紙パ技協誌
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72 巻, 6 号
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省エネルギー特集 I
  • 鈴木 裕
    2018 年 72 巻 6 号 p. 579-580
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/01
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  • 八木田 正樹
    2018 年 72 巻 6 号 p. 581-587
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル 認証あり

    産業分野では古くから省エネ努力が続けられており,その成果も大いに発揮されているが,国内エネルギー消費量の半分を占めるため,更なる省エネが求められている。本稿では,それらの要求に答えるため,SIEMENS(SIEMENS AG)と安川電機(株式会社安川電機)の新しい技術を用いた製品とそれらをベースにしたYSAD(安川シーメンスオートメーション・ドライブ株式会社)のエネルギー有効活用ソリューションを紹介する。モータでは最新の技術を用いた高効率誘導モータ(SIEMENS),誘導モータに替わる永久磁石を用いた同期モータ(安川電機),貴重な資源である永久磁石を用いない同期リラクタンスモータ(SIEMENS),およびダイレクトドライブモータ(SIEMENS)による減速機レスによる省エネを紹介。ドライブ装置では,付帯設備も含めた力率改善が可能なSINAMICS S120 シリーズコンバータ(SIEMENS),新しい電力変換技術を応用したマトリクスコンバータU1000(安川電機)による省エネ,およびYSADの省エネソリューションとして,蓄電池を応用したハイブリッドクレーンおよび急速充電器などの電力ピークカット,ピークシフトに貢献するYS-I ENECOSを紹介する。

  • 下山 慎吾
    2018 年 72 巻 6 号 p. 588-593
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル 認証あり

    エネルギー多消費型の製紙業において,省エネ活動は環境対策及びコスト削減に向け,有効な手段であり,当工場でも工場全体で活動に取り組み成果を上げてきた。しかしながら活動が進むに連れ,容易に効果を上げられる案件が少なくなり,工場で毎年設定している省エネ目標の達成が近年,厳しい状況にある。

    当工場では省電力,省重油,節水の3項目について省エネに取り組んでいるが,例年達成率が高いのは省電力である。年々インバータ設置スペースに苦慮しながらも狭いスペースを有効活用して工事を進めてきた。2017年度には一部電気室を拡張し,各マシンドライヤーフードの給排気ファン等のインバータ化を実施することで大きなメリットを上げ,省電力達成率は12月までの実績において154%となっている。

    省重油に関しては省電力と比較すると達成率が低く,更なる案件の掘り起しが必要であり,節水に関しては用水が河川水であり,用水単価が安価であることから,費用対効果のある案件が少ない状況ではあるが,社員一丸となって目標達成に向け取り組んでいる。

    本稿では過去3年間で実績が上がった省電力,省重油案件を代表して3件の事例を紹介する。

  • 伊達 宣浩
    2018 年 72 巻 6 号 p. 594-598
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル 認証あり

    秋田工場の省エネルギー活動において,2015年には目標値を大きく下回る結果となった。その状況を打破するために,2016年度は日本ビジネス革新コンサルティング㈱(JBIC)より指導を頂き,ネイガー活動と称する省エネルギー活動を展開した。目標は「工場の前年総エネルギー使用量の3%分の省エネ案件発掘」,月4回の活動で約1年間,工場各部門から選抜されたメンバーが一丸と取り組んだ。

    活動の前半は現状の工程あるいは機器の状況把握,つまりフローシート,マテバラを作成し,その後燃料,電力,水,蒸気,エアの使用量を調査しエネルギー使用量を把握した。後半はその工程や機器の機能状態の分析,設備仕様を振り返り温度や流量,品質等に乖離はないか,エネルギー収支を検討し熱源は有効利用されているか,出入口温度は仕様通りか等を検討し,改善されるべきテーマ素材に気付いたら即座に記録することであった。そして是正のために損失の大きさやエネルギー源,改善の方法により充分な利益をもたらすことを確認して優先順位を決定した。

    検討する際は,集まったメンバーが理解しやすいように手書きの図や写真等を用いて議論したことにより,自部門で気付かない点が発見されるなどお互いに知見が得られたのではと思う。

    活動を通して,ネイガー目標に対しては3.23%となり,秋田工場としての省エネ目標も達成された。

  • 鷲津 真人
    2018 年 72 巻 6 号 p. 599-603
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル 認証あり

