Journal of Traditional Medicines
Online ISSN : 1881-3747
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ISSN-L : 1880-1447
24 巻, 5 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
Review
  • Michihiro FUJIWARA, Nobuaki EGASHIRA, Kenichi MISHIMA, Katsunori IWASA ...
    2007 年 24 巻 5 号 p. 149-155
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/28
    ジャーナル フリー
    これまで我々が行ってきた当帰芍薬散のアルツハイマー病や脳血管性障害に関する基礎研究を概説した。 当帰芍薬散は抗コリン薬による空間記憶障害を改善し, アセチルコリン機能を亢進する。 我々はこの作用における活性成分の探索を行い, ブタノール画分に含まれるベンゾジアゼピン受容体インバースアゴニストである Ang-S-1 であることを見出した。 さらに, 我々は当帰芍薬散が背側海馬におけるアセチルコリン遊離や脳血流を増加し, アルツハイマー病の原因蛋白であるアミロイドβ蛋白による神経障害を保護することも明らかにした。 一方, アルツハイマー病や脳血管性障害の動物モデルの検討において, 当帰芍薬散は繰り返し脳虚血ラットにおけるアポトーシスを伴った空間記憶障害を虚血後の投与によって予防することやアミロイドβ蛋白を背側海馬に注入した卵巣摘出ラットにおける空間記憶障害およびアセチルコリン遊離の低下を予防することも我々は証明した。 以上, 当帰芍薬散はアルツハイマー病や脳血管性障害の動物モデルに対して神経活性や神経保護作用を有しており, これらの疾患の治療に有用であることが考えられた。
Regular Article
  • Hitoshi HORIE, Yuichi FUJII, Kouji KATABAMI, Masanori IWAMA, Akira YAM ...
    2007 年 24 巻 5 号 p. 156-163
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/28
    ジャーナル フリー
    弱毒ポリオワクチンウイルスは, ヒトの消化管細胞等で増殖する過程において毒力復帰変異を起こし易く, この変異ウイルス (VDPV) がワクチン関連ポリオ麻痺症例 (VAPP) 発症の原因になるとともに、 環境中に排泄されることでポリオの新たな流行を引き起こし, 問題となっている。 我々はこれらの問題を解決する目的で, 2種類の和漢薬エキス (八味地黄丸, 人参養栄湯) のポリオワクチンウイルスの毒力復帰変異に対する抑制効果について検討を行った。 両エキスは細胞やウイルスの増殖性に対して, それぞれ至敵濃度 (0.25mg/mL, 0.5mg/mL) で使用する限り阻害することはなかった。 ワクチンウイルスを至敵濃度の各エキスとともにヒトの消化管由来細胞を用いて継代培養を行い, 各継代ウイルス中に含まれる毒力復帰変異ウイルスの含有率を調べたところ, 人参養栄湯エキスとともに培養したウイルスでは, エキス無添加で培養したウイルスと比べて明らかに変異ウイルスの含有率が低かった。 この変異抑制効果は八味地黄丸エキスでは見られなかった。 人参養栄湯のような和漢薬は, VDPV やVAPP の問題の解決や, WHO が現在進めている世界規模でのポリオ根絶計画に大いに貢献することが期待される。
  • Pornpen PRAMYOTHIN, Hatairuk TUNGKASEN, Somlak POUNGSHOMPOO
    2007 年 24 巻 5 号 p. 164-167
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/28
    ジャーナル フリー
    This study was undertaken to investigate the hepatoprotective activity of Eclipta prostrata LINN. (EP) in ethanol induced rat hepatic injury. In the in vitro study, EP (0.1, 0.2, 0.3 mg/ml) increased % MTT reduction and decreased the release of transaminases (ALT and/or AST) in rat primary cultured hepatocytes being treated with ethanol. Hepatotoxic markers studied in rats included serum transaminases (ALT and AST), serum triglyceride (STG), hepatic triglyceride (HTG), TNF-α and IL-1β together with histopathological examination. Pretreatment of rats with EP at oral dose of 10, 20, 30 mg/kg and silymarin (a reference hepatoprotective agent) at 5 mg/kg 4 h before ethanol (5 g/kg, p.o.) decreased the ethanol induced levels of ALT and/or AST. The 30 mg/kg EP dose gave the best result similar to SL. Treatment of rats with EP (30 mg/kg/day) or SL (5 mg/kg/day) for 7 days after 21 days with ethanol (4 g/kg/day, p.o.) enhanced liver cell recovery by bringing the levels of ALT, AST and IL-1β back to normal. Histopathological observations confirmed the beneficial roles of EP and SL against ethanol induced liver injury in rats. Possible mechanism may involve their antioxidant activity.
