紙パ技協誌
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72 巻, 10 号
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製紙技術特集 II
  • 内山 晴之
    2018 年 72 巻 10 号 p. 1125-1135
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル 認証あり

    丸石製作所は原料設備から仕上げ設備まで製紙工程全体をカバーする製品をラインナップに揃えている製紙機械メーカーである。製紙業界向けに国内はもとより世界各国に190台近くの納入実績のある平判包装機を筆頭に,高速フルシンクロカッター,ロール包装機などの各種仕上げ設備の設計,製作を行っている。また,ユーザーへの設備単独供給からプラントエンジニアリング,ターンキープロジェクトまでニーズに合った幅広い提案が可能である。今日のように技術革新の激しい時代において,ユーザーからは長期的信頼性とメンテナンス性の向上,省エネ化,設備コストダウンの要望が強くなっている。そこで丸石製作所は大判カッターではPLCによるロール径演算方式のテンションコントロールシステム,エアージェット式オーバーラップシステム,新開発キャッチローラー,カーボン製ナイフドラムなどの最新技術を備え,平判包装機ではいかに包装形態を良くするか,オペレータの負担を軽減させるか,簡単にメンテナンスを行えるか等を考慮し日々研究開発を行っている。また,設備の各セクションに性能重視,コスト重視などユーザーに多岐にわたる選択肢から選択していただく事でユーザーのニーズに合致する設備を製作することが可能である。

  • ─AI活用によるロボットの高性能化で物流作業の無人・省人化を促進─
    輿石 竜太
    2018 年 72 巻 10 号 p. 1136-1138
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル 認証あり

    近年,わが国は少子高齢化による深刻な労働力不足に悩まされている。特に労働力不足が顕著とされている物流業界において,荷卸し(デパレタイズ)作業は,腰痛など労働災害につながる重労働のため作業者の定着率が悪く,作業者の確保がさらに困難になることが見込まれる中で,ロボット導入による無人化・省人化が急務となっている。

    このような状況の中,IHIおよびIHI物流産業システムは,AIによる物体認識技術を活用し,事前の画像データの登録やティーチングが不要なデパレタイズシステム AADS(IHI AI Auto Depalletizing System)を開発した。

    AADSの特長は,⑴マルチ荷姿・混載パレットへの対応が可能,⑵デパレタイズ能力の向上(従来比30%),⑶マスター情報登録の簡素化である。

    IHIは本システムの他にも「IHIシャトル&サーバ」(立体高速仕分装置),「IHIロボスタック」(立体自動倉庫)などのケース用物流機器を取り揃えており,AADSと組合せることにより物流作業の無人化・省人化をトータルで推進していくとともに,今後もIHIグループが保有する様々なノウハウに基づく制御技術およびロボティクス技術により,物流システムやものづくりの高度化に取り組んでいく。

  • 植田 清隆
    2018 年 72 巻 10 号 p. 1139-1144
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル 認証あり

    欠陥検査装置(Web Inspection System)は,紙等のシート上に光を照射し,センサーで黒点や穴等の欠陥と地合(良品)との受光量を測り,その差をもって欠陥と判定するものである。光学,電子,メカ,制御,コンピューター,ソフトウエア等の様々な技術を組み合わせた高度な総合システムであり,光源,データ処理,欠陥判別・分類,検査方式において,センサー・データ処理・光源を用いて開発されてきた。

    しかし,欠陥は,生産設備,原料,外的要因(虫)など様々な原因で発生するため出荷品質の判定に利用する情報以外に生産ラインの状態を表す情報として有効活用できる。そこで,最新の画像認識技術(深層学習)を利用した取り組みを,欠陥検出装置の変遷とあわせて述べる。

  • 池田 孝之
    2018 年 72 巻 10 号 p. 1145-1150
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル 認証あり

    JFEプラントエンジは,JFEメカニカルとJFE電制が2016年に経営統合して発足した機械と電気・制御の総合エンジニアリング企業である。製紙業界へは,前身のJFE電制において2004年より品質管理に関わるセンサーソリューションビジネスに取組んでいる。当社では,レーザやカメラを使用して検査対象物の情報を取得し,それを高度な数理処理を行うことで,検査員の目視判定を代替しうる装置の開発を主として行ってきた。その結果,情報用紙,印刷用紙や家庭紙の仕上げ工程向けに,特徴のある品質センサーを数多くの納入している。本稿では,小判の仕上げ工程向けに開発した,以下の装置の概要を述べる。

    リーム外観検査―包装前のリームの飛出し・不揃い,折れの検出。紙粉付着量の定量化

    包装紙折目検査―防湿紙で包装後の包装状態の良否チェック

    ラベル検査―包装紙に貼付するラベルの有無,位置のチェック

    ダンボール梱包検査―ダンボール梱包の成形不良,汚れのチェック

    オンライン寸法測定―裁断された用紙の,幅,流れ寸法,菱量(直角度)の測定

総説・資料
  • 奥西 敏夫
    2018 年 72 巻 10 号 p. 1151-1155
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル 認証あり

    古紙処理によって得られる製紙原料パルプのDIPやOCC処理パルプは,ファイバーフロードラムパルパー(FFD)によって作られた場合,卓越した品質のパルプを作ることが可能になる。また未選別古紙等の多量の異物を含む低品質で安価な古紙から高い品質の古紙パルプを作ることも可能であり,その結果コスト削減に寄与できる。本稿ではこの10年間で急激に増加したOCCへのFFDの適用を紹介する。

