金属の変異原性について, 酵母の細胞質性呼吸欠損変異誘発と, 核性の3種の異なるタイプの変異, すなわちmitotic crossingover, mitotic gene conversionとreversionの誘発の面から検討した. 呼吸欠損変異の誘発では, カドミウムが最も高い活性を示し, 次いで銅, マンガン, 水銀が陽性であった. また用いたすべての金属は, 非常に強い殺菌作用を示した. Diploid酵母を用いての核性の変異誘発は, コバルト, クロム, 鉛, 砒素, マンガン, ニッケル, 亜鉛, 銅, カドミウム, 水銀などの金属について行った. これらの金属は, diploid酵母に対しても強い殺菌効果を示し, 10
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-4Mの濃度の間で生存率を急激に低下させた. しかしながらmitotic crossingoverはどの金属の場合にもあまり起こらず, コントロールとの間に有意の差は認められなかった. Mitotic gene conversionについては, コバルト, クロム, 砒素, カドミウムが強い活性を示し, 更にconvertant中のcrossoverはクロム, マンガン, ニッケル, カドミウムによって強く誘起された. また鉛, 水銀は, mitotic gene conversionについては活性が低いが, その中のcrossoverを濃度の上昇と共に増加させた. 亜鉛と銅においては, このような活性が殆ど認められなかった. また点変異であるreversionについては, マンガンにおいて強い活性が認められ, 他の金属ではrevertantの数も少なく, そのcrossoverは全く認められなかった.
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