紙パ技協誌
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70 巻, 6 号
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省エネルギー特集 I
  • 目黒 敬人
    2016 年 70 巻 6 号 p. 573-574
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
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  • 手塚 宏之
    2016 年 70 巻 6 号 p. 575-579
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル 認証あり

    鉄鋼業においても他産業と同様,成長が著しい新興国での省エネ・CO2削減の重要性が認識されている中,日本鉄鋼業が主導して2013年3月に策定された,製鉄プロセスから発生するCO2排出のパフォーマンスを把握するための方法を定めた「ISO14404」が,新興国鉄鋼業の省エネを推進するツールとして大きな役割を果たしている。
    ISO14404は特別な計測機器等を必要とせず,粗鋼生産量,原材料購買量・販売データなど,通常の操業データのみで簡単にCO2原単位を計算できるという特徴がある。またISO14404では,製鉄所からの実CO2排出量ではなく,製鉄所外で製造された中間材を作る際に排出されたCO2も「間接排出」として製鉄所内で製造された場合と同様にカウントする手法を取っている。鉄ができるまでには複数のプロセスを経るが,製鉄所によっては,一部のプロセスを外部からの中間材の購入で賄うため,製鉄所からの実CO2排出量のみに注目すると,外部購入資材の割合が大きいほどCO2排出量が少なく見えてしまうが,「間接排出」の導入によってこれを補正して,製鉄所の効率を正しく評価することができる。
    ISO14404は,第一に日本の鉄鋼業が世界最高のエネルギー効率を誇ることを「見える化」するための手段として,第二に新興国鉄鋼業での省エネ推進のツールとして,そして第三に日本のインフラ輸出を後押しするものとして,大きな役割を果たしている。日本鉄鋼業は1970年代以降のたゆまぬ省エネ努力により,優れた省エネ技術(ハード)を有しているが,ISO14404(ソフト)とハードをパッケージ化して国際展開することにより,「日本鉄鋼業の省エネ技術の海外展開」を後押しし,「日本の技術による気候変動対策への貢献」の拡大を目指している。

  • 青山 千晃
    2016 年 70 巻 6 号 p. 580-583
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
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    新潟工場で保有する5系列のエバポレーターの内,稼働後35年以上超過した2系列の最新設備への更新を計画し,平成27年6月に実運用に入った。今回導入したH系エバポレーターは,再加圧ファンで蒸気を再圧縮する方式Vapor―Re―Compression―System(以下VRC方式と略す)を採用し,給液缶での黒液濃縮処理を進め,省蒸気,黒液濃縮能力アップを図った効率良い設備である。黒液濃縮設備におけるVRC方式の導入は,住重プラントエンジニアリング社製では,国内初である。
    設備導入前後で比較すると,工場全体のエバ燃料原単位が10~15%改善,工場CO2排出量は約7.3%も削減できている。ブロワを運転することで,電力使用量は増加するが,給液濃度アップによる低圧蒸気削減量が大きく,総合的に消費エネルギーは少なくなる。
    本稿では,VRC方式の設備概要及び導入効果,トラブル事例について報告する。

  • 中嶋 栄二郎
    2016 年 70 巻 6 号 p. 584-588
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
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    ハイパーフラットドライブシステム(略称:HFD)とは,生産工場や商業施設などで稼動する空調機,送風機等の動力伝動として使用されているVベルトからの置換用製品として開発した省エネ伝動システムである。
    伝動ベルトのエネルギー損失は曲げ応力による損失が最も大きな要因であり,これを最小に抑えるためには,伝動ベルトの厚みを薄くすることが有効である。最少厚みを実現できるのは平ベルトであるが,平ベルトには伝達能力の不足,ベルト走行時の蛇行,張力低下によるスリップ等の解決の難易度が高い問題があり,Vベルト駆動が多くに用いられてきた。
    当社では100年超の歴史を持つ総合ベルトメーカーとして,経験と実績による高い技術力を背景に,平ベルトの走行位置を自律制御させる蛇行制御機構を開発し,その蛇行制御機構に張力を維持するオートテンショナ技術を組み入れることで平ベルトの蛇行や張力低下などの問題を克服した。節電,長寿命,メンテナンスフリーを実現し,Vベルトに比べて平均7%の節電効果を実現,寿命も3倍となり,その他特長としてVベルトに比べ,クリーン性,静粛性の向上も実現している。

