Journal of Traditional Medicines
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最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
Regular Articles
  • Daisuke Tokuhara, Tsutomu Shimada, Akitoshi Asami, Akiko Takahashi, Hi ...
    2013 年 30 巻 5 号 p. 199-205
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/10
    ジャーナル フリー
    Zingiberis Rhizoma の辛味成分である 6-shogaol およびその代謝物 6-paradol の体内動態および薬理活性について, 検討した。 6-shogaol (10 mg/kg) をラットに経口投与した際の血漿中 6-shogaol および 6-paradol 濃度を LC/MS/MSを用いて測定したところ, ともに投与 5 分後で Cmax に到達し, 投与 2 時間後までに速やかに血漿中から消失した。 代謝物である血漿中 6-paradol 濃度はいずれの採血時間においても, 6-shogaol 濃度に比べて約 4 倍高い値を示した。 次に, 6-shogaol および6-paradolの薬理活性について検討したところ, in vitro 実験において 6-paradol は 6-shogaol に比べ約 6 倍強い COX-2 阻害活性を示し, in vivo 実験においても 6-paradol が 6-shogaol より有意に強い抗炎症作用, 鎮痛作用および解熱作用を示した。 このことから, Zingiberis Rhizoma 中の 6-shogaol は体内で速やかに 6-paradol に代謝されること, また代謝物である 6-paradol が抗炎症作用を示すメイン化合物であることが示唆された。
  • Kayu Okutsu, Arisa Kurotani, Yohei Sasaki, Masayuki Mikage
    2013 年 30 巻 5 号 p. 206-214
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/10
    ジャーナル フリー
    アーユルヴェーダではアリシュタという薬酒が広く利用されている。 日本の薬酒が酒に生薬を浸漬し作られるチンキ剤であるのに対し, アリシュタは生薬の煎液をアルコール発酵させて作られる。 発酵による生薬の成分変化が, チンキ剤にはないアリシュタ独自の効能に寄与していると予想される。 本研究では, アリシュタとチンキ剤の相違点を明らかにすることを目的とし, 生姜, 大棗, ヒハツから製造したアリシュタ及びチンキ剤のピペリン及び [6]-ジンゲロール含量を HPLC により比較した。 アリシュタ中のピペリン含量はチンキ剤より高く14.6 mg/l であり, 製造過程で大きな変化は見られなかった。 一方アリシュタ中の [6]-ジンゲロール含量は11.3 mg/l とチンキ剤の50%以下であり, 製造過程において [6]-ジンゲロールが減少していた。 そこで [6]-ジンゲロールを添加した酵母培養液を LC-MS/MS 分析し, 酵母によるジンゲロールの代謝物を調べた。 その結果, ジンゲロールが酵母により [6]-ショウガオールなど 4 つの化合物に代謝されていることが示唆され, 同様の化合物がアリシュタにも含まれることが明らかになった。
  • Kento Takayama, Tetsuo Morita, Norihiko Tabuchi, Masahito Fukunaga, No ...
    2013 年 30 巻 5 号 p. 215-220
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/10
    ジャーナル フリー
    大黄甘草湯に含まれるrhein 8-O-β-D-glucopyranoside (RG) やリクイリチン (LQ) のセンノシドA (SA) 代謝促進メカニズムを解明するために SA 代謝変化を検討したところ, RG ならびに RG の非糖部である Rheinは, LQ とは異なるSA 代謝促進メカニズムを有する可能性を示した。 そこで, これらの成分を糞便懸濁液とプリインキュベーションしたところ, RG ならびに Rhein は SA 代謝菌または代謝酵素の誘導に関与することが示唆された。 タンパク質合成阻害剤である puromycin は RG による SA 代謝促進作用を濃度依存的に抑制したことから, RG は SA 代謝酵素タンパク質の合成を亢進することが明らかとなった。 SA の主な代謝菌であるビフィズス菌の培養においても RG による同様の効果が認められ, RG の SA 代謝促進作用は puromycin によって濃度依存的に抑制された。 以上の結果より, RG はビフィズス菌由来の SA 代謝酵素タンパク質の合成を亢進することで SA 代謝を促進することが証明された。
    この研究から, RG と LQ は異なった SA 代謝促進メカニズムで大黄甘草湯の下剤活性を増強することが解明され, 単一成分からなる西洋薬とは異なり, 多彩な作用メカニズムを有する複合成分系薬物としての漢方薬の有用性を見出した。
  • Masaki Kaibori, Morihiko Ishizaki, Kosuke Matsui, Masanori Kwon, Rei I ...
