Journal of UOEH
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10 巻, 4 号
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  • 秋吉 順子, 中村 弘
    原稿種別: 原著
    1988 年 10 巻 4 号 p. 341-356
    発行日: 1988/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    クリオグロブリンの温度依存性溶解度変化の分子機構は未だ明らかでない. 免疫グロブリンの生物学的機能と構造との関係を明らかにする目的から研究を行ってきたが, 本論文では, 蛍光偏光測定法を用いて水溶液中でのクリオグロブリン分子の熱力学的挙動をミエローマ蛋白と比較しつつ調べ, 溶解度変化との関連の解明を試みた. DNS基を導入した試料を用い, 定常励起法で試料温度を約40-10℃の間で変化させ, 偏光度(P)を求め, Perrin-Weber式に従って分子の回転緩和時間(ρh)を求めた結果, DNS-Jir, (ρh=170nsec), 対照群(ρh=90nsec)を得た. さらに分子サイズとρhとの関係を求めるために, DNS-BSAと抗BSA抗体(Fab)の可溶性複合物の蛍光偏光測定, ならびに, 種々の溶媒中での測定を行った結果, 通常の免疫グロブリンとの比較から, クリオグ口ブリン(Jir)の示す高い回転緩和時間が, 分子の剛直性によるものと推論され, 熱力学的観点からの考察も併せて行った.
  • 唐崎 裕治, 後藤 貞夫, 久保村 滋夫, 東 監, 平野 英保
    原稿種別: 原著
    1988 年 10 巻 4 号 p. 357-363
    発行日: 1988/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    ファイブロネクチンは動物の結合組織を形成する蛋白である. 最近, 平野らによりニワトリの細胞性ファイブロネクチンの遺伝子が単離され, その遺伝子は約48kbの長さで, 48個のエクソンをもつことがわかった. ところで, ファイブロネクチンはいくつかのドメインに分けることができ, それらドメインは, それぞれフィブリン, ヘパリン, コラーゲン, 細胞あるいはDNA等に結合することが知られている. 今回, 我々はこのファイブロネクチンのドメインのうち, DNAに結合する部分に相当するファイブロネクチン遺伝子の一部分について, 一次構造の決定を行った. そのDNAの大きさは2kbであり, 3つのエクソンを含んでいた. これらエクソンのアミノ酸配列は, 人間およびラットのそれと比較して相同性が87から98%であり, 以前我々が報告した, ファイブロネクチンの細胞結合ドメインのアミノ酸配列の相同性, 79から88%と較べて高く, DNA結合ドメインの高い保存性を示した.
  • 丸山 マサ美
    原稿種別: 原著
    1988 年 10 巻 4 号 p. 365-371
    発行日: 1988/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    看護の中で, 的確な物理的な技術をマスターすることは, 重要である. しかし, それよりさらに, 心理的な技術, 例えば, 話し方, 聞き方, 表情, 動作などの理解技術をマスターし, 看護することは, 重要である. 看護婦が, 患者を訪室した時, 対する患者が, 今, 何を感じているのか, 考えているのか, 一瞬の表情, 一つの言葉から感じとり, 看護婦は, 何をすればよいのか, 的確に判断する事は, とても大切である. イギリスのコミュニケーションカウンセラーSheila Dainowは, 感情移入とは, 傾聴と観察と尊敬が入り混じったものであると言っている. 看護教育において, もっと, 患者一看護婦の関係, 患者心理について, 深く探求する場を取り入れる必要がある.

    (この内容は1988年7月シンガポールにて行われた太平洋看護婦会議における発表に基づくものである)
  • 中嶋 加代子, 高瀬 直子, 東 監
    原稿種別: 原著
    1988 年 10 巻 4 号 p. 373-380
    発行日: 1988/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    環境化学物質のブロッコリー・ミクロソームおよびサルモネラ菌の系を用いた代謝的活性化反応の諸性質を調べた. 通常よく用いられるサルモネラ株TA98を用いたブロッコリーのミクロソームによるアフラトキシンB1の代謝的活性化の系に対し, 動物のシトクロームP-450の阻害剤であるSKF 525Aおよび7,8-ペンゾフラボンは約20%の阻害を示したが, メチラポンによる阻害は明確には観察されなかった. 次に, 酸化的変異原に対し感受性の高いTA104株を用いて植物の系による代謝的活性化に対するフリーラジカルの関与の有無を調べた. ブロッコリー・ミクロソームによるベンゾ(a)ピレンの代謝的活性化は, アラキドン酸の添加により促進された. この結果は,アラキドン酸ハイドロパーオキシドによるものと考えられる. 植物の系による環境化学物質の変異原への代謝的活性化には, 従来のシトクロームP-450の系のように2-電子が関与したモノオキシゲナーゼ活性によるもの以外に, ペルオキシダーゼ様活性による経路も存在することが示唆された.