  • 大田 裕之, 栗田 大史, 中川 隆史, 河野 龍興, 山根 史之, 上滝 直樹
    2016 年 70 巻 6 号 p. 589-594
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
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    東芝は,純水素型の燃料電池や,高効率の水素製造システム,あるいは系統制御を含めてエネルギーを高効率に扱うエネルギーマネージメントシステム(EMS)の開発に長年取り組んでおり,これらコアとなる技術を統合して,水素社会に向けたシステムの製品及び技術開発を進めている。
    そのひとつとして,再生可能エネルギーの余剰分を水素電力貯蔵により,平準化し需要に合わせて発電することをコンセプトとした新しいエネルギーシステム,H2One™を開発し製品化した。2015年の4月から川崎市で,H2One™のBCPモデルの実証を開始しており,実証実験においては再生可能エネルギー,貯蔵した水素と蓄電池のみで目標の7日間の運転継続を達成した。また,水素吸蔵合金を採用することにより,大量の水素を長期間にわたって利用することを可能とした,リゾートモデルの開発を行った。本モデルにおいてはハウステンボス株式会社のスマートホテル「変なホテル」第二期棟に設置される予定である。
    一方,近年では温暖化ガス排出に対するルールが広がっており,工場への再生可能エネルギーの導入が進められている。東芝では,必要エネルギーを温暖化ガス排出量ゼロで供給するための工場向け水素システムの開発を進めており,それはパルプ・紙・紙加工品製造業の工場にも適用が可能である。
    その他新たな取組として,環境省委託の水素サプライチェーン実証事業を2015年より北海道にて開始している。
    これからも,東芝は再生可能エネルギーを利用した発電システム,水電解装置,燃料電池などの水素社会の実現に必要な技術を併せもつ企業として,水素の製造から利活用までを統合した経済的なエネルギーソリューションを提案していく。

  • 城田 靖彦
    2016 年 70 巻 6 号 p. 595-600
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
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    本社主導の下(推進本部となり)で複数の工場(自社工場又はグループ会社の工場)に本社技術部各工場担当が加わり省エネ合同プロジェクトを編成し,組織的に活動を展開していくサテライト型の活動推進方式を紹介する。その進め方としては,JBICの省エネ手法をベースに統一推進方式という合同会合形式で省エネの進め方(手法)・考え方の理解,分析情報の共有化,問題指摘や対策検討,技術課題検討,進捗確認検討等をチーム員全員で行う。そして会合は工場持ち回りで合同ミーティングを行い各種交流も含めて本社・工場一体の省エネ活動を展開していくものである。
    昨今ではこれまでの単一推進方式(工場単位)における課題とは異なった課題が上がってきており,その課題に対応したサテライト型省エネルギーの進め方が有効と考えられ展開しているものである。
    それらの課題とは,
    1)事業所が海外も含めて数多くあるが,省エネをどのように進めていけば良いかわからない。
    2)本社と工場の認識の違い,意見すれ違い,立場の違いが活動を展開しにくくしている。
    3)一つ一つの事業所の規模がさほど大きくなく一事業所でプロジェクトは組みづらい。
    4)事業所(工場)間で改善情報共有しているが,実行に及ばない。
    5)事業所(工場)間の活動進捗に違いがあり,足並みをそろえにくい。ばらつきが生じる。
    6)人が出せず集中した活動ができないことから大きな成果が得られにくい。
    など。
    これらの課題を踏まえ,サテライト型省エネを採用した際のメリットは,
    1)各工場少人数制でチームの編成が可能である。
    2)複数以上の工場が同時期に,省エネルギー効果が出せる。
    3)本社と工場間の交流が出来,組織が活性化する。
    4)本社技術部,各工場の知恵・刺激が得られる。
    5)競争の原理が働き活動に勢いがつく。
    6)社内で継続できるしくみを形成する。
    7)本社主導型の省エネ展開を図れるようにし,全工場の収益貢献が図られる。
    8)情報共有のために対象工程に対する深い知識・情報が求められ,技術情報の整備や省エネスキルの向上が図られる。
    以上の観点から,サテライト型の省エネ運営方法についてその要点(ノウハウ)をJBICの省エネ手法と合わせて紹介する。

