Journal of UOEH
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41 巻, 2 号
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  • 清水 大輔, 荒木 俊介, 川村 卓, 桑村 真美, 菅 秀太郎, 三宅 芙由, 市川 俊, 金城 唯宗, 楠原 浩一
    原稿種別: [原著]
    2019 年41 巻2 号 p. 131-138
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    極低出生体重児におけるhigh flow nasal cannula(HFNC)の研究として,人工呼吸器離脱後の呼吸補助作用や呼吸器使用に伴う鼻の創傷について経鼻持続陽圧呼吸(N-CPAP)と比較検討されてきた.しかし,HFNC療法が極低出生体重児の経口哺乳へ及ぼす影響に関してはわかっていない.今回の後方視的な検討では,慢性肺疾患を有する極低出生体重児を対象にHFNC療法が経口哺乳へ与える影響について検討した.対象となった45症例の慢性肺疾患を有する極低出生体重児中,11症例がHFNCを使用して経口哺乳が開始され,34症例がHFNCを使用せず経口哺乳が開始されていた.HFNC使用群は,HFNC非使用群と比較すると在胎週数,出生体重共に有意に低値であったが,酸素投与期間およびNICU在院日数には有意差をみとめなかった.また,HFNC使用群の経口哺乳開始時期の中央値(範囲)は修正週数35.3週(33.0 - 38.1) vs. 35.5週(33.7 - 42.4)(P = 0.91),経口哺乳確立時期は修正週数38.6週(34.4 - 42.3) vs. 36.7週(34.6 - 44.4)(P = 0.29)であり,HFNC非使用群と比較して有意な遅れを認めなかった.HFNC使用群において経口哺乳中の誤嚥性肺炎などの有害事象はなかった.慢性肺疾患の極低出生体重児においてもHFNCを使用することにより早期から安全な経口哺乳訓練が可能となり,経口哺乳の確立を安全に促進させる可能性が示唆された.
  • 善家 雄吉, 古川 佳世子, 古川 英樹, 前川 和道, 田島 貴文, 山中 芳亮, 平澤 英幸, 目貫 邦隆, 酒井 昭典
    原稿種別: [原著]
    2019 年41 巻2 号 p. 139-144
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    中高年者の骨脆弱性を起因とするColles骨折(背側転位型橈骨遠位端骨折)は一般的な外傷であり,多くの整形外科医により治療されている.なかでも掌側ロッキングプレートによる内固定が標準的治療法であるが,近年合併症例の報告も増加している.本研究の目的は,保存的に治療されたColles骨折患者におけるX線パラメータの経時的変化を分析し,骨折タイプがこれらの変化に影響を与えるかどうかを調査することである.本研究は2つの診療所で行われ,Colles骨折を伴う60症例(男性13,女性47,平均年齢72.5歳(55〜96歳)を対象とした.平均経過観察期間は,4.6ヶ月(1.5 − 12ヶ月)であった.レントゲン画像上の受傷時の損傷形態は,髄内型[n = 15],解剖型[n = 39],髄外型[n = 2],不明[n = 4]であった.まず,非観血的に整復固定を行い,その後,キャスト固定を4週間継続した.整復直後と最終経過観察時の矯正損失は,レントゲン画像における,掌側傾斜(PT),橈側傾斜(RI),および尺骨偏位(UV)を用いた.整復直後の損傷形態は,髄内型[n = 11],解剖型[n = 42],髄外型[n = 7]であった.UVによる矯正損失は,整復直後に髄内型症例の方が,髄外型および解剖型症例よりも有意に大きかった(P = 0.012).整復直後から最終経過観察時までのUVの矯正損失は,髄内型で有意に大きかったことより,保存的治療を行う際の髄内型症例に対しては,手術治療を含め再整復の獲得などの代替治療を検討する余地がある.
  • 植木 哲也, 中嶋 幹郎
    原稿種別: [総説]
    2019 年41 巻2 号 p. 145-151
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    便秘は,非常に一般的であり,多くの薬剤の有害反応によって引き起こされる.オピオイドや抗コリン剤などの薬剤の有害作用に関する知識と認識は確立されているが,睡眠剤などの一般的に処方されている薬剤についてはあまりよく理解されていない.本総説では,便秘と薬剤との関連性を分析した結果を提示する.