  • 塚本 増久, 中島 康雄, 荘 和憲
    原稿種別: 原著
    1988 年 10 巻 4 号 p. 381-390
    発行日: 1988/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    人畜の日本住血吸虫症を媒介するミヤイリガイOncomelania nosophora(日本), およびその近縁種O.fornosana(台湾), O.quadrasi(フィリピン)の分類については, 互に独立種またはO.hupensis(中国大陸)の亜種とみなされている. しかしこれらの3種類は形態的にもO.hupensisとはかなり異なっているので, 16種類の酵素について電気泳動像を比較した. そのうち, エステラーゼ(Est), リンゴ酸脱水素酵素(MDH), グルコース燐酸イソメラーゼ(GPI)は極めて高い酵素活性を示した. 一方, 乳酸脱水素酵素(LDH), リンゴ酸酵素(ME), キサンチン脱水素酵素(XDH), ヘキソキナーゼ(HK), アルカリ性フォスファターゼ(AIP), アスパラギン酸アミノ転移酵素(GOT)などの活性は極めて低く, 長時間インキユベートしなければ発色バンドとして検出することは困難であった. また, バンドの泳動速度はロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)が最も速く, アルコール脱水素酵素(ADH), フォスフォグルコムターゼ(PGM), 酸性フォスファターゼ(AcP), イソクエン酸脱水素酵素(IDH), GOT, HK, グルコース6燐酸脱水素酵素(G6PD), LDH, アルデヒド酸化酵素(Aldox), GPI, XDH, MDH, MEの順に遅く泳動された. なお, LDH, ME, AcP, AIP, LAP, GPIなどは1本のバンドを示したが, ADH, MDH, IDH, Aldox, HK, PGM, G6PDなどでは2・3本のバンドが, Estでは10本以上のバンドが検出された. これらのバンドの泳動像は酵素と貝の種類によってやや異なるものもあったが, 全体としては極めてよく似ており, 生化学的にも互に類縁関係が密接であることをうかがわせた.
  • 牟田 俊幸
    原稿種別: 原著
    1988 年 10 巻 4 号 p. 391-401
    発行日: 1988/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    ウイスターラットの尿細管基底膜側細胞膜をPercollによる密度勾配で分離し, その細胞膜標品を用いた³H-Arginine vasopressin(AVP)レセプターアッセイ法を確立した. さらに各種薬剤のAVP-受容体結合に与える影響を検討した. AVPアナログでは受容体と³H-AVPとの結合をAVP>LVP≧dDAVP>Oxytocinの順で抑制した. 腎に作用して水排泄に影響することが知られているフッ素, cyclophosphamide, mechlorethamineはAVP-受容体結合に影響を与えなかった. ChlopropamideはScatchard analysisによるBMAXを変化させなかったが, Kdをcontrol群1.30±0.28nM(n=4, M±SD)よりchlorpropamide群2.69±0.32nM(n=5, M±SD)と有意に(P<0.001)上昇させ, chlorpropamideによりAVPの受容体に対する親和性が低下していた. またLineweaver-Burk PlotによりchlorpropamideはAVPと受容体の結合を拮抗的に阻害するものと考えられた.
  • 土屋 武彦, 法村 俊之, 山本 久夫, 畠山 智, 土肥 誠太郎, 欅田 尚樹
    原稿種別: 原著
    1988 年 10 巻 4 号 p. 403-409
    発行日: 1988/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    現在, 核融合炉の開発が行われているが, この場合大量のトリチウムが使用される. 従ってトリチウムの人への影響の解明が重要である. そのための動物実験において, とくにマウスでの各臓器での吸収線量を正確に推定することは極めて重要である. しかし, 今までにみられた多くの報告では血液よりの推定を行っているものがほとんどである. 本研究においては, トリチウム水の1回投与の場合について, マウスの各臓器とくに骨髄のトリチウムの取り込みをサンプルオキシダイザーを用いて正確に計測し, 吸収線量を推定した. 従って, その方法の詳細を報告するとともに個々の臓器についてトリチウムの取り込みを測定した上で, 吸収線量を推定することの重要性を示した.
