Journal of Traditional Medicines
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29 巻, 3 号
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Regular Article
  • Misato Doui, Masayuki Mikage
    2012 年 29 巻 3 号 p. 115-123
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/15
    ジャーナル フリー
    日本では, ショウガ根茎に湯煎または蒸製を施したものを 「乾姜」, 中国では, 炒製ショウガを 「炮姜」 として用いている。 ショウガの加熱方法は両国で異なっており, 更に加熱程度により品質が異なる可能性が考えられる。 ショウガは加熱により色彩が大きく変化する。 それ故, 本研究では加熱方法及び程度の違いによる修治生姜の品質の差異を明確にするために, 調製した修治生姜の色彩ならびに含有辛味成分量を測定し, 両者の相関性について検討した。
    蒸製品 (St) のa* 値 (赤み) と 6-shogaol の 6-gingerol に対する割合 ([S/G]) の間に正の相関が認められた。 一方, 湯煎品 (Soh) では成分比によらず a* 値はほぼ一定であった。 更に, 180℃での加熱品 (H180) では [S/G] と a* 値に対数曲線上の相関が認められた。 また, 6-shogaol 含量と Soh のb* 値 (黄み), St の b* 値, H180 の b* 値はそれぞれ負の相関が認められた。 このことから, 色彩の測定により加熱方法, 含有成分比が予測でき, 品質を評価する上での 1 種の指標に成り得ると判断した。
  • Naoki Asano, Kyoko Obatake-Ikeda, Yasuhiko Higashi, Akira Kaji, Atsush ...
    2012 年 29 巻 3 号 p. 124-136
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/15
    ジャーナル フリー
    Sasa krilensis 乾燥葉から調製したクマザサエキス (固形エキス分27.8 mg/mL) は, ラット肝臓ミトコンドリアをFeSO4/ascorbic acid で反応させると生成してくる TBARS (thiobarbituric acid-reactive substances) 量の上昇を強く抑制した。 TBARS は脂質過酸化の指標物質であり, クマザサエキスに強い抗酸化作用があることが判明した。 さらに HEL 細胞における H2O2 誘導アポトーシスに及ぼすクマザサエキスの影響を, JC-1 試薬を用いフローサイトメトリーで測定した。 その結果, クマザサエキスは HEL 細胞の H2O2 誘導アポトーシスを濃度依存的に抑制した。 高血糖は血管内皮細胞に酸化ストレスを誘導し, 血管障害の初期イベントにおけるリスクファクターであると考えられている。 クマザサエキスの血管保護作用の一つとして, 高濃度 (30 mM) グルコース曝露した際の正常ヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) におけるアポトーシス DNA 断片化に対するクマザサエキスの効果を ELISA 法によって検討した。 その結果, 高濃度グルコース存在下でクマザサエキス 1 % 添加は HUVEC の DNA 断片化を完全に抑制した。 活性酸素種 (ROS) の増加は, 血管内皮機能障害の重要なメカニズムと考えられている。 HUVEC を高濃度グルコース処理後, ROS の増加はクマザサエキス 1 % 添加で完全に抑制された。 近年のヒト腫瘍研究は, 細胞接着分子が腫瘍の進展や転移に重要な役割をしていることを示唆している。 ヒト白血病 U937 細胞の angiotensin II あるいは高濃度グルコース処理した HUVEC への接着に対する影響を調べた結果, クマザサエキス 1 % 添加は U937 細胞の HUVEC への接着を完全に抑制した。 また, クマザサエキス 1 % 添加は, angiotensin II 曝露後の HUVEC における細胞接着分子 VCAM-1 及び ICAM-1 の発現レベルを著しく低下させた。 クマザサエキスに含まれる抗酸化成分を探索した結果, CoQ9 と CoQ10 がそれぞれ209及び305 ng/mL 含まれていることを確認した。 また抗がん, 抗ウイルス, 抗酸化作用を有するフラボノイド tricin もクマザサエキスに61μg/mL 含まれていることが見いだされた。 クマザサエキスやそれに含まれている抗酸化成分は, 糖尿病に関連する血管内皮障害や細胞接着分子による腫瘍の進展や転移の予防に有益であるかも知れない。Sasa krilensis 乾燥葉から調製したクマザサエキス (固形エキス分27.8 mg/mL) は, ラット肝臓ミトコンドリアをFeSO4/ascorbic acid で反応させると生成してくる TBARS (thiobarbituric acid-reactive substances) 量の上昇を強く抑制した。 TBARS は脂質過酸化の指標物質であり, クマザサエキスに強い抗酸化作用があることが判明した。 さらに HEL 細胞における H2O2 誘導アポトーシスに及ぼすクマザサエキスの影響を, JC-1 試薬を用いフローサイトメトリーで測定した。 その結果, クマザサエキスは HEL 細胞の H2O2 誘導アポトーシスを濃度依存的に抑制した。 高血糖は血管内皮細胞に酸化ストレスを誘導し, 血管障害の初期イベントにおけるリスクファクターであると考えられている。 クマザサエキスの血管保護作用の一つとして, 高濃度 (30 mM) グルコース曝露した際の正常ヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) におけるアポトーシス DNA 断片化に対するクマザサエキスの効果を ELISA 法によって検討した。 その結果, 高濃度グルコース存在下でクマザサエキス 1 % 添加は HUVEC の DNA 断片化を完全に抑制した。 活性酸素種 (ROS) の増加は, 血管内皮機能障害の重要なメカニズムと考えられている。 HUVEC を高濃度グルコース処理後, ROS の増加はクマザサエキス 1 % 添加で完全に抑制された。 近年のヒト腫瘍研究は, 細胞接着分子が腫瘍の進展や転移に重要な役割をしていることを示唆している。 ヒト白血病 U937 細胞の angiotensin II あるいは高濃度グルコース処理した HUVEC への接着に対する影響を調べた結果, クマザサエキス 1 % 添加は U937 細胞の HUVEC への接着を完全に抑制した。 また, クマザサエキス 1 % 添加は, angiotensin II 曝露後の HUVEC における細胞接着分子 VCAM-1 及び ICAM-1 の発現レベルを著しく低下させた。 クマザサエキスに含まれる抗酸化成分を探索した結果, CoQ9 と CoQ10 がそれぞれ209及び305 ng/mL 含まれていることを確認した。 また抗がん, 抗ウイルス, 抗酸化作用を有するフラボノイド tricin もクマザサエキスに61μg/mL 含まれていることが見いだされた。 クマザサエキスやそれに含まれている抗酸化成分は, 糖尿病に関連する血管内皮障害や細胞接着分子による腫瘍の進展や転移の予防に有益であるかも知れない。
  • Satoshi Utsuki, Hidehiro Oka, Chihiro Kijima, Madoka Inukai, Katsutosh ...
