Journal of UOEH
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29 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 垂井 愛, 田中 伸明, 戸村 恭輔, 大神 真美, 森井 宏幸, 古賀 洋介
    原稿種別: 原著
    2007 年 29 巻 2 号 p. 131-139
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    この40年間の脂質分析の蓄積によってほとんどすべての科の古細菌の極性脂質の種類が知られるようになってきたが, 硫酸還元古細菌Archaeglobus (A.) fulgidusの脂質についてはまったく情報がない. そこで, われわれが開発した脂質部品分析という簡便分析法を用いて, A. fulgidusの極性脂質の構成部品を解析した. 今回の分析の結果, コア脂質としてはテトラエーテル型のカルドアーキオールがほとんどで, 少量のジエーテル型アーキオールも存在していた. リン脂質のリン酸ジエステル結合している極性基は, イノシトールとエタノールアミンが検出された. 糖脂質の糖は, マンノースとガラクトースが主要成分であり, グルコースも少量存在していた. 2次元TLCにより, これらの脂質部品をもつと思われる約9種類の主要なリン脂質, 糖脂質, リン糖脂質の存在が確認された. A. fulgidusの全ゲノムのBLAST searchにより, これらのリン脂質の合成に関与する遺伝子が確認され, 脂質分析の結果と一致した.
  • 森本 泰夫, 保利 一, 東 敏昭, 長友 寛子, 日野 義之, 大里 厚, 内野 文吾
    原稿種別: 原著
    2007 年 29 巻 2 号 p. 141-148
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    フルフラールは無色透明な液体で, 石油精製や溶剤, ゴム添加剤などに使用され日本産業衛生学会から許容濃度が2.5ppmと勧告されているが, 管理濃度は設定されていない. フルフラールを使用する作業場の労働衛生管理を有効に行うため, フルフラールの作業環境濃度と曝露指標マーカーとして尿中のフルフラールの代謝産物である尿中フランカルボン酸を測定し, 平成16年においてフルフラール取り扱い職場にて作業環境濃度を測定した. 同作業者を対象に作業時間の問診を行い, 就業後に尿を採取しHPLCにて尿中のフランカルボン酸の測定を行った. 環境中のフルフラール濃度は期間中の濃度は1.6ppmから2.1ppmであった. 作業者の尿中カルボン酸の平均濃度は7.7mg/g-クレアチニン(3-60mg/g-クレアチニン)であった. 作業環境濃度に1ヶ月間の作業時間を乗じた平均累積曝露量(cumulative exposure to furfural)推定値は, 86.4 ± 108.6ppm時間/月(0-336ppm時間/月)であり, これを尿中フランカルボン酸と単回帰分析を行い, 平均累積曝露量と尿中フランカルボン酸は正の相関を示した. これらのことは尿中フランカルボン酸がフルフラール作業における曝露量の推定に有効でありバイオロジカルモニタリングの曝露指標になりうること, さらに環境中のフルフラール濃度測定と尿中フランカルボン酸の測定はフルフラールの労働衛生管理に有効であることを示唆した.
  • 木村 美子, 中元 洋子, 舌間 秀雄, 大峯 三郎, 井出 睦, 蜂須賀 研二
    原稿種別: 原著
    2007 年 29 巻 2 号 p. 149-158
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    6名の喫煙者と10名の非喫煙者を対象として, 漸増運動が体力や末梢循環(酸素動態)におよぼす影響について調べた. 酸素動態の計測には近赤外線分光装置を用いて右外側広筋の酸素化ヘモグロビン濃度(O2Hb)の変化量を測定した. その結果80%HRmax到達時や血中乳酸濃度2mmol/ℓ時の仕事量, VO2やHRには2群間で有意差はなかったが, 運動強度によってはRRや酸素当量が喫煙者において著明に高い傾向がみられた. O2Hbは喫煙者の内5名では運動の強度が上がるにつれて減少し続ける傾向がみられたが, 非喫煙者では8名で運動中を通じて増加し続けた. 喫煙者では中等度の運動強度でも筋の酸素需要に供給が追いついていない可能性がある. 喫煙者が運動を行う際には中等度の強度であっても末梢循環動態に十分な配慮が必要であることが示唆された.
  • 塩盛 輝夫, 宇高 毅, 橋田 光一, 藤村 武之, 平木 信明, 上田 成久, 鈴木 秀明
    原稿種別: 原著
    2007 年 29 巻 2 号 p. 159-167
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    アレルギー性鼻炎の鼻症状は身体的精神的機能へ影響をおよぼしQuality of Life (QOL) を低下させる. 本研究では産業医科大学病院および関連病院の耳鼻咽喉科外来を受診した126名のアレルギー性鼻炎の患者を対象としてRhinoconjunctivitis Quality of Life Questionnaire (RQLQ) とShort Form-36 (SF-36) の一部を用いてQOL評価を行った. アレルギー性鼻炎の症状によりRQLQスコアの低下が見られた. 鼻閉と重症度が特にRQLQスコアと相関していた. 年齢層別では感情面の因子に有意差が認められた. またアレルギー性鼻炎患者の5項目のSF-36スコアは日本人の国民標準値より低かった. 今後さらにアレルギー性鼻炎のある作業者に対してQOLの障害や作業効率の低下を検討していく必要がある.
