The Journal of Toxicological Sciences
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6 巻, SupplementII 号
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  • 今井 清, 林 裕造, 橋本 虎六
    1981 年 6 巻 SupplementII 号 p. 179-188
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2008/02/21
    ジャーナル フリー
    Angiotensin変換酵素阻害剤captoprilの経口, 静脈内および皮下投与による急性毒性試験を, ICR系マウスおよびSprague-Dawley系ラットを用いて実施した。Captoprilの経口投与によるLD50は, 雄マウス: 424g mg/kg, 雌マウス: 5050 mg/kg, 雄ラット: 4336 mg/kg, 雌ラット: 4245mg/kgで, 中毒症状として自発運動の減少, タール状軟便(マウス), 下痢, 流涙, 流涎, 体温低下がみられた。死亡時間は, マウスの場合投与後4-24時間, ラットの場合3-36時間で, 死亡例には腺胃粘膜の出血性糜爛ないし潰瘍形成がみられた。なお, マウスの一部の例では, 投与後3日頃より尾端の壊死が認められた。静脈内投与によるLD50は, 雄マウス: 3154 mg/kg, 雌マウス: 3255 mg/kgであり, 筋の硬直と呼吸停止により投与後3分以内で死亡する例(早期死) と, 呼吸停止が1分程度持続した後に, 弱い呼吸運動が始まり, タール様軟便の排泄, 自発運動の消失ならびに体温低下を伴って死亡する例(遅延死)がみられた。病理学的にみると, 早期死亡例では, 諸臓器のうっ血以外には著変がなく, 遅延死例では腺胃粘膜の出血性摩憫と肝細胞の空胞形成がみとめられた。 1週間生存例では, 各投与群の一部の例の肝臓に, 直径0.5 mm程度の円形の壊死巣が認められた。ラットでは, 雌雄ともに技術的投与限界量とみなされる1600 mg/kgの投与に耐過し, 中毒症状とじて軽度の流涙と自発運動の減少をみとめたにすぎなかった。Captoprilの皮下投与におけるLD50は, マウスでは雌雄ともに2400 mg/kg以上, ラットでは雌雄ともに1200 mg/kg以上であった。全身的中毒症状としては2400 mg/kgを投与したマウスの1例がショック様症状を伴って死亡した以外に, 他の例には特記すべき変化が認められなかった。注射局所の皮膚には, マウスの1600 mg/kg以上の投与群, ラットの1200 mg/kg 投与群に壊死が認められた。
  • 今井 清, 吉村 慎介, 大滝 恒夫, 橋本 虎六
    1981 年 6 巻 SupplementII 号 p. 189-214
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2008/02/21
    ジャーナル フリー
    Captoprilの1ヶ月間連続経口投与 (投与量10 mg/kg, 30 mg/kg, 100 mg/kg, 300 mg/kg 900 mg/kg, 2700mg/kg) による亜急性毒性実験を, 5週齢の雌雄 Sprague-Dawley系ラットを用いて実施した。300 mg/kg以下の投与群では全例が所定の投与期間生存したが, 900 mg/kg 投与群では雄18例中1例, 雌18例中3例, 2700 mg/kg投与群では雄18例中13例, 雌18例中17例が投与期間中に死亡した。主な死亡原因は胃体部の出血性糜爛ないし潰瘍と, 小腸粘膜上皮の剥離を伴った消化管障害と考えられた。投与期間中にcaptopril投与群では尿量の増加があり, 100 mg/kg投与群では更に飲水量の増加も認められた。病理形態学的変化として100 mg/kg以上の投与群で腎臓の芳糸球体細胞の増生を伴った輸入動脈の肥厚があり, 300 mg/kg以上の投与群で軽度の貧血傾向とこれに伴って脾臓にhemosiderosisの増加, 細網細胞の腫大が観察されたほか, 脾及び骨髄に赤血球増生系細胞の増加が認められた。300 mg/kg及び100 mg/kg投与群にみられた腎臓の組織変化と, 300 mg/kg以上の投与群にみられた貧血傾向は, 1ヶ月間の休薬によりいずれも回復したが, 900 mg/kg投与群の腎臓にみられた器質的な変化は回復しなかった。以上の結果からcaptoprilのラットにおける1ヶ月間連続経口投与実験での最大無中毒量はほほ30 mg/kgと推定された。
  • 橋本 虎六, 今井 清, 吉村 慎介, 大滝 恒夫
    1981 年 6 巻 SupplementII 号 p. 215-246
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2008/02/21
    ジャーナル フリー
