Journal of Traditional Medicines
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22 巻, 4 号
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Review
Regular Article
  • 木村 善行, Maho SUMIYOSHI, Masayuki TANIGUCHI, Kimiye BABA
    2005 年 22 巻 4 号 p. 222-227
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
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    エイコサペンタエン酸 (EPA) の腫瘍増殖に対する報告は多数ある。EPAは非常に不安定であることはよく知られていることから, 加速試験において, EPAエチルエステル (原料物質) から生じた副産物 (EPA誘導体, EPADと略) の抗腫瘍効果が元のEPAエチルエステルよりも低下することが考えられた。しかしながら, EPAエチルエステル処理したルイス肺癌 (LLC) 細胞でのO2-産生は, EPAD処理したLLC細胞と比較すると同じであった。我々は, 相対湿度60±5%, 温度37℃, 30日間保存条件下で, 未反応のEPAエチルエステル (原料物質), EPA (遊離体) 以外に2種類のEPAエチルエステル副産物 (EPA誘導体, E-1およびE-2) を得た。E-1およびE-2は, 1H-, 13C-NMRおよびMSスペクトル解析から, 各々EPAエチルエステルの2量体およびEPAヒドロキエチルエステルであると同定した。E-1およびE-2はLLCに対するDNA合成阻害作用は, EPAエチルエステル (原料物質) よりも強かった。EPAエチルエステル, E-1およびE-2は0.03から3.3μg/mLの濃度において, LLC細胞からのO2-産生を増加し, E-1のO2-産生効果はEPAエチルエステルよりも強かった。E-1およびE-2のマトリゲル誘導血管新生に対する阻害効果はEPAエチルエステルよりも強かった。これらの実験事実は, 加速試験によってEPAエチルエステル (原料物質) から生じたEPAエチルエステル2量体およびEPAハイドロキシエチルエステルがEPAエチルエステルと同様に抗腫瘍剤の候補化合物の一つであることを示唆している。
  • Yukie KUMAGAI, 日向 須美子, Masashi HYUGA, Koji WATANABE, Toru KAWANISHI, T ...
    2005 年 22 巻 4 号 p. 228-236
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
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    漢方薬は, 更年期症候群の種々の症状を緩和するためにホルモン補充療法 (HRT) の代替療法として用いられてきた。しかし漢方薬自身にエストロゲン様活性があるか否かについては明確にされていなかった。我々は, 漢方薬のエストロゲン様活性を評価するために, MCF-7細胞を用いた高感度ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイを確立した。更年期症候群および各種婦人科疾患の治療に使用される漢方薬25種についてそのエストロゲン様活性を測定した結果, 当帰芍薬散 (TJ-23) を除く24種の漢方薬にエストロゲン様活性が検出された。漢方薬1日投与量あたりのエストロゲン様活性をエストラジオール (E2) 量として換算したところ, 葛根湯 (OMRC-K1), 葛根湯 (TJ-1) 及び葛根紅花湯 (OMRC-K2) のエストロゲン様活性はそれぞれ3.2, 1.5, 及び1.0μgであり, 他の漢方薬の活性は150ng以下と予想外に低い値を示した。これらの24種の漢方薬のエストロゲン様活性は, 西洋医学のHRTに用いられるエストロゲン量 (625μg/日) と比べても極めて低かった。次に, これらの漢方薬中で最も活性の高かった葛根湯 (OMRC-K1) のエストロゲン様活性発現機構を調べた結果, エストロゲンと同様にエストロゲン受容体及びエストロゲン応答配列を介して活性発現していることがわかった。以上の結果から, 漢方薬はエストロゲン様活性を有するが, その活性は低いため, 他の作用機序を介して臨床効果を発揮している可能性があり, HRTに比べて安全性が高いであろうことが予想された。今後, 漢方薬の長期投与の安全性を確保するために, 漢方薬投与後の血中のエストロゲン様活性の測定及び, ホルモン感受性癌に対する効果の解析等の検討を行う必要がある。
  • 後藤 博三, Chizuru KIGA, Takako NAKAGAWA, Keiichi KOIZUMI, Hiroaki SAKURAI ...