  • 米田 和恵, 今西 直子, 市来 嘉伸, 田中 文啓
    原稿種別: [総説]
    2019 年41 巻2 号 p. 153-163
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の活性化変異の発見とEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKIs)の開発は,非小細胞肺がん(NSCLC)の治療戦略に変革をもたらした.EGFR変異を有する進行非小細胞肺がんに対しては,EGFRチロシンキナーゼ阻害剤はプラチナ製剤を含む化学療法よりも優れた生存期間の延長効果を認めるため,EGFRチロシンキナーゼ阻害剤が優先的に治療に用いられる.更に治療効果を高めるため,不可逆的なEGFR阻害によってより効果的な阻害作用を発揮するEGFRチロシンキナーゼ阻害剤が開発された.最近の臨床試験により,不可逆的EGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるオシメルチニブは,優れた生存期間延長効果と低い毒性をもたらすことが示された.また,EGFRチロシンキナーゼ阻害剤とプラチナ併用化学療法等との併用治療も,長期の生存をもたらす可能性が示されている.EGFR変異を有する早期の切除可能非小細胞肺がんについても,術前導入療法や術後補助療法におけるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の効果を検証するいくつかの臨床試験が進行中である.本稿では,EGFR変異陽性の非小細胞肺がんに対する治療の現状と将来展望につき概説および議論する.
  • 宮﨑 恵, 岡田 洋右, 鳥本 桂一, 田中 良哉
    原稿種別: [症例報告]
    2019 年41 巻2 号 p. 165-170
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性,左頸部腫瘤および甲状腺中毒症を認め,当院を受診,甲状腺自己抗体陽性,頸部エコーにて血流亢進像を伴う甲状腺左葉の結節を認め,シンチグラフィで腫瘤状の集積亢進像と周囲のびまん性の弱い集積を認め,マリン-レンハルト症候群と診断した.抗甲状腺薬で加療されたがコントロール困難となり,甲状腺亜全摘術を施行した.病理組織像は,過形成変化やバセドウ病に特徴的な組織所見を認めなかった.以上からプランマー病の病勢が優位であったと考えられた.シンチグラフィで腫瘤に強い集積と周囲にびまん性の弱い集積を認めるHot in low型の症例では,内服治療では再燃する可能性がある.
  • 荒木 俊介, 中村 加奈子, 柏原 やすみ, 江口 尚, 下野 昌幸
    原稿種別: [原著]
    2019 年41 巻2 号 p. 171-178
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    日常的に医療的ケアが必要な小児(医療的ケア児)は増加傾向で,平成27年度には約1万7,000人と推定されている.医療的ケア児の主たる介護者は保護者であり,特に母親にかかる負担は大きく,母親が希望に沿って就労することは困難なことが多い.本研究では医療的ケア児の保護者(主に母親)の就労状況調査を通して,就労状況・経済的基盤の改善に必要な効果的支援策を検討することを目的とした.産業医科大学病院小児科に通院中または北九州市内の障害児通所施設に通所している医療的ケア児の保護者を対象とし,独自に作成した無記名の自記式調査用紙を用いた.75世帯の保護者(73世帯が母親)から回答を得た.医療的ケア児の中央値は9歳で,全員が療育手帳を取得していた.母親(年齢の中央値40歳)が現在,就労していたのは32世帯(42.7%)であり,そのうち22名(68.8%)は非正規雇用で,22名の母親は子どもの障がいを契機とした転職・離職を経験していた.母親の就労状況と児の年齢,同居家族数,世帯収入との間には有意な関連性を認めなかった.現在の就労の有無にかかわらず64名(88.9%)の母親は経済的な理由,または自分自身のやりがいのため就労を希望している一方,就労を希望しない母親も8名(11.1%)いた.今回の調査における医療的ケア児の母親の就労率は一般女性より低く,非正規雇用が多かった.希望の多様性にも配慮し,経済的および精神的側面から母親の就労を支援する必要がある.
  • 中村 碧, 内村 圭吾, 原 幸歌, 大平 秀典, 千葉 要祐, 根本 一樹, 東 泰幸, 田原 正浩, 池上 博昭, 平野 洋子, 阪上 ...
