ニンジン(
Daucus carota L.)は一般食材であるが,根に強壮・強心・健胃・鎮静作用がある。本研究では,ニンジン品種の薬膳素材適性を,官能評価と機能性成分分析により,性味という観点から評価した。F
1 品種2品種と地方品種14品種を用いた官能評価から,地方品種の '博多時無五寸', '国分鮮紅大長','札幌太',および F
1 品種の 'ちはま五寸' を '向陽二号'(対照品種)と,より詳細に比較することとした。'向陽二号' に比べて他の品種は,概して,酸味が強く,糖含有量が低く,灰分とカロテノイド含有量および抗酸化活性が高かった。アミノ酸含有量は,'向陽二号' に比べ '国分鮮紅大長' で約10倍,'札幌太' で約 6 倍と,顕著に高かった。主成分分析の結果,因子負荷量は小さかったものの,F
1 品種は甘いが機能性成分は少なく,地方品種は複雑で強い風味を示し,機能性成分にも富むと考えられた。また,地方品種はF
1 品種より多種の香気成分を含有していた。これらより,味が強くて複雑で,多くの機能性成分を含有する地方品種の存在が示され,本試験の範囲内では,'国分鮮紅大長' と '札幌太' が,薬膳素材適性が高いと考えられた。
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