Journal of UOEH
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36 巻, 1 号
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[原著]
  • 川波 祥子, グェン チィト ウェン, 井上 仁郎, 河井 一明, 堀江 正知
    2014 年 36 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/14
    ジャーナル フリー
    2ヶ国のコークス炉工場周辺地域に居住する,喫煙習慣のない事務作業員の多環芳香族炭化水素(PAHs)への曝露について,PAHsの代謝産物として知られる尿中1-hydroxypyrene(1-OHP)濃度を測定することで評価した.対象は北九州市(日本)より10人,タイグエン市(ベトナム)より20人の非喫煙事務作業員とした.Jongeneelenらによる高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法を参考に測定条件を最適化し,PAHsの代謝物である尿中1-OHPを測定した.用いた測定法は,少量の検体と短時間のインキュベーションで測定が可能で,検出下限値は0.00448 ng/mlと非常に低く,実用的で高感度だった.尿中1-OHPの中央値は,ベトナム(0.417 ng/mg creatinine)が,日本(0.069 ng/mg creatinine)の約6倍と有意に高かったが(P < 0.001),いずれも遺伝毒性のリスクとなる基準値を大きく下回り,健康に及ぼす影響は低いと考えられた.また,両国の測定値とも非工業地域の非喫煙住民を対象とした先行研究と比較して高く,工場排気による空気汚染が重要なPAHs曝露の原因であることが示唆された.性別や生活習慣の違いによる有意差は認めなかった.
  • 松本 泰幸, 二瓶 俊一, 遠藤 武尊, 金澤 綾子, 荒井 秀明, 長田 圭司, 伊佐 泰樹, 中村 元洋, 原山 信也, 相原 啓二, ...
    2014 年 36 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/14
    ジャーナル フリー
    乳酸クリアランスと心停止症例の死亡率低下との関連が報告されているが,心停止蘇生後の症例における神経学的転帰との関連は明らかではない.今回我々は2006年4月から2012年3月まで産業医科大学病院へ搬送された心室細動誘因心停止症例で,低体温療法を実施した13症例(男性11名,女性2名)の乳酸クリアランスを算出し,神経学的転帰良好群7名,不良群6名の2群に分類し比較検討を行った結果,来院8時間後乳酸クリアランス,来院24時間後乳酸クリアランスは2群間で有意差を認めなかったゆえ,乳酸クリアランスのみで,心室細動誘因の心停止症例の神経学的転帰を予測することはできないことが示唆される.
  • 平 大地, 小川 みどり, 石井 達也, 郷野 開史, 坂本 卓郎, 山村 走平, 舛本 直哉, 安冨 真道, 酉 春霖, 福田 和正, 谷 ...
    2014 年 36 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/14
    ジャーナル フリー
    手洗いおよび手指消毒は感染防止策として非常に重要なものであり,速乾性擦式消毒剤による手指消毒はその有効性が広く知られている.我々は,速乾性擦式消毒剤の有効性の検証中に消毒剤を用いず手を擦るだけで減菌効果があると考えられる例を経験した.本研究では47名54検体について,3分間の消毒剤を用いないウォーターレス擦式手洗いで減菌効果が示されるかどうかを検証した.判定不能例12検体を除き,42検体中36検体,85.7%の検体で減菌効果を示し,平均減菌率は49.4%,もっとも効果を示した検体では98.3%であった.また,もっとも減菌効果を示す手洗い時間は,個人間で差はあるが2分程度が適当であると考えられた.以上より,消毒剤を用いないウォーターレス擦式手洗いの減菌効果が示され,本手洗い方法は,水も消毒剤も使用できない災害時などの緊急時において,代替手洗い方法として使用できる可能性が示唆された.
