Journal of UOEH
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8 巻, 2 号
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  • ロジェー・サラザン
    原稿種別: 講演
    1986 年 8 巻 2 号 p. 151-158
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    現在, フランスには, 人口370人に1人の割合で, 14万5千人の医師(一般医60.3%, 専門医39.7%)がいる. 医学を志すには, まず, 高校終了時にバカ口レア(大学人学資格試験)に合格することが必須である. 大学での医学教育は, 3段階に分かれる. 第Ⅰ段階は2-3年間, 基礎科学(1,050時間)を学ぶ. カリキュラムは各大学で独自に組まれる. 1学年終了時に厳しい選抜試験があり, 約5分の1に限定される. 第Ⅱ段階は4年間, 1年目は基礎医学, 残り3年間は臨床病理学と臨床実習(1年無給, 2年有給)に当てられる. 1982年に第Ⅱ段階終了確認試験が設置され, 合格者は第Ⅲ段階へ進み, 全員, 一般医レジデントとして認められる. 2年間従事して論文提出後, 一般医になる者, または, その期間内に, 専門医レジデント地方別選抜試験(1984年に設立. 同年の志願者8,800名, 合格者1,426名)を受けることにより, 専門分野の理論・実践期間(4-5年)を許され, 論文提出後, 専門医として開業する者と, レジデントチーフとしてさらに2年間従事し, 国家試験により一般病院か大学病院の専門医になる者とに分かれる. 後者はごく少数である.

    (フランス外務省科学使節として来日. 1984年11月14日, 産業医科大学教員研究会での講演からその内容を収録した.)
  • 深川 ゆかり, 大津 ミキ, 中野 正博, 牧 孝
    原稿種別: 原著
    1986 年 8 巻 2 号 p. 159-168
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    職業病としての振動障害が, 様々な振動機具によって起こっている. 我々は, 単に末梢血管を物理的に振動させた時の血流量の変化を知るために, モデル実験としてシリコン細管を振動させ, その中を流れる水の流量の変化を測定した. 1-2000Hzの振動数の3種類の振動モードを与えた. 水の流量は振動を加えると減少し, その減少は, 振動の種類および振動数に強く依存する事がわかった. この強い依存性の理由は, 次のようである事を明らかにした. まず振動によってシリコン管が伸縮し, 管の平均の長さが, 無振動時より長くなる. そのため, 管の平均の半径が, 小さくなる. これによって, 流量の減少が起こってくる. シリコン管の伸びは, 振動の種類と振動数に強く依存するので, 結局, 流量に, 強い振動数依存性が見られる事を結論とした.
  • 保利 一, 田中 勇武, 大西 晃生, 井上 尚英, 秋山 高
    原稿種別: 原著
    1986 年 8 巻 2 号 p. 169-176
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    プロピレンオキサイドは工業原料, 殺菌剤等に広く使用されているが, 末梢神経障害の症例が報告されているエチレンオキサイドと化学構造が類似しているため, 同様の生体影響が懸念される. 吸入曝露実験によってこのことを確かめるには, 安定した発生特性をもつ蒸気発生装置が必要である. しかし, プロピレンオキサイドは沸点が約34℃と低く, 蒸気圧が高いため, 長期間安定して一定濃度の蒸気を発生させることが困難である. そこで,多孔質ガラス球に含浸させた液の蒸発速度が一定となる現象を利用した蒸気発生装置を試作した. その際, 液の蒸気圧が高いため, 蒸気発生部の温度を低く一定に保つ必要があり, 発生部を氷水で冷却した. キャリアガスとして, シリカゲル層を通して除湿した空気を用いることにより, 試作した装置は長時間にわたって濃度変動のない安定した蒸気を発生させ得ることが実験的に確かめられた. 濃度はキャリアーガス量, 希釈空気量および多孔質球の直径を変えることにより幅広い範囲で調整できた.
  • 第一報 胃集検受診に関連する要因
    赤松 直樹, 井手 睦, 上田 陽一, 近藤 義政, 中村 昌太郎, 森 朋子, 荻本 逸郎, 吉村 健清
    原稿種別: 原著
    1986 年 8 巻 2 号 p. 177-183
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    胃集検受診の実態を知るために, 地域住民(福岡県M町)を対象に, 過去3年間の胃の検査受診状況を自記式調査票により調査した. 住民3,660人を対象とし, 得られた2,205人の調査票を解析した. その結果, 検診受診率(地域検診・職場検診・人間ドック)は, 性別で男が女より高く, 年令別では男40才50才台女40才-60才台が高かった. 職業別では, 職場検診を持つ公務員, 会社員の受診率が高い. 一方, 地域検診が主な検診手段である無職・主婦の検診受診率は低い. さらに, 家族内にがん死亡者がいると受診率が高くなる傾向があったが, がん予防を心がけている群といない群とでは受診率に差がなかった. 以上より, 受診率の向上のためには検診形態の改善とともに受診の動機づけを行う健康教育・啓蒙活動などの充実が必要と思われる.
