Journal of UOEH
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3 巻 , 4 号
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  • 土屋 健三郎
    原稿種別: 巻頭言
    1981 年 3 巻 4 号 p. 317-321
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    この総説は和歌山県産業保健講習会において, 昭和56年2月, 和歌山県の産業医の方々に講演した内容の概略である. 医学が社会の産業化に充分に対応できなかったことは, 公害の発生や職業病多発の原因のひとつであると卒直に認めざるを得ないであろう, そこで本論文においては, 産業医学の発展のあらましを述べ, また, 産業が環境に対して地域的あるいは地球全体に大きな衝撃を与えた事実の一部を紹介する. そして, そのような産業と環境の変化に対してどのように医学およびその周辺分野が対応すべきかについて論ずる. 特にこの対応の中で,医学を中心とする「産業生態科学」を提唱し, その内容について概略を紹介することとする.
  • 伊藤 秀三, 神野 展光, 北沢 右三, 八巻 敏雄
    原稿種別: 原著
    1981 年 3 巻 4 号 p. 323-337
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    1)医生ケ丘をふくむ北九州市西部は, 全域が照葉樹林域にある. 残存林分の調査によって, 沿岸地帯-内陸の原植生が推定され, 医生ケ丘一帯はスダシイ-ミミズバイ群集域であることが明らかとなった. 2)現存植生の二次林は, シイ-カシ萌芽林とカラスザンショウ群落が優勢である. 医生ケ丘の二次林では, コナラが優占し, ハゼノキ・ノグルミが常に出現する. 向陽地では林床にウラジロまたはコシダが優占している. 3)湿地にはガマ・ヒメガマ・イグサが優占する. 4)医生ケ丘で種子植物131種, シダ植物8種を記録した. 5)大学構内の緑化について, 植生学の立場から付言し, 特に残存林および西北部の湿原群落の保存の重要性を指摘した.
  • 実藤 隼人, Barry M. HEATFIELD, Benjamin F. TRUMP
    原稿種別: 原著
    1981 年 3 巻 4 号 p. 339-346
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    若い成人のimmediate autopsyより得られたヒト正常前立腺を走査型電子顕微鏡で観察した. 正常前立腺には5種類の細胞が区別され, microvillar, crater, secreting, holey, bare cellと名付けられた. Microvillar cellは多数のmicrovilliを有し, secreting cellは活発な分泌活動を示した. Holey cellは細胞表面に小孔を有し, crater cellは細胞膜が破壊され,細胞表面にcraterを形成していた. Bare cellは, microvilliが周辺に僅かに残存するのみで, 細胞表面は平滑であった. これらの細胞は何れも同種細胞であり, 機能的な時期的相違および人工的変化であると考えられた. 手術例より得られた良性前立腺肥大との差異は, 特に認められなかった.
  • 鈴木 勝己, 伊地知 正光, 松木 孝行, 関 昭夫, 田中 宏道, 門司 幸一, 中島 清春
    原稿種別: 原著
    1981 年 3 巻 4 号 p. 347-362
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    手の種々の機能の数量表示が行われて来ている. 然し, これ等の正常値が色々な環境や個人の条件で, どう変動するかの報告は少ない. そこで一連の基礎的な生理学的な実験を行った. 手の種々の機能の中で3つの示標を選んだ. 即ち, 指皮温, 指振動覚, ピンチカ. 環境条件として, 10℃, 湿度50%と30℃, 湿度50%の2つを選び, 負荷テストとして一側手の冷水浸漬を夫々の環境下で, 21健康成人男子に実施し, 3示標の経時変動を測定した指皮温は, 高令群で梢高く, 浸漬手指皮温の40分間後の回復は, 30℃室内で, より円滑, 浸漬手のピンチカは, 減少し, これは, 10℃室内で著明. 指振動覚は同様に浸漬手指で鈍麻化した.
