Journal of UOEH
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11 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 田島 文博, 緒方 甫, 三木 健寿, 江西 一成, 白木 啓三
    原稿種別: 原著
    1989 年11 巻2 号 p. 145-153
    発行日: 1989/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    頸下浸水(HOI)時の下肢からの体液移動が, HOI による尿量の増加にどのように寄与しているかを検討する目的で実験を行った. 7名の健常男子と外傷に起因する両股離断者2名を被験者として, 1時間の安静座位の後, 中性温度(34.5℃)の水に3時間の HOI を行わせ, 1時間ごとに両下腿の体積と尿量を測定した. その結果,両下腿体積は HOI 3時間で192±20(平均±SE)ml 減少した(P<0.01). 健常者の尿増加量は, HOI 3時間で494±89ml であり, 下腿の減少率を大腿を含む両下肢全体の体積に乗じた両下肢減少量(508±53ml)に近い値であった. 両股離断者の HOI 時の尿量も明らかに増加し, 3時間で183±48ml であった. 以上より, HOI 時の尿の増加分は下肢からの体液の移動分によって賄われると考えられる. しかし, 下肢以外からの体液移動も考慮されなければならないことも示している. この実験の結果は HOI が浮腫を持つ患者の治療法として臨床応用できる可能性を示唆している.
  • 柏村 正道, 加藤 俊, 長野 作郎, 蜂須賀 正
    原稿種別: 原著
    1989 年11 巻2 号 p. 155-161
    発行日: 1989/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌検診は, 現在老人保健法の管理のもとで全国で広く実施され, 確実な成果をあげているが, これは検診対象(30才以上の全女性)や検査法(細胞診)が確立され, 癌検診の最も一般的なモデルとして婦人科医に受け入れられているからである. 一方, 子宮体癌の検診については, 対象をどのように設定するのか, 検査法は何を選択するのか等の問題が未解決の問題として残っている. 昭和58年2月の老人保健法施行後5年が経過し, 子宮がん検診の見直しが行われた結果, 新たに子宮体癌検診が昭和62年度より導入されたことは周知の事実であるが, 上記の理由により実施に際しては混乱が予想される. このため福岡県では, 昭和62年度は子宮体癌検診導入の準備期間とし, 各種の講習会などを行うと共に, 現在福岡県下で行われている子宮体癌スクリーニングの実態を調査した. 本論文ではこの調査結果をもとにして子宮体癌検診の問題点について述べる.
  • 李 承道
    原稿種別: 原著
    1989 年11 巻2 号 p. 163-171
    発行日: 1989/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    韓国と西日本地域におけるHepatitis B virus (HBV) キャリアーの頻度を, 血清のみならず肝組織を用いて比較するとともに, 地域間の肝疾患組織像の異同を調べることを目的とした. 組織材料として, 韓国の高神大学の開腹生検肝200例, 北九州地区解剖例400例, 大阪府法医解剖例576例の肝を用いた. 高神大学病院と産業医科大学病院の患者間ならびに, 両病院職員間の血清HBsAg陽性率を比較したところ同陽性率は, ともに高神大学で約2倍の高値を示した. 肝組織内HBsAg陽性率は高神大学10.5%, 北九州4.3%, 大阪0.5%であった. 肝硬変や肝細胞癌例中のHBSAg陽性率は高神大学で最も高かった. 高神大学の肝細胞癌患者は産医大例よりも平均11才若く, 低分化な例や, 肝硬変非合併例が多い傾向がみられた. すなわち韓国の肝細胞癌は, 西日本より高頻度のHBVキャリアーを背景に発生し, 生物学的特性も多少異なる可能性が示唆された.
  • 森 晃爾, 海道 昌宣, 藤代 一也, 井上 尚英, 保利 一
    原稿種別: 原著
    1989 年11 巻2 号 p. 173-179
    発行日: 1989/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    雌性ラットを用いて, 250ppmの濃度の酸化エチレンを1日6時間, 週5日間, 10週間曝露し, その結果, 曝露群では体重増加の抑制を認めた. また曝露開始5週間後より失調性歩行を呈し, 10週間後では, すべて後肢の麻痺をきたした. 10週間後の末梢血液像では, 網状赤血球増多を伴う大球性正色素性の貧血を認めた. 生殖系に対する影響を調べる目的で, estrus cycleの観察を行い, 曝露群でestrus cycleの延長と周期全体に占める発情間期の割合の増加を認めた. 卵巣および子宮の重量には対照群との間に有意差がみられなかった. また卵巣のグルタチオン代謝系酵素のうち, グルタチオンレダクターゼ活性については, 対照群に比して18%の減少, グルタチオン-S-トランスフェラーゼ活性については, 30%の増加を認めた. 以上の結果より, 酸化エチレンは雌性ラットに対し, 末梢神経障害, 貧血のみならず生殖系にもある程度の影響を及ぼすことが示唆された.
