Journal of UOEH
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8 巻, 1 号
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  • エドワード P. ラドフォード
    原稿種別: 講演
    1986 年8 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    労働による健康問題の対応は概して病気の発生への対応と密接に関連しており, これらはまた, 中世以来大変ゆっくりと変化してきた. 西欧では19世紀まで病気は神に背いたことに対する罰として考えられたり, また不運の結果であると考えられた. 確かにこのような考え方は, 病原体説がでてきて, 病気を予防する方法が十分理解されても, 水, 食物, 空気によって感染する病気の予防がゆっくりとしか進まない一つの要因であった. 今日では, 長い期間かかって起こる慢性の変性疾患や癌に焦点があてられているが, これらの疾患に対する予防へのアプローチも同様にゆっくりとしか進んでいない. 米国は今世紀急激に労働力を外国から入れている比較的若い国であるために, 職業による傷害や疾病の問題はほとんど認識されてきてなかったし, 企業に働く医師や看護婦は従来のへルスケアの技法にしか関心を向けていなかった. しかしながら, 米国では最近少なくとも一般の人々は, 疾病予防の重要性を認識する方向へ変化しつつある. 仕事に関係した健康防害については, 産業活動によって起こる労働者や一般住民に対する健康障害を発見する責任を雇用者に課する法律ができて, この認識が急速に高まってきた. おかしなことに, 1970年の労働安全衛生法は1977年の有害物質規制法がでて職業病の認識の変化をもたらすのにあまり有効でなくなってきている. 新しい化学物質の重大な健康影響が一般に知れわたった結果, 一般大衆やその代表者が, このような変化をもたらすことに先導役を果している. 一般に労働者の保護は企業の経済的な生存能力と相反すると言われているために, 職業病や仕事上の傷害への対応の変化は遅々としている, しかしながら, 少なくとも大企業では, 経営者は莫大な補償による損失の重大性を認識しており, また産業保健の専門家の役割がより一層重要になりつつある. 社会的, 政治的また経済的な力によって, 今なお職業病や仕事上の傷害の予防や職業病の原因についての知識の現場への応用が遅らされている.
    (吉村健清教授訳)

    (この内容は1985年10月15日に行われた第97回産業医科大学公開講座における講演に基づくものである.)
  • 安藤 健夫, 鈴木 勝己, 緒方 甫, 小林 靖幸, 田中 宏明
    原稿種別: 原著
    1986 年8 巻1 号 p. 11-17
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    一般に健康人の体力の指標として, 最大酸素摂取量, Aerobic Threshold(以下AeTと略す), Anaerobic Threshold(以下AnTと略す)が用いられる. 今回われわれは整形外科外来通院中の慢性関節リウマチ患者9例について, 自転車エルゴメーターによる多段階漸増運動負荷試験を行い, 血中乳酸値・呼気ガス分析・心拍数・血圧の測定を行った. 結果, 最大酸素摂取量は全例で測定不能であったが, AnTは9例中3例, AeTは9例中7例で測定可能であり, 慢性関節リウマチ患者の体力の指標として, AeTが適当であろうと判断した. また上記の患者のうち, 3例についてAeTを強度とする, 自転車エルゴメーターによる運動療法を行い, その効果についても検討した.
  • 石倉 義弥, 小田桐 重遠, 永田 真人, 長野 忠, 吉松 博
    原稿種別: 原著
    1986 年8 巻1 号 p. 19-25
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    急性虚血による心筋の不可逆性変化に至るまでの移行時間に関するCoQ10の作用について, 雑種成犬を用い検討した. 冠動脈遮断前後にCoQ10を経静脈的に投与した群とPlaceboを投与した群で, 一定時間冠動脈遮断後に血流を再開させ比較検討した. 1)血行動態および生化学的検索では両群間に有意差はなかったが, 梗塞群と非梗塞群ではGPT(P<0.05), ピルビン酸(P<0.025)で有意差がみられた. 2)TTC法による心筋梗塞の有無では, CoQ10群で冠動脈遮断90分でも梗塞を生じないものが9例中8例に対し, Placebo群では遮断60分で8例中7例に梗塞発生をみた. 4)心筋微細構造でもCoQ10群の90分遮断例では未だ可逆的変化を示したものがあるのに対し, Placebo群では60分遮断で不可逆性変化のものが多かった. 以上の結果から心筋虚血に対しCoQ10はその不可逆性変化へ移行する時間を延長し, 心筋保護に有効であったと思われる.