    原稿種別: [原著]
    2019 年41 巻2 号 p. 179-184
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    超音波気管支鏡ガイド下針生検(endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration: EBUS-TBNA)は近年本邦で汎用される手技となった.American College of Chest Physiciansのガイドラインでは,EBUS-TBNAは,適切なトレーニングを受けた,高精度な検査を施行できる術者が行うよう薦められている.しかし,経験や訓練の程度の明確な指標については不明な点が多い.当科では,EBUS-TBNAの十分な経験がない医師であっても,EBUS-TBNAのシミュレーターでの事前練習や検査介助の訓練を行った後,指導医(日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医)の監督の下に術者として施行するように指導している.今回,EBUS-TBNAの経験やトレーニングが診断率および安全性に与える影響について検討するため,EBUS-TBNA施行歴が1年未満の医師とEBUS-TBNA施行歴が1年間以上ある医師がEBUS-TBNAを施行した場合での診断精度や安全性を後方視的に比較した.2014年4月から2016年1月に当科にてEBUS-TBNAを施行し,最終的に原発性肺癌と診断された111例(148病変)を対象とし,2群に分けた.医師歴3年目でEBUS-TBNA施行歴1年未満の医師が検査した群をA群(43例,57病変),4年目以降でEBUS-TBNA施行歴が1年以上の医師が検査した群をB群(68例,91病変)とした.両群における診断率,検査時間,合併症について解析した.結果は,診断率(89.5% vs. 90.1%,P = 1.0),検査時間(27 ± 11.1分vs. 23 ± 9.1分,P = 0.149)において,統計学的有意差はなく,また両群ともに合併症は認めなかった.本検討により,気管支鏡の経験が比較的浅い医師であっても,十分な訓練と指導医の監督があれば,EBUS-TBNAの診断率において1年間以上のEBUS-TBNA施行経験のある医師と有意な差がないことが示唆された.
  • 赤田 憲太朗, 野口 真吾, 川波 敏則, 畑 亮輔, 内藤 圭祐, 迎 寛, 矢寺 和博
    原稿種別: [総説]
    2019 年41 巻2 号 p. 185-192
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    我が国では,近年の高齢化に伴い肺炎患者数が増加している.大部分は誤嚥性肺炎であり,本邦の死因第三位である.誤嚥性肺炎の存在は,短期・長期予後を悪化させることが知られているが,現状では誤嚥性肺炎を正確に診断する基準や方法はない.実際に,現在問題となっているのは,自覚症状がなく反復・持続する不顕性誤嚥であることから,脳梗塞後遺症など誤嚥性肺炎の危険因子となる病態の有無により,誤嚥性肺炎を評価することが多い.また,誤嚥性肺炎の原因菌として嫌気性菌が多いことが広く信じられているが,主に1970年代の報告に基づいていると考えられる.これら1970年代の報告について,Marikらは,1)発症から時間が経過している症例が多く,肺化膿症や壊死性肺炎,膿胸併発例が多い,2)percutaneous transtracheal aspiration(PTA)の手技自体が誤嚥を誘発する,3)慢性アルコール中毒者や全身麻酔患者での検討が多い,4)1970年代は高齢者の口腔ケアが浸透していない,5)平均年齢が34-56歳と比較的若い,などの影響を指摘し,現在の肺炎の原因菌とは異なる可能性を指摘している.我々は,これまでの培養法を中心とした検討と比較して,嫌気性菌をはじめとした通常の培養法では検出が難しい細菌をより正確に同定することが可能である,細菌の16S ribosomal RNA(rRNA)遺伝子を用いた細菌叢解析によって,肺炎の病巣から直接検体を採取する方法で肺炎の原因菌検索を行った結果,誤嚥リスクを有する肺炎では,通常の喀痰培養法では過小評価されがちな口腔レンサ球菌が31.0%ともっとも多く検出され,逆に嫌気性菌は6.0%と低く,誤嚥性肺炎の原因菌として,嫌気性菌は過大評価されている可能性が示唆された.
