紙パ技協誌
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70 巻, 9 号
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製紙技術特集 I
  • 製紙技術委員会
    2016 年 70 巻 9 号 p. 879-880
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル 認証あり
  • 河野 良次
    2016 年 70 巻 9 号 p. 881-888
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル 認証あり

    ドライパートは抄紙機で最もエネルギー使用するパートであり近年の環境問題面やコスト競争面から,熱効率を高めて使用蒸気を削減し,また駆動や送風ファン等の使用電力を削減することが求められている。ドライヤーカンバスはプレスパートで搾水された湿紙を保持運搬しながら蒸気で加熱されたシリンダードライヤーに圧着させ,乾燥を促進させる役割を担っている。ドライヤーカンバスは抄紙機のエネルギー効率に直結している要具であり,カンバスによる湿紙乾燥メカニズムを把握することは重要である。

    カンバスは1970年代までは天然素材である綿で構成されていたが,合成繊維を使用したプラスチックカンバスが登場すると大幅な乾燥性のアップが実現された。綿カンバスに比べてプラスチックカンバスは高いテンションを掛けることが可能となったためシリンダードライヤーから湿紙の熱伝達が増加し,またプラスチックカンバスは高い通気性を実現したためドライヤーポケットから湿った空気を換気する機能が高まり,湿紙からの水分蒸発を促進した。

    抄紙機はより高度に発展していく中でカンバスへの要求も高いものとなり,カンバスは他種,多様となっている。その結果テンションと通気性だけの乾燥モデルでは説明がつかない事例が発生しており,弊社では新たな乾燥のファクターとしてカンバスの表面性や内部構造に注目し,現在その検証に取り組んでいるところである。そこから得られた新たな知見を基に製品開発を進めて提案を行い,製紙産業の発展に微力ながら寄与していきたいと考えている。

  • 寺島 仁
    2016 年 70 巻 9 号 p. 889-893
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル 認証あり

    近年,省エネルギーに対する取組みがあらゆる分野で進められ,製紙業界でも様々な対策が求められている。

    抄紙機におけるドライパートでも湿紙を目標水分まで乾燥させる工程で,いかに蒸気使用量が削減出来るかが鍵であり省エネルギーに直結する課題である。

    品質やエネルギーコストに重要な役割を果たしているドレネージシステムは本来,抄紙機それぞれに,様々な操業条件に対応したシステムを求められるが,抄紙機の建設当初の操業条件と,現在の操業条件では,そのほとんどが坪量,抄速等何らかの条件が変化して操業されている。

    乾燥能力を最大限に発揮,維持する為,その変化にドレネージシステムが対応出来ているか否かを調査,検討し,現状の抄物に合ったドレネージシステムに見直す事により品質の改善,操業性の向上ならびに省蒸気も期待できる場合も少なくない。

    本稿では,ドレネージシステムの乾燥方式として「ブロースルーカスケード方式」「サーモコンプレッサー方式」を主として解説する。

  • 工藤 嘉靖
    2016 年 70 巻 9 号 p. 894-897
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル 認証あり

    抄紙機の乾燥工程であるドライヤーパートでのエネルギー使用比率は高く,省エネルギーを進めるうえで最重要課題の一つである。

    大阪工場2号抄紙機のドライヤーフード給排気システムは,設備の給気能力の低さと経年劣化による冷気の侵入や熱の流出のため,給排気比率が低く,露点温度も低い状態での操業となっていた。さらに排熱を大気放出していることによる大きなエネルギー損失の発生という問題も抱えていた。

    本報では,前述の問題解決のため,ドライヤーフード排熱を有効利用する排熱回収装置の導入および,マシン操業時のドライヤー乾燥負荷バランスなどの工程調査に基づくドライヤー給排気システムの最適化を実施し,大幅な省蒸気を達成した事例について報告する。

  • ―ドライパートの異物除去機器とその実績例―
    村山 知洋
    2016 年 70 巻 9 号 p. 898-903
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル 認証あり

    近年の原料事情の悪化により,原質工程での異物除去の難しさも高まり,その結果としてマシンサイドへの異物持込みが増加している。抄紙工程へ持込まれた異物はマシンファブリックを汚染し,紙の品質を低下させたり,生産性を低下させるとともに,付着した異物を除去するために多くの労力や時間を要しており,この問題の解決は抄紙工程における重要な課題の一つと考える。

