Journal of UOEH
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38 巻, 1 号
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  • 中本 充洋, 久岡 正典
    原稿種別: [総説]
    2016 年 38 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/13
    ジャーナル フリー
    膵癌は世界的に依然としてヒトでのもっとも致死的な癌の一つであり,その発生のメカニズムのさらなる解明とより効果的な治療法の開発が望まれている.膵管癌は膵癌の中でもっとも代表的な組織型であり,Kirsten rat sarcoma viral oncogene homolog(KRAS)やtumor suppressor protein p53(TP53)などにおける突然変異などの遺伝子異常が高頻度に認められることが特徴である.また,膵管癌ではいくつかの細胞内のシグナル伝達系の異常によりその発生や進展が誘導されることも知られている.それらの中でWingless/int1(WNT)シグナル伝達系は,胎児発生や細胞増殖,分化において主軸的な役割を演じており,その異常は膵臓を含む様々な臓器において腫瘍発生を惹起する.最近の研究では,WNTシグナル伝達系の異常が膵管癌患者の不良な予後と相関することも示されており,このシグナル伝達系は膵管癌の予後予測因子であると共に,今後の治療標的として有力な候補であることが示唆されている.本総説では,膵管癌においてWNTシグナル伝達系が臨床病理学的に意義深いことに焦点をあてて解説する.
  • 石田尾 徹, 石松 維世, 保利 一
    原稿種別: [報告]
    2016 年 38 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/13
    ジャーナル フリー
    混合有機溶剤を取り扱う作業環現場において,環境気中の濃度分布を知ることは労働衛生管理上重要であり,そのためには各成分の平衡蒸気濃度を知る必要がある.本研究では,まず,テトラクロロエチレン-クロロベンゼン系を取り上げ,その平衡蒸気濃度を25°C,空気の存在下で測定した.次に,気液平衡論に基づくUNIFAC (Universal Quasichemical Functional Group Activity Coefficient) 式を用いて相関を行った.この系には,4対のUNIFAC 式のグループ間相互作用パラメータが存在し,すでに3対は決定されていた.本研究では,実測値を非線形最小二乗法で相関することにより,未決定であったACClおよびCl-(C=C)間の相互作用パラメータを決定した.その結果,実測値と計算値は良好な一致を示した.
  • 内村 圭吾, 山﨑 啓, 石本 裕士, 垣野内 祥, 木村 公紀, 金谷 智子, 松永 崇史, 川口 貴子, 福田 洋子, 阪上 和樹, 畑 ...
    原稿種別: [原著]
    2016 年 38 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/13
    ジャーナル フリー
    近年,末梢肺病変の診断率改善のためにガイドシース併用気管支腔内超音波断層法(endobronchial ultrasonography with a guide sheath(EBUS-GS))は汎用される手技となっている.本研究ではEBUS-GSを用いた末梢型肺癌の診断関連因子を後ろ向きに検討した.2014年8月から2015年9月に産業医科大学病院呼吸器内科でEBUSGSを行い,最終的に原発性肺癌と診断した症例(76例)を対象とした.末梢型肺癌の診断率は71.1%であった.診断に関連した因子として,病変の位置,大きさ,性状,bronchus signの有無,EBUSプローブの位置,EBUS所見検出の有無,生検回数,検査時間,仮想気管支鏡ナビゲーションの使用,超音波気管支鏡ガイド下針生検併用の有無,CTスライスの厚さ,術者の医師経験年数,国立がん研究センターでの気管支鏡修練(前後)について検討した.病変の大きさ ≧ 20 mm( 80.8% vs. 50.0%, P = 0.006),EBUSプローブの位置 “within”(90.0% vs. 50.0%, P < 0.001),EBUS所見検出あり(80.7% vs. 28.6%, P < 0.001),生検回数 ≧ 5回(78.0% vs. 47.1%, P = 0.013),気管支鏡修練後(81.6% vs. 60.5%, P = 0.043)において有意に診断率が高かった.多変量解析では,EBUSプローブの位置 “within”( オッズ比14.10, 95%信頼区間3.53 - 56.60, P < 0.001),気管支鏡修練(オッズ比6.93, 95%信頼区間1.86 - 25.80, P = 0.004)の順に診断に寄与していた.EBUS-GSを用いた末梢型肺癌の診断率向上には,EBUSプローブの位置が病変に入っている状態(within)であること,気管支鏡修練度の向上が有用と考えられた.
