Journal of UOEH
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36 巻, 2 号
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[原著]
  • 馬田 敏幸
    2014 年 36 巻 2 号 p. 105-114
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/14
    ジャーナル フリー
    ヘパリン結合性上皮成長因子様成長因子(HB-EGF)は,創傷治癒,動脈硬化および癌増殖など多くの生理的,病理的過程に関与している成長因子である.HB-EGFは膜型として合成され,細胞表面でプロテアーゼにより切断・放出(エクトドメイン シェディング:シェディング)されて増殖活性を獲得する.この研究では,HB-EGFをサルの腎細胞に高発現させたVero-H細胞を使って,HB-EGFのシェディングへの活性酸素種(ROS)の関与を調べた.ホルボールエステル(TPA),G蛋白質共役型受容体(GPCR)のリガンドであるリゾホスファチジン酸(LPA)やストレスとしてのソルビトール刺激により誘発されるHB-EGFのシェディングは,それぞれプロテインキナーゼC(PKC)-δ,古典的MAPキナーゼおよびp38MAPキナーゼを介して誘発された.この刺激誘発によるシェディングをN-アセチル-L-システイン(NAC)が阻害したことより,HB-EGFの刺激誘発によるシェディングへROSが関与することが示唆された.それぞれのキナーゼの特異的阻害剤がシェディングを阻害したので,シグナル経路は独立していると思われる.一方,ガンマ線照射は細胞内に活性酸素種を産生したが,HB-EGFのシェディングを誘発しなかった.これらの結果を総合すると,ROSの産生とタンパクキナーゼの活性化が相乗的に作用してHB-EGFのシェディングが誘発されることが示唆された.
[総説]
  • 久岡 正典
    2014 年 36 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/14
    ジャーナル フリー
    脂肪芽細胞は概念的に脂肪細胞の前駆的細胞ないし未成熟な細胞であり,組織学的には脂質を含んだ単ないし多空胞状の細胞質と陥凹し,しばしば帆立貝様の濃染性核を持つことを特徴とする.主として腫瘍性疾患において見られるが,前脂肪細胞のように正常脂肪組織の分化過程をある程度再現する細胞とみなされている.伝統的にその存在は特に脂肪肉腫の診断において強調されてきたが,Lochkern細胞や褐色脂肪,偽脂肪芽細胞などの組織学的に脂肪芽細胞と類似した細胞も存在することから,病理医にとっては脂肪芽細胞の同定は必ずしも容易でない.また,脂肪芽細胞は脂肪肉腫の適切な診断のために依然として重要ではあるが,脂肪芽腫や軟骨様脂肪腫,紡錘細胞・多形脂肪腫といった良性脂肪性腫瘍にも認められることがあるなどの理由で,今日の脂肪肉腫の診断における必須の条件とはなっていない.本総説では,日常の病理診断を容易にすると共に誤診の回避にも役立つように,脂肪芽細胞や脂肪芽細胞の見られる良性腫瘍および脂肪芽細胞類似細胞の臨床病理学的特徴を要約する.
[症例報告]
  • 大江 晋司, 渡邊 龍之, 久米 惠一郎, 柴田 道彦, 日浦 政明, 芳川 一郎, 原田 大
    2014 年 36 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/14
    ジャーナル フリー
    症例は74歳男性.吐血を主訴に当科入院となった.上部消化管内視鏡検査にて胃噴門部に暗赤色の巨大腫瘤を認め,腫瘤は上部食道へ連続していた.生検では血液成分を認めるのみで,悪性所見は指摘できなかった.ランソプラゾール30 mgの1日2回の静注投与開始後,5日間で腫瘤は潰瘍を形成した.以後はラベプラゾール10 mgの1日1回の経口投与へ変更し,2か月後に瘢痕化した.保存的加療のみにて腫瘤の消褪を認めたことから,我々は本例を胃食道粘膜下血腫と診断し得た.胃食道粘膜下血腫は比較的まれな症例であるが,本症例では内視鏡にてその消褪経過を観察することが可能であった.
[症例報告]
  • 豊田 知子, 赤松 直樹, 辻 貞俊, 西澤 茂
    2014 年 36 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/14
    ジャーナル フリー
    近年,成人発症内側側頭葉てんかんの一因として抗Voltage-Gated Potassium Channel (VGKC) 複合体抗体関連辺縁系脳炎が報告されている.我々は50歳時にてんかん発作を発症した53歳の女性について報告する.初発てんかん発作の2か月後に施行された3.0テスラ頭部MRI検査では,フレアー法とT2強調画像にて左海馬高信号および腫脹を認めた.メチルプレドニゾロン経静脈的投与およびカルバマゼピンの経口投与を行い,治療1か月後の頭部MRI検査では左海馬異常所見の改善を認めた.その後てんかん発作を認めていなかったが,初発てんかん発作から3年後の脳波検査ではてんかん発作パターンを認め,頭部MRIにて左海馬高信号,FDG-PETにて同部位の集積亢進を認めた.血清VGKC抗体は118pM(正常値 < 100 pM)であった.ふたたびメチルプレドニゾロンの経静脈的投与を行った.2か月後には頭部MRI所見は改善し,3か月後にVGKC抗体は4.4 pMまで低下し,てんかん発作も寛解した.本例は中年期に内側側頭葉てんかんを発症しており,その原因として抗VGKC複合体抗体関連辺縁系脳炎が考えられた.原因不明な成人発症内側側頭葉てんかんでは,本例のように免疫学的療法が奏効する抗VGKC複合体抗体関連辺縁系脳炎を鑑別に入れる必要がある.
