Journal of UOEH
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37 巻 , 4 号
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[総説]
  • 東 華岳, 安達 泰弘, 林 春樹, 久保 金弥
    2015 年 37 巻 4 号 p. 245-253
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/13
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症は骨量の減少と骨質の劣化が特徴で,骨折しやすくなるもっとも一般的な代謝性骨疾患である.超高齢社会の到来を受け,骨粗鬆症は大きな社会問題になっている.一方,生体はつねにさまざまなストレスにさらされ,その生理機能に影響を及ぼしている.最近の研究によれば,慢性の精神的ストレスがさまざまなシグナル経路を介し骨粗鬆症の危険因子である.本総説では,慢性の精神的ストレスと骨粗鬆症との関連性について,最近の進展状況を概説する.中枢神経系,特に視床下部による骨代謝調節機構の存在が明らかにされてきた.ヒトおよび動物研究によると慢性の精神的ストレスが視床下部-下垂体-副腎皮質系,交感神経系,および内分泌・免疫系への影響を介して骨量を低下させ,骨質を悪化させる.噛む動作にはストレス緩和作用があることが証明されている.噛む動作は,ストレス誘発神経内分泌反応を弱め,ストレス性骨量減少を改善する.したがって,噛む動作は,慢性の精神的ストレスに関連する骨粗鬆症の予防・治療において,有用なアプローチになりうる.また,慢性の精神的ストレス,噛む動作と骨粗鬆症との相互関係についてのメカニズムも考察した.慢性の精神的ストレスは視床下部-下垂体-副腎皮質系と交感神経系を活性化させ,性ホルモンと成長ホルモンを抑制し,炎症性サイトカインを増加させ,骨形成の抑制と骨吸収の促進により最終的に骨量減少を引き起こす.
[報告]
  • 笛田 由紀子, 金光 雅成, 江川 純恵, 石田尾 徹, 上野 晋, 保利 一
    2015 年 37 巻 4 号 p. 255-261
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/13
    ジャーナル フリー
    1-ブロモプロパン(1-BP)は洗浄やスプレー接着剤の溶剤として用いられている.1-BPの有害性はヒトの事例や成獣を用いた動物で報告されてきた.発達毒性も報告されてはいるが,発達神経毒性についての詳細はわかっていない.我々は,1-BPの胎生期曝露が,発達期ラットへのカイニン酸投与により誘導される行動,すなわちscratching行動やwet dog shake様行動に及ぼす影響を調べた.ウィスター系妊娠ラットの妊娠1日目から20日目まで(6時間/日),濃度700 ppmの1-BP蒸気を曝露した.生後14日目の対照群と1-BP曝露群にカイニン酸を0.1,0.5,2.0 mg/kgで腹腔内投与した.Scratching行動に関しては対照群と1-BP曝露群に違いは見られなかったが,wet dog shake 様行動に関しては,低濃度である0.1 mg/kgにおいて発生率の低下が1-BP曝露群で見られた.1-BP胎生期曝露が発達期の神経行動に影響することが示唆された.
[原著]
  • 松岡 朱理, 立石 清一郎, 五十嵐 侑, 井手 宏, 宮本 俊明, 原 達彦, 小橋 正樹, 井上 愛, 川島 恵美, 岡田 岳大, 森 ...
    2015 年 37 巻 4 号 p. 263-271
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/13
    ジャーナル フリー
    自然災害や工場事故などの危機事象が発生した企業においては,労働者はさまざまな対応を余儀なくされ,直接的に傷病を負う労働者だけでなく,緊急対応や復旧作業に従事する労働者も多様な健康障害リスクに曝される.そのような健康障害リスクに対して,産業保健専門職の予防的介入に役立つ危機対応マニュアルの開発を行った.危機対応マニュアルの開発は,先行研究において8つの危機事象を分析して作成した危機事象における産業保健ニーズリストを用い,危機事象後の時間軸(フェーズ)ごとに発生しうるニーズについて,具体的な解説を施すことを基本とした上で,各ニーズの発生の可能性を表現するため,8事象での発生頻度で記述方法を変えるなどの工夫を施した.作成過程においては,危機対応マニュアルβ版を実際の危機事象で利用に供するとともに,危機管理分野の専門家の意見聴取を行って妥当性の検討を行い,危機対応マニュアルβ版に一部改善を施した上で完成版とした.完成した危機対応マニュアルには,全フェーズ合計で99のニーズに対して解説が加えられており,網羅性は高く,多くの危機事象において利用可能と考えられる.新たな危機事象において,異なるニーズが発生する可能性があるため,汎用性を高めるために今後も継続的に情報を収集して,改善を施していく必要があると考えられる.また,危機事象が発生した際に危機対応マニュアルを入手できるように,ウェブ上でダウンロード可能とするとともに,危機対応マニュアルの存在を広く周知していくことが今後の課題である.