  • 久間 昭寛, 田村 雅仁, 尾辻 豊
    原稿種別: [総説]
    2016 年 38 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/13
    ジャーナル フリー
    組織線維化は脳を除くほぼ全身の主要な臓器に生じ,線維化を起こした臓器は最終的に機能不全に陥る.腎線維化は急性腎障害の瘢痕形成や慢性腎臓病の進行に関与しており,腎線維化が進むことは腎機能が低下することを意味している.一度生じた線維化は不可逆的で,腎臓に関しては透析導入や腎移植を迫られてしまう.したがって,腎線維化の機序を解明することは非常に重要な研究課題である.線維化の機序として線維芽(筋線維芽)細胞の活性化と増殖や,過剰な細胞外基質産生が線維化を招くことは多くの臓器で共通したことであるが,そこに至るまでの経路には腎臓特有の原因も存在すると考えられている.つまり,腎臓には尿細管細胞,メサンギウム細胞,エリスロポエチン産生細胞といった他臓器には無い細胞が存在し,それらが線維化に関与していることが分かりつつある.腎臓特有の状況や細胞内外の情報伝達系を中心とした線維化には,transforming growth factor-β (TGF-β) によって誘導された上皮間葉移行や,wingless/int (WNT) シグナル,さらには,慢性腎臓病に伴う炎症,腎性貧血や尿毒症による機序が存在しており,それらについて論述する.最後に,腎線維化に関与している分子を標的とした治療法として,抗TGF-β抗体やセリン/スレオニンキナーゼ,mammalian target of rapamycin (mTOR) について述べる.
  • 原山 信也, 二瓶 俊一, 長田 圭司, 相原 啓二, 蒲地 正幸, 佐多 竹良
    原稿種別: [総説]
    2016 年 38 巻 1 号 p. 35-46
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/13
    ジャーナル フリー
    心室細動は,可及的速やかな電気的除細動がもっとも優先されるべき治療である.自動体外式除細動器(automated external defibrillator: AED)の普及に伴い,心室細動による心肺停止患者の生存率は改善してきた.電気ショックが無効な電気ショック抵抗性心室細動の患者では,さらなる抗不整脈薬による治療が必要であるが,最適な抗不整脈薬使用方法についてはいまだ確立されていない.ニフェカラントはピリミジンジオン骨格をもつ純粋なカリウムチャネルブロッカーである.日本では致死性の心室性不整脈に対して,1999年にニフェカラント静注薬が保険収載され,Ⅲ群の静注抗不整脈薬として広く用いられてきた.アミオダロン静注薬は2007年に日本でも使用可能となったが,アミオダロンはカリウムチャネルのみならずナトリウム・カルシウムチャネル遮断作用も有し,さらに受容体,自律神経活動や甲状腺機能などに対してもさまざまな作用を有している.ニフェカラントとアミオダロンには多くの薬理学・薬力学的差違が存在する.ニフェカラントは陰性変力作用を有さず,迅速な効果発現と短い血中半減期での迅速なクリアランスが特徴であり,心肺蘇生における薬物使用においてはアミオダロンより有用である可能性がある.実際に,今まで報告されているニフェカラントとアミオダロンを直接比較した臨床研究や動物実験の結果においては,電気ショック抵抗性心室細動症例に対して,ニフェカラントはアミオダロンと同等か,あるいはそれ以上の効果を有している可能性が示唆される.またアミオダロンは投与量にも留意すべきであり,電気ショック抵抗性心室細動に対しての300 mgのボーラス投与は過量投与となり,蘇生成功率を低下させている可能性も否定できない.電気ショック抵抗性心室細動に対するニフェカラントとアミオダロンの効果の差違の評価,また最適なアミオダロンの投与量の決定には,さらなる臨床研究が必要である.
  • 副田 秀二
    原稿種別: [報告]
    2016 年 38 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/13
    ジャーナル フリー
    復職支援(リワーク)プログラムの復職への効果が報告されはじめたが,復職の転帰に関連する要因は明らかではない.筆者はケースシリーズとして,医療機関のリワークプログラムを利用した大規模組立工場の従業員(自験例)の特徴と復職の転帰を検討した.復職成功5例と失敗5例の検討で,復職意欲,プログラムの必要性の理解,元来の適応力,性格傾向が転帰に寄与したと考えられた.また,リワークプログラムの後に離職した2例についても検討した.復職に失敗したその2例の若年従業員は,仕事の不適合感を抱いて最終的に離職した.
  • 稲益 良紀, 浅海 洋, 渡邊 龍之, 久米 惠一郎, 芳川 一郎, 原田 大
    原稿種別: [症例報告]
    2016 年 38 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/13
    ジャーナル フリー
    急性上腸間膜動脈閉塞症(SMA閉塞症)はまれな疾患であるが,激烈な症状を呈し短時間で死亡する極めて予後不良な疾患である.その原因としては早期に本疾患を疑うことの困難さによる治療の遅れがある.今回我々は,早期に診断したSMA閉塞症に対して経カテーテル的血栓吸引療法を施行し,開腹術を行わずに治療し得た1例を経験したので報告する.症例は心房細動を有する79歳女性.激しい左側腹部痛と嘔気にて当院に救急搬送となった.発症2時間後の造影CTでSMAに血栓による閉塞を認めたが,腸管壊死には至っていないと判断した.腹部血管造影検査ではSMA末梢側から回結腸動脈に閉塞を認め,SMA閉塞症と診断した.引き続き経カテーテル的血栓吸引療法を行い,血栓の吸引除去に成功し,血流の再開通を認めた.SMA閉塞症に対して腸管切除を回避し,救命するためには早期診断が重要である.