[総説]
  • 岡﨑 龍史
    2014 年 36 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/14
    ジャーナル フリー
    1895年にレントゲンがX線を発見した翌年には,手の皮膚炎が約60件,また脱毛の報告がされている.慢性放射線皮膚炎はX線管の製作者や医師・技師などX線を職業として扱う人に現れ,これが最初の職業被曝である.その後皮膚がんを含めた晩発障害の発生は医師・技師の深刻な職業病と捉えられている.1910年代に放射線を扱っている人の血液障害,特に白血病の発生が目を引くようになった.1914年頃からダイヤルペインターが夜光時計文字盤にラジウムを混ぜて塗布したことによる骨髄炎が生じている.その他放射線による障害は,1986年チェルノブイリ原子力発電所事故における放射線死や発がん,1999年東海村JCO臨界事故における放射線死などがある.2011年東京電力福島第一原子力発電所事故における放射線障害はまだみられていないが,今後のフォローは必要である.
[症例報告]
  • 青山 雄一, 大田 信介, 榊 三郎, 西澤 茂
    2014 年 36 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/14
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の男性,脳梗塞初発時に左中大脳動脈(MCA)高度狭窄と脳血液循環障害が疑われ,血行再建術の適応が考慮された.しかし患者本人の社会的要因もあり,保存的加療にて経過観察を行った.その後,患者の退職直後に左MCA領域の広範な脳梗塞を再発,血圧低下,高度な貧血と緊急内視鏡にて活動性の出血性胃潰瘍を認めた.MRIでは新たな血管病変や脳塞栓を疑う所見は認めず,高度な貧血と血圧低下による循環動態障害が一因となって脳梗塞を再発したと判断した.胃潰瘍は過去に既往がなく,H. pylori菌抗体も陰性であったため,就業面での環境変化が原因のストレス性胃潰瘍と推測した.産業衛生の立場では労働環境のストレスが胃潰瘍のリスクであることが知られており,臨床的には見落としがちとなる患者の社会的側面にも配慮が必要と考えられた.
[報告]
  • 内藤 裕太郎, 木村 美子, 橋元 隆, 森 政男, 竹本 良美
    2014 年 36 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/14
    ジャーナル フリー
    転倒は,在宅における脳卒中片麻痺者の生活のあらゆる場面でみられるが,その原因の一つとしてつま先離れ(toe clearance)の問題がある.しかし,転倒の原因は一様ではない.今回我々が開発した靴中敷(インソール) 式足圧力モニター装置は,測定場所を選ばず手軽に足圧力分布や足圧力曲線を測定・記録できる.この装置を用いて,20 名の慢性期片麻痺者を対象に,屋内平地歩行時の足圧力分布と足圧力曲線を測定した.さらに,1症例に対して,屋外平地,砂利道,階段昇段や坂道下り歩行時に同様の測定を行った.屋内平地歩行時は,非麻痺側踵部の荷重比が有意に高く,また,麻痺側立脚期割合と10 mの歩行時間の間に負の相関(r = -0.73,P < 0.01)が認められた.屋外歩行では,状況に合わせて非麻痺側の足圧力曲線が変化しており,麻痺側においては遊脚期移行時のつま先の床離れが遅延していた.今回の結果から,屋内平地歩行や屋外歩行時の非麻痺側依存性とtoe clearanceの問題が確認された.
[資料]
  • 栗山 真也, 齊藤 匡俊, 古内 高志, 村松 圭司, 酒井 誉, 久保 達彦, 松田 晋哉
    2014 年 36 巻 1 号 p. 49-60
    発行日: 2014/03/01
    公開日: 2014/03/14
    ジャーナル フリー
    岩手県は面積が広く人口密度が低い県であり,効率的に医療を提供するための仕組みが必要となっている.本県の保健医療計画には一般的な医療サービスを提供する医療圏である2次医療圏が9つ設定されている.また,岩手県内に診断群分類(DPC)に基づき定額支払い制度を導入している病院(DPC対象病院)が14施設あるが県行政の中心である盛岡医療圏に4病院が集中している.今回我々は岩手県のがん診療のあり方を考察するため,厚生労働省が公開しているDPCデータを用いて肺がん,胃がん,肝臓がん,大腸がん,乳がんの5大がんについて月別患者数推移,DPC対象病院ごとの受け入れ可能患者数推計および実績数との比較を行った.岩手県ではがんの種類によって受療動向が異なることが明らかになった.また,効率的ながん医療の提供のため,医療圏の見直しおよび県内DPC病院の診療機能のすみわけを行うことが望ましいと考えられた.
[抄録集]
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