Journal of Traditional Medicines
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25 巻, 5+6 号
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Regular Article
  • Chizuru KIGA, Hirozo GOTO, Hiroaki SAKURAI, Kazuko HAYASHI, Hiroaki HI ...
    2008 年 25 巻 5+6 号 p. 125-132
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    脳卒中易発症自然発症高血圧ラット (SHRSP) を用いて, 脳卒中発症と生存率ならびに脳卒中発症前後の血漿蛋白の発現に及ぼす漢方薬の効果を検討した。 方法は 7 週齢の雄の SHRSP 32 匹を対照群 (蒸留水を自由飲水), 黄連解毒湯群 (0.3%黄連解毒湯エキス水溶液を自由飲水), 五苓散群 (0.3%五苓散エキス水溶液を自由飲水), 七物降下湯群 (0.3%七物降下湯エキス水溶液を自由飲水) の4群に分け, 20週齢まで飼育した。 12と14週齢時に血圧を測定し, 1 週間毎に体重測定と尾静脈からの採血を実施した。 血液検体は血漿プロテオーム解析を施行した。 結果は, 脳卒中の発症後に認められる体重減少に関して, 対照群は14週齢以後体重減少を認めたが, 黄連解毒湯群, 五苓散群, 七物降下湯群は, 20週齢の時点で体重減少を認めなかった。 収縮期血圧は14週齢では4群間で差を認めなかった。 また, 生存率は, 黄連解毒湯群, 五苓散群, 七物降下湯群で対照群に比べて有意な改善を認めた。 血漿蛋白発現の解析では m/z (質量/荷電) 3,000-30,000の間で, 対照群で脳卒中の発症に伴って変動するピークを15個認めた。 特に脳卒中発症後に m/z 9,330, 9,480, 9,700のピークは著しく減少した。 これらのピークは Western blot 法によりハプトグロビンであることをすでに明らかにしている。 一方, これらのピークは漢方薬投与群で減少が抑制された。 以上のことから, 黄連解毒湯, 五苓散, 七物降下湯は, 血圧への関与以外の作用機序で, SHRSP の脳卒中発症を抑制し, 脳卒中発症に関連する蛋白成分に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
  • Chiyo MATSUSHITA, Hiroyuki MIZUGUCHI, Hitoshi NIINO, Yuko SAGESAKA, Ke ...
    2008 年 25 巻 5+6 号 p. 133-142
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    ヒスタミンはアレルギー反応における主要メディエーターである。 近年緑茶の抗アレルギー効果が報告されているがヒスタミンシグナルにおける緑茶の効果については明らかでない。 我々は toluene-2, 4-diisocyanate (TDI) 感作により作成した鼻過敏症モデルラットを用いて TDI 発作誘発に伴う鼻粘膜ヒスタミン H1 受容体 (H1R) 及び Th2 サイトカイン mRNA 上昇への緑茶の効果を検討した。
    緑茶抽出液を 3 週間連日投与することにより TDI 誘発による鼻粘膜 Th2 サイトカイン mRNA レベル上昇が有意に抑制され H1R mRNA レベルも抑制傾向を示した。 抽出液をカラムクロマトにより分画し, 各画分における効果を検討したところ EGCG が主要成分である TOYOPEARL HW40EC カラム80% ethanol 溶出画分に RBL-2H3 細胞の抗原抗体刺激による Th2 サイトカイン mRNA 上昇の抑制効果が認められた。 EGCG は濃度依存的に IgE 刺激による IL-4 mRNA レベルの上昇及び PMA 刺激による H1R mRNA レベルの上昇を抑制した。 鼻過敏症モデルラットにおいても EGCG の 3 週間連日投与によりくしゃみ回数が減少し TDI 誘発による H1R 及び IL-4 mRNA 上昇が抑制された。 以上の結果より EGCG は鼻過敏症モデルラットの H1R および IL-4 遺伝子発現を抑制することにより IL-4 シグナルだけでなくヒスタミンシグナルも抑制し鼻過敏症症状を軽減することがわかった。
  • Qi ZHAO, Kinzo MATSUMOTO, Hideko OKADA, Hiroyuki ICHIKI, Iwao SAKAKIBA ...
    2008 年 25 巻 5+6 号 p. 143-151
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    Chrysanthemum flower is a herb included in several Kampo formulae such as chotosan. In this study, we investigated the effects of Chrysanthemum flower produced in Hubei (K1) and Guangdong (K2) provinces in China on the blood pressure and expressions of genes encoding nitric oxide synthase (NOS) and muscarinic receptor subtypes in the brain, using stroke-prone spontaneously hypertensive rats (SHR-SP). Administration of test drugs [K1 and K2 extracts: 1 - 2 g (dried herb weight)/kg/day, p.o.; nicardipine (NIC); 100 mg/kg/day, p.o., once daily for 4 weeks] was started when the average blood pressures of the animals reached ≧ 170 mmHg. K1 and K2 (2 g/kg/day), as well as NIC (100 mg/kg/day), produced a significant decrease in the average blood pressure without affecting the heart rate during the 4-week period of drug administration; however, the blood pressures of the drug-treated groups returned to the vehicle-treated control level within a 2-week washout period.
    Stroke-associated symptoms and changes in gene expression of some hypertension-related biomarkers in the brain were assessed in SHR-SP after re-starting drug administration. K1 (1-2 g/kg/day), K2 (1-2 g/kg/day), and NIC (100 mg/kg/day) significantly reduced the incidence of stroke-associated symptoms in SHR-SP. Moreover, the expression levels of genes encoding eNOS and nNOS, and M3 and M5 muscarinic receptors, but not those of genes encoding iNOS and M2 and M4 muscarinic receptors in the brain were significantly increased by K1 (1 g /kg/day), K2 (2 g /kg/day), and NIC (100 mg/kg/day). These results suggest that Chrysanthemum K1 and K2 exhibit antihypertensive effects in a SHR-SP model and that the elevation of genes for NOS systems and M3 and M5 muscarinic receptors is relevant to the antihypertensive effects of this herb.