    2013 年 30 巻 5 号 p. 221-228
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/10
    ジャーナル フリー
    Sorafenib 投与中の進行肝細胞癌患者におけるAST, ALT, 血小板数 (PLT) いずれかの異常に対する Sorafenib 単独と人参養栄湯および Sorafenib の併用の効果をレトロスペクティブに比較検討した。 異常 AST, ALT, PLT 値を示す患者数は, それぞれ, 併用群で 8, 6, 10例, 対照群で 7, 5, 9 例であった。 その結果, 対照群に比し人参養栄湯と Sorafenib 併用群で治療4週後に, AST は改善傾向 (p<0.1), ALT は有意 (p=0.048) に低下した。 更に AST, ALT は人参養栄湯投与前後で有意に改善された。 人参養栄湯は, 投与前後の改善変化は有意ではなかったが, 併用群と対象群の比較において12週間の治療後の血小板数の変化量は有意に増加した (p=0.046)。 試験期間中, 両群とも Sorafenib 投与量は維持できており, 人参養栄湯併用群は Sorafenib の継続投与が可能であり, 腫瘍マーカーも制御されていた。 また, Sorafenibの連日経口投与により誘発した肝障害モデルラットに人参養栄湯を併用投与した人参養栄湯併用群と非併用群を比較検討した結果, AST, T-BIL, D-BIL で有意な改善が認められ, 臨床結果が裏付けられた。 以上より, 人参養栄湯併用は Sorafenib 投与時に生じる肝機能低下, 血小板減少などに対する副作用軽減効果が期待でき, Sorafenib の継続投与を通して延命効果に寄与しうる薬剤であることが示唆された。
  • Ping Xu, Michimasa Uchidate, Akira Iwabuchi, Hikari Kondo, Yoshiki Mat ...
    2013 年 30 巻 5 号 p. 229-235
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/10
    ジャーナル フリー
    桑 (Morus alba L.) 枝条の50%エタノール抽出物 (Mulberry twig extract, MTE) を老化促進マウス (SAM-P8) に経口投与して体毛評価を行った。 評価として, 摩擦係数 (Coefficient of friction, COF) の測定と走査型プローブ顕微鏡 (Scanning probe microscope, SPM) による観察を行った。 その結果, SAM-P8 マウスの体毛の COF は正常老化マウス (SAM-R1) に比較して31%増加し, SPM の観察ではキューティクルが不鮮明で三次元的形状も不揃いであった。 しかし, SAM-P8 マウスに MTEを12週間経口投与した場合, COF は SAM-R1 マウスレベルまで低下し, さらに SPM 観察では正常老化のようにキューティクルが鮮明となり, きれいな揃い表面が観察された。 以上のように, 桑枝条抽出物には経口投与による体毛の抗加齢効果があると考えられる。
  • Akinori Ishihara, Reiko Takahashi, Tomomi Numajiri, Saki Kaneko, Yoko ...
    2013 年 30 巻 5 号 p. 236-245
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/10
    ジャーナル フリー
    スタチンは高コレステロール血症を改善する有用な薬剤であるが, いくつかの副作用が知られている。 そのため, 常用することによって穏やかな効能を発揮する植物由来の生薬などの摂取による症状の改善が望ましいが, このような生薬が及ぼす作用機構は不明な点が多い。 そこで本研究では高コレステロール食負荷ラットにおける生薬製剤の効能及びその分子機構を検討するために, マイクロアレイ法を用いたラット肝臓の網羅的遺伝子発現解析を行った。 高コレステロール食負荷で発現が変動し, 生薬製剤飲用でその発現変動に変化が見られる44遺伝子を抽出した。 この遺伝子群には脂肪酸合成酵素やコレステロール代謝関連遺伝子であるチトクロムP450 8B1 などが含まれており, 体内の脂質恒常性維持に生薬製剤が貢献している可能性が示唆された。 また, 生薬製剤飲用群では, 非飲用群と比較して, 高コレステロール食負荷時に, コレステロール代謝過程の律速酵素であるチトクロムP450 7A1 の発現が亢進していた。 これらの結果は, 生薬製剤が高コレステロール血症の改善に寄与する可能性を示唆している。
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