  • 中村 倫太郎, 二瓶 俊一, 荒井 秀明, 長田 圭司, 伊佐 泰樹, 原山 信也, 相原 啓二, 蒲地 正幸
    原稿種別: [症例報告]
    2016 年 38 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/13
    ジャーナル フリー
    アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は高血圧症第1選択薬として広く使用されているが,ACE阻害薬による血管性浮腫の認識は低い.今回我々は服用開始から11年という長期経過で,致死的な血管性浮腫を発症した症例を経験した.症例は60歳代男性.高血圧のため11年前よりACE阻害薬服用開始.呼吸困難感,舌および頸部の腫脹が出現し近医受診.気道狭窄を疑われ当院紹介.来院時,口腔内腫脹はさらに進行し,気管支鏡下に気管挿管し,気道管理を開始した.入院後ACE阻害薬を中止したところ,浮腫は徐々に改善し,第3病日抜管.第5病日退院となった.経過から,本症例はACE阻害薬による血管性浮腫と考えた.気道閉塞の危険があるにもかかわらず,ACE阻害薬,特に長期服用例における血管性浮腫の認知度が低いと示唆されるため,長期服用例においても,ACE阻害薬による血管性浮腫を考慮する必要がある.
  • 槇原 康亮, 濱田 哲夫, 笠井 謙多郎, 田中 敏子, 佐藤 寛晃
    原稿種別: [症例報告]
    2016 年 38 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/13
    ジャーナル フリー
    法医解剖後にアスベストの健康被害申請を行うために医学的検査を実施した事例を経験した.事例は,アスベスト作業歴のある60歳代の男性で,受診歴や健診歴はない.同居人は「数ヶ月前から咳や呼吸苦を生じて死亡した.」と話しているが,死因不明のために法医解剖に付された.左右の壁側胸膜に広範囲にわたる胸膜プラークと左右の肺に多発腫瘤を認め,死因を「肺癌」と診断した.後日,遺族から「石綿救済法」によるアスベストの健康被害申請のための医学的検査の依頼があり,石綿小体計測を行ったところ,乾燥肺重量1gあたり石綿小体を4,860本検出したものの認定に必要な5,000本は検出できなかった.石綿小体は病変部を含まない,肺実質の末梢側に蓄積されやすいとされている.解剖時に摘出・保存した肺組織は中枢側の病変部周囲であったため,計測結果がより低値になった可能性が考えられた.我が国ではアスベスト関連肺疾患発症者や法医解剖体数が増加している.法医解剖時に原発性肺癌を認めた場合には,アスベストの健康被害申請が行われる可能性を考慮して,肺の適切な部位の採取・保存を周知する必要があると考える.
  • 市来 嘉伸, 川崎 淳司, 吉田 哲郎, 濱津 隆之, 末廣 剛敏, 田中 文啓, 杉町 圭蔵
    原稿種別: [症例報告]
    2016 年 38 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2016/03/13
    ジャーナル フリー
    近年,手術適応外の中枢気道狭窄症例に対して,気道ステント留置の有用性は多く報告されるようになった.今回,高度呼吸困難を伴う悪性腫瘍気管浸潤による気管狭窄に対して,気管ステント留置術を行った症例を経験したので報告する.症例,90歳女性.201X年2月より尿路感染症の治療中であったが,経過中に呼吸困難が出現した.CT上気管右側上縦隔に気管狭窄を来す腫瘤を認めたため,当科に紹介となった.著明な呼吸困難のため,noninvasive positive pressure ventilation(NPPV)管理とした.気管支鏡にて,声帯より約2.5 cm末梢の気管に直接浸潤による高度狭窄を認めたため,expandable metallic stent(EMS), proximal typeを留置した.留置後,気管狭窄部のpatencyは改善し,NPPVも離脱できた.酸素投与も中止となり,端坐位保持や自立した食事摂取も可能となった.気管ステント留置8日後,突然血圧低下.心エコーにて左室心基部の過剰収縮と冠動脈1枝病変では説明できない心尖部の無収縮を認め,たこつぼ型心筋症と診断された.保存的に経過観察していたが,心機能増悪し,EMS留置後11日目永眠となった.悪性腫瘍気管浸潤に対する気管狭窄に対して,EMS留置は有効な手段と考えられた.また,気道狭窄症状やストレスの強い症例では,たこつぼ型心筋症発症のリスク軽減のため,できるだけ早い段階で気道ステントなどの気道を確保できるような治療介入することが必要と考えられた.
  • 産業医科大学
    原稿種別: [抄録集]
    2016 年 38 巻 1 号 p. 77-117
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/13
    ジャーナル フリー
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