Journal of UOEH
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17 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 大治 太郎, 徳丸 治, 浦野 元, 松田 晋哉, 白幡 聡
    原稿種別: 原著
    1995 年 17 巻 3 号 p. 155-163
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    ヒト免疫不全ウイルス(human immuno-deficiency virus; HIV)感染症に伴う血小板減少症に関わる要因を決定するために, 我々は35名のHIV感染症罹患日本人血友病患者において血小板数と相関を示す臨床および血液検査所見をレトロスペクティブに検討した. 150, 000/μl未満の血小板減少を示した17名では, 血小板数が正常であった18名と比較して末梢血CD4+細胞が有意に少なく, さらにHIV感染症の病期がより進行している者が多かった. そこで, HIV感染症の初期の患者32名について血小板数を目的変数に, 末梢血CD8+細胞数, 血清コリンエステラーゼ値, 血清ALT値, 末梢血CD4+細胞数および白血球数を説明変数として多変量解析を行った. その結果統計学的有意性を持ってCD8+細胞数, 血清コリンエステラーゼおよびALT値が血小板数の説明変数に選ばれた. この32名の患者においてCD8+細胞数と血小板数の間には, 正の相関(r = 0.50, P < 0.01)が認められた. 本研究で, HIV感染症初期の日本人血友病患者の血小板数と末梢血CD8+細胞数の相関が示されたことから, HIV感染患者における血小板減少症にCD8+細胞数の減少が関与している可能性が推察された.
  • 大西 晃生, 森 晃爾, 藤代 一也, 郡山 一明, 宮田 正和, 村井 由之, 池田 正人
    原稿種別: 原著
    1995 年 17 巻 3 号 p. 165-172
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    自動車部品製造工場の106名の従業員を対象として, WHO神経行動コアテストバッテリーに含まれる3種類の神経行動学的検査と日本語版POMS検査を行い, 有機溶剤非曝露群男女(以下非曝露者群)45名と慢性曝露者群男女(以下曝露者群)61名との間でその結果に差があるか否かを明らかにすることを目的とした. 曝露者群では非曝露者群に比較して, 連続点書き試験および数学-符号対応試験の得点が低値(P<0.02およびP<0.01, 共分散分析法による)を示した. 曝露者群では, 連続点書き試験および数学-符号対応試験の得点とPOMS検査の疲労のスコアが正の相関(P<0.05およびP<0.01)を示した. 一方数列暗唱試験の得点については, 非曝露者群と曝露者群との間に明らかな差を認めなかった. 尿中馬尿酸値と3つの神経行動学的検査の各得点との間に有意な相関関係は認められなかった. 以上の結果より少なくとも曝露者群ではperceptual motor functionが低下していると推定された. 本研究で用いた神経行動学的検査の種類は少なく, その検査によって評価可能な神経行動学的機能に限界はあるが, これらの方法を用いた非曝露者群と曝露者群の比較により, 検索対象とした工場の従業員の曝露者群に有機溶剤の長期曝露の生体影響が存在すると考えられる.
  • S. チャタリー, B.P. チャトパジャイ, D. サハ
    原稿種別: 症例報告
    1995 年 17 巻 3 号 p. 173-189
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有した146名と正常人151名に対して肺機能テストを行った結果を報告する. COPD群を慢性気管支炎, 肺気腫, および気管支喘息のカテゴリーに分類し, 正常人と比較した. 全ての肺機能テストでCOPD群は正常人の喫煙の有無にかかわらずその機能と比較すると劣っていた. COPD群の中では肺気腫の患者で特に肺機能が低下していた. COPDの発症年令と肺機能低下との関連性は認められなかった. COPD群でFVCとFEV1の間には強い相関性がみられた. また, PVCおよびFEV1とFEF25-75%, EFF200-1200ml, FEF75-85%, MVVF, およびPEFRとの間にも正の相関関係がみられた.
  • 横崎 恭之, 城戸 優光, 永田 忍彦, 二階堂 義彦, 津田 徹, 三宅 純, 真鍋 英夫
    原稿種別: 症例報告
    1995 年 17 巻 3 号 p. 191-197
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    非膵島腫瘍に低血糖が合併することは稀である. 高度の低血糖発作を繰り返す63歳女性の右胸郭内に大きな腫瘍が発見され, 腫瘍の外科的切除により, 低血糖発作は消失した. 切除された腫瘍は限局性線維性胸膜中皮腫であった. 低血糖発作中のIRIおよびCPR, IRGF-Ⅰ, IRGF-Ⅱはすべで正常範囲であった.
  • 尾崎 真一, 中西 良一, 坂田 晃一, 光冨 徹哉, 安元 公正
    原稿種別: 症例報告
    1995 年 17 巻 3 号 p. 199-205
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    症例は54歳女性. 肺癌に対し左上葉切除を行い, 術後5日目より低Na血症を合併した. 血清ADHは正常範囲を示したが, 副腎機能異常を含む汎下垂体機能低下, 分娩時大量出血の既往およびその後の無月経等によりSheehan syndromeによる低Na血症と診断された. その後, 糖質コルチコイドの投与により低Na血症は改善され, 術後74日めに退院となった. 肺癌に合併したSIADH (syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone) による低Na血症の報告はしばしば認められるところであるが, 今回我々は肺癌術後に顕性化したSheehan syndromeによる低Na血症を経験し, その診断に難渋した. 低Na血症の鑑別診断は術前・術後管理上重要であり, 原因診断に難渋した理由を検討しつつ文献的考察を加えて報告する.
  • 佐藤 教昭
    原稿種別: 技法
    1995 年 17 巻 3 号 p. 207-213
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    ネットワーク・ニュースには多種多様の情報が蓄積されている. ネットワーク・ニュースを利用することにより, 研究室や自宅にいながらにして, 有益な情報を享受し得る. 本稿では, ネットワーク・ニュースの仕組みと産業医科大学での運用状況について概説する.
  • 中尾 美恵子
    原稿種別: 原著
    1995 年 17 巻 3 号 p. 215-228
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    「シュピーゲル」誌のベストセラーリストには, ミヒャエルエンデの作品「はてしなき物語」が3年3カ月連続1位を占め続けた. これはドイツ語の本で戦後最大の成功作品といえる. 「読者」の少年バスチャンがその本の中に自ら入って, そのファンタジーの世界の中で多くを経験し, 迷い, 問い, 考え, 失敗しつつ, 精神的成長を遂げ, 自己に目覚めるさまを, 子供向けに, 文章的には平易に, ファンタスチックな物語として書かれている. またそれと同時に, 登場人物やイメージの多義性でもって, 自由自在に物語の中で遊ぶという巧みな構成がなされ, ファンタジーを躍動させる機会を失った20世紀の大人に間接的ではあっても, ファンタジーやポエジーが, 大人の世界に広がれば, 現実社会のゆがみも是正される可能性を示唆した含蓄のある大人向けの作品でもある.
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