  • ―分析電顕による形態学的検討を中心として―
    海津 嘉蔵, 松野 康二, 児玉 泰, 江藤 澄哉
    原稿種別: 原著
    1986 年8 巻1 号 p. 27-33
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, 金製剤による腎障害性の発症機序を明らかにする目的で行った. 25mgの金チオリンゴ酸ナトリウムをSDラットに1回腹腔内投与し, 6時間後(1群), 24時間後(2群), 72時間後(3群), 144時間後(4群)に採血し, 臓器を摘出した. 1群ですでに強い急性腎不全が惹起された. 血清中金濃度は1群で最高値を示し, 以後,経時的に急速に低下した. これに対し, 各臓器中の金濃度の経時的変化は少なかった. 臓器別では, 腎に最も多量の金が蓄積した. 組織学的検索では, 光顕的にみると最も顕著な変化は近位尿細管の直部の壊死像で, 1群ですでに出現し, 以後, 増強した. 電顕的には近位尿細管細胞内のlysosomeの増加があり, その中に多数のelectron dense particleとしてみられる金が分析電顕で確認された. 以上の事から, 腎は金の重要な標的臓器で, 金は腎にnephrotoxinとして作用し, その沈着により急性尿細管壊死が惹起される事が明らかになった.
  • 古賀 洋介
    原稿種別: 原著
    1986 年8 巻1 号 p. 35-38
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    薄層クロマトグラフィーによって分離した二重標識リン脂質の放射能をシリカゲルに吸着したまま液体シンチレーション法で測定すると, 高エネルギー核種のカウントが低エネルギー核種のチャネルに大きく混入し, 著しい誤差の原因になる. しかも, この混入はクエンチング検出補正用の外部線源比には現われないので問題がある. 水を加えた界面活性剤入り液体シンチレーターによってシリカゲル粉末から脂質を完全に溶出すればこの問題は解決するが, 使用する市販シリカゲル薄層プレートの種類によって溶出に要する時間が非常に異っていた.分離能のよい “硬い” プレートでは溶出に3日を要した. 一方, “柔らかい” プレートでは1-2時間で溶出したが, ある種のリン脂質は異常な挙動を示すので, 使用に注意を要する. クエンチングの程度の異なる多数の試料のひとつひとつについて両核種の補正されたカウントを求める方法を示した.
  • 真喜屋 清, 石黒 虎男, 高橋 美和子, 大橋 昭任, 竹下 三喜男, 彭城 郁子
    原稿種別: 原著
    1986 年8 巻1 号 p. 39-46
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    水田皮膚炎の原因となる烏類住血吸虫セルカリアの中間宿主ヒメモノアラガイについて, 乾燥した水田の稲株で越冬する集団, 初夏の水田で越冬貝から発育した大型貝集団および産卵後に生じた新生貝集団の水田内における分布様式を明らかにすると同時に, 越冬集団の分布を左右する土壌水分量および土壌粒子の組成との関連について解明した. 越冬貝, 大型貝および新生貝の各集団とも水田内では均一に分布せず負の二項型に適合する集中性の不均一な分布をし, 集中度は新生貝 > 越冬貝 > 大型貝個体群の順に強かった. 分布様式と集中度から考えると, 翌春水が張られた後稲株から出た越冬貝集団がこの水田の中央部寄りで成熟, 産卵後に分散して行き, 水田周縁部に集まったものと考えられた. 秋の繁殖期に産出された稚貝は, 土壌水分のより多い場所を選び稲株の地下茎に潜入することによって, 乾燥した冬の水田で生きのびるものと考えられ, また, 水分の多い場所の土壌はそうでない場所に比べて細砂の割合が高く, 粗砂の少ない組成をしていた.
