紙パ技協誌
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75 巻, 3 号
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計装/IoT特集
  • 自動化委員会
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 75 巻 3 号 p. 205
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
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  • 木幡 真望
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 75 巻 3 号 p. 206-210
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル 認証あり

    製造現場で期待されている次世代のソリューションのひとつに予知保全が挙げられる。装置や機器の異常の予兆をいちはやく検知する事で,突発対応を回避しつつ計画メンテナンスに組み込む事ができる。

    深層学習技術の確立により,この分野におけるブレークスルーがもたらされた。すなわち,管理対象であるプラントを動的なモノと捉え,そのダイナミクスをAIが学習してモデル化する事により,プラントの状況に応じた監視が出来るようになったのである。誤解を恐れずに言えば,AI適用以前の予知保全はプラントを静的なモノと捉えた“固定監視”,AI適用以降ではプラントの状況を認識しながら精密な監視を行う“動的監視”と区分できるのではないか。

    本稿では,AIを適用した先端的な予知保全ソリューションとして弊社が展開している「オンライン異常予兆検知システムBiG EYES」について,簡単に紹介する。

    BiG EYESはアズビル株式会社の商標です)

  • 甲木 義人
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 75 巻 3 号 p. 211-218
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
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    近年,各社は競争力強化を目的に,ビッグデータ解析等を利用したデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し,次世代ビジネスモデルの構築を図っている。製紙を含めたプロセス産業も,安全・安定操業,生産性向上,働き方改革のためのDX推進は急務であることは例外ではない。しかしながら,プラント操業においては操業のための重要な記録である操業日誌が手書きやExcel文書等で作成されており,まずは操業現場のデジタライゼーションを推進する必要がある。

    これに対して,当社はプラント操業に関するデータを一括管理できるシステム,PlantLogMeisterを製品化し,その普及を図っている。本システムの導入により,作業効率の高効率化,トラブル解決の迅速化,技術伝承の実現,ひいては操業現場の働き方改革に貢献していくものと考える。

    PlantLogMeisterの基本パッケージである日誌機能を納入したユーザからは,申し送り等の情報共有,班長日誌作成の作業効率,操業ノウハウの継承,懸案事項等の情報管理,安定操業等の面で一定の効果が見られたとの評価をいただいている。

  • ─不確実性の時代の新しいプロジェクト実施手法─
    甲斐 崇
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 75 巻 3 号 p. 219-224
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
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    昨今の新型コロナ感染症の感染拡大に伴う危機的な状況の中でもプロジェクトを継続させ,成功に導くため,ハネウェルが従来から持つ技術と新しい技術を融合させて開発された包括的なソリューションとしてリモートオートメーションプロジェクトサービスを紹介する。

    具体的にはプロジェクトで通常実施する設計・制作・試験および他社システムとの統合作業において,クラウドエンジニアリングやリモート技術等の新しい技術を組み合わせたユニークなサービスとなる。リモート技術を用いる際にはセキュリティの担保が大前提になるが本サービスは厳重なセキュリティレイヤからなる非常に強固なシステムをベースとしており,業界標準およびハネウェルのサイバーセキュリティ仕様に完全に準拠したものとなっている。本サービスを用いることでプロジェクトの品質を向上させ,より短納期を実現し,ハネウェルの持つグローバルなナレッジおよびノウハウを活用しつつ,従来よりもコストをかけずに,現在の様な厳しい環境下でもプロジェクトを継続して実施することが可能となる。このサービスが今後のハネウェルの標準的なプロジェクト実施手法になって行くと考えている。

    本稿ではリモートオートメーションサービスについて,⑴従来のプロジェクト実施手法との違い,⑵仮想エンジニアリングプラットフォーム,⑶リモート環境での立会試験およびサポートツール,⑷リモートサイトコミッショニングの4つのポイントを説明するとともに,その利点について述べる。

  • 前川 卓彌, 渡邉 竜平, Soon Hin Loo
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 75 巻 3 号 p. 225-230
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
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    スマートファクトリーとは,インダストリー4.0を具現化した先進的な工場を指す。具体的には,あらゆる操業・品質データをIoTを活用して収集することで『見える化』を実現し,これらデータの因果関係を解析・活用することで『新たな付加価値を生み出せる工場』という定義となる。

    近年あらゆる産業でスマートファクトリー化が加速している中で,製紙産業がやや遅れをとっていることは否めない。これからの製紙産業に予想される,マーケット縮小や更なるマーケットニーズの移り変わり,人材確保の困難化や省力化,遠隔での工場マネジメントなどに対応するために,スマートファクトリー化は必須であると言える。

    弊社のdataPARCは,DCSやBM計,Excelに入力された操業・品質データといった異なる種類のデータを統合し,あらゆる階層が必要とする情報の『見える化』を実現するシステムである。具体的には,

