Journal of UOEH
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39 巻, 2 号
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[総説]
  • 森本 泰夫, 和泉 弘人, 吉浦 由貴子, 藤澤 有里, 藤田 克英
    2017 年39 巻2 号 p. 123-132
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    吸入性化学物質の肺有害性を評価するゴールドスタンダード試験は,吸入ばく露試験である.一方,気管内注入試験は,用量反応関係,メカニズムの解明など広く実施されているが,肺有害性に関するエビデンスが限られている.我々は,気管内注入試験と吸入ばく露試験を比較した報告を中心に工業用ナノ材料の肺有害性評価として気管内注入試験の有用性を解説する.吸入ばく露試験と比較して,気管内注入試験は,対象となるナノ材料を一挙に注入するため,ナノ材料の有害性のレベルにかかわらず,注入直後(注入後3日から1週間)に肺炎症を引き起こす.しかし肺有害性の強いナノ材料は,急性期のみならず慢性期(注入後3ヶ月から6ヶ月)まで持続性炎症を示すが,肺有害性の弱いナノ材料は,急性期の一過性炎症のみである.従って,肺有害性を評価するための注入後の観察期間は,慢性期まで行うことが重要と思われる.肺有害性の評価項目では,気管支肺胞洗浄液中の好中球数,比率,好中球やマクロファージのケモカイン,酸化ストレスマーカーがあげられ,肺有害性の強い物質では,これらの評価項目が慢性期に至るまで持続的反応を示す.一方,肺有害性が弱い物質では,急性期のみの反応となる.よって,気管内注入試験で,慢性期まで観察し,炎症関連因子の持続反応性を評価することで,気管内注入試験が,吸入ばく露試験の肺有害性のスクリーニング試験として有用であることが示唆される.

[症例報告]
  • 西田 千夏, 矢寺 和博, 城戸 貴志, 野口 真吾, 赤田 憲太朗, 花香 未奈子, 山﨑 啓, 星野 鉄兵, 下野 昌幸, 石本 裕士, ...
    2017 年39 巻2 号 p. 133-141
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    多巣性微小結節性肺細胞過形成(multifocal micronodular pneumocyte hyperplasi(aMMPH))は,Ⅱ型肺胞上皮様細胞の増殖からなる多巣性結節性病変で,結節性硬化症(tuberous sclerosis complex(TSC))に併発する疾患である.自覚症状はあっても軽微であり,進行は緩徐で治療を要しないとされている.われわれは,TSCに併発した,特徴的な画像所見を持つMMPHと考えられる2症例を経験したので報告する.症例1:幼児期にTSCと診断された20歳女性.18歳時の胸部CTで両肺に散在する結節影やスリガラス影を指摘された.症例2:36歳時にTSCと診断された44歳女性.43歳時の胸部CTで上葉優位にランダム分布の小さなスリガラス影を認めた.症例1は2年間,症例2は4年間に渡り,呼吸器症状も画像変化も認めない.肺生検の同意が得られず,病理学的な診断ができていないが,血液検査で有意な所見はなく,10 mm以下の結節影やスリガラス影が散在する特徴的画像所見や経年的に不変である経過などから,TSCに伴うMMPHと考えた.2症例とも肺病変に対する治療は行っていない.MMPHは稀な疾患であるが,TSC患者において両肺に多発する結節影やスリガラス影が認められた際にはMMPHである可能性を考慮すべきである.

[報告]
  • 岩﨑 りほ, 有本 梓, 成瀬 昂, 永田 智子, 村嶋 幸代
    2017 年39 巻2 号 p. 143-151
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    子育て中の母親には,母親役割と母親以外の自己の役割があると言われている.母親の役割への満足と母親の不安が関連することが明らかになっているが,母親以外の自己の役割への満足と母親の不安についてはこれまであまり注目されてこなかった.女性の社会進出に伴い子育て中の母親の役割が変化しているために,特に,都市部においては,子育て中の母親の母親以外の自己の役割は重要な概念であると言える.本研究では,子育て中の母親の不安と母親役割への満足・母親以外の自己の役割への満足との関連を明らかにすることを目的とした.2011年,東京都の7箇所の自治体で開催された1歳6ヶ月児健康診査に来所した母親2,342名に自記式質問紙を配布した.有効回答881名(38.0%)を分析対象とした重回帰分析の結果,不安に関連する他の変数を考慮しても母親役割への満足と母親以外の自己の役割への満足は,共に母親の不安と負の関連を示した.特に,母親以外の自己の役割への満足は,他の変数より影響が大きかったことから,母親の不安を評価する際には,母親役割と同様に,母親以外の自己の役割に満足しているかどうかも考慮すべきであるといえる.子育て中の母親とかかわる医療専門職は,母親の不安軽減のためには,母親役割と母親以外の自己の役割が共に満足した状態であるかを包括的にアセスメントすることが必要である.

[総説]
  • 豊田 裕之, 森 晃爾
    2017 年39 巻2 号 p. 153-159
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    大規模災害が発生した際,災害対応を行う労働者は,日常業務とは異なる健康障害要因に曝される恐れがある.そのような課題に対して適切な準備や対応を行うためには,過去の大災害の知見を参考にすることが有効と考えられるが,公開されている情報は少ないことが現状であるので,大規模災害発生時の労働衛生活動の在り方を検討するために,関連情報が比較的多く報告されている世界貿易センター倒壊テロ事件(WTCテロ)と福島第一原子力発電所事故(第一原発事故)を対象に文献上の知見について,比較検討を行った.WTCテロについて7編の文献が抽出され,1. 労働衛生管理を含む緊急時体制に関連したもの,2. 健康影響や労働衛生面の改善・予防に関連したもの,3. 健康影響の緩和を目的としたケアに関連したものに分類された.一方,第一原発事故については,先行レビューで整理された文献を用いた.大規模災害発生時に対応する労働者の健康確保のためには,防災基本計画に関連した諸規程に労働衛生に関する規定を盛り込むとともに,長期にわたって支援を行うことを前提とした実務的な支援機能,災害対応に関わる可能性のある労働者に対するトレーニングの仕組み,健康影響の緩和を目的としたケア体制などを構築することが必要と考えられた.