総説・資料
  • 小谷 亮介
    2016 年 70 巻 6 号 p. 601-604
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
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    昨今のエネルギー価格の高騰は収益に大きな影響を与えており,省エネへの関心が高まっている。王子エフテックスでは省エネ目標を「生産計画に基づくエネルギー使用量見込みに対し1.5%削減」と設定し,省エネ委員会を中心に日々省エネに取り組んでいる。しかし,活動頻度を上げることが困難になり,新しい案件の発掘に至らず年々目標の達成が難しくなっていた。その問題点を払拭し,さらに省エネ活動を活性化するため,2013年に少人数による別組織「省エネ推進チーム」を立ち上げた。
    省エネ推進チームでは「スピードを優先し,短期間で成果を出すこと」を基本方針として活動を開始した。省エネを早期に数多く実施するため,効果が小さくても少額投資でできる案件を優先した。その結果,2013年度中津工場では64件の省エネ案件を実施し,原油換算510kL/年を削減した。このうち省エネ推進チームは半年間の活動で19件を実施し,原油換算122kL/年を削減した(全体の23%に相当)。
    省エネ案件の実例としては,「蒸気トラップ見直しによる省エネ」や,「コンプレッサー1台停止」が挙げられ,いずれも既存設備の運転条件でエネルギーロスがないか把握することだけで大きな省エネ効果が得られた。また,製造現場に大画面の「エネルギー原単位見える化システム」を設置し,リアルタイムで原単位を認識できる環境を整え,省エネを支援する役割も果たした。
    今後は省エネ推進チームの活動を工場全体に広め,更なる省エネを図っていく。

  • 土棚 政人, 長峰 大輔, 川上 千明
    2016 年 70 巻 6 号 p. 605-611
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル 認証あり

    クラフトパルプ製造では,調木,蒸解,ファイバーライン工程によりパルプを得る一方,黒液を濃縮・燃焼して薬品および熱を回収する。これらの工程は,従来独立したシステムとして扱われ,個々に進歩を遂げてきたが,2000年代に入ってパルプ生産設備が大型化されるに伴い,総合パルププロセス・プラントメーカーが装置一式をEPC受注するようになった。言い換えれば,メーカーには,各プラント間の垣根を越え,プラント全体を最適化・効率化することが求められるようになったのである。
    そうした背景の中,Metsa Fibre社が発足させたAanekoski Bioproduct Millプロジェクトにおいて,アンドリッツはファイバーラインを含む主要プロセス技術を担当することとなった。パルプ製造・回収の両工程を融合し最適化を行うという視点のもと,また,長年の研究開発によって培った最新技術は,省エネルギー・創エネルギーにつながるものである。
    本稿は,その取り組みについて記述したものである。

  • ―クラフトパルプ工場からのリグニンの利用の拡大―
    山下 宏
    2016 年 70 巻 6 号 p. 612-615
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル 認証あり

    世界各国での炭酸ガス排出削減の取り組みが近年,積極的に行われている中で,再生可能資源への注目が集まっている。その関心のほとんどは,再生可能エネルギーに注がれていると言えるが,バイオマス資源については,エネルギー源としての可能性に加えて,各種素材の原料としての可能性にも目が向けられている。その中で,先進国を中心としてリグニンへの関心が高まっている。リグニンはエネルギー源としてその使用が広く行われている。近年新たに注目されているのは,化成品の原料としての可能性である。これまで,重油を原料としていた多くの化成品がリグニンといった再生可能資源から作られる可能性が高まっている。リグニンの化成品の原料としての使用方法が確立されると,その付加価値は大きく高まることが期待されている。
    弊社はクラフトパルプ工場の黒液からリグニンを商業的に取り出す技術を確立した。すでに,北米と北欧でそれぞれ商業プラントが稼働を開始している。本稿では,弊社のリグニン抽出についてのこれまでの取り組みと商業プラントの稼働状況の一部を紹介する。

  • 河口 拓郎, 加茂 晶也
    2016 年 70 巻 6 号 p. 616-619
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル 認証あり

