Journal of UOEH
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42 巻, 1 号
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  • 鍋嶋 洋裕, 坂西 陽子, 大谷 恭子, 比嘉 幸枝, 本田 雅久, 尾辻 豊, 竹内 正明
    原稿種別: [原著]
    2020 年 42 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー
    脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)とBNP前駆体N末端フラグメント(NT-proBNP)は,心不全患者の診断と治療指標として不可欠なバイオマーカーである.しかしながら,古くからBNPに慣れ親しんだ臨床医にとっては,NT-proBNP値からBNP値を推測することはしばしば困難である.我々は,NT-proBNP値からBNP値を推算する式を作成し,推算されたBNP値が実際のBNP値と同等の予後予測能を有するかを検討した.我々は,心不全あるいは心不全疑い患者374例(導出群)のデータから,多変量解析を用いてBNP値推算式を作成した.検証群375例において,推定BNPレベルが実際のBNPおよびNT-proBNPレベルと比較して同等の予後予測能を有するかを検証した.導出群において,logBNPとlogNT-proBNPとの間には強い相関があった(r = 0.90).検証群では49例で主要有害心臓事象が発生した.Cox比例解析により,実際のBNPレベルと推定BNPレベルが将来の心血管転帰に対する同等かつ有意な予測因子であることが明らかとなった.したがって,この推算式は,特にNT-proBNP検査に慣れていない医師にとって有用である可能性が示唆された.
  • 菅野 良介, 池上 和範, 安藤 肇, 野澤 弘樹, 道井 聡史, 近藤 三保, 井本 ひとみ, 志摩 梓, 河津 雄一郎, 藤野 善久, ...
    原稿種別: [原著]
    2020 年 42 巻 1 号 p. 13-26
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,筋骨格系慢性疼痛の危険因子を特定し,慢性筋骨格系疼痛を持つ労働者の恐怖回避思考が生産性に与える影響を調査することである.2016年4月から2017年3月にかけて3つの異なる業種の従業員に対して自記式質問紙を用いて縦断調査を実施し,質問紙には基本属性,業務関連因子,筋骨格系慢性疼痛,Work Functioning Impairment Scale(WFun),日本語版Tampa Scale for Kinesiophobia(TSK-J)に関して回答を求めた.ロジスティック回帰分析を実行して筋骨格系慢性疼痛に影響を与える要因を分析したところ,年齢(オッズ比[OR] = 1.02,95%信頼区間[CI]: 1.00-1.03),平均労働時間(OR = 1.18,95%CI: 1.04-1.33),および労働時間の変化(OR = 1.18,95%CI:1.02-1.37)において慢性筋骨格系疼痛の発生と関連が見られた.また,多元配置分散分析を行って,恐怖回避思考と筋骨格系慢性疼痛,および恐怖回避思考と労働機能障害の関係を分析したところ,恐怖回避思考が強いほどWFunの得点が大きくなり,恐怖回避思考が強まるとWFunの得点も増加することが示された.本研究より,長時間労働または労働時間の増加が慢性筋骨格系疼痛の危険因子であり,慢性筋骨格系疼痛を持つ労働者の恐怖回避思考の増強と労働機能障害の悪化が関連していることが示された.また,恐怖回避思考を改善するアプローチは筋骨格系慢性疼痛を抱える労働者にとって有効である可能性がある.
  • 山本 淳考, 北川 雄大, 宮岡 亮, 鈴木 恒平, 髙松 聖史郎, 齋藤 健, 中野 良昭
    原稿種別: [総説]
    2020 年 42 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー
    5-アミノレブリン酸(5-ALA)は,悪性神経膠腫に対する術中蛍光診断における生体蛍光標識薬として広く利用されている.5-ALAそのものは光感受性物質ではなく,神経膠腫細胞のミトコンドリアにプロトポルフィリンIX(PpIX)を集積させるプロドラッグである.このPpIXが光感受性物質の性質を有する.5-ALAを用いた悪性神経膠腫に対する術中蛍光診断には,ピットフォールが存在する.また,5-ALAは,ただ単に蛍光診断薬ではなく,がん治療におけるミトコンドリア標的薬としての可能性を有する.本稿では,最新論文を基に5-ALAを用いた悪性神経膠腫に対する術中蛍光診断におけるピットフォールと5-ALAの悪性神経膠腫治療への応用について私見を加えて解説する.