    1)経営層や本社には,各工場の生産状況やエネルギー原単位・生産損失の原因分析といった,経営判断に直結するデータをリアルタイムで提供することが可能

    2)工場幹部には,各マシンの生産状況・品質・コストをリアルタイムで提供し,生産日報・月報を自動作成・自動配信することが可能

    3)操業スタッフやオペレーターには,品質変動と操業データの相関,操業・品質トラブルの迅速な原因把握,データ収集に要す時間の圧倒的な削減を提供することが可能

    操業・品質・コストといったデータが異なるデバイスやリソースから提供される現状では,データ収集・解析に膨大な時間を要し,迅速で的確な判断の妨げとなっている。本稿では,ユーザーフレンドリーで誰が見てもわかりやすい情報を,リアルタイムで且つ手軽に提供することができるデータ統合・見える化システム,dataPARCについて紹介する。

  • ─YOKOGAWA AI 関連製品による操業改善提案─
    藤田 和貴, 佐藤 恵二
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 75 巻 3 号 p. 231-238
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル 認証あり

    お客様には,メンテナンス,カイゼン活動,トラブルシューティングなど,多くの使命がある。お客様は日々の使命を遂行するだけでなく,製造環境の変化にも対応する必要があるため,製造現場ではより柔軟で堅牢な運用が求められる。このような問題を解決するためには,DCSの発明と同等のプロセス管理手法のパラダイムシフトが必要である。

    本論文では,製造環境の変化に対応する柔軟性と堅牢性を備えた新しい生産システムを提案する。このホワイトペーパーでは,この新しい本番システムを実現するためのビジネスモデル,機能モデル,およびシステムアーキテクチャの概要説明と日本製紙様と行った「仮説検証型」ワークショップの実施例を紹介する。

  • ─AIを用いた設備診断と操業支援─
    熊谷 敦弘
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 75 巻 3 号 p. 239-242
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル 認証あり

    日本製紙石巻エネルギーセンター㈱石巻雲雀野(ひばりの)発電所では設備トラブルのロス削減・回避を目的としてAIを用いた予兆感知システムを導入した。2020年2月の本運用開始後1年が経過する中で,配管詰まり傾向の事前感知や制御改善への気づきへ役立つなど,操業支援のツールとして使用している。本稿ではシステム導入にあたっての構想,導入の経緯,システム構成および活用事例を紹介する。

    今回のシステム導入にあたってはメーカーサポートを受けながら我々ユーザーでの手でAI学習,予測モデルの作成,チューニング等のソフトウエアエンジニアリングを行った。発電プラントを支える操業支援のツールとしてこのシステムを活用し続けるには,予兆感知精度の維持が不可欠であることから,エンジニアリング技術を習得できたことは今後に役立つものとなる。

    操業現場では,少人数監視体制の中,多岐にわたる機器の運転監視を求められており,この予兆感知システムを新たな“AIを利用した監視の目”として今後も利用していく

  • 近藤 央理
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 75 巻 3 号 p. 243-246
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
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    大王製紙㈱川之江工場は2018年10月に衛生用紙の生産拠点として最新設備を備え再稼働した。製品搬送の自動化による省力化・高効率化を目的とし,従来設備の製品ハンドリングの問題点を解決するよう設備選定を行った結果,Elettric80社(伊)の無人大型クランプ車(以下LGV)を使用した自動搬送設備を採用した。生産管理システム,出荷管理システムと製品情報を連携させる事で製品に傷を付けずに確実に目的の場所に搬送を行う事が可能となった。LGVはセーフティーセンサーとバンパースイッチで2重の接触事故対策が施されており,自動速度制御および自己診断機能と合わせて万全の安全対策を行っている。オペレーターはモバイルタブレットによって遠隔操作でLGVへの搬送指示,運行状況や異常状態の確認を行う事ができ作業負担の軽減に繋がっている。リモートメンテナンスを採用しメーカー(伊)が直接トラブルの状況確認やプログラム改造できる体制とし,設備導入後2年半,大きなトラブルも無く稼動している

総説・資料
  • 舟井 一浩
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 75 巻 3 号 p. 247-250
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル 認証あり

    弊社ではメンテナンスサービスを含めた予備品・消耗品の供給のサービス向上に注力しており,本稿ではその中で特に近年話題になっているデジタル技術を活用したライフサイクルマネジメントのツールであるWebShop,SmartBasket,OnCall.Videoについて紹介させて頂く。

    WebShopは24時間いつでも必要な時に,約20秒程度で部品の見積書や工場出荷情報を入手し,部品の発注まで可能なブラウザベースのEコマースプラットフォームである。部品の特定のための検索機能や各機器のマニュアル,注文履歴や見積履歴にも端末を選ばずにURLより簡単にアクセスできる。さらに,機器の資産管理ツールであるOnCare Asset,PM portal,SmartBasket等の各種ソフトとWebShopとの連携により,シームレスに必要な各種部品の価格照会及び発注が可能となっている。

