肝硬変患者では血清中のタンパク結合糖質はヘキソース・ヘキソサミン・シアール酸などすべて減少しているがフコースだけは増加している. しかるに原発性肝癌患者(その大部分はへパトーマ)ではこれらタンパク結合糖質はすべて増加しており, とくにシアール酸とヘキソースにおいてその傾向が強い. この傾向は転移性肝癌においてもみられ, この場合はヘキソースの増加が著しい. 一方, 肝癌患者の血清中にはα
1-酸性糖タンパク(α
1-AG), α
1-アンチトリプシン(α
1-AT), ハプトグロビン(Hp), セル口プラスミン(Cp)などが増加しており, α
2-マクログロブリン(α
2-M)は減少している. In vitroの実験でリンパ球培養濾液中へのα
1-AGの添加はPHAやPWMなどmitogenによるリンパ球芽球化率を著明に抑制することより, in vivoにおいてもその血清中における増加は, hostの細胞性免疫を抑制しているものと推定され, これが担癌生体における癌の進展に促進的に作用している可能性がある. さらにコラゲナーゼ・プラスミン・ストレプトキナーゼなどの蛋白分解酵素は担癌生体において癌の発育に促進的に働くことが従来より知られているが, α
2-M(ラットではα
1-M)はこれら蛋白分解酵素をmaskし不活化する性質がある. 担癌生体における血清中α-M(α
2-M, α
1-M)の減少は生体の合目的性に基づく蛋白分解酵素不活化のための消費の結果とも考えられる. ヒト肝癌ならびにラットの3'-メチルDAB肝癌において, 肝癌周囲組織のコラーゲン分解の被覆活性は肝癌組織そのものよりもむしろ高値であるがこのことは肝癌組織においては何らかの原因により癌組織の内外, とくに周囲組織においてコラゲナーゼ(またはプロコラゲナーゼ)の産生がたかまっており, これが産生された後に速やかにα-マクログロブリンやα
1-アンチトリプシンと結合して不活化されることを示している. この場合, この不活化機構は, 癌の発育・進展の阻止という点で生体にとり合目的的であると思われる.
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