    近年,温暖化等の地球環境問題への対策が各国に求められており,日本はパリ協定の約束草案で2030年度のCO2排出量を2013年度比より26%削減することを目標とした。北越紀州製紙新潟工場でもパリ協定の約束草案達成に貢献する為,当工場では省エネプロジェクトを立ちあげた。プロジェクトで実施した中から「新潟工場スチームトラップ診断」及び「新潟工場8号機1次スクリーン高効率化」の2つの事例を報告する。

    新潟工場スチームトラップ診断は,工場構内に多数のスチームトラップが設置されているが,管理が十分で無かった為に蒸気漏洩しているものがあった。そこで,工場構内のスチームトラップを診断した結果,工場構内にはスチームトラップが1,445台あり,その内277台が不良(不良率19.2%),蒸気漏洩量は1.58t/hであった。診断結果をもとに各職場にて不良トラップを取替することで0.3t/hの蒸気ロス削減に繋げた。また,診断したトラップの型式・動作状態を記載した台帳及び配置図を作成することで,今後のスチームトラップ管理がしやすくなった。

    新潟工場8号機1次スクリーン高効率化では,相川鉄工製B-1500型スクリーン用アジテーターをMaxi Agitatorに更新し,さらにプーリー比を変更して回転数をダウンすることで消費電力の削減を図った。新潟工場8号機には1次スクリーンが5台あり,すべてにMaxi Agitator及びプーリー比変更を採用したところ,合計115kWの消費電力削減となった。

  • 青木 孝司
    2018 年 72 巻 6 号 p. 604-610
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル 認証あり

    国内の工場においては,積極的な省エネルギー活動に一貫して取り組んでおり,計画的な設備投資のもと,高効率機器の導入などを採用している。特に,使用エネルギーに占める蒸気用の燃料に占める割合は大きく,蒸気原単位削減の要望が強い為,高効率ボイラやエネルギーの回収設備導入が進んでいる。

    水処理が省エネルギーに寄与できる課題としては,スケール障害防止の対応,ブロー削減に関する対応,復水回収量の向上への対応がある。これらは主に水の純度が低い軟水を給水とする蒸気圧力が2MPa以下の低圧ボイラ設備で,改善の余地が大きい。

    ボイラに付着するスケール(ボイラに供給される水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオン,シリカ,鉄などの成分が析出し,ボイラ内に付着したもの)は,熱交換を阻害するとともに設備での様々な障害の原因となるため,スケールの付着を防止して熱効率や設備の耐久性を維持する水処理薬品が欠かせない。しかし,分散効果のみを有する従来の薬品素材では,ボイラ缶内の硬度成分が薬品の処理能力を超えた場合はスケールとなり,水管に付着したスケールを別途除去処理する必要があった。

    この課題に対して弊社は,スケールの分散だけでなく除去効果を併せ持つ新規素材の開発を行った。新規多機能ポリマー(ドリームポリマー®)はボイラ内のスケール成分を良好に分散させ付着を防止することはもとより,スケールが付着した場合でも素早く,効果的に除去できる特徴を有する。本新規ポリマーは,ボイラの伝熱面を常に清浄な状態に維持し,高効率ボイラの性能維持や安定運転の実現を通じて,各工場の省エネルギーに貢献することができる。

総説・資料
  • 服部 宏安
    2018 年 72 巻 6 号 p. 611-615
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル 認証あり

    GOYEN社(オーストラリア)では世界の約6割の集塵機に各種集塵機機器を提供しているが,20年前に世界で最初に逆洗パルスジェットバルブを開発し,数千のエンドユーザーに提供してきた。エンドユーザーから集塵システムの問題点を直接聴取することで,より良い機器の開発を行ってきたが,2年前より,これらの情報をコンピューター解析し,最適集塵システムをユーザーに無償提案するGOCOシステムの提供始めた。

    永年の経験から最適システムの設計にはバルブなどの集塵機機器の改良だけでなく,エアー量と炉布面積の比率(クロスエアー比)等のシステム全体を見直すことが必要と考えており,これらの解析の処方をGOCOシステムと称している。

    同社では,「解析データシート」の書式に従って必要事項を開示いただくことで,ユーザーに対して最適システムの提案を無償で行っている。

  • 若林 稔文
    2018 年 72 巻 6 号 p. 616-619
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル 認証あり