    従来新聞古紙処理を中心に発展してきたFFD技術をOCC処理に適用するため,滞留時間を長く取ること,及び内部の仕切り板を高くすることでドラム内の原料ショートパスを防ぎ,長い滞留時間でかつ滞留時間のバラつきを減少させている。その結果離解度のバラつきが減少し,OCCをほぼ完全離解することが可能となる。同時に異物に対しカッティングせず強いせん断力を与えず,異物の細片化を防ぎつつ異物をFFDで除去することで,異物の少ない状態で離解パルプを除塵工程へ送る。その結果高品質のパルプを作ることができる。FFD技術のOCC処理への適用を納入実績,フローシート,適用事例を紹介することで,FFD技術は段ボール原紙製造においても生かすことができることを紹介させていただく。

  • 第3部:1990年代からの模索
    飯田 清昭
    2018 年 72 巻 10 号 p. 1157-1162
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル 認証あり

    1970年代の産業存続の危機を乗り切った製紙産業は,日本経済の大幅な減速(国内需要の停滞)に対処するため,業界の再編・統合による効率化,流通の合理化及び国際展開をはかった。業界の再編はある程度進行したが,国際展開は2002年時点では海外売上高比率が産業として最も低く,以前として内需頼みであった。

    一方で,需要は減速するものの代替素材への危機感はまだなく,むしろ原料供給に余裕を与え,リサイクルを組み込んだ持続可能な産業と見なされ,存続に余裕を滲ませた。

    技術面では,1960年代から積極的に使いこなしてきた半導体技術による装置の大型化・高速化が頭打ちとなり,その技術が海外に拡散,追い上げられだした。そかし,それを打開するための,次のキーとなる技術を見出せず,模索が続いた。

    その間に,紙の本質を揺さぶり,次世代の技術の核となり情報化革命と引き起こす技術変革が始まっていた。

シリーズ : 大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (126)
研究報文
  • Ayyoub Salaghi, Agusta Samodra Putra, Roni Maryana, Mikio Kajiyama, Hi ...
    2018 年 72 巻 10 号 p. 1167-1175
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー

    Dissolving pulp was produced from four diff erent hardwoods by prehydrolysis-kraft cooking and totally chlorine-free (TCF) bleaching using oxygen (O),peroxymonosulfuric acid (Psa),and alkali extraction with hydrogen peroxide (Ep) in an O-Psa-Ep-Psa-Ep sequence. The hardwood lignin structures were characterized by the nitrobenzene oxidation method, which provided syringaldehyde (Sa) to vanillin (Va) molar ratios (S/V ratios) of the lignin. Eucalyptus globulus wood had the highest S/V ratio of 5.81 and a combined yield of Sa and Va of 3.04 mmol/g-lignin, while the Acacia hybrid wood exhibited the lowest S/V ratio and the combined yield. The E. globulus wood provided a fi nal pulp with an acceptable level of viscosity 7.0 mPa·s, a weight-average molecular weight (Mw) 3.04 × 105 g/mol, a number-average molecular weight (Mn) 5.56 × 104 g/mol, polydispersity (Mw/Mn) 5.47, a high brightness of 90.1% ISO, and an α-cellulose content of 94.2%. It is attributed to the high S/V ratio and the high combined Sa and Va yield, which is suggestive of a less-condensed lignin structure compared to the other hardwoods tested. No signifi cant diff erences in the cellulose crystallinities of the bleached pulp produced from the four hardwoods were observed.

  • アヨブ サラゲイ , アグスタ サモドラ プトラ, ロニ マルヤナ, 梶山 幹夫, 大井 洋
    2018 年 72 巻 10 号 p. 1176-1184
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー

    前加水分解・クラフト蒸解と完全無塩素(TCF)漂白法によって溶解パルプを製造するにあたり,四種類の広葉樹材の木材成分とリグニン構造を比較し,蒸解・漂白特性を調べた。TCF漂白は,酸素漂白(O)後に,オゾンより反応選択性が良いと考えられるモノ過硫酸(Psa)を用い,さらに過酸化水素添加アルカリ抽出(Ep)を用いるO-Psa-Ep-Psa-Epシーケンスである。広葉樹材リグニン構造の特徴は,リグニンからシリングアルデヒド(Sa)とバニリン(Va)を与えるニトロベンゼン酸化法によって把握した。SaのVaに対するモル比をS/V比とすると,ユーカリ・グロブラス(Eucalyptus globulus)材は四種の中で最も高いS/V比5.81を与え,SaとVaとの合計収率も最も高い3.04mmol/g-ligninであった。一方,アカシア交雑種(Acacia hybrid mangium and auriculiformis)材のS/V比およびSaとVaの合計収率は最も低かった。ユーカリ・グロブラス材からは,白色度90.1% ISO,粘度7.0mPa·s,重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)がそれぞれ3.04×105g/molと5.56×104g/mol:分散性Mw/Mn=5.47,α-セルロース含有量94.2%,灰分0.1%の高品質の溶解パルプが得られた。良い結果が得られたことは,ユーカリ・グロブラス材は他の材よりも高いS/V比で,縮合型リグニン構造が少ないことに起因している。

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