    2012 年 29 巻 3 号 p. 137-142
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/15
    ジャーナル フリー
    We aimed to assess the efficacy of saireito for chronic subdural hematoma (CSDH). Our second aim was to identify the association of aquaporin-4 (AQP4) expression in the CSDH outer membrane with the effect of saireito (Tsumura, Tokyo, Japan). The control group consisted of 58 cases, the saireito group 49. All patients were treated surgically. Saireito was administered postoperatively to the saireito group. The CSDH outer membranes of 20 cases in the saireito group were immunostained for AQP4. There were no CSDH recurrences of in the saireito group, but 6 recurrences in the control group (p=0.03). The period until postoperative hematoma disappearance was significantly shorter in the saireito than in the control group (p=0.047). Also, all CSDH outer membranes were AQP4 immuno-positive, and inflammatory cell invasion was especially marked in strongly AQP4 positive tissues. Saireito accelerated the disappearance of postoperative hematoma associated with CSDH and prevented CSDH recurrence. Furthermore, AQP4 was expressed on the CSDH outer membrane, suggesting that saireito may exert effects on CSDH by inhibiting AQP4 function.
Short Communication
  • Kazuyoshi Kawazoe, Kana Ota, Mayuko Okamoto, Youichi Sato, Kazuo Minak ...
    2012 年 29 巻 3 号 p. 143-148
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/15
    ジャーナル フリー
    肥満は社会的問題となっており, 予防対策に関する研究が進められている。 本研究では, 五味子 (チョウセンゴミシ果実) の肥満予防に対する有効性について検討した。 五味子水抽出エキスを高脂肪食に混合してラットに投与し, 肥満に関わるパラメーターに対する影響を検討した。 10週間自由摂食させた結果, 摂食量は変わらないにもかかわらず五味子水抽出エキス混合食投与群では高脂肪食のみ投与されていた群より有意な体重減少, 内臓脂肪量の減少, 血漿中のトリグリセリド減少が見られた。 さらに, 五味子水抽出液混合食を投与した群では, 高脂肪食のみ投与した群と比較して脂肪組織は普通食摂食群と同程度に小さく, ブドウ糖負荷試験において90分後の血糖値は高脂肪食投与群より有意に低かった。 以上のことより五味子水抽出エキスは肥満の予防に有効である可能性が示唆された。
  • Sansei Nishibe, Shigeharu Yamaguchi, Masateru Hasegawa, Koji Oba, Taka ...
    2012 年 29 巻 3 号 p. 149-155
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/15
    ジャーナル フリー
    ポリフェノール化合物との食餌摂取は食餌誘導肥満の抑制につながるものである。 レンギョウ葉 (モクセイ科) はポリフェノール化合物のフィリリンとフォルシアシドを多く含有している。 このレンギョウ葉から調製したレンギョウ葉エキス (FLE) の抗肥満作用を高脂肪食を摂取させたラットで調べた。
    高脂肪食を与えたラットを対照群 (0 % FLE), 2 つの FLE 投与群 (2.5% FLE と5.0% FLE) の 3 群に分けた。 対照群に比べて, 2 つの FLE 投与群は体重, 腎臓周囲白色脂肪組織, 精巣周囲白色脂肪組織, 褐色脂肪組織, 肝臓いずれの重量も有意に減少した。 血清においては, 中性脂肪および遊離脂肪酸値いずれも 2 つの FLE 投与群で有意に低値であった。
    さらに FLE の抗肥満作用のメカニズムを明らかにするため, リアルタイム PCR による肝臓および脂肪組織の遺伝子発現解析を行った。 肝臓のβ―酸化に関わる Fatp, Cpt1a, ACADVL は対照群に比べ, 2 つの FLE 投与群で発現量が有意に増加していた。 白色および褐色脂肪組織では脂肪代謝に関わる PPARγ, アディポネクチン, UCP1 が対照群に比べて発現量が有意に増加していた。
    この結果は高脂肪食での FLE 摂取が食餌誘導肥満の予防に有効であることを示すものである。
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