  • 松浦 孝行
    原稿種別: 原著
    1986 年8 巻1 号 p. 47-50
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    素数の双子, 三子, 四子などについてはすでによく知られているが, ここではさらに一般化した多子素数なるものを考えてみたい. これは, (11, 13, 17, 19, 23, ・・・)とつづく素数の列に対応する形の(k, k+2, k+6, k+8, k+12, ・・・)という素数の組であり, 欧文では仮にmultipletsと名づけておく. ある種のkの値に対してこの多子素数が存在しうることは容易に示すことができ, また実際に十子までの多子素数の存在も確認されている. ここではそれらについて簡単にまとめるとともに, 参考資料として2000億までの多子素数の分布などの表を付す.
  • 中西 悦子, 松井 清, 大津 ミキ, 土屋 尚義, 金井 和子
    原稿種別: 原著
    1986 年8 巻1 号 p. 51-61
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    痒みを誘発する刺激を分類し, 老年期における痒みとそれらの関係について統計学的解析を行った. 老人の痒みは, 石鹸などの化学的刺激と有意な関係はみられなかった. また, 湿布や絆創膏に過敏であることが, 必ずしも老人の瘙痒を引き起こすことにはならないことがわかった. さらに皮膚への圧迫, 摩擦は老人の痒みとは関係がみられなかった. これに対し, 温暖, 寒冷など温度にかかわる刺激が重要な誘因になることが統計学的にも確証された. また私達の調査で寒冷に過敏であるのは男に多いことが有意に示された. このことは, 老人性瘙痒症が男に多いといわれていることと関係する. これら離散量の解析のために, Kullback-Leiblerの情報量を基礎とした.
  • 小林 利次, 林 実, 太崎 博美, 江藤 澄哉, 原武 譲二
    原稿種別: 症例報告
    1986 年8 巻1 号 p. 63-72
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    72才男性, 悪性リンパ腫(国際分類stageⅣ, medium cell type)の症例において肝限局性浸潤, 旁膵リンパ節, 旁大動脈リンパ節および脾門部リンパ節の転移・浸潤巣の超音波断層所見と超音波組織特性の分析・検討を行った. 全病巣は超音波断層像上, 低エコー性(hypoechoic)に描出され, 組織特性の面から検討すると, リンパ球性の均質病巣がこの断層所見の出現の原因であることが結論づけられた.
  • 原田 進, 宮崎 信義, 城戸 優光, 山崎 裕
    原稿種別: 症例報告
    1986 年8 巻1 号 p. 73-78
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    気管支粘膜生検は, 欧米においてはサルコイドージスの診断に有用な方法であると考えられているが, 我が国では本症の気管支病変に関する報告は少ない. 我々は, 高度な気管支病変を伴った, 興味深いサルコイドージスの一症例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告した. 症例は40才の女性で, 自覚症状はなく, 健診で発見された胸部のびまん性網状・小結節状陰影の精査を希望して受診した. 気管支鏡検査にて, 気管支粘膜に多数の小結節や黄白色斑, 血管の増生, 怒張, 粘膜の浮腫状肥厚, 葉, 区域気管支の著明な狭窄や変形が認められた. TBLBおよび, 気管支粘膜生検によって非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が証明された. また, 肺機能検査にて, 拘束性換気障害, 拡散障害と共に末梢気道障害が認められ, 副腎皮質ステロイド剤の投与により気管支粘膜の病変は消失, 胸部X線像や肺機能所見も改善を示した. 改めて当科に入院したサルコイドージス11症例の気管支鏡写真の見直しにより, 8例にサルコイドージスに起因すると考えられる軽微な粘膜変化が認められた. 気管支粘膜生検は, サルコイドージスの診断上重要な検査として積極的に行うべきであると考える.