  • 原田 大史
    原稿種別: [総説]
    2019 年41 巻2 号 p. 193-201
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    再生医学研究の源流の一つであるiPS細胞(induced pluripotent stem cell)の知見により,ほぼ全ての遺伝子情報が分化した体細胞にも精緻に保存され初期化・再分化できる可能性が明らかとなり,近年細胞内情報を書き換えることで性質を変化させようとする試みが多数みられる.今回我々はヒト発生期の生体内環境を参考に,腫瘍細胞の性質変化を起こす条件を追求し,受精前後の卵胞・卵管内における低酸素環境と無血清環境を模倣した培養実験系を構築した.さらには,発生期の免疫応答や多能性獲得にも関与するWnt/β-カテニンシグナル経路の阻害を併用することで,ヒト子宮平滑筋腫の培養細胞に脂肪分化誘導を惹起した.ヒト発生期の細胞内情報の動態を紹介しつつ,同実験系の可能性を述べる.
  • 辻 慶子, 岩田 直美, 下條 三和, 萩原 智子, 笹木 葉子, 長多 好恵, 松本 真希, 児玉 裕美
    原稿種別: [報告]
    2019 年41 巻2 号 p. 203-209
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    羞恥は主観的感覚であり,その強さを他人である看護師が正確に判断することは容易ではない.しかし,患者の感じる羞恥を,ケアの種類や状況によって可能な限り正しく推測し,患者への心理的負担を軽減することが看護師に求められる.病院で患者が感ずる羞恥の多くは,自分の肉体を劣ったもの,不都合のあるものと感じることが原因になると考えられる.本研究では,病院内で看護師が日常的に遭遇する場面を想定し,羞恥の強さを測定し,学習時期による看護教育の指導方法を検討することを目的とした.病院内で看護師や患者が日常的に遭遇する場面を表現したイラスト計13枚を使用し,羞恥の強さを評価した.イラストは著者らが独自に作成した.イラストは1.患者が看護師に身体を触れられている場面6種類と,2.患者の病棟での日常風景3種類から構成され,4種類のイラストでは,3.周囲に医療者以外の人が登場している場面も作成した.評価には,「まったく恥ずかしくない」を1点とし,「とても恥ずかしい」を10点とする10段階スケールを用いた.A看護大学の1年生と2年生を対象に実施した.その結果,1)肌を露出すること,2)肌の露出に関係なく自分の不自由な姿,さらに3)医療者以外の人がいることで羞恥が強まる,と看護学生は判断した.特に2)については1年生より2年生に高く表れたのは,基礎看護学を1年間学習したことで患者の立場で考えることができるようになったためと思われる.
  • 田嶋 裕子, 草薙 佳澄, 武田 祐介, 吉松 克真, 石田 輝明, 篠原 伸二, 平井 文子, 今西 直子, 市来 嘉伸, 田中 文啓
    原稿種別: [症例報告]
    2019 年41 巻2 号 p. 211-216
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は67才男性.7年程前から左乳房腫瘤を自覚していたが放置.4ヶ月程前から左前胸壁全体に小腫瘤が多発したため最初に皮膚科を受診.皮膚生検で乳癌の皮膚転移と診断され当科への紹介となった.Estrogen receptor(ER)陽性,progesterone receptor(PgR)陽性,human epidermal growth factor recepter 2(HER2)陰性,Ki67は10-15%であり,サブタイプはluminal Aであった.2次性の炎症性乳癌をきたしており化学療法を先行.また下肢静脈に血栓の充満を認めたため抗凝固剤(エドキサバン)を開始.悪性腫瘍による血液凝固亢進状態(Trousseau症候群)をきたしているためCVポートは造設せず,3週ごとのドセタキセル投与を3コース施行したが病状は増悪し,新たに右腸骨動脈の閉塞を認めたため,抗凝固剤をシロスタゾールとリバーロキサバンに変更したが,血栓改善なくさらに末梢循環不全のため左手第2指が壊死をきたし,その後第3指,4指の血流不全,第4指の壊死もきたした.FEC(5-FU,エピルビシン,シクロフォスファミド)療法を導入し4コース施行したところで病状はstable diseaseになったが血管確保が困難になり,化学療法をテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(S-1)内服に変更し胸壁に対して強度変調放射線治療intensity modulated radiation therapy(IMRT) を施行した(IMRT中S-1は中止).腫瘍の縮小効果は認めたが,次第に全身状態が悪化し治療開始後1年3ヶ月後に永眠された.今回血栓傾向をきたし治療に難渋した炎症性luminal A男性乳癌の1例を経験したので報告する.進行癌患者の血栓傾向はしばしば報告されるが,男性乳癌患者は腫瘤を自覚してもすぐに来院せず,進行する傾向があるため,男性乳癌の啓蒙を行う必要がある.
