの特徴として,
    1)表面に高密度のカルボキシル基を有する
    2)幅が3~4nmで長さ数百nmから数μmと高アスペクト比である
    3)高い結晶化度(75~95%)を有する
    などが挙げられる。
    これを用いて作製した自立フィルムおよび塗工フィルムは,(1)高い光学透明性,(2)石英ガラス並みに低い線熱膨張率,(3)高いガスバリア性,(4)高結晶性ナノファイバー集合体による高強度・高弾性率などの特長を有している。これらの特長を利用して様々な用途開発を行っており,日用品,化粧品,塗料など流動性を有する製品への添加剤としての利用,紙やフィルムに塗工または内添して複合化することでガスバリア性や耐熱性などシートの機能性の向上を目的とした利用,樹脂,ゴム,塗料等と複合化することで強度や耐熱性の向上を目的とした利用などである。
    産業用素材として早期に実用化するためには,CNFの量産化技術の開発と同時にCNFを利用するユーザーとの連携をさらに強化して用途開発を推進する必要がある。また,CNFの品質規格や安全性の評価については企業単独での対応が困難な面もあり,これに対しては大学や公的研究機関との連携が不可欠である。
  • 元澤 尚信
    2015 年 69 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    平成17年に三菱製紙(株)から分社・独立した北上ハイテクペーパー(株)では,創業以来岩手県内産を中心に広葉樹の国産パルプを製造し,写真用原紙,衛生用紙を生産している。
    近年,北上ハイテクペーパー(株)では設備投資抑制の中で,固定費削減等さらなるコストダウンや作業効率改善を日々追求しているが,老朽化したパルプ製造工程の設備的な要因による停機事故が多発していた。突発的なマシン停機は対象機器の損傷程度だけでなく,運休転の操業ロス,後工程の生産調整等,工場全体で発生するロスは計り知れない。
    場内設備の設計,保全・補修業務(工務部門)を担っている三菱製紙エンジニアリング(株)と共に,近年発生している設備事故の要因分析を行った結果,腐食・劣化配管の洩れ,各機器の軸受不良に起因した事故が多いことが判った。そこで,製造担当と保全担当で一体となり,事故発生原因を究明したところ,老朽化配管の監視不十分による腐食・劣化が上げられた。この他にも,保全技能伝承不足,保全作業項目の未実施,製造担当と保全担当との情報交換不足 等様々な原因が確認できた。
    そこで以下4テーマを中心に,設備事故削減に対する取り組みや,仮に設備トラブルが発生した場合でも最小限に抑える取り組みを実施してきた。
    1)老朽化配管管理表にもとづく計画的な部分更新の実施
    2)相互点検の実施による設備異常の早期発見と保全担当のレベルの標準化
    3)予兆カードの導入による情報共有化
    4)給油作業の効率アップによる保全効率改善
    その結果,パルプ工程の設備事故件数及び設備事故による停機時間は本取り組み開始時の平成19年時には16件,57.1時間だったが,平成25年には4件,20時間となり,どちらも70%程度削減することができた。本取り組みは有効であったと判断し現在も継続中であり,老朽化したパルプ工程の安定生産を目指している。
    本報では設備事故削減への取り組み項目について実例を交えながら,報告する。
  • 鷲見 直樹
    2015 年 69 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    近年,古紙配合率増加に伴う紙力低下を補うため,内添紙力増強剤の添加が必須となっているが,特に高添加域での紙力向上効果の発現が難しくなってきており,紙力増強剤とクラフトパルプの増配によってコストアップとなっている。
    今回,国内の多層抄きライナーマシンでは実用例の無かった「ワイヤーシェーキング装置」を初めて導入することにより,地合改善による紙力向上及び紙力増強剤・クラフトパルプの減配効果が得られた。
    地合改善効果は,高坪量ほど高い傾向を示し,坪量280g/m2で30%向上した。改善効果はシェーキングストロークと周波数が最大の時に最も高い結果となった。
    また,破裂強度も高坪量ほど向上効果が高く坪量280g/m2で4%向上した。これは,地合改善効果と同様の結果であり,改めて地合改善と破裂強度向上の関係を明確に確認した。
  • 加藤 昭雄
    2015 年 69 巻 1 号 p. 68-71
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    近年,環境に対する企業活動の重要性が求められており,また化石エネルギーが高騰し続ける中,エネルギー使用量削減への取組みが企業にとっての最重要課題である。
    省エネに取り組む中,製紙工場で使用するエネルギーの大半を占めるドライヤーの蒸気使用量を削減することを目的に,八潮工場の中芯原紙マシンである1号抄紙機では,プレス出口で最大限のドライネスを得るため海外で数多くの実績があるハイニップシュープレスを導入し,大幅な蒸気使用量の削減が図れた。
    今回の改造を行う際,現在のプレスデザインの主流であるタンデムシュープレスまたはトライニッププレスも検討したが,『プレス出口水分46%以下』を実現するために,中芯専抄マシンとしては設置例が少ないNo.4プレスとしてハイニップシュープレスを設置した。
    本稿では,改造工事の概要および改造後の省エネ効果について報告する。
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