局所貯留性ステロイド剤 THS-201についてラットを用い, 3箇月間連日背部皮下投与を行った後, 2箇月間の回復期間を設け亜急性毒性を検討した結果, 以下の結論を得た。1. THS-201の12.5 mg/kg 群では, ー般症状で腰部の疎毛, 投与部位の腫脹がみられ, 体重増加の抑制, 摂餌量の低下もみられた。また, 末梢血中のリンパ球率の著明な減少および分葉球率の増加を伴う白血球数の減少と関連して, 胸腺, 脾及び腸間膜リンパ節のリンパ系組織においては組織学的に著明な萎縮あるいはリンパ球の減少像が認められた。また, 血清総コレステロールおよびα
2-グロブリン分画の増加, 投与部位における病理組織学的変化, 骨髄における脂肪空胞の増加が雌雄に, また雄のみに赤血球系, リン脂質, AG比, アルブミン分画及び電解質に関して軽度の変動がみられた。以上のうち投与部位の所見を除き, 回復傾向がみられた。2. THS-201 の 2.5 mg/kg 群では, 腰部の疎毛, 体重増加抑制, 雄における白血球系, 赤血球系および脂質系の変動, さらに雄では胸腺, 脾および骨髄における変化がみられたが, その程度はいずれも12.5 mg/kg 群より弱いものであった。3. THS-201 の 0.5及び0.1 mg/kg 群では検体投与の影響と考えられる変化は認められなかった。4. 死亡例が溶媒対照群及び 2.5 mg/kg 群の各1例および切迫屠殺例が 0.5 mg/kg 群の1例にみられたが, いずれも偶発と判断された。5. MPA 0.5 mg/kg 群では, THS-201 の 12.5 mg/kg 群とほぼ同様の変化が認められたが, 回復性は優れていた。6. 以上のことから, THS-201の3箇月間連続皮下投与による無影響量は 0.5 mg/kg/day であり, 確実中毒量は 2.5 mg/kg/day であることが示された。
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