  • 矢野 正孝, 保利 一, 古賀 実, 田中 勇武, 秋山 高
    原稿種別: 原著
    1988 年 10 巻 4 号 p. 411-416
    発行日: 1988/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    生物膜流動層でメタノールを有機炭素源として排水中の窒素 (NO3--N) の除去実験を行った. 従来から用いられてきた多孔板形式の分散板の代わりに, ガラスビーズを用いることにより, 本装置は目詰まりがなく, 操作特性に優れ約1年間, 定常運転ができた. 原水中のメタノールによるTOCとNO3--Nとの濃度比 {(TOC/NO3--N) inf TOC ratio} が1.0以下になると脱窒率は低下を始めた. また, このTOC ratioを1.0以上に戻すと脱窒率は急激に回復した. 流動層内における付着生物膜のMLSS濃度は, 同じ装置で行った好気性処理の場合とは異なり, 粒子が激しく流動化する層下部を除き, ほぼ一定であった. 菌を生物膜から単離し, 人工培地中で培養させた結果, N2ガスの発生が見られ, これと電子顕微鏡による観察結果から, 本実験で観察された脱窒菌はHyPhomicrobium sp.と推定された.
  • 栗山 正己, 永元 康夫, 中田 浩一, 早川 知宏, 黒岩 昭夫
    原稿種別: 症例報告
    1988 年 10 巻 4 号 p. 417-422
    発行日: 1988/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    症例は15才女子高校生で, 学校検診の心電図で持続性の上室性頻拍を指摘された. 電気生理学的検査の結果, ①左房内に異所性自動能を有する心房性頻拍が確認され, ②この心房性頻拍に対してアプリンジンの静注(100mg/10分)が有効であった. このためアプリンジン60mg/日の内服を開始し, 以後約16ヵ月間経過観察しているが, 左房調律性頻拍の再発を見ず, 副作用も認めていない.
  • 上田 陽一, 多田 穣治, 橋本 朋子, 辻 貞俊, 村井 由之
    原稿種別: 症例報告
    1988 年 10 巻 4 号 p. 423-426
    発行日: 1988/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    42歳, 女. 29歳頃より両下肢脱力と, つっぱり感が出現し徐々に増悪した. 33歳頃から両下肢異常感覚と感覚鈍麻, 排尿障害が出現し, 40歳頃には杖歩行となった. 入院時, 両下肢に痙縮を伴う中等度の脱力と四肢深部反射亢進が認められた. 感覚障害は両側外側大腿皮神経, 浅腓骨神経および腓腹神経領域にあった. 髄液と血清の抗HTLV‐Ⅰ抗体は陽性であった. 感覚神経伝導速度検査で両側の大腿皮神経の活動電位は誘発されなかった. プレドニゾロン投与により感覚障害, 排尿障害の著明な改善, 痙性対麻痺の軽度改善が認められた. 電気生理学的検査では両側の外側大腿皮神経に低振幅の感覚神経活動電位がみられるようになったが, その感覚神経伝導速度は正常であった. 以上より, 末梢神経病変は軸索変性であることが示唆された. 本症例のように多発性単神経炎を伴ったHAMの症例の報告はない.
  • 森 晃爾, 井上 尚英, 藤代 一也, 保利 一, 田中 勇武
    原稿種別: 短報
    1988 年 10 巻 4 号 p. 427-431
    発行日: 1988/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    酸化エチレン慢性吸入曝露によるラットの精巣への影響を調べた. その結果, 500ppm, 隔日, 週3回, 13週間の曝露により, 精巣の著明な萎縮と, それに伴うDNA量の減少が認められた. しかし血漿中テストステロンには変化がみられなかった. また酸化エチレン曝露群では, 精巣のグルタチオン還元酵素活性の低下(45%)と, グルタチオン-S-トランスフェラーゼ活性の増加(64%)が認められた. 以上のことより, 酸化エチレンは精巣に対して明らかな毒性を示し, その発現にはグルタチオン代謝の異常が関与している可能性が示唆された.
  • ―ヒトにおける中毒例の文献的考察―
    井上 尚英, 藤代 一也, 森 晃爾, 松岡 雅人
    原稿種別: 総説
    1988 年 10 巻 4 号 p. 433-442
    発行日: 1988/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    リン酸トリオルソクレシル(TOCP)中毒は, 19世紀末以来数多く発生してきた. その中毒のほとんどが, TOCPに汚染された飲食物や薬物を気付かずに摂取して集団発生をきたしたものである. TOCP摂取後,まず胃腸症状が出現する. そして10日から20日の潜伏期を経て, 遅発性神経毒性として神経症状がみられる. 初発症状は下肢の疼痛と異常感覚である. 運動障害が主体となり, 両下肢や四肢に麻痺が起こる. 重症例では錐体路徴候が加わる. 病理学的には, 末梢神経の軸索変性, 脊髄前角細胞, 側索や後索に変性がみられる. 主な治療法は運動機能回復訓練である.
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