    弊社・相川鉄工は,長年にわたり原質調成工程での異物除去装置はもちろん,ドクター,シャワーをはじめとしたオンマシン設備でも多くの皆様にご採用を頂いているが,ここではドライパート用異物除去機器としてドライヤー表面クリーニング用サーフェスクリーナー及びアブラシテック8ブレード,技術開発,改良を重ねた最新式カンバスクリーナーの実績及び特徴について紹介する。

  • 小林 大介
    2016 年 70 巻 9 号 p. 904-909
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル 認証あり

    近年,国内製紙業界においては,環境保護と循環型社会に対する関心の高まりに呼応して古紙利用率が増加している。古紙利用の課題の一つに,古紙に含まれる粘着テープやラベルなどの粘着物が汚れとして抄紙機の用具に付着し,断紙や不良品発生の原因となって生産性を低下させることがある。特に古紙利用率が90%を超えるライナー・中芯においては,ドライパートにおける粘着物の問題が顕著であり,欠点や断紙発生の最大の原因となっている。また,洋紙に関しては板紙と同じ古紙利用率増加の他に,パルプ価格高騰などに対するコストダウンの一環として填料の増配や市場ニーズ変化に伴う紙の嵩高化などによって繊維間の結合力が低下し,抄紙機での湿紙とドライヤーなどの用具が接触する際に紙紛や紙面の毛羽立ちが発生する問題が出ている。

    株式会社メンテックは,ドライヤーパートで発生する粘着物・紙紛などの汚れに対して,薬品と散布装置を用いたドライヤーパート汚れ防止技術を販売している。この技術は,オイル・ワックスなどのエマルジョンである薬品を摺動型スプレー散布装置で紙が接触する部分に散布し,薬品皮膜を形成して汚れの付着を防ぎ,且つ,付着した汚れのドクターや高圧水クリーナーなどの洗浄設備による除去を促進する方法である。本技術の適用箇所はマシン形式や汚れ状態によって様々ではあるが,一般的にはドライヤーには紙のW・F面がそれぞれ最初に接触する上下段のシリンダー,カンバスには1,2群上下段カンバスの各箇所に適用することが基本である。効果としては,ドライヤーパート汚れ減少によるマシン・ワインダー断紙,欠点数(損紙量),マシン洗浄頻度の減少や,乾燥効率の向上,用具ライフの延命などがある。

  • 高橋 徹
    2016 年 70 巻 9 号 p. 910-917
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル 認証あり

    製紙機械においてサイザは紙の表面処理上で最も重要な印刷適性の向上を実現する,サイジングを行うためのパートである。サイザは書籍用紙に代表される一般上質紙では最も広くかつ最も古くから利用されてきたが,近年においては新聞用紙や板紙に対しても広く普及してきた。その形式として古くはポンドサイズからゲートロールサイズ,さらにロッドメタリングサイズへの発展がみられる。このほか,非接触塗布のスプレーサイズも利用されている。サイザ関連装置としては,効率のよい通紙を可能とした通紙装置「フォイルフォース1」,ロールカバーの下にらせん状の感圧センサを埋め込むことで,操業中にリアルタイムでニッププロファイルの測定が可能な「iRoll」が開発され,通紙の効率化,塗工プロファイルやシート走行性の改善に有効である。

    一方,ドライヤパートでは蒸気とシリンダの組み合わせで紙に熱を伝える,という基本原理自体は抄紙機が発明されて以来ほとんど変化はないが,近年いっそうの省エネ・乾燥効率向上を図りかつ省スペース化のため,エアドライヤの原理を抄紙機ドライヤパートに適用する流れも出てきた。これは内蔵のガスバーナによって高温のエアをウェブに噴射し乾燥するもので,OptiDryインピンジメントドライヤとして注目を集めている。また,既存のシリンダドライヤにおいても走行性の改善は省エネ,効率アップに大きく影響しており,効果的な走行性改善システムのドライヤセクションへの導入は不可欠となっている。

    本稿では,これら両パートのこれまでの変遷と,最新技術動向について紹介する。

  • ―新ライナーマシン―
    益山 正行
    2016 年 70 巻 9 号 p. 918-921
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル 認証あり

    丸三製紙8号抄紙機は,ニーズの高まる段ボール原紙の薄物化に対応した,品質・生産性・コスト競争力をコンセプトに,丸網6号抄紙機のS&Bとして建設され,2014年12月26日より試運転,2016年1月26日より営業運転を開始し,約1.5年が経過した。この間に種々多くのトラブル対応を行い,既存製品の新マシン移行を計画通り完了させ,日産量もクリアー出来た。