  • ヴォソイ シャラム, チャラク モハマド ホセイン, ヤラマディ ラソール, アボラセミ ジャミレ, アリモハンマディ イラジ, カンラシュ ...
    原稿種別: [症例報告]
    2020 年 42 巻 1 号 p. 35-49
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー
    組織の継続的な改善における労働衛生の重要な役割について,本研究は自動車メーカー1社を対象に,労働衛生改善にむけた重要業績評価指標の特定,選択,優先順位付けを目的とした.記述的横断研究を三段階で行った.まず半構造化インタビューとメーカーの文書および既存の研究の検証,見直しを行い,一連の重要指標を特定,選択した.次に指標の妥当性を11名の専門家が測定した.続いて,SMART基準をもとに指標に優先順位をつけた.研究枠組みにしたがい,45の健康指標と17の教育指標を含む一連の指標を集めた.内容的妥当性を調査した結果,それぞれ12および9の指標が妥当性を満たし,専門家チームによって本研究に対し全部で21の指標が提示された.優先順位付けの結果は,是正的,予防的健康行動が採られた割合といった先行指標が重み0.146で最優先であった.一連の重要指標は,本研究目的に基づく結果から提示されたもので,自動車産業において管理者や産業衛生の専門家が業績評価を行う際の一助となりうる.
  • 樋上 翔大, 植田 多恵子, 榊原 優, 遠山 篤史, 原田 大史, 栗田 智子, 鏡 誠治, 松浦 祐介, 吉野 潔
    原稿種別: [症例報告]
    2020 年 42 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー
    血管外膜嚢腫は,血管外膜内に粘液性嚢胞を形成する珍しい疾患である.主に動脈に発生するが,静脈内発生は稀である.今回,卵巣腫瘍と鑑別が困難であった静脈外膜嚢腫の1例を経験した.症例は79歳の女性,腹痛と吐き気を主訴に来院した.コンピューター断層撮影(CT)では,右側に120 × 100 mm,左側に45 × 35 mm大の両側性の骨盤内嚢胞を認めた.両側性卵巣腫瘍の診断で,腹腔鏡下腫瘍切除術を行う方針となった.腹腔内を観察すると,左卵巣は約3〜4 cmに腫大していたが右卵巣は正常外観であった.右後腹膜腔に外腸骨静脈と閉鎖神経に強固に癒着した粘膜性嚢胞を認めた.注意深く癒着を剥離し腫瘍を切除したが,術後に一時的な閉鎖神経麻痺を来した.術後の病理学的検査から,右外腸骨静脈に由来する静脈外膜嚢腫の診断となった.術後1年間経過したが,再発なく経過している.静脈外膜嚢腫は,骨盤内腫瘍として発育することがあり卵巣腫瘍と鑑別を要する.本症例では腹腔鏡下手術が選択されたが,再発を防ぐためには腫瘍の完全切除が必要であり,人工血管置換術が必要となる場合もある.骨盤内嚢胞性病変の鑑別疾患として血管外膜嚢腫を念頭に置くことが重要であると考えられた.
  • 黒住 旭, 岡田 洋右, 宮崎 佑介, 中山田 真吾, 田中 良哉
    原稿種別: [症例報告]
    2020 年 42 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は29歳女性で,当院に糖尿病性ケトアシドーシスを伴った劇症1型糖尿病に対する加療のため入院となった.8カラーフローサイトメーターを用いて末梢血リンパ球の表現型の解析を行った.健常者対照群と比較して,本症例はCD4陽性T細胞についてはeffector T細胞やcentral memory T細胞が増加傾向でregulatory T (Treg) 細胞は正常であった.さらに,B細胞分化では対照群と比較して,switched memory B細胞とplasmablastの割合の増加を認めた.本症例は末梢血リンパ球解析において既報とは異なった特徴を認め,劇症1型糖尿病病態における末梢血リンパ球表現型の多様性が示唆された.