  • Hidenori ITO, Sumiko HYUGA, Masashi HYUGA, Koji WATANABE, Tetsuro OIKA ...
    2007 年 24 巻 5 号 p. 168-172
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/28
    ジャーナル フリー
    われわれは, 麻黄湯を経口投与したマウスの血清が高転移性マウス骨肉腫細胞の運動能を抑制すること, また, がん転移モデルマウスを用いた解析で, 麻黄湯の経口投与により肝転移が抑制されることを初めて見出した。 麻黄湯を臨床応用するためには, 麻黄湯がヒトのがん細胞に対して作用するのかどうかを明らかにする必要がある。 そこで本研究では, ヒト血清を用いたヒトがん細胞の運動能測定法を新たに確立し, ヒト血清により誘導されるヒトがん細胞の運動能に対する麻黄湯の効果について解析した。 ヒト乳がん細胞株 MDA-MB-231細胞の運動能は, ヒト血清濃度依存的に誘導され, 1 % 血清で最も強く誘導された。 この血清濃度では, 細胞障害作用を示さなかったことから, 運動能測定法には 1 % ヒト血清を用いることにした。 この測定法を用いて, ヒトがん細胞の運動能に対する漢方薬の効果を解析した。 麻黄湯は添加濃度依存的に MDA-MB-231細胞の運動能を抑制し, 100μg/ml の濃度で83 % 抑制した。 しかし, 比較方剤として用いた十全大補湯と四君子湯は, がん細胞の運動能に影響を与えなかった。 また, 6.25μg/ml から100μg/ml の濃度において, 麻黄湯はがん細胞の増殖に影響を与えなかったことから, 麻黄湯による運動能の抑制は, 細胞障害によるものではないことが明らかになった。 これらの結果から, 麻黄湯がマウスのがん細胞だけでなく, ヒトのがん細胞の運動能も抑制することが明らかになり, 麻黄湯は, ヒトのがん転移を抑制する可能性があることが示唆された。
Short Communication
  • Teruhiko MAKINO, Megumi FURUICHI, Hirokazu WATANABE, Yoko YOSHIHISA, T ...
    2007 年 24 巻 5 号 p. 173-175
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/28
    ジャーナル フリー
    アトピー性皮膚炎は痒みと湿疹病変を伴う慢性炎症性疾患であり, その急性期には皮膚病変内に多くの Th2 細胞の浸潤がみられる。 TARC は CC ケモカインのひとつで, この Th2 細胞に対して選択的な遊走活性を持つ。 また, アトピー性皮膚炎患者では血清 TARC 値が正常と比較し有意に上昇しており, さらに重症度と相関することが知られている。 一方, 駆瘀血剤のひとつである桂枝茯苓丸は, これまで主に血栓症や動脈硬化症の患者の治療に用いられてきた。 今回我々はアトピー性皮膚炎患者における疾患活動性と TARC 産生に対する桂枝茯苓丸の作用について検討した。 36名のアトピー性皮膚炎患者に4~6週間桂枝茯苓丸を投与し, 投与前後で SCORAD index, VAS score を計測しその効果を評価した。 また同時に血清 TARC 値も測定した。 その結果, 桂枝茯苓丸内服前に高値であった SCORAD index, VAS score は, 内服後には有意に低下していた。 また血清 TARC 値も投与前は高値であったが, 内服後は有意に低下していた。 以上の結果より, 桂枝茯苓丸はこれまで知られていた作用に加え TARC 産生を抑制する可能性が示唆され, アトピー性皮膚炎など Th2 ケモカインが関与する炎症性疾患に対して有用な治療法になりうることが期待された。
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