自然発症糖尿病モデルであるWBN/Kobラットに代表的な駆〓血薬である桂枝茯苓丸と当帰芍薬散を長期間投与し, 血管機能とタンパク発現に及ぼす影響を検討した。方法は, WBN/Kobラット (雄, 24週令) を18週間飼育し糖尿病発症を確認した後, 対照群, 3%桂枝茯苓丸 (KB) 群, 3%当帰芍薬散 (TS) 群の3群に分け, さらに25週間飼育した。飼育後, 胸部大動脈を摘出しOrgan bath法を用いacetylcholine (Ach) による血管弛緩作用, xanthine/xanthine oxidase (X/XOD) 投与による血管収縮作用等を検討した。同時に, 血液流動性, 血漿脂質, NO代謝物等の測定とSELDI-TOF-MSによる血漿プロテオーム解析を施行した。結果は, 対照群とKB, TS群の3群間において, 体重と血糖値に有意な差を認めなかった。Achによる内皮依存性血管弛緩率はKB群で対照群に対し有意に弛緩率の増加を認めた。X/XOD投与による血管収縮率はTS群で, PLA
2投与による血管収縮率はTS, KB群の両群で対照群に対し収縮率の減少を認めた。血液流動性はTS群で対照群に対し改善傾向を認め, NO代謝物はKB, TS群の両群で対照群に対し有意に減少した。血漿プロテオーム解析により, 対照群に比較しKB群では5個, TS群で8個のタンパク質の有意な変動を認めた。以上のことから, 2種類の代表的な駆〓血薬は, 一部異なる作用機序で血流改善に影響を及ぼし, 発現するタンパク質にも差異が認められた。作用機序とタンパク質発現との関連は今後検討を要するが, これらの多成分系の方剤による生体の複雑な反応性の差異が「証」の成立に影響していると考えられた。
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