    完全に調整されたバリヤーシステム内でSPF飼育 Sprague-Dawleyラットを用いて angiotensin I変換酵素阻害作用(ACEI)を特長とするcaptoprilの長期大量投与による生体反応を検討した。投与用量は 30, 100, 300, 900 mg/kg/dayで, 検体は基礎飼料に混ぜ自由摂取させ計画した投与量になる様混入検体量を調節した。途中3ヶ月での中間試験, 12ヶ月連続投与試験, その後3ヶ月基礎飼料にもどして回復試験として, 以下の成績を得た。(1) 検体投与による死亡動物はなかった。(2) 体重増加は最高投与群で有意に低く, 最高投与量は十分に毒性試験の目的を果たしていた。(3) 最大無作用量は30 mg/kg/day前後と認める。(4) 検体の吸収による皮膚反応として尾端の暗赤色の発赤をみたがほぼ6ヶ月で自然に消退した。(5) 摂水量増加, 尿量増加, 尿比重低下が雄に特に著明であった。検体投与中止後もこの有意の変化は続いた。(6) 血圧は雌雄共に用量依存的に低下し検体投与を中止すれば対照群の血圧に復した。(7) 溶血性貧血と診断し得る貧血(造血組織の賦活化)を認めた以外, 白血球, 血小板に異常なく骨髄機能の抑制をみなかった。(8)血漿無機燐, KおよびBUNは有意に高値を示しK以外は投与中止3ヶ月の回復期の終りでもなお高かった。(9) 腎臓, 肺臓の重量増加と心臓重量減少以外特定の変化はなかった。(10) 臓器ACE活性は長期投与によって, 肺臓, 腎臓ともに抑制されるが投与停止により可逆的に対照群のACE活性値にかえった。(11) 腎renin活性は投与各群共対照群の2-3倍に上昇するが休薬後3ヶ月で逆に対照群より低下した。(12) 特長ある腎臓病理学所見: (a)腎糸球体輸入動脈から小葉間動脈にまで及ぶ動脈壁の肥厚があり, 平滑筋細胞および膠原線維の増生を認めた。(b)また肥厚した動脈支配領域の細尿管に限局した再生上皮と, 糸球体, 細尿管周囲の浮腫と形質細胞の浸潤巣があった。(C)電顕的に多数のJG顆粒をもつ大型の傍糸球体細胞(JG細肛の増生が, 肥厚した動脈の糸球体に近接する部分あるいはPolar cushionに認められ, これらの細胞間隙を走る基底膜の軽度の肥厚があった。(d)3ヶ月投与休止した動物では輸入動脈から小葉間動脈にかけての壁の肥厚はなお認められるが, JG顆粒をもつ傍糸球体細胞の数はむしろ少く, また形質細胞を主体にした細胞浸潤巣も著明に減少した。JG顆粒の減少は腎renin活性の減退と一致し, BUN, 無機燐値が依然とじて高値であることは動脈壁肥厚がなお継続していることと関連があると思われる。(13) 加齢病変である心臓の限局性心筋線維化および腎糸球体血管の硝子様変性の発生頻度もその程度も, 検体の投与量に依存し減少し抑制された。検体投与を中止した3ヶ月後には, 加齢病変の頻度も程度も対照群と差がなかった。検体投与期間中の, 心臓, 腎臓の加齢現象の抑制は検体そのもののもつ血圧降下作用に基づくものと思われる。
  • 大滝 恒夫, 今井 清, 吉村 慎介, 橋本 虎六
    1981 年 6 巻 SupplementII 号 p. 247-270
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2008/02/21
    ジャーナル フリー
    Angiotensin変換酵素阻害剤(ACEI) captoprilの3ヵ月間に亘る連続経口投与によって, どのような毒性を示すか, またその用量幅を知るために 10, 30, 100 および 200 mg/kg/dayを雌雄ビーグル犬に投与して検討した。投与期間中, 最高用量群の4頭中の1頭が気管支肺炎を併発して死亡した以外死亡例はなかった。毒性的一般症状として, 10 mg/kg群を除いて, 30 mg/kg以上の投与群に投与後一過性の流涎がみられ, 100 mg および 200 mg/kg投与群の雄7頭中4頭, 雌7頭中2頭に嘔吐を伴うこともあった。また100 mg/kg以上の投与動物には用量依存性に頚部, 前胸部および腹部に紅斑と丘疹を主体とした皮膚の発疹が認められた。組織学的検査で, 真皮に円形細胞浸潤があり, 浮腫および血管拡張さらには表皮のparakeratosisを伴ったhyperkeratosisが観察された。血液学的検査で, 100 mg/kg以上の群に軽度な貧血傾向がみとめられ, 骨髄の赤血球造成系細胞の増加が認められたが, 骨髄抑制像はみられず, 他方脾臓および肝臓にはhemosiderosisを伴っていた。以上の所見は溶血性貧血によるものと推察された。なお本剤によるACE阻害作用の結果, 血漿renin活性(PRA)の上昇が雌雄30mg/kg群以上でみられ, 組織学的に芳糸球体細胞(JG cell)の肥大を伴った増生および顆粒の増加が観察された。これらは予想された通りであったが, 他の諸臓器には著変がみられなかった。生化学的検査で, BUNの軽度な上昇とALP, GOT活性の減少傾向をみとめた。以上の結果を総括すると, ビーグル犬に3ヵ月間連続経口投与した場合のcaptoprilの確実毒性量は100 mg/kg, 無影響量はほぼ10 mg/kg前後と推察される。
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