精神作業に伴う心身の変化を包括的に捉えることを目的とし, 長時間暗算の生理指標, 主観指標, 作業成績におよぼす影響の検討を行った. 15名の男子学生に暗算作業を10分間6試行計1時間行わせ, その前後に5分間の安静を取らせた. 各試行後と前後の安静後にフリッカー値の測定, ヴィジュアルアナログスケールを用いた疲労の程度, 疲労に関する気分, 自覚症調べの評価を行った. また, 疲労に伴って生じる音声のカオス特微量の変化を検討する目的で各試行後と前後の安静後に単音節の語(あ, い, う, え, お)を発話させ音声の録音を行った. さらに, 全試行終了後にNational Aeronautics and Space Administration-Task Load lndex(NASA-TLX)にて主観的ワークロードを評価させた. 作業中および作業前後の安静時においては, 心電図, 指尖容積脈波, 皮膚電導水準, 鼻尖部皮膚組織血液量, 呼吸を測定し, 自律神経機能の評価を行った. また10分間での回答数, 正答率および平均難易度を作業成績とした. 1時間の暗算作業により主観的疲労感の増加が示されたが, 作業成績の低下は認められなかった. また交感神経系の亢進が認められた.
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