  • 田岡 賢雄, 遠藤 高由
    原稿種別: 原著
    1981 年 3 巻 4 号 p. 363-373
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    1968年Lichtensteinらがリンパ球内サイクリックAMPが生体内の免疫機構の調整に関与している可能性を示唆して以来, この問題については今日までに多くの研究があり, サイクリックAMPレベルの増加はT細胞機能に対して抑制的に, PHA刺激後のサイクリックGMPレベルの増加はT細胞機能に対して促進的に働くことが明らかとなり, サイクリックAMPとサイクリックGMPとは生体の免疫機構に対し相互に拮抗的ないし相補的に作用することが明らかとなった. しかし, ヒト・ウィルス肝炎についてこの点を検討した報告は未だなく, この点を中心に追究するとともに, 合わせて血清免疫抑制因子との関連についての基礎的検討を行った. 著者の成績によればT-細胞機能の低下がみられる慢性活動性肝炎では慢性非活動性肝炎や健常例に比して, T-リンパ球内サイクリックAMPの増加, PHA刺激後サイクリックGMP増加率の低下が認められ, 細胞性免疫の抑制が示唆された. この場合HBsAgの有無との間には関連はみられなかった. 一方, in vitroの実験ではT-リンパ球内サイクリックAMP含量はPFC%よりみた抑制性T細胞(サプレッサーT, Ts)機能とよく並行しており, またリンパ球培養液中に添加した細胞性免疫抑制因子と考えられているα1-酸性糖タンパク(α1-AG)やα2-マクログロブリン(α2-M)の濃度ともよく並行しており, これら培養液中の血清抑制因子がリンパ球内ヌクレオチドの含量に大きな影響を与えていることが判明した. 以上, ヒト・ウィルス肝炎においてもT-リンパ球内サイクリック・ヌクレオチドはその増減を介してT細胞機能を調節し生体の免疫機構に関与していることが強く示唆された.
  • 田代 信維
    原稿種別: 原著
    1981 年 3 巻 4 号 p. 375-384
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    ジフェニールヒダントイン(DPH)は最も愛用されている抗てんかん剤の一つである. その作用部位の1つにプルキンエ細胞(PC)があり, その細胞の自発発射放電を増強させることがわかっている. さらに, てんかん発作の源からおこる放電を抑制する作用部位が脳内に数か所あるが, 小脳からの抑制作用が最も安定していることがわかっている. そこで小脳皮質からの唯一の出力神経線維であるプルキンエ細胞の活動に対するDPHの効果について調べてみた. 下オリーブ核を二重または多重電気刺激すると登上線維によって小脳プルキンエ細胞の反応は促通し大きくなり, つづいて抑制がおこる. DPH(50 mg/kg)の腹腔内注射によって, この促通はさらに亢進し, 特にテタヌス刺激中増大をつづけ, 200Hzの頻度の刺激に対しても同様の現象がみられた. 小脳のプルキンエ細胞軸索のクロナキシーはDPHの処理によって何ら変化がみられなかった. これらの結果から, てんかん発作に対するDPHの抑制効果の1つとして, 下オリーブ・小脳系におけるシナプス伝達の促通によるプルキンエ細胞の活動の増強が関与することが示唆される.
