Journal of Traditional Medicines
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30 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
Regular Article
  • Yan Han, Fumiyo Kitaoka, Masumi Mano, Yohei Sasaki, Masayuki Mikage
    2013 年 30 巻 3 号 p. 91-101
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/06
    ジャーナル フリー
    漢方生薬 「威霊仙」 はキンポウゲ科のセンニンソウ属植物の地下部に由来する。 近年の生薬市場には多数の原植物に由来する威霊仙が見られるが, 日・中の薬局方では原植物を Clematis hexapetala, C. mandshurica および C. chinensisの 3 種であると規定している。 現在日本, 中国及び韓国市場の威霊仙の原植物を明らかにする目的で, 東アジアに産するセンニンソウ属植物のうち関連する 9 分類群について, 分子生物学的に ITS 領域を検討した。 その結果, ITS 全領域の塩基配列を検討することにより, 9 分類群を区別することができた。 以上の結果から, 現在市場で入手した11サンプルの威霊仙を分子遺伝学的に同定することができた。 すなわち, 日本市場品は 4 サンプルのうち 3 つは C. mandshurica で, 1 つは C. chinensis であった。 中国市場品 4 サンプルのうち 2 つは C. mandshurica で, 他の 2 つは C. brachyura であった。 韓国産 3 サンプルのうち 2 つは C. mandshurica で, 他の 1 つは C. terniflora var. robusta であった。
  • Kaori Kubota, Kentaro Sano, Akiko Shiraishi, Natsuko Beppu, Ai Nogami, ...
    2013 年 30 巻 3 号 p. 102-113
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/06
    ジャーナル フリー
    神経栄養因子は神経の生存, 分化, 再生を促進させ, 神経の機能維持に重要な役割を果たす。 したがって神経栄養因子様の作用を示す化合物や, 神経栄養因子の生合成を促進させる化合物は, アルツハイマー病など神経精神疾患の治療薬としての可能性がある。 抑肝散は, 7 つの構成生薬から成る漢方方剤で, 不安や不眠の他, 近年ではアルツハイマー病の BPSD (認知症の行動・心理症状) の改善に多く使用されている。
    本研究では, 抑肝散が神経栄養因子様作用を有することを, PC12 細胞の神経様突起伸長をその指標として初めて明らかにした。 抑肝散は, 濃度依存的に神経様突起を伸長した。 また, 抑肝散は, 突起伸長時に主要な役割を担う Erk1/2 と Akt をリン酸化した。 さらに, 抑肝散による神経様突起伸長効果および, Erk1/2 と Akt のリン酸化は, Erk1/2 経路阻害剤 U0126, Akt 経路阻害剤 LY294002 によって有意に抑制された。 一方で, NGF 受容体 TrkA の阻害剤 K-252aによっては, いずれも抑制されなかった。
    以上の結果より, 抑肝散は TrkA 非依存的に Erk1/2 経路と Akt 経路を介して神経様突起伸長効果を示すことが明らかになった。 抑肝散は神経栄養因子と同様の情報伝達経路を活性化させることから, 新規機序のアルツハイマー病治療薬となる可能性が示された。
  • Hirotaka Yamashita, Toshiaki Makino, Naoki Inagaki, Mitsuhiko Nose, Ha ...
    2013 年 30 巻 3 号 p. 114-123
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/06
    ジャーナル フリー
    アトピー性皮膚炎は代表的な難治性疾患の一つである。 アトピー性皮膚炎は, 皮膚バリア機能の破壊と免疫異常によって引き起こされ, 激しい痒みを伴う湿疹を特徴とする皮膚疾患である。 皮膚炎の状態は個々で異なり, それに応じた治療法が必要である。 日本の代表的な伝統薬である漢方薬は, 鼻炎や喘息, アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患にしばしば用いられている。 一般的に漢方薬は心身の状態に応じた薬が処方されるので, 薬効の基礎解析には適した動物モデルが必要である。
    本検討では, アトピー性皮膚炎の治療に汎用されている 7 つの漢方薬の止痒作用と, 掻痒性湿疹に対する治療・予防効果について, 2 つのマウスモデルを用いて評価した。 その結果, 消風散には単回投与による止痒作用と, 10日間投与による掻痒症状の軽減が認められた。 また, 補中益気湯は掻痒症の発症を軽減させた。
    これらの結果から, 消風散や補中益気湯は, アトピー性皮膚炎における慢性掻痒に対して, 既存の薬と同等かそれ以上の抑制効果が期待できると考えられた。
  • Toshiyuki Atsumi, Akiho Iwashita, Isao Ohtsuka, Nobuko Kakiuchi, Yohei ...
    2013 年 30 巻 3 号 p. 124-131
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/06
    ジャーナル フリー
    高齢化社会を迎え, 日本ではリウマチや変形性関節症などの炎症性疾患の患者が増加している。 それらの炎症性疾患の患者の疾患部位では NO, COX-2 や種々のサイトカインが過剰に発現しており, それらの炎症性メディエーターを減少させることが治療上有用である。 蒼朮は抗炎症作用を持つ生薬であり, リウマチを治療する漢方薬に含まれる。 今回の研究では, LPS で刺激したマウスマクロファージ細胞である RAW264細胞を用い, 蒼朮の70%メタノールエキス (AL70M) とそこから単離された成分について各種炎症関連物質のmRNA産生阻害作用を調べた。 AL70M は NO 産生を減少させ, COX-2, IL-1β, IL-6, TNF-αといった種々の炎症関連因子の mRNA 発現を抑制した。 また, 我々はAL70M から hinesol と acetylatractylodinol を単離し, それらが上記の作用を示す成分であることを見出した。 Hinesol, acetylatractylodinol は蒼朮の特徴的な精油成分であり蒼朮特有の芳香に関与する。 Hinesol はβ-eudesmol とともに生薬の表面に綿状の混晶を呈する。 これらの特徴は蒼朮において良品の指標であると考えられており, 我々の結果は伝統的な良否鑑別法の裏付けとなると考察した。
  • Mosaburo Kainuma, Norihiro Furusyo, Masayuki Murata, Takeshi Ihara, Hi ...
    2013 年 30 巻 3 号 p. 132-139
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/06
    ジャーナル フリー
    目的:漢方薬 (人参湯+真武湯エキス) は, pegylated interferon (PEG-IFN)・rivabirin (RBV) 療法の倦怠感などの副作用軽減に有用である。 今回 PEG-IFN・RBV 療法における同方剤の併用効果について検討した。
    対象:2008年10月から2010年 3 月までに治療を導入したC型慢性肝炎 (genotype 1b) 51例をA群 (漢方併用群26例) とB群 (コントロール群25例) に分けた。 PEG-IFN・RBV療法は48週間投与とし, A群は人参湯エキス7.5g/日と真武湯エキス7.5g/日の合方を服用することとした。
    成績:EVR 率, SVR 率はA群で84.6% (22/26), 77.0% (20/26), B群で56.0% (14/25), 48.0% (12/25) といずれも有意差が認められた (P=0.034, 0.033)。 アドヒアランス (PEG-IFN≧80%かつ RBV≧60%) 達成率はA群84.6% (22/26), B群72.0% (18/25) と両群に差はなく, アドヒアランス達成群での SVR 率は両群で差はなかった (A群:77.3%, B群:66.7%)。 治療中断はB群のみで 5 例認められ, 漢方併用により有意に中断率を減少させた (P=0.023)。
    結論:PEG-IFN/RBV 併用療法に漢方薬 (真武湯+人参湯エキス) 併用することにより, 同治療の中断率を減少させ, SVR 率を上げる可能性がある。
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