[症例報告]
  • 天池 孝夫, 田村 利尚, 古賀 敦大, 柴尾 和徳, 日暮 愛一郎, 平田 敬治
    2017 年39 巻2 号 p. 161-166
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    傍神経節腫(paraganglioma)は交感神経節のクロム親和性細胞より発生するカテコールアミン産生腫瘍であり,副腎外に発生する.後腹膜傍神経節腫の切除例を経験したので報告する.症例は72歳男性.高血圧,ペースメーカー植込みの既往があり,フォローのための造影CTで,右腸腰筋腹側の腫瘤を指摘され,当科紹介となった.精密検査の結果,悪性疾患も否定できないため,開腹後腹膜腫瘤摘出術を行った.摘出した腫瘤の病理・免疫組織学的所見より,後腹膜傍神経節腫の診断であった.術後は,術前に認められた高血圧は改善し,術後9ヶ月後も再発所見を含めて明らかな異常は認めていない.術後25年目の再発報告例もあり,今後も慎重な経過観察が必要である.

  • 井上 譲, 城田 ふみ, 矢吹 慶, 佐藤 永洋, 皆川 紀剛, 勝木 健文, 佐藤 典宏, 永田 貴久, 柴尾 和徳, 松山 篤二, 青木 ...
    2017 年39 巻2 号 p. 167-173
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    症例は61歳,女性.右乳房腫瘤を主訴に精査加療目的で当科紹介された.右乳房A領域に最大径19 mm大の腫瘤を触知した.乳腺造影MRIでは造影にて辺縁部がリング状に増強される腫瘤で,造影CTでも内部は低吸収で辺縁は高吸収を示し,腋窩リンパ節ならびに遠隔転移は認めなかった.針生検で乳腺基質産生癌(matrix-producing carcinoma: MPC)と診断した.右乳癌(T1c,N0,M0 Stage Ⅰ)の術前診断で,右乳房部分切除およびセンチネルリンパ節生検を施行した.術後病理組織所見では紡錘細胞を介さずに骨軟骨様基質から癌腫への直接移行を認め,また軟骨分化マーカーであるSRY-related HMG box-9(SOX9)の発現も認めた.免疫組織化学検査はトリプルネガティブ乳癌であり,Ki67 labering index 50%であった.術後は残存乳房への補助放射線療法のみを施行し,現在まで術後5年を経過し無再発生存中である.MPCは化生癌(metaplastic carcinoma)の一亜型である比較的稀な癌腫で,そのほとんどはトリプルネガティブ乳癌であり,通常型乳癌と比較して予後不良と言われている.今回我々はMRIとCTの造影所見で特徴的なリング状の造影増強効果を呈したMPCの手術症例を経験した.MPCの内因性サブタイプや予後はいまだに議論となるところであり,さらなる症例の蓄積が必要である.

[報告]
  • 辻 慶子, 岩田 直美, 児玉 裕美, 萩原 智子, 鷹居 樹八子, 笹木 葉子, 長多 好恵, 松本 真希
    2017 年39 巻2 号 p. 175-179
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    看護学科の学生は,看護教育を通して看護のあり方と看護の全体像を把握することが求められる.著者らは看護教育において,建築設計用コンピュータソフトを用いたナイチンゲール病棟の動画(仮想病棟)を作成した.学生の仮想病棟に対する反応を,看護師視点,患者視点,看護師と患者との共通視点の3つに分けて検討した.看護師視点では「患者を観察しやすい」,患者視点では「プライバシーがない」,共通視点では「広い」がもっとも多くみられた学生の反応であった.これらはすべてナイチンゲール病棟の特徴であり,臨床経験のない学生であっても,看護師からの視点,患者からの視点の両面から病棟の特徴をとらえることができたことから仮想病棟を看護教育に用いることの有効性が示唆された.

  • 樋上 光雄, 保利 一
    2017 年39 巻2 号 p. 181-185
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    作業環境測定のための固体捕集法の新たな脱着法を開発するため,アニオンおよびノニオン界面活性剤を用いた脱着溶液を使用し,ヤシ殻活性炭からの有機溶剤蒸気の脱着率を調べた.イソプロピルアルコールまたはメチルエチルケトンを蒸留水で100倍希釈した水溶液 10 μl を,10 ml バイアル瓶に入った100 mgのヤシ殻活性炭に添加した.そのバイアル瓶を約24時間静置し,脱着溶液を 5 ml 添加した後,60°Cの恒温槽に24時間静置し,バイアル瓶の気相を水素炎イオン化検出器(FID)を備えたガスクロマトグラフで分析し,脱着率を求めた.脱着溶液には,2種類のアニオン界面活性剤を用いて作製した水溶液に,4種類のノニオン界面活性剤をそれぞれまたはすべて添加したものを用いたが,添加したノニオン界面活性剤による脱着率の向上は認められなかった.一方,吸着材として使用したヤシ殻活性炭管は,製造ロットにより脱着率が異なることが示された.

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