    本稿では,8号抄紙機として採用した株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジーのウエットエンドプロセスを含めた抄紙機設備,主にヘッドボックス,プレス,ドライヤー等の設備概要,そして営業運転から現在に至るまでの,品質項目としても取り上げられる欠点の発生対策,ドライヤー内のカンバス汚れ状況,操業安定には欠かせない紙切れ発生状況等について報告する。

総説・資料
  • 井戸川 尚則
    2016 年 70 巻 9 号 p. 922-925
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル 認証あり

    レンゴー株式会社では,地球環境に配慮した経営を実践することが,企業の持続的発展に不可欠であるとの認識に立ち,全社あげて環境保全活動に取り組んでいる。当社では,環境負荷の低減に向け具体的な目標を定めた環境行動計画として「エコチャレンジ020」を策定している。2020年度を中期目標の達成年度として,CO2排出量削減や古紙利用率の向上,廃棄物削減等のテーマに取り組んでいる。CO2排出量は,2020年度までに1990年度比で32%に削減することを目標に定めている。

    淀川工場では,段古紙処理工程の粗選スクリーンを,ファイバーソーターから最新型の省エネルギーローターであるGHC2ローター(相川鉄工株式会社製)を取付けたPHスクリーンに更新し大幅な省エネを達成することが出来たため,本報にてその事例を紹介する。

技術報文
  • 永田 紳一, 澤本 英忠, 酒巻 紀江, 森川 貴子
    2016 年 70 巻 9 号 p. 927-934
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    [早期公開] 公開日: 2015/12/29
    ジャーナル フリー

    製紙工業において,紙の坪量と水分率を測定することは,品質管理上のみならず,商取引上においてもたいへん重要である。現行のBMシステムは約40年間の歴史において,ほとんどが水分率は赤外線,坪量は放射線(β線)で測定されてきている。しかし,放射線は人体に悪影響を与える危険性があるため,安全上の規制や対応が必要となっている。

    一方,我々は過去にマイクロ波を使ったオンライン繊維配向計やオンライン微量水分計を開発してきた経緯がある。繊維配向は紙の誘電率の異方性から,水分は紙の誘電損失率から測定される。我々は,オンライン繊維配向計の開発当時から,共振周波数のシフト量から繊維配向だけでなく坪量も測定できることは気づいていたが,水分によっても共振周波数が変わるため,もう一工夫必要であった。そこで,紙を絶乾部分と水部分に分けて考え,それぞれに誘電率と誘電損失率を想定し,共振周波数のシフト量(=Δf)が誘電率と体積の積に比例し,共振ピークレベルの変化(=ΔP)は,誘電損失率と体積の積に比例するので,ΔfとΔPを測定し,連立方程式を解く形で,絶乾部分の体積と水部分の体積をまず計算し,そこから坪量と水分率を算出する方法を見出した。

    この新しいBM測定用のソフトウエアをオンライン繊維配向計に移植し,実機マシンを使って長期に亘り,既存のBM計と同時測定を行い,その測定精度や実用性について比較検討を行った。その結果,既存のBM計との高い相関性等,良好な結果が得られたので,その測定結果および測定原理について報告する。

  • Shinichi Nagata, Hidetada Sawamoto, Toshie Sakamaki, Takako Morikawa
    2016 年 70 巻 9 号 p. 935-943
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル フリー

    In paper industries, the measurement of basis weight and moisture ratio of the paper sheets is very important for not only quality control but also trading on commercial. Typical BM sensor systems have been using the infrared for the moisture ratio and the radiation for the basis weight for about 40 years. But it is said that the radiation has bad influence on human body. On the other hand, we had developed an on-line fiber orientation sensor system and an on-line moisture sensor system using microwaves. The fiber orientation sensor is based on the anisotropy of dielectric constant of the paper sheet and the moisture sensor is based on the dielectric loss of the paper sheet. When we were developing the fiber orientation sensor, we notified that it might be able to measure not only the fiber orientation but also the basis weight from the resonant frequency shift based on the dielectric constant of the paper sheet. So we started to examine the possibility of BM measurement of our sensor head. As a result, we found the unique method for measuring the basis weight and the moisture ratio by combining the fiber orientation sensor technology and the moisture sensor technology. As we examined the capability of the new method for BM measurement by using the prototype on an actual machine with comparing the typical BM sensor system, we would like to report the results and the measurement principle.

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