    2005 年 22 巻 4 号 p. 237-243
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
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    自然発症糖尿病モデルであるWBN/Kobラットに代表的な駆〓血薬である桂枝茯苓丸と当帰芍薬散を長期間投与し, 血管機能とタンパク発現に及ぼす影響を検討した。方法は, WBN/Kobラット (雄, 24週令) を18週間飼育し糖尿病発症を確認した後, 対照群, 3%桂枝茯苓丸 (KB) 群, 3%当帰芍薬散 (TS) 群の3群に分け, さらに25週間飼育した。飼育後, 胸部大動脈を摘出しOrgan bath法を用いacetylcholine (Ach) による血管弛緩作用, xanthine/xanthine oxidase (X/XOD) 投与による血管収縮作用等を検討した。同時に, 血液流動性, 血漿脂質, NO代謝物等の測定とSELDI-TOF-MSによる血漿プロテオーム解析を施行した。結果は, 対照群とKB, TS群の3群間において, 体重と血糖値に有意な差を認めなかった。Achによる内皮依存性血管弛緩率はKB群で対照群に対し有意に弛緩率の増加を認めた。X/XOD投与による血管収縮率はTS群で, PLA2投与による血管収縮率はTS, KB群の両群で対照群に対し収縮率の減少を認めた。血液流動性はTS群で対照群に対し改善傾向を認め, NO代謝物はKB, TS群の両群で対照群に対し有意に減少した。血漿プロテオーム解析により, 対照群に比較しKB群では5個, TS群で8個のタンパク質の有意な変動を認めた。以上のことから, 2種類の代表的な駆〓血薬は, 一部異なる作用機序で血流改善に影響を及ぼし, 発現するタンパク質にも差異が認められた。作用機序とタンパク質発現との関連は今後検討を要するが, これらの多成分系の方剤による生体の複雑な反応性の差異が「証」の成立に影響していると考えられた。
  • 徳山 ことみ, 梅野 雅道, 岡村 信幸
    2005 年 22 巻 4 号 p. 252-256
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
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    A study of glycyrrhizin metabolism using rat fecal suspensions showed that glycyrrhizin consumption significantly activated glycyrrhizin metabolism, with glycyrrhizin consumption significantly elevating glycyrrhizin metabolism in some rats (responders) but not in others (nonresponders). Since intestinal microflora are believed to be responsible for the difference between responders and nonresponders, an attempt was made to identify those factors associated with the response to glycyrrhizin consumption by investigating the effects of long-term consumption and fasting on glycyrrhizin metabolism. The results showed that long-term glycyrrhizin consumption and fasting caused nonresponder rats to become responders. Since fasting was the most significant factor in the response to glycyrrhizin consumption, fasting appears to be one of the major facilitators of intestinal metabolism of glycyrrhizin. Given that this noninvasive and convenient metabolic study could ascertain the metabolism of prodrugs such as glycyrrhizin, the technique could also be useful for identifying responders to herbal and Chinese medicines. Furthermore, the relationship between the response to glycyrrhizin consumption and pseudoaldosteronism was investigated by comparing urinary potassium and blood pressure, but no significant differences in these parameters were observed between responders and nonresponders.
News Letter
  • SUBEHAN, Jun-ya UEDA, Hiroharu FUJINO, Faisal ATTAMIMI, 門田 重利
    2005 年 22 巻 4 号 p. 244-251
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
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    沈香は東南アジアの熱帯雨林で採集される樹脂を多く含む心材で, 伝統的・宗教的儀式などの香料として珍重されている。我々は, インドネシアの南スラウェシ州と東カリマンタン州における沈香の採集, 評価・分類や取引, 栽培等の現状について, これらの仕事に携わっている採集者, 商人, 政府の役所 (林業省) を対象に現地調査した。沈香は非常に高価であることから, 森林の傍に居住する人々は生活のための収入源の一つとして沈香を採集している。また, 地域ごとに沈香の品質に関して異なる等級分類と価格相場があり, それらは外観的な色, 臭覚, 比重によって経験的に行われていた。世界的な需要増加にともない, 沈香資源は乱獲による枯渇が危惧されている。基原植物であるAquilaria属植物の資源保護のため, 沈香原木の栽培が実施されている。また, 栽培された沈香原木に種々の菌類を植菌し感染させることによって樹脂を含む香木へと人工的に誘導することも試みられており, その一部が成功している。この計画はインドネシア政府の研究によって支援されており, 沈香を栽培している採集者を対象にトレーニングが行われている。
  • 西田 清一郎, 佐藤 広康
    2005 年 22 巻 4 号 p. 257-262
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/17
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    We conducted the attitude survey in order to investigate medical student's opinion about Kampo medicine among the first- and second-year medical students in 2004 and the second- to fifth-year medical students in 2003. The number of students who answered the questionnaires was 68 in first-year, 58 in second-year of 2003, 39 in second-year of 2004, 72 in third-year, 33 in fourth-year and 23 in fifth-year medical students. As a results, 86.7% of all students possessed a great interested in Kampo medicine. The students expect that Kampo medicine exerts different effectiveness from western medicine. And this expectance would take the interest to Kampo medicine. On the other hand, for 64.1% of the students who answered they had no interest in Kampo medicine, the cause was their own little knowledge. The lectures about Kampo medicine are exerted for fourth-year students in Nara medical university. The 4th year students understand the adverse effects. They also understand that the lectures are needed absolutely in university and the knowledge for Kampo medicine will become more important in future. These results suggest that it is important to continue more lectures to provide adequate knowledge about Kampo medicine for undergraduate students.
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