  • ―その音響学的成因―
    小林 利次, 篠崎 弘美, 余門 誠, 林 実, 荒井 正夫, 膳所 富士男, 小出 紀
    原稿種別: 症例報告
    1989 年11 巻2 号 p. 181-187
    発行日: 1989/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    乳癌の超音波検査はその診断率が良好, かつ, 非侵襲的手段であるため日常のルーティン画像診断に不可欠な検査法になった. 通常の乳癌は内部エコーは低エコーに出現するのが普通であるが, 今回,高エコーレベルで抽出される1症例(38才主婦)を経験したのでその文献的考察も含めて, その超音波組織特性的な特徴を報告した. 乳癌組織の腫瘍組織多様性(ふるい状パターン・薄い腺管構造・密な癌細胞巣および硬癌間質パターンの混合組織)がこの症例における高エコー抽出の要因と断定した. 文献的には約2%の出現率であった.
  • 武 信昭, 桐生 博愛
    原稿種別: 症例報告
    1989 年11 巻2 号 p. 189-192
    発行日: 1989/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    75才男子, 24年間コークス炉作業に従事, 退職後15年経って右手背に腫瘤が出現した. ピッチアカントーマの臨床診断で腫瘤を切除し病理組織検査したところ, 一部に有棘細胞癌の組織像が見られた. コークス炉では直接タールを扱うことはないが, 気化したタール成分に触れ, タールによる皮膚障害を起こしたと考えられる. 皮膚に付着したタールは入浴でも簡単には落ちず, 長期間にわたり発癌の危険があると考えなければならない. この症例は, 離職後もタール作業者の健康管理を続けていく必要性を示している.
  • 華表 宏有
    原稿種別: 人間学
    1989 年11 巻2 号 p. 193-211
    発行日: 1989/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, さきに日本カトリック医師会(阿武保郎会長)に設置された「家族計画と性に関する諸問題」専門委員会が, 1988年3月から4月にかけて実施した「性のあり方と生命倫理等に関する意見調査」の回答の中から, 特に受胎調節, NFP(Natural Family Planning)および医師としての人工妊娠中絶とのかかわり方について設問した3問を取り上げて, 詳しく解析したものである. 有効回答229人の結果について, 性, 年令, 受洗年令, 地域, 専攻分野ならびに過去3年間の会費納入の有無の6つの背景要因を取り上げて, 重回帰分析を行った. その結果, 3問とも年令によって意見が異なっているほか, 受胎調節, NFPについては大司教管区別に地域差のあることが把握された. 以上の知見を説明するために, 5つの作業仮説(A-E)を想定し, さらに関連した生命倫理ないし医学倫理上の学際的研究と, 医師としての生涯研修の必要性について考察した.
  • 太田 一昭
    原稿種別: 人間学
    1989 年11 巻2 号 p. 213-224
    発行日: 1989/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    新歴史主義批評の基本的な前提と視点についてまとめてみた. 新歴史主義は, 文化あるいはテクストの統一を否定する. 新歴史主義は文学と歴史の二項対立的区分を拒否し, 歴史を, 安定した背景として文学テクストと対置しない. 文学も歴史の一部を構成し, 非文学テクストあるいは他の文化的実践と相互に浸透し, それらのコンテクストになりうると考える. 新歴史主義批評は, テクストを権力関係との係わりという点から分析することに深い関心をもつ. 文学研究の新しい歴史化とは, 新しい政治批評であるとも言える. この批評の政治性は, 特にイギリスのマルクス主義的唯物論派の人々に顕著である. アメリカの新歴史主義者は, 自己の批評活動の政治性を抑圧する傾向がある. 新歴史主義の批評方法にはさまざまの困難や問題点が見出されるけれども, それが最も刺激的で大きな可能性をもった現代の批評方法の一つであることは確かである.
  • 大西 晃生
    原稿種別: 報告
    1989 年11 巻2 号 p. 225-228
    発行日: 1989/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
  • レナート レヴイ
    原稿種別: 特別講演
    1989 年11 巻2 号 p. 229-245
    発行日: 1989/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    職業上の肉体的ストレスが多くの疾病を起こすことは多くの研究から明らかであるが, 職業上の心理的社会的ストレスに関しては明らかではない. このようなストレスは, 職業と関連した社会構造とその過程で生じ, 互いに関連をもったメカニズム(感情, 認識, 行動および生理的)によって労働者の健康に影響をもたらし, その結果は状況的因子や個人的因子で修飾される. このように, 職場環境-ストレス-健康の関係は, 多くのフィードバックループをもった動的システムである. 著者はこのシステム内の相互作用を疫学的, 実験的結果から概説し, 職業的ストレスや健康が行動に関連することと神経内分泌機構の重要性を強調した. そして今後の研究は, システム論的, 学際的, 問題解決指向的, 健康指向的(単に疾病指向的ではない)ならびに参加性指向的でなければならないことを提言した.

    (この内容は1988年10月26日に行われた第8回産業医科大学国際シンポジウムにおける特別講演に基づくものである.)
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