  • 三宅 晋司
    原稿種別: [総説]
    2020 年 42 巻 1 号 p. 63-75
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー
    National Aeronautics and Space Administration Task Load Index(NASA-TLX)は世界で最も多く用いられているメンタルワークロードの主観的評価法である.本稿はこのNASA-TLXを用いた医療従事者のメンタルワークロード評価が報告されている近年の論文26編を,腹腔鏡手術,麻酔,ICU,電子カルテ,自己調整鎮痛,救急救命,ディスプレイ,その他の領域に分類してまとめた.これらの論文ではワークロードの評価指標はNASA-TLXのみが用いられているわけではないが,本稿ではNASA-TLXの結果のみを記載した.
  • 藤野 善久, 丹澤 和雅, 村松 圭司, 大谷 誠, 久保 達彦
    原稿種別: [技報]
    2020 年 42 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー
    無作為化比較研究(RCT)は医学研究における因果効果推計の最も信頼性の高い研究デザインに位置付けられている.RCTの信頼性が担保されるためには,無作為化割付のプロセスが適切に実施される必要がある.そのための必要な手続きには,1)ランダム化の順番の作成,2)割付の隠蔵,3)割付の実施が適切に実施されなければならない.これらを管理するため中央事務局方式や封筒法・番号付き容器法などの方法が採用されている.医師主導型の臨床研究や比較的小規模な臨床研究においては,予算上の都合から,封筒法・番号付き容器法が多く採用されている.しかしながら,これらの方法は適切なRCTの実施が担保されない.そこで小規模に実施される臨床研究において実施可能なRCTの割付を管理する新しい方法として割付管理帳票を考案した.本稿では,RCTの適切な実施に必要な手続きの観点から,従来の方法との比較を行い,割付管理帳票の利点および限界について考察した.
  • 安達 保尋, 勝木 健文, 秋山 泰樹, 鳥越 貴行, 平田 敬治
    原稿種別: [症例報告]
    2020 年 42 巻 1 号 p. 83-88
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.徐々に増悪する腹痛,嘔吐を認め,当院に救急搬送された.造影CTで空腸及び回盲部腫瘤による多発腸重積が疑われた.また左肺下葉には径5 cm大の原発性肺癌を疑う腫瘤影を認めた.内科的治療による重積解除は困難と判断し,同日緊急手術を施行した.上部空腸,回盲部の2ヶ所に重積所見を認め,空腸部分切除術ならびに回盲部切除術を施行した.病理組織学的検査で転移性小腸腫瘍が疑われた.術後に施行された左肺結節に対する気管支鏡検査の生検結果から,肺多形癌の小腸転移と診断した.今回我々は肺多形癌の小腸転移による多発小腸重積症のまれな一例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 樋上 光雄, 荒尾 弘樹, 笛田 由紀子, 宮内 博幸
    原稿種別: [短報]
    2020 年 42 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー
    障害者雇用促進法の改正に基づき2018年4月より民間企業における障害者の法定雇用率は2.0%から2.2%に引き上げられた.さらに2021年には,0.1%引き上げられ2.3%となる.また,障害者の就労数もここ数年は右肩上がりであり,発達障害者の就職者数も増加していることが予測される.このことから,衛生管理者などの産業安全衛生技術職が,発達障害のある労働者に対しての安全衛生教育を行う場面が増えることが予測される.発達障害者は一般的な定型発達者とは異なる様々な特性を有する.そのため,教育を行う際もその特性を理解したうえで実施する必要がある.本報では,産業安全衛生技術職が教育を行う上で知っておくべき発達障害者の特性と留意すべき事項をまとめた.
  • 2020 年 42 巻 1 号 p. 97-150
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー
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