    ほぼすべてのドクターポジションは,何らかの形で改善できるとされている。ドクタリングに係るコストとして,ドクターブレードに費やされる費用には注目されているが,ドクタリングはドクターブレードやホルダーのコストをはるかに上回るコストに影響している。ドクタリングのコストには消耗品などの目に見えるコストと,不適切なドクタリングによって引き起こされる過度な脱水コスト,ロールカバーやファブリックスの摩耗,断紙などの目に見えないコストがある。これらのコストはドクタリングの最適化により改善することが可能である。

    ドクタリングは各ポジションによって要求されるものが異なるため,最適化の方法についても各ポジションによって異なる。ドクターブレードのライフタイムの向上,エネルギー消費量の削減,走行性の改善などが挙げられ,様々な観点からアプローチすることができる。エアーブレードを使用しているポジションでは,ValDualドクターブレードに置き換えることによりエアーの消費をゼロにすることができ,ドライパートでは,摩擦係数の小さいドクターブレードを用いることにより駆動装置のエネルギー消費量を抑えることができる。また,ドクターブレードの単価は上がるが,ドクターブレードのライフタイムを向上させることにより,年間で考えれば結果的に安価になることもある。このように,各ドクターポジションに合わせた最適化を実施することが重要であると考える。

  • 上藤 丈浩
    2018 年 72 巻 6 号 p. 620-624
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル 認証あり

    当社では,「世界一安くて良い熱・水・環境商品を世界のお客様にお届けしよう」というスローガンのもと,お客さまが抱えている問題を解決する「トータルソリューション」の提案を近年強化している。大型設備投資による省エネも継続して高い需要があるが,低コストで実現できる省エネ事例も年々増加しており,今回は,このような観点から熱関連,コンプレッサ関連,水関連,工場内廃温水関連の省エネ事例について紹介する。

    いずれの場合もエネルギーの「見える化」が重要であり,当社の技術が,少しでも皆様の省エネ案に貢献できれば幸いである。

    ・熱関連:未保温部分の有効的な保温実施計画案,給水タンクから放出されるフラッシュ蒸気を抑え,燃料費を2%削減した。

    ①環境改善事例

    ②独自ボイラ分析装置による,ボイラ発生蒸気の「見える化」で可能になったボイラ運用改善例

    ③ボイラ台数制御の活用例

    ・コンプレッサ関連:電流値を測定し,見えないエアー量を「見える化」にして,コンプレッサ全体の効率的運用や,有用なメンテナンスサイクルを構築できた事例

    ・水関連:クーリングタワーの省エネ事例,水量分析による装置のダウンサイジング事例

    ・廃温水関連:各温度に有効的なシステム

  • 瀧 亮介
    2018 年 72 巻 6 号 p. 625-628
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル 認証あり

    弊社は2014年,インドネシア共和国の最大クラス板紙メーカーであるFajar Paper(以下,FP)からPM8の移設改造プロジェクトを受注した。このPM8プロジェクトは欧州から情報用紙用の中古抄紙機をFPが購入し,段ボール原紙生産用の抄紙機として移設改造するという内容である。

    KEWはこれまでもFPのすべての抄紙機の建設,および運転に携わっており,互いに良好な信頼関係を築いてきた。このような長年の経験と実績を評価され,今回,PM8のエンジニアリングおよびドライエンドの改造工事を受注することができた。これは顧客とともにプロジェクトをまとめる私たちのエンジニアリング力が高く評価された結果であると自負している。

    本報告ではPM8プロジェクトの概要について報告する。

  • ─CRP System;Chlorine Removal Process ─
    福島 健一
    2018 年 72 巻 6 号 p. 629-632
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル 認証あり

    クラフトパルプ回収サイクルにおいて,塩化物とカリウムが系内に蓄積され,濃縮された塩化物とカリウムによってダストの融点が低下し,ボイラーの閉塞,ひいては能力の低下や腐食につながることが知られている。この対策として電気集塵機灰の廃棄をする方法があるが,これは回収サイクル内におけるソーダの損失を意味し,ソーダを補給する費用が増大する。また既存の対応技術としては塩化物,カリウム濃度の低減のため電気集塵機捕集灰を水に溶かし,イオン交換樹脂で処理する方法,冷凍式晶析システムを用いる方法などが存在する。しかしこれらの既存技術は高価な運転コスト等の問題がつきまとい世界中で普及するシステムには至っていない。それらの既存技術よりさらに効率の良い加熱式の蒸発・晶析法を用いた脱塩脱カリ装置CRPTMという技術があり,世界中で実績を積み上げてきた。実設備としてCRPTMが稼働している南アフリカ,Mondi社では,CRPTM稼働後,塩化物濃度の低減が確認でき,ボイラー閉塞の軽減や蒸気発生量の増加等のメリットが確認されている。Mondi社での操業経験を交えて,蒸発・晶析法を用いた脱塩脱カリ装置CRPTMを紹介する。