    またOnCall.Videoを用いれば専門の技術者が世界中の離れた場所にいながら,リアルタイムで現場状況を時間遅れの少なく品質の高い動画で確認することができる。サプライヤまたは社内の知見を画面と現場情報を共有することで迅速に活用し,状況判断・アドバイスによって現場を遠隔サポートするツールである。

  • ─制御性改善の新しい取り組み─
    豊田 敦
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 75 巻 3 号 p. 251-255
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル 認証あり

    紙パルプの製造工程は,複数の連続するプロセスで構成された複雑なプラントである。そのため管理部門もプロセス毎に存在している。この様な複雑なプラントの場合,制御ループも非常に多くなるため制御性改善についても管理部門毎での取り組みで終わることが多い。それによりプラントの効率改善に限界が生じている。この様な複数の工程から構成されるプラント全体の改善を行うには,膨大なデータを把握した上で,プロセスに存在する要因を特定し,プロセス間の干渉も考慮して最適化を行う必要がある。弊社ではこの課題を解決する為の,連携最適化ソリューションサービスを2019年より開始した。

    同サービスでは,まず現場経験豊富なエンジニアが課題ヒアリングを行い,次にプラントビックデータを用いて要因を特定する。特定した要因に対し最適な制御性改善を提案し,合わせてプロセスシミュレーション技術で改善効果を確認する。事前に効果を確認できるので,安心かつ確実にプラントの操業改善を実施することができる。本稿では同サービスを板紙工程に適用する場合の代表的な手法を紹介する。

  • 矢口 喜祥
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 75 巻 3 号 p. 256-260
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル 認証あり

    大きな事故が発生する背景には小さなヒヤリ・ハットの積み重ねがあり,5Sの徹底,改善活動,ヒヤリ・ハット報告の徹底,定期的な安全パトロールの実施を通じて,重大事故に繋がる小さなリスクを未然に排除していかねばならない。一方,作業の種類によっては業務に使用する機材に安全性を依存している為,作業者が機材の操作に十分に注意を払っても,使用する機材起因の事故発生リスクを減らせないものがある。ゼロ災害を目指すためには,安全性の懸念のある設備の改善・更新が必要になり,費用の発生する可能性もある。しかし,プロセスが安全になれば生産性と労働条件は改善する可能性が非常に高く,言い換えれば,効率と安全は密接に関連しており,安全は利益を生むとも言える。

    今回紹介する機器の使用パートは,ワインダ(クイックチェンジ式トップスリッタホルダ)・抄紙用具の掛け入れ(シームフェルト/通路の改造/抄紙用具引き入れユニット)・通紙装置と多岐に渡るが,いずれの機器も日々の操業で起こり得る危険な作業の事故リスクを低減させる。本稿では,近年の安全に対する意識と需要の高まりを受けて開発された,作業者の安全性と作業性を大きく向上させる機器とその概要を紹介する。

  • 第2部 簡牘から紙へ―中国における発明―
    飯田 清昭
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 75 巻 3 号 p. 261-265
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル 認証あり

    中国では,前11世紀頃から文字が使われだし,歴代王朝は,竹簡・木簡(併せて簡牘と呼ぶ)に執拗に記録を残した。前5世紀頃より,哲学(孔子,孟子),文学が生まれて,それらは竹簡に記録され,その上で議論が交わされ,簡牘は文明の発展を支えた。ただし,竹簡の巻き物は嵩張り,個人の知識の量は,荷車を単位として,その台数で表現された。

    そして,蔡倫が105年に紙を発明したとされている。それまでに,漁網,織物等の廃棄物から紙がつくられていたが,蔡倫は,楮,大麻の靭皮を原料として,上質の紙を製造する技術を開発,その普及に尽くした。この紙が,軽さ,記録密度の高さ,そして,多分,コストメリットから,時間をかけて簡牘に代わり,唐,宋代の文明の発展を引き出す。

    社会が拡大し,より文明化すると,紙の需要が増加し,原料が不足しだした。これを補ったのが竹で,後に,楮に取って代わった。竹は,精錬発酵と木灰による煮沸を,楮以上に繰り返すことで,叩解によりパルプになる。原料の豊富さから大量生産が可能で,コスト的に楮に競争できたであろう。竹パルプは楮パルプより短繊維で,平滑で地合の良い紙に仕上がる。宋代から木版印刷が普及し,明,清と最盛期を迎える。この印刷需要が,より適した竹紙への転換を進めたのであろう。

シリーズ : 大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (138)
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