    紙塗工用ラテックスは塗工紙の品質に大きな影響を及ぼすため,品質向上のための検討がなされてきた。これまではラテックスポリマーの粘着成分の量と粒子内の分布を最適化することで強度と操業性のバランスを取るように設計されてきた。更なる強度と操業性の向上のために効果的な機能性成分をラテックスポリマーの粒子表面に導入した高機能性ラテックスを開発した。
    高機能性ラテックスの強度と操業性を従来型ラテックスと比較するとともに,ラテックスのフィルム物性,および,顔料とラテックスの相互作用を確認し,ドライピック強度に関する考察を行った。
    高機能性ラテックスのドライピック強度は従来型ラテックスと比較すると30%以上良好であった。ラテックスのフィルムの伸びと応力を測定したところ,高機能性ラテックスは従来型ラテックスに対してフィルムの伸びを保ったまま,フィルム応力が著しく向上していた。このことから,強固なフィルムとなり,ドライピック強度が向上したと考えられる。
    さらに導入した機能性成分は顔料である炭酸カルシウムとの相互作用が確認されており,カオリン系の顔料配合に比べ,特に炭酸カルシウム系の顔料配合におけるドライピック強度の発現が顕著であることがわかった。
    操業性の指標となる塗料の洗浄性を確認したところ,従来型ラテックスよりも高機能性ラテックスは良好であった。機能性成分は親水性であるためバッキングロールのフロークリン部での洗浄水になじみやすくなり,洗浄性が向上したと考えられる。
    今回開発した高機能性ラテックスではフィルム応力の向上,炭酸カルシウムとの相互作用によりドライピック強度が向上するとともに操業性が向上した。

シリーズ:大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (111)
研究報文
  • 黒田 章裕, 児玉 晃季, 奥田 浩輝, 宮間 千歳, 前田 秀一
    2016 年 70 巻 6 号 p. 624-630
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
    [早期公開] 公開日: 2015/08/10
    ジャーナル フリー

    壁紙には意匠性,機能性が求められ,素材やデザインを大きく変革させてきた柔軟性に富んだ歴史を持つ。一方,我々の一番身近な光学材料の1つに皮膚が挙げられる。皮膚は光学的には半透明な層状構造体であり,光が侵入深度により分離される色分離機構や,皮膚の層状構造の層間での多重反射など複雑な光学特性を持ち,化粧品産業を除けば,意外にこの光学特性を利用している産業は少ない。
    我々は,赤ちゃんの皮膚を見た時に感じるみずみずしさ,奥行き感に注目し,皮膚を光学的に生体模倣したモデルを開発し,その光学特性を評価することで,奥行き感に優れた立体スクリーンを開発し,壁紙への応用を試みた。
    現在産業的に多用されている3Dの原理は,両眼視差を使用したものであり,専用眼鏡や複雑なディスプレイの構造を必要とし,かつ膨大なデータ処理が必要な点が,手軽に使いにくい問題を起こしていた。これに対して,我々の光学模倣モデルは片目立体視に基づく原理を用いており,両眼視差を使用したものではないため,専用眼鏡が不要なこと,データの立体化処理は自動的にスクリーン側が行ってくれるため,既存の2Dのデータがそのまま利用できること,構造が単純で大型化が容易なこと,プロジェクターがあればすぐに立体投影が可能で,高性能のコンピューターを必要としないこと,スクリーンが明るいこと等を特徴として有している。一方,皮膚と同様に映像を投影した際の高い解像度は期待できず,飛び出してくるような立体映像も得られないが,既存の壁紙にはない,立体的な風景画が投影されているような独特の意匠性が得られる特徴がある。これは壁紙の求める意匠性,機能とも通じるものがあると考えている。

  • Akihiro Kuroda, Koki Kodama, Hiroki Okuda, Chitose Miyama, Shuichi Mae ...
    2016 年 70 巻 6 号 p. 631-637
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル フリー

    When we consider viewing the surface of human skin, the skin gives us a sense of natural depth, while, in contrast, the surface of a plastic does not. It is sure that the feeling of natural depth from human skin does not come from binocular disparity, because we can easily sense the natural depth of the skin, even when using only one eye. In our research program, learning from the structure of human skin, we fabricated screens which consist of multilayers made of translucent sheets coated with TiO2 nanoparticles. It seems that these screens appear to exhibit Mie scattering which has strong backward scattering relative to forward scattering. Therefore, analogous images can be projected on the screens behind the original images without losing their clearness. The feeling of natural depth from our screen can be considered to come from the multiply-observed images produced by phase differences due to the translucent multi layers and the reflection/diffusion differences of light depending on its wavelength. We also discuss the reflection/diffusion properties using color laser and black and colormatrixes. Red ray can reflect many times between the multilayers and resolution of the red image become low. When insert a black matrix among the multilayers, the matrix control the optical properties, and the resolution can be improved. Additionally, in the case of our screens, as well as human skin, we can sense the feeling of depth with one eye. Our screens can be applied to wallpaper or projection screens for events, since they are simple, energy free, and applicable to large area.

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