  • 久保 陽子, 永松 有紀, 竹山 ゆみ子, 阿南 あゆみ, 川本 利恵子, 金山 正子, 村瀬 千春
    原稿種別: 原著
    2007 年 29 巻 2 号 p. 169-181
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    北部九州・中国地方で勤務する精神科病棟看護師を対象にストレスとストレス対処行動, 職務満足度の関係を調査した. その結果, 職務満足度の高い人はストレス対処能力が高い傾向にあり, 職務満足度の低い人は日常のストレスが高く, 個人特性である性格との関連も見られた. ストレス対処要因と職務満足度の関連では, 趣味・娯楽などの気分転換行動のできる人やストレスへの耐性に強い人, ソーシャルサポートのある人は職務満足度が高い傾向を示した. 特に職業的地位に対する満足度の高い人はストレス対処要因に高い傾向を示した. 反対に, 日常の煩わしい出来事に対するストレッサーの強い人は職務満足度に低い傾向を示した. また, 怒りっぽく, 神経質でType A行動パターンをとる傾向にある人は職務満足度に低い傾向を示した. これらのことから, 職務満足度にはストレッサーや対処行動だけでなく, 性格傾向も関連することが示唆された.
  • 阿南 あゆみ, 山口 雅子
    原稿種別: 総説
    2007 年 29 巻 2 号 p. 183-195
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    我が子の障害を受容する過程には, 子供の障害の内容や親の要因, さらに社会的要因など様々な因子が複雑に絡み合い, その受容過程は決して単純なものではない. 障害受容に関連する様々な要因の中で, 子供の障害の種類と程度は親の受容過程にもっとも大きな影響をおよぼすと考えられるが, 先行研究では様々な疾患を「障害」という一つの枠組みに捉えたものが多い. また子供と親が今後障害と共に生きて行く言わば出発点となる障害告知は, 障害の種類により時期や内容が異なり, 我が子の障害受容過程に多大な影響をおよぼすと考えられる. さらに母親と父親の受容過程は異なると考えられるが, 先行研究の多くは「母親」を対象としており, 「父親」を対象としたものが少ない. 今後の研究課題として障害の種類と程度を勘案した詳細な分析や告知の在り方に関する研究の集積が必要である. また母親だけではなく父親の受容過程やその家族・社会に関する研究を行う必要がある.
  • 黒田 佳子, 井出 玲子, 北野 由佳, 山本 良子, 東 敏昭
    原稿種別: 短報
    2007 年 29 巻 2 号 p. 197-202
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    地域住民を対象としたライフスタイルと自覚症状の関連を包括的に検討した先行研究はいくつか報告されているが, 職域を対象としたものはあまり多くない. 某食品会社の20-69歳の従業員4540名を対象としライフスタイルと自覚症状との関連についてとくに性差に着目し, 男女いずれかでその該当割合が10%以上の自覚症状:「とくに疲れやすい」, 「手足がむくむ」, 「肩・首がこる」, 「腰が痛む」, 「視力が低下した」, 「立ちくらみ」, 「下痢しやすい」, 「便秘しやすい」について検討した. 男女別に各自覚症状の有無を目的変数とし, 年齢・職種をモデルに入れ調整し, 各ライフスタイル非良好者と比較したライフスタイル良好者のオッズ比 (OR) と95%信頼区間 (95%CI) を算出した. ライフスタイルに関する項目は, 運動, 睡眠, 労働時間, 朝食, 栄養バランス, 喫煙, 飲酒の7項目である. 男女とも喫煙および飲酒習慣について自覚症状の項目との関連が認められ, 加えて女性では睡眠と筋骨格系症状との関連が示唆された.
  • 岩田 輝男, 岩本 謙荘, 宮崎 裕也, 原山 信也, 長門 優, 二瓶 俊一, 谷川 隆久, 相原 啓二, 蒲池 正幸, 中野 良昭, 宗 ...
    原稿種別: 症例報告
    2007 年 29 巻 2 号 p. 203-208
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    症例は54歳, 男性. 建設作業場における重量鋼材の転落事故による多発外傷で当院当科救急搬送. 外傷性急性硬膜外血腫, 頭蓋骨陥没骨折, 右環指および右小指開放骨折, 右眼外傷, 右眼瞼裂傷, 右視神経管骨折(右失明), 頬骨, 鼻骨, 上顎骨骨折の診断で, 経皮的鋼線刺入固定術(整形外科). 頭蓋形成術 + 血腫除去術(脳神経外科). 上顎骨固定, 整復術(歯科口腔外科). 眼縁縫合術(眼科)を施行. 術前から術後まで, 一貫したチーム医療で救命でき, 第45病日に独歩退院となった症例を経験したので報告する.
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