  • 鈴木 洋平
    2018 年 72 巻 6 号 p. 633-636
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル 認証あり

    ガーレー式などの透気度測定は,一回の測定にかなりの時間がかかる為,製造中の測定ができなかった。その為,立ち上げ時か,製造中にサンプリングした製品の一部をオフライン機で測定する事が一般的であった。

    ACA Systems社(フィンランド)のPermiオンライン透気度計は,抄紙機内に測定ユニットを設置し,リアルタイムに透気度を測定,データ保存する事ができる画期的なシステムである。透気度データは,ガーレー,ベントセン,コレスタなど任意の方式に高速演算して出力する。また,測定データはサーバPC内にSQL形式で保存が可能。データハンドリングも容易に行う事ができる。オンラインで透気度を測定する事により,システム制御や品質管理,作業工数の削減など,さまざまな効果を得る事ができる。

    これまでのロール巻き堅さの測定は,打音方式やシュミットハンマーが主流であった。しかし,これらの方法は測定誤差や測定に時間がかかるなどの問題があった。RoQロール巻き堅さ測定器は,これらの問題を解決した次世代機である。この装置をロールに当てながら幅方向に滑らせるだけで,最小1mmピッチで巻き堅さを測定し,さらにExcel形式で測定データを取出すことができる。

    本稿では,欧米で一般的な装置になりつつあるこれらのシステムについて紹介する。

シリーズ:大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (123)
研究報文
  • Agusta Samodra Putra, Akiko Nakagawa-izumi, Mikio Kajiyama, Hiroshi Oh ...
    2018 年 72 巻 6 号 p. 641-649
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/01
    [早期公開] 公開日: 2017/05/12
    ジャーナル フリー

    Abundant waste agricultural residues such as oil palm empty fruit bunch (EFB) can provide alternative sources of biomass for producing furfural. The aims of this study were to propose a method of preparing furfural and dissolving pulp (DP) from EFB using prehydrolysis with nitric acid, and to examine how the prehydrolysate, which contains xylan, can be used for furfural production. The furfural yield in the nitric acid prehydrolysate was increased to 6.2% of the EFB material weight by dehydration with an acid catalyst. Nitric acid prehydrolysis followed by soda cooking under atmospheric pressure was also applied to the preparation of DP. The obtained pulp was then bleached by using peroxymonosulfuric acid (Psa), chlorine dioxide (D0, D1), and hydrogen peroxide (Ep) in the elementary chlorine-free Psa-D0-Ep-D1 sequence. The pulp demonstrated a brightness of 90.4% ISO and a viscosity of 6.5 cP, which met the National Standard of Indonesia, although the xylan content was a little high and the α-cellulose content was 83.0%.

  • アグスタ サモドラ プトラ, 中川 明子, 梶山 幹夫, 大井 洋
    2018 年 72 巻 6 号 p. 650-657
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル フリー

    アブラヤシ空果房(EFB)などの豊富な廃棄農業残留物は,フルフラールを製造するためのバイオマスの代替供給源を提供することができる。本研究の目的は,硝酸を用いた前加水分解により,EFBからフルフラールと溶解パルプ(DP)を調製することであり,キシランを含む前加水分解物からフルフラールをどのように製造できるかを調べることである。硝酸前加水分解物中のフルフラール収率は,酸触媒による脱水によってEFB材料重量の6.2%に増加した。硝酸の前加水分解に続く大気圧下でのソーダ蒸解によって,DP原料を調製し,得られたパルプをモノ過硫酸(Psa),二酸化塩素(D0,D1)および過酸化水素(Ep)を用いて漂白した。白色度90.4% ISOおよびパルプ粘度6.5cPのパルプが得られ,これらはインドネシア工業規格に適合したが,キシラン含有量がやや高く,α-セルロース含有量は83.0%であった。

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