  • 山岸 稔, 朝倉 昭雄, 野崎 秀世, 渡辺 登, 小口 弘毅, 阿部 由起子
    原稿種別: 原著
    1981 年 3 巻 4 号 p. 385-401
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    小児の赤血球膜の電解質・プリン代謝酵素に対する調節機構を評価する目的で, 対照的な2病態として血清電解質異常と赤血球プリン代謝酵素活性異常を比較検討した. このうち血清電解質異常例には, 高K血症を伴った遠位型の腎尿細管性アシドーシス(RTA)の4歳男児例を選んだが, RTAの遠位K排泄障害型の報告例は本邦では最初(世界3番目)である. また赤血球プリン代謝酵素活性異常例には, 赤血球adenosine deaminase(ADA)高値を示した遺伝性球状赤血球症(HS)の一家族(両親・子供3人)を選び, 子供のうち弟妹が溶血性クリーゼを起こした際に全員測定を行った. その結果まずRTA症例は, 血清K値上昇(高K血症)に伴い赤血球K値の上昇も示した. しかし総合的な膜機能によるK取込みとNa汲出しが強力に認められたのは (赤血球K>血清K, 赤血球Na<血清Na), HSのクリーゼ弟妹例であり, ほかにRTA例でも増強が一時的(KCl負荷テスト中)にみられた. 次いで膜機能に関与するプリン代謝酵素の1つと見なされたnucleoside phosphorylaseは, HSの子供3人とも高い活性値を示したほか, ATPによって阻害されることが推測された. 同時に膜機能と直接的関与がみられなかったADAは, ATPによって刺激されることが今回・以前の成績を合わせて推測された.
  • 嵐谷 奎一, 吉川 正博, 児玉 泰
    原稿種別: 原著
    1981 年 3 巻 4 号 p. 403-410
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    高速液体クロマトグラフィーによる多環芳香族炭化水素(PAH)の簡易分析法について研究を行った. PAHの保持時間の対数とカラムの絶対温度の逆数との間に直線関係が得られ, またPAHの構成炭素数および二重結合数と保持時間の対数との間にもほぼ直線関係のあることが判った. 螢光法を用いたPAHの検出限界(S/N=2)は4-55pgであった. 分光螢光検出器付き高速液体クロマトグラフィーによって, 大気浮遊粉じんおよび降下じん中より11種のPAHが同定された. さらにその中のベンゾ(a)ピレンを含む5種のPAHを精度よく定量出来ることが明らかになった.
  • 高木 俊明
    原稿種別: 原著
    1981 年 3 巻 4 号 p. 411-415
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    犬の右心房に超音波トランスデューサーを埋込み, 右心房に於ける超音波パルスの伝播時間を電気信号に変換し, この情報を背部に装着した小型送信機から無線伝送する事により, 無拘束状態での犬の右心房径を連続的に遠隔測定するためのバイオテレメトリを開発した. なおこれは左心室径, 血管径等の測定にも応用する事が可能である.
  • 阿部 和彦
    原稿種別: 総説
    1981 年 3 巻 4 号 p. 417-423
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    分裂病の双生児調査によれば, 一卵性で一致率が有意に高い, また分裂病の母親から生まれて養子になった人々の中での分裂病の発生率は, 養子に行かなかった場合と差がない. したがって分裂病に遺伝因子が関与していることは確実と考えられる. しかし環境の影響も無視出来ない. 一部の抗コリン剤や交感神経刺激剤は分裂病の発病, または再発を容易にする可能性があり, 発病は季節の影響を受けやすい. また, 周生期障害や小児の脳器質障害も分裂病を発病しやすくする可能性がある. 家庭環境としては. 例えば比判的な家族員と長時間接触するような生活をすれば再発が起りやすいという所見がある.
  • 野田 浩司, 峯本 正夫, 野田 敦子
    原稿種別: 総説
    1981 年 3 巻 4 号 p. 425-439
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    ヒトの体液中に存在する亜硝酸イオンは, 主として2つの経路により取り込まれたものである : 1)自然界に広く分布する硝酸イオンが野菜などの食品を介して体内に摂取され, 消化管内微生物によって還元されたもの 2)肉製品, チーズ等の防腐剤, 醗酵調整剤および発色剤として添加されている亜硝酸塩. 亜硝酸イオンは, それ自身有害であるが, その他, 消化管内条件下で食品中に含まれるアミン類と反応して肝毒性および発癌性を有するnitrosamineを生成することで著名である. 本論文では, 自然界, 食品および体内における亜硝酸塩の消長とその毒性について簡単にふれ, ついで, 亜硝酸イオンが各種アミン(脂肪族および芳香族の1級・2級ならびに3級アミン, あるいはヒドラジノ誘導体)と反応して生理活性を有するnitrosamine, triazeneおよびazide中間体を経る閉環体, あるいは脱アミノ化合物を生成する能力を生物有機化学的見地よりまとめ, 亜硝酸イオンの多彩な反応性を示した.