[ヒューマニクス]
  • 藤野 昭宏
    2015 年 37 巻 4 号 p. 273-291
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/13
    ジャーナル フリー
    医学概論とは如何なる学問なのかについて,1.医学概論への誤解,2.歴史的変遷,3.目指す医師像,4.教育の現在,5.根源的思想,そして6.医のプロフェッショナリズムとの関連,の6つの観点から考察した.医学概論とは,医学とは何かをつねに根源的に問い直す,医学の本質を見極める学問のことであり,生命倫理学,臨床倫理学および医療人類学の3本の柱とその土台である人間学から成り立つ.人間学としての医学概論を学ぶ意義は,霊性的自覚によって病いの語りへ共感し,医学を通して根源的いのちを実感する癒し癒される人間関係を体験的かつ思索的に理解し,自己自身の人間性と霊性を深めることにある.そして,その根源的思想にあるのが「矛盾的相即」の考え方である.この矛盾的相即の思想を,生涯にわたって医学を通して体験的に理解すること,これが医学概論の究極の使命である.
[症例報告]
  • 笹原 陽介, 野口 真吾, 渡橋 剛, 島袋 活子, 生越 貴明, 矢寺 和博, 吉井 千春, 迎 寛
    2015 年 37 巻 4 号 p. 293-298
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/13
    ジャーナル フリー
    Helicobacter cinaedi感染症は免疫不全患者に起こりやすく,近年,本菌による感染症の報告が散見されるが,血液培養結果に占める本菌の分離頻度は低い.われわれは,1年10ヶ月間に3例のHelicobacter cinaedi:菌血症患者を経験した.症例1は77歳女性,間質性肺炎でステロイド・免疫抑制剤使用中,症例2・3はともに71歳男性,肺癌で抗癌剤加療中であった.3症例とも培養では菌の同定に至らなかったが,症例1は16S rRNA遺伝子の塩基配列をもとにした解析,症例2・3はnested polymerase chain reaction法で同定した.Helicobacter cinaedi菌血症は再発率が高く,また,抗菌薬の長期投与が必要であるが,本菌の同定には遺伝子解析による評価が有用であると考えられた.
[総説]
  • 石橋 真吾, 近藤 寛之
    2015 年 37 巻 4 号 p. 299-304
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/13
    ジャーナル フリー
    血管新生緑内障は,網膜の虚血性変化により血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor ; VEGF)が産生され,虹彩や前房隅角に新生血管が形成されると考えられている.血管新生緑内障に,抗VEGF抗体であるbevacizumabを硝子体内注射すると,細隙灯顕微鏡検査で虹彩や前房隅角の新生血管が消退すると報告されている.しかし,蛍光前眼部造影検査を用いて観察すると,bevacizumabは,新生血管そのものを消退させるのではなく,新生血管の透過性を減少させることが分かった.本総説では,血管新生緑内障の病態と診断,bevacizumab硝子体内注射による虹彩と前房隅角の新生血管に及ぼす影響について詳述する.
[報告]
  • 阿南 あゆみ, 永松 有紀, 長 聡子, 佐藤 亜紀, 松岡 智恵子, 豊福 佳代, 實崎 美奈, 中村 恵美, 廣渡 加奈子, 藤木 久美 ...
    2015 年 37 巻 4 号 p. 305-312
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/13
    ジャーナル フリー
    産業医科大学産業保健学部看護学科は2012年度入学生よりカリキュラム改正を行い,新たに統合分野を設置した.臨床実践力の向上と知識・技術の統合をはかるため,統合科目として3年次前学期に総合技術演習Ⅰ(1 単位15時間)を,4年次後学期に総合技術演習Ⅱ(1単位30時間)を新設し,シミュレーション教育を導入した.本稿では看護におけるシミュレーション教育,ならびに2014年に実施した左片麻痺患者の車椅子移乗と環境整備の演習展開と教授法を述べる.シミュレーション教育を導入した結果,今後の実習に役立つなどの肯定的意見が多く聞かれた.一方で練習時間がないことや実習室の確保が困難など,今後の課題も見出された.
[報告]
  • 善家 雄吉, 梶木 繁之, 吉川 徹, 仲尾 豊樹, 吉川 悦子, 庄司 卓郎, 福本 恵三, 酒井 昭典
    2015 年 37 巻 4 号 p. 313-318
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/13
    ジャーナル フリー
    労働災害による難治性手外科外傷症例をもとに,労働者の外傷予防に関心のある多分野の専門家を7名集め,「上肢外傷を防止するために実施すべき取り組み」のテーマで各人がアイディアを書き出し,得られた内容をカテゴリーごとに分類し,スクリプト化して項目を整理した(KJ法)の結果,重篤な手外科外傷が起きないための11のポイントが整理された.1 安全な機械の購入,2 要注意機械のリスト作成,3 作業機械の回転部に囲いをつける,4 機械の定期的なメンテナンス,5 危険箇所が目立つ表示,6 回転部を明るくし周りに物を置かない,7 インパクトのある安全教育の計画的な実施,8 体調管理,9 安全衛生方針の表明,10 作業手順の見直し,11 事故発生時に備える.今後の職場改善マニュアル作成には,本研究の結果を踏まえた視点が重要である.
[第37巻(1-4号) 査読者一覧]
[第37巻(1-4号) 総目次]
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