  • 岡崎 昌博, 田原 章成, 八木田 真光, 森田 翼, 田岡 賢雄
    原稿種別: 症例報告
    1986 年8 巻1 号 p. 79-84
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    われわれは, 長期に亘る高熱を主徴とし, 他の臨床症状や検査成績より,成人発症Still病と思われる一例を経験したので報告する. 症例は46才の女性で, 昭和59年9月28日より6カ月以上に亘り38℃から40℃の高熱が出現. さらに多発性関節痛, 発疹, リンパ節腫脹の消長をみた. 入院時, 血沈75mm/時, CRP6+以上, 核の左方移動を伴う白血球増多, α2-グロブリン18.8%など強い炎症所見がみられたが, リウマチ因子, 抗核抗体など自己抗体はすべて陰性であった. 臨床経過ならびに検査所見より感染症, 悪性腫瘍, 他の膠原病, 薬剤過敏症などは考え難く成人発症Still病と診断した. 99mTc骨シンチおよび67Ga腫瘍シンチにて病勢に一致して骨・関節および赤色髄, 脾に核種の強い取り込みがみられ, 病態を考える上で興味ある所見と思われた.
  • 佐川 寿栄子, M. K. YOUSEF
    原稿種別: 総説
    1986 年8 巻1 号 p. 85-92
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    砂漠は暑熱乾燥の最も厳しい環境である. このような環境で人間が住み働きうる能力は, 体温調節と水分代謝をいかに円滑に行うかに依存しているといえる. ここでは, 自然の砂漠環境で行われた実験に限定して, 人間の汗腺活動と水分代謝に関する知見を概説した. 砂漠では発汗疲労は観察されていない. 総発汗量は脱水または水分および塩分補給による影響は受けず, 年令や人種による差も認められていないが, 男は女より明らかに大量に発汗することが知られている. 口渇を癒す為に飲む水の量は汗の電解質濃度とよく相関している. 砂漠での歩行では, 体水分の1時間当りの損失が体重の1.5%以下であれば, 発汗によって失われた水分および塩分に相当する量を定期的に補給することにより, 脱水を防ぐことが可能である. しかし体重の3%を越えるような場合には, たとえ水分および塩分を補給しても失われた体水分の50%程度しか回復しない.
  • 柏村 正道, 加藤 俊, 長野 作郎, 幾島 栄三郎, 西 国広
    原稿種別: 総説
    1986 年8 巻1 号 p. 93-99
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    福岡県における子宮頸癌検診は, 主として検診車による検診と日母開業医による検診がおこなわれているが, 前者による検診が約7割をカバーしている. 検診車方式では3団体, 日母方式では主として3団体の合計6団体による検診がおこなわれて来たが, 昭和58年2月の老人保健法施行以後は県全体としての管理が要求されているために, 各団体の検診は無関係ではあり得なくなった. 各々の欠点や利点を十分に検討して検診が死亡率を減少させる効果を挙げることが期待されている. 福岡県では現在約11%の検診率しかあげられていないが, これを増加させるためにはどのような方法がとられるべきか, また検診システムや精密検診はどうあるべきかについて福岡県の実態と問題点について報告する. また現在福岡県においておこなわれている老人保健法の事業について報告し, 子宮癌検診がどのように関っているのか, あるいは関るべきかについて解説する.
  • 伊藤 幸郎
    原稿種別: 人間学
    1986 年8 巻1 号 p. 101-113
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    医師・患者関係の考察は医の倫理の中心課題である. 病める患者を前にした臨床医の内面からこれを反省するとき, 自らの素顔と仮面, 人間性と科学性の二元論的分裂が意識されて割り切れない思いがする. また, 人間愛に徹しようとしても, 他人の痛みは原理的に感ずることができず, 患者と深い交流をもって共感すれば自ら傷つき, 適確な診療に差し支える. 現実に可能な人間愛の限界は患者との間に一定の距離をおいた友愛(philia)である. 次に, 外に向って医師と患者の社会的関係についてアメリカの現状を眺めると, 昔からの医師優位の伝統は崩壊しつつあり, 今や患者の権利が不動のものとなっている. わが国でも患者の権利宣言案が公表されたが, 甘えの構造を基調とする今の日本社会に欧米で支配的な風潮を直輸入するのはなお時期尚早である. 理想的には, 医師と患者とがお互いの個性を尊重し合った大人同志の関係になるのが望ましい.
  • 産業医科大学
    原稿種別: 抄録集
    1986 年8 巻1 号 p. 115-149
    発行日: 1986/03/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
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