  • 田中 敏子, 佐藤 寛晃, 笠井 謙多郎
    原稿種別: [症例報告]
    2019 年41 巻2 号 p. 217-223
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    被解剖者は高度肥満で猪首の20代女性である.ダウン症による精神発達遅滞,難聴,先天性白内障および緑内障による弱視などの障害を有していた.他院において緑内障の眼圧検査に際し,チオペンタール(TP) 350 mgを5分間で点滴静注した深鎮静が施された.静注後10分で検査は終了したが,医師がその場を離れた隙に呼吸が急速に悪化した.直ちに人工呼吸が施されたものの約20時間後に死亡し,医療過誤の疑いで司法解剖に付された.剖検上,特記すべき損傷や疾病を認めず,血清中のTP濃度は0.80 µg/mlであった.TPは超短時間作用型の静脈注射麻酔剤で,患者とコンタクトを取りつつ,少量を頻回に投与して最少量のTP投与にとどめるのが一般的である.この事例は,障害のためにコンタクトの取りづらさが予想されたものの,安易なTPの単回投与によって呼吸停止が生じ,医師不在のために蘇生が遅れたことが死因と判断された.
  • 西澤 夏將, 花桐 武志, 小山 倫太郎, 芦刈 周平
    原稿種別: [症例報告]
    2019 年41 巻2 号 p. 225-230
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    症例1: 81歳男性,胸部レントゲンでの結節影を指摘され紹介となった.Computed tomograghy (CT)で右肺中葉に長径1.5cmの結節を認め,気管支鏡検査で悪性所見を得られなかったものの肺癌を疑い手術を行った.部分切除による術中迅速病理診断が困難であったため最初から胸腔鏡下右中葉切除と縦隔リンパ節郭清を行った.白色充実性の30×10×10 mmの結節を認め,病理学的に小~中型のリンパ球増殖を認め,CD20/CD79a陽性,CD10/Cyclin D1陰性からmucosa-associated lymphoid tissue (MALT)リンパ腫と診断した.症例2: 67歳女性,健診の胸部レントゲン,CTで右上葉の結節を指摘された.1年間経過観察し変化を認めなかったものの,本人が切除を希望したため手術を行った.胸腔鏡下右上葉部分切除を行い,迅速病理診断でリンパ腫または炎症性変化の診断を得た.白色充実性の25×25×16 mmの結節を認め,病理学的に小~中型のリンパ球増殖を認め,CD20/CD79a陽性,CD10/Cyclin D1陰性からMALTリンパ腫と診断した.肺原発MALTリンパ腫はCT上多彩な陰影を呈し肺癌や他の炎症性疾患との鑑別が困難である.また早期であれば手術や放射線などの局所治療のみでコントロール可能であるが,手術を行う場合の術式選択について明らかなコンセンサスは存在せず,今後の症例集積が待たれる.
  • 笠井 謙多郎, 田中 敏子, 佐藤 寛晃
    原稿種別: [症例報告]
    2019 年41 巻2 号 p. 231-237
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    特殊環境下で約5年が経過した検体から薬物を検出することができた事例を経験した.一部が白色から黒褐色に変色して硬く,いわゆる“屍蝋化”の状態であった大腿筋および骨髄を試料として,QuEChERS法による抽出の後,高速液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC-MS/MS)により薬毒物スクリーニング検査を行ったところスルピリドおよびエスタゾラムを検出できた.大腿筋でのスルピリドとエスタゾラムの濃度を測定するとそれぞれ10.6 ng/gおよび39.9 ng/gであった.本結果は死因診断のみならず,両薬物の同時服薬履歴から身元特定にもつながった.薬毒物分析技術の進歩により,以前であれば薬毒物を検出することが困難であった陳旧な検体や特殊環境下の検体からも薬毒物を検出できるようになりつつあるが,本事例のように経過時間が5年とかなり長く屍蝋化した検体からの薬毒物検出の報告はない.薬毒物分析技術の進歩に伴いその結果は死因の診断のみならず個人識別の分野への応用が可能である.