  • 田岡 賢雄, 尾関 恒雄, 阿南 郷一郎, 森田 翼, 三浦 良史
    原稿種別: 調査報告
    1981 年 3 巻 4 号 p. 441-457
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    福岡県における肝硬変死亡率は人口10万当りおよそ20人で全国平均の約1.5倍である. 一方, 原発性肝癌はおよそ15人でこれも全国平均の約1.5倍である. アルコールの成人1人当り年間消費量は7.5-8.0ℓで全国的に第17-19位であり, 最高(10 ℓ)と最低(5 ℓ)の中間よりやや上位という所である. またHBs抗原については福岡県血液センターでの献血希望者からみたところ, その陽性率は2.6-3.1%で, これも全国平均1.9%のおよそ1.5倍である. 福岡県下の飲料水の原水となっている遠賀川流域ならびに筑後川流域の水質には総鉄量が多いことを除いては. とくに異常はみられなかった. 福岡県で肝硬変・肝癌死亡率がとくに高いのは筑豊の数か町村でありこの一帯は被生活保護率もとくに高い. 以上, 福岡県に肝硬変・肝癌患者が多くその死亡率も高いのは, 多因子に由来するものと思われ, 単一の因子でこれを説明することは困難である. 今後の問題としては福岡県下住民の免疫遺伝学的考察も必要であると考える.
  • 伊藤 幸郎
    原稿種別: 人間学
    1981 年 3 巻 4 号 p. 459-468
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    今日, 文明社会では大多数の人間が病院内で死を迎えるが, 病院の臨死患者の取り扱いにおける非人間性が問題になっており, 尊厳死, 安楽死などの議論を生んでいる. 末期患者との人間的接触を避け, ひたすら延命処置のみをはかる医師の態度には, 医師自身の死への恐怖が投影されている. 死に伴う肉体的苦痛は除去できても, 自身の死に対する恐怖は従来の医学の対象外であり, 死をみとる医学が新たな分野として開発されねばならない. それには, 癌を告知するか否よりも, 患者の死を予期した医師側の死生観ないし治療的自我の確立が重要である. まず, あまりにも高度に専門化した医学教育の場に人間性を回復しなければならない. 死の問題は生涯教育の対象であり, 一方的に講義されるべきものではない. ここでは各人が教師であり, かつ生徒である. "生涯にわたって哲学する医師"の姿は臨死患者を前にした主治医の中に最もよく見現されるだろう.
  • Chandler McC. BROOKS
    原稿種別: 人間学 / 招請論文
    1981 年 3 巻 4 号 p. 469-480
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    人間は一種の動物であり, かつ理性をもった存在である. 生命の倫理はこの二つの側面をもっている. 生物の目的は生存であり, 生存のための条件を満たすことが生物学的な善である. 種の生存のための共同生活の総和として生物界は生態学的なバランスを保っているが, これを破壊する人間の行動は悪である. 生物学的倫理をコントロールするのは理性的倫理である. 常に未来に理想をもつ人間は, 神と人間理性の両者をよりどころとして善悪の観念を発展させてきたが, 現代ではその基準が混乱し, 様々な矛眉を生んでいる. 科学者はもはや常に真理の探究に止まらず, 科学の倫理を追求しなくてはならない. 医師の戒律は古来からいろいろあるが, 現代は昔の理想を忘れて医の倫理を法制化して事足れりとする傾向がある. 人類の最大幸福につながる生命の倫理を確立するためには, その前提として, 個人の責任にもとづいた思想・研究の自由が保障されるべきである.
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