[原著]
  • 片野 秀樹, 横山 久美, 武井 泰, 田爪 正氣, 築地 真実, 松木 秀明
    2014 年 36 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/14
    ジャーナル フリー
    温水洗浄便座は,排便時における清潔維持,便秘や痔の予防・改善に役立つ器具として広く使用されている.我々は,温水洗浄便座局部洗浄水中の細菌,排便後の局部洗浄水の飛沫によって引き起こされる臀部・股間に付着する糞便細菌について調査し,温水洗浄便座の使用に潜む問題について検討した.本研究結果により,温水洗浄便座局部洗浄水中の細菌生息が確認され,さらに一般家庭の局部洗浄水中生菌数は公共施設のものに比して約3倍多いことが明らかとなった.これは,補水が少頻度の一般家庭においては残留遊離塩素が揮発したためと考えられた.一方,排便後の局部洗浄より,臀部・股間における糞便細菌の付着が確認され,洗浄後に臀部において糞便細菌の飛沫付着が確認されたことから,医療従事者は,局部洗浄水利用者との接触感染に注意が求められる.
[総説]
  • 園本 格士朗, 山岡 邦宏, 田中 良哉
    2014 年 36 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/14
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ(RA)は関節炎と関節の構造的障害を特徴とする疾患で,進行すると身体機能障害を引き起こし,就労率の低下や介護といった社会資源の損失をもたらす.元来RAは進行性の疾患と考えられていたが,近年の治療の進歩により関節破壊の完全な進展抑制が現実的となった.しかし,罹病期間が長く新治療の恩恵を受けられなかった,または新治療によっても疾患活動性が制御できないなどの理由で進行した関節破壊を呈する患者は稀でなく,破壊関節を再生しうる治療法の開発が待たれている.我々は,骨・軟骨に分化可能で抗炎症作用を持つ間葉系幹細胞(MSC)による治療をRAの新規治療法として位置づけ,これまでにMSCが破骨細胞分化抑制作用を持つこと,炎症がMSCの骨芽細胞分化を促進し,軟骨細胞分化を抑制することを報告した.さらに現在,足場によるMSC移植システムを構築中であり,RA患者への臨床応用は着実に近づきつつあると考えられる.
[症例報告]
  • 石本 裕士, 矢寺 和博, 小田 桂士, 川波 敏則, 早田 宏, 河野 茂, 迎 寛
    2014 年 36 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/14
    ジャーナル フリー
    亜鉛含有防錆剤に関連した急性呼吸窮迫症候群を呈した2例を報告する.症例1は,亜鉛を主成分とする防錆剤で加工された鉄板をアセチレンガスバーナーによって整形作業(歪み取り)している最中に急性呼吸窮迫症候群を生じていた.症例2は,亜鉛を多く含んだ防錆剤をエアレスコンプレッサーにて塗布する作業中に急性呼吸窮迫症候群が発生していた.両者ともに船倉内で防護具の使用を怠り作業にあたっていたことから,亜鉛ヒュームおよび亜鉛粉末の吸入が発症要因と考えた.本2症例の臨床経過は,金属熱様の症状とともに急速進行性の重篤な呼吸不全を呈し人工呼吸管理を必要としたが,その後の治療経過は良好であるなど類似点が多くみられた.
[短報]
  • 樋上 光雄, 石松 維世, 保利 一
    2014 年 36 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/06/14
    ジャーナル フリー
    吸光光度分析法とクリスタルバイオレットによる細菌染色を組み合わせることにより,空気中細菌数濃度を迅速に測定する方法について検討した.環境から分離した細菌を大腸菌換算数3.0×108 colony forming units(CFU)/ml に調整した菌液を原液とし,10倍希釈系列を作成した.作成した各菌液を遠心分離後,上清を除き,クリスタルバイオレット溶液を加え染色を行った.その後,再び遠心分離を行い得られた上清を未吸収試料とし,残った菌体の洗浄を2回行い,洗浄後の染色された菌体にエタノールを加え,菌体から回収した上清を回収試料とした.この試料の高速液体クロマトグラフィーでは染色物質のピーク以外は認められなかった.吸光光度分析の結果,定量下限菌数は,大腸菌換算数として未吸収試料で3.0×107 CFU/ml,回収試料で3.0×108 CFU/ml となり,未吸収試料の方が少ない値となった.
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