  • Sowmya K S, Syed Mohammed Basheeruddin Asdaq
    2008 年 25 巻 5+6 号 p. 152-159
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    The present study was carried out to determine the effect of hydroalcoholic extract of Tylophora indica (HETI) on experimentally induced myocardial infarction (MI) in rats. Albino rats were treated with HETI at two different doses of 100 mg/kg, (HETI-100), 200 mg/kg (HETI-200) and propranolol 10 mg/kg (PRO-10) for 30 days orally. The hearts were excised and mounted on modified langendorff setup and subjected to 15 min global no flow ischemia and reperfused for 15 min for inducing ischemia-reperfusion injury (IRI). Pretreatment of animals with PRO-10 and HETI-200 provided significant protection to myocardium from IRI damage as indicated by significant decrease in LDH and CK-MB activities in perfusate and an increase in activities of these enzymes in heart tissue homogenate (HTH). Similarly, the recovery (%) in developed tension and heart rate were significantly high in HETI-200 and PRO-10 during post-ischemia when compared to control. Moreover, HETI-200 significantly increases endogenous antioxidants (SOD and catalase) activities when compared to IRI control. The protection offered by HETI could be attributed to the presence of flavanoids which shows antioxidant effect by either inhibiting the release of OFR or enhancing the synthesis of endogenous antioxidants such as SOD and catalase in IRI induced cardiotoxicity. These biochemical findings were further confirmed by histological investigations.
  • Haruo HIGO, Shi-Ping ZHANG, Ling HE, Fu LI, Yan LIU, Yun-Qing CAI
    2008 年 25 巻 5+6 号 p. 160-165
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    Liquiritigenin は甘草から抽出されるフラボノイドの一種である。 Liquiritigenin の抗腫瘍作用を検討し, 考えられる機序を明らかにするために, 様々な濃度の liquiritigenin で48時間 SMMC-7721細胞を処理した。 MTT アッセイを用いて SMMC-7721細胞に対する liquiritigenin の増殖抑制作用を調べた。 Hoechst 33258染色により細胞の核クロマチンにおけるアポトーシスの形態変化が認められた。 フローサイトメトリーによりアポトーシス率を測定した。 ウェスタンブロット法を用いて p53, bcl-2 およびプロカスパーゼ 3 を解析した。 カスパーゼ 3 活性はカスパーゼ-3 活性キットを用いて測定した。 本試験において, liquiritigenin は用量および時間依存的に SMMC-7721細胞に対して増殖阻害作用が強いことが示された。 また, liquiritigenin により, アポトーシスのプログラム細胞死の典型的な特徴である SMMC-7721細胞の縮小, 膜のブレブ形成 (blebbing), アポトーシス小体の形成が生じた。 フローサイトメトリーの結果から, SMMC-7721細胞の48時間の liquiritigenin 曝露後にアポトーシス率が上昇し, それぞれ1.19 %, 7.48 %, 7.40 %, 31.48 %, 41.17 % であったことが明らかになった。 ウェスタンブロット法の結果から, liquiritigenin の処理後に用量依存的にp53の発現レベルが増加することが示され, 対照群と比べ, liquiritigenin (0.40 mM) により p53 の発現が約 9 倍増大した。 一方, liquiritigenin の処理後, bcl-2 タンパクの発現は低下した。 我々の結果から, liquiritigenin によりプロカスパーゼ 3 の発現レベルは有意に低下したが, カスパーゼ 3 の活性は増加した。 最新の研究結果から, liquiritigenin は細胞増殖を抑制し, SMMC-7721細胞のアポトーシスを誘発することが示され, これはおそらく p53および bcl-2 の調節, その後の下流分子であるカスパーゼ 3 の活性化を介すると考えられる。
Short Communication
  • Shinjiro MARUYAMA, Taiki AKASAKA, Koji YAMADA, Hirofumi TACHIBANA
    2008 年 25 巻 5+6 号 p. 166-169
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    ハマウツボ科のニクジュヨウ (Cistanche salsa (C.A. Meyer) G. Beck) は, 日本では強壮作用を有する和漢薬として使用されている寄生植物である。 我々は以前の研究において, ニクジュヨウ抽出液の透析物 (CSD) がヒトB 細胞株BALL-1 および Namalwa において免疫調節作用を有することを報告した。 本研究では, タンパク結合多糖体 (PSK) を比較対照物として用いて, 18種の細胞株に対する CSD の作用の検討を行った。 その結果, ほとんど全ての細胞株において, CSD と PSK に対する細胞増殖と抗体産生の応答性は同じであった。 CSD は, Namalwa を含む数種の細胞株において細胞増殖を抑制した。 また, これとは対照的に BALL-1およびT細胞株を含む他の細胞株では, 増殖を促進していた。 抗体産生においては, CSD と PSK が, BALL-1 の IgM 産生とプラズマ B 細胞株である HMy-2 の IgG 産生を増強した。 さらに, ゲルろ過クロマトグラフィーにおいて, CSDの同じフラクションが Namalwa とマウス由来のメラノーマ細胞株 B16の細胞増殖を抑制していた。 これらの結果は, ニクジュヨウが, PSK と同様に生体応答調節物質となり, 細胞性免疫と液性免疫に作用すると同時に, 直接的な抗腫瘍作用を有することを示唆するものである。
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