  • 岸上 赳大, 幾島 栄悟, 安恒 亨, 西村 陽介
    原稿種別: [症例報告]
    2019 年41 巻2 号 p. 239-242
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は生来健康な55歳の男性.5年前から心不全症状があり,僧帽弁閉鎖不全症と心房中隔欠損症の診断にて近医でフォローされていたが,僧帽弁逆流による労作時の呼吸困難の増悪があり当院に紹介された.心エコー図検査で房室弁逆流および心房中隔一次孔欠損を認め,心室中隔欠損はなく不完全型房室中隔欠損症(partial atrioventricular septal defect: pAVSD)と診断された.手術は胸骨正中切開で行った.手術所見では左側房室弁前尖に裂隙,石灰化・肥厚があり,心房中隔一次孔の欠損を認めたが,心室中隔欠損は認めなかった.左側房室弁の裂隙を縫合閉鎖したが,房室弁逆流が残存した.前尖の腱索付着側(rough zone)を腱索部分含め追加縫合し逆流を制御した.一次孔欠損は自己心膜を用いてパッチ閉鎖した.術後は合併症なく経過し,術後24日目に独歩で自宅退院した.現在,術後1年6ヶ月が経過し,外来通院中である.
  • 根本 一樹, 内村 圭吾, 原 幸歌, 千葉 要祐, 磯嶋 佑, 大平 秀典, 東 泰幸, 田原 正浩, 宇山 和宏, 立和田 隆, 野口 ...
    原稿種別: [症例報告]
    2019 年41 巻2 号 p. 243-248
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.発熱と咳嗽を主訴に近医を受診し,胸部X線写真で左上肺野に腫瘤影,胸部CTで左上葉縦隔側の腫瘤と縦隔リンパ節(#4R)の腫大がみられたため,当科を紹介受診した.縦隔リンパ節への超音波気管支鏡下穿刺吸引生検法(endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration: EBUS-TBNA)と左上葉の腫瘤へのアプローチを一期的に行う方針とし,まず縦隔リンパ節に対し,EBUS-TBNAを2回行ったが,十分な検体は採取できなかった.また,左上葉の腫瘤に対してEBUS-TBNAを試みたが,超音波下には抽出困難であり,検体は採取できなかった.そのため,同じ超音波気管支鏡を用いて左上葉の腫瘤に対し,透視併用下に経食道的超音波気管支鏡下穿刺吸引生検法(endoscopic ultrasound with bronchoscope-guided fine needle aspiration: EUS-B-FNA)を2回施行したところ,十分量の糸状の組織を得ることができた.次に,通常気管支鏡を用いて同腫瘤に対して気管支擦過と経気管支肺生検を行った. EBUS-TBNA,通常気管支鏡で採取した検体からは病理学的に悪性所見は得られず,EUS-B-FNAの検体でのみ腺癌の組織を得ることができた.EUS-B-FNAは2013年のAmerican College of Chest Physiciansのガイドラインにおいて,縦隔病変の診断に対してEBUS-TBNAへの併用が推奨されているが,本邦での普及は十分ではない.呼吸器科医は,検体をより確実に採取するために,病変の部位や大きさに応じてEUS-B-FNAも選択肢となるように,同手技を習熟しておくことが望まれる.
  • 島本 太郎, 山本 幸代, 桑村 真美, 浅井 完, 石井 雅宏, 本田 裕子, 楠原 浩一
    原稿種別: [症例報告]
    2019 年41 巻2 号 p. 249-257
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は12歳女児.−5 SD以下の著明な低身長のため当科を紹介受診した.6歳頃から急に成長率低下が認められていたが,その他の症状がなかったため検査を受けていなかった.頭部MRIでは鞍上部腫瘍を認め,内分泌学的検査で腫瘍による複合型下垂体機能低下症と診断した.術前からヒドロコルチゾンとレボチロキシンの補充を開始し,後日,頭蓋内腫瘍摘出術を施行した.病理検査で鞍上部黄色肉芽腫と診断された.本症例は急激な成長率低下を認め,脳腫瘍によるGH分泌不全を含む下垂体機能低下症による成長障害を示唆する典型的な成長曲線を示していた.小児では成長障害が脳腫瘍の唯一の症状となりうるため,脳腫瘍の早期診断,治療のため成長障害という症状にも注目することが重要である.学校検診での成長曲線の活用が重要と考えらえた.
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