  • 三砂 將裕, 菊池 亮, 塚田 順一, 千葉 省三
    原稿種別: 原著
    1986 年 8 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    マウス骨髄を用いて, メチルセルロース法によるCFU-Eコロニー形成に関する基礎的検討を行った. 1)CFU-Eコロニーは培養後48時間目をピークとして出現した. 2)CFU-Eコロニー数と培養細胞数との間には直線的な相関関係が認められた. 3)CFU-Eコロニーはエリスロポエチン(Epo)濃度に依存して増加し, Epo濃度が0.25U/ml以上になるとコロニー数はほぼプラトーになった. また, 2種のEpo(貧血患者尿由来:当研究室作成, 羊血漿由来:Connaught社製)のCFU-Eコロニー形成能には殆ど差がみられなかった. 4)2系統(BDF1, ddY)のマウスの骨髄CFU-Eには殆ど差がみられなかった. 5)培養組成液の至適濃度はFCS10-30%, BSA0.5-1.0%, 2-mercaptoethanol 10-4Mであった. 以上の成績は, 今後のCFU-Eに関する研究を発展させる上で重要な所見と考えられる.
  • 山口 祐司, 三砂 將裕, 菊池 亮, 千葉 省三
    原稿種別: 原著
    1986 年 8 巻 2 号 p. 193-199
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    マウス骨髄細胞を用いたin vitroコロニー形成法により, 顆粒球系前駆細胞(CFU-C)の基礎的検討を行い次の結果を得た. (1)コロニー形成のピークは, 培養4日目であった. (2)コロニー数と培養骨髄細胞数とは正の相関関係を示した. (3)コロニー数とCSF濃度の関係は, CFS10%以下では濃度依存性に増加傾向を示し, 10%以上の濃度ではプラトーとなった. (4)FCSが0-30%の間では, FCSの濃度に依存してコロニー形成能の増加が認められた. (5)骨髄細胞から貧食細胞を除去した分画(非貧食細胞分画)は, 非分画細胞群と同程度にコロニーを形成した. (6)2-Mercaptoethanol(2-ME)を添加すると10-4Mで約100%のコロニー形成の増加が認められたが, 10-3Mおよび10-2Mではコロニー形成は完全に抑制された. 以上の基礎的研究の成績は, 今後, 顆粒球系前駆細胞の研究を進める上で有用と思われる.
  • 白石 悟, 山本 辰紀, 森 敏雄, 大西 晃生, 村井 由之
    原稿種別: 原著
    1986 年 8 巻 2 号 p. 201-207
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    キノホルムが末梢神経挫滅後の再生過程に及ぼす影響は今まで明らかにされていない. 本研究では坐骨神経圧迫挫滅後のラットの腓腹神経再生にキノホルムがどのように作用するかを検討した. 実験群にキノホルム300mg/kg/日を挫滅処置7日前より経口投与し, 対照群との光顕的組織所見を, それぞれ挫滅処置7, 14日後の挫滅部から5mm毎の遠位部で比較した. 挫滅処置7日目の有髄線維再生端は両群共挫滅部より0-5mm遠位部に存在した. 挫滅処置14日目の有髄線維再生端は対照群では15-20mm遠位部に, 実験群では5-10mm遠位部に存在した. 以上の結果よりキノホルムは有髄線維の再生を明らかに抑制した.
  • 吉田 耕治, 大塚 治夫, 平野 隆博, 林 烱旻, 坂元 力, 岡村 靖
    原稿種別: 症例報告
    1986 年 8 巻 2 号 p. 209-217
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    婦人科領域特に不妊症領域の患者を中心に12例の患者にopen laparoscopyを行った. 難治性不妊症11人の患者中8人に子宮内膜症を認めた. 術前の子宮卵管造影とlaparoscopy下の通色素の所見が異なる患者が3例あった. 子宮外妊娠の1例もlaparoscopyで確診され開腹手術後治癒した, 全例, 気管内挿管全身麻酔下に笑気ガスで気腹を行ったがhalothaneと笑気吸入麻酔患者の1例に一過性のhypothermiaを認めた. 婦人科laparoscopyの適応, open laparoscopyの特徴とclosed laparoscopyとの比較などにつきdiscussionした.
  • Mohamed K. YOUSEF, 佐川 寿栄子, 白木 啓三
    原稿種別: 総説
    1986 年 8 巻 2 号 p. 219-227
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    先進工業国では寿命の延長の為に高令者の人口比率が増加しつつあり, 高令者の健康と労働能力を確保することが社会的要請になっている. 高令者の疾病率や死亡率におよぼす温度ストレスの影響については多くの報告があるが, 体温調節機序の研究は比較的少ない. ここでは高令者に温熱負荷を与えて, 安静および運動時の体温調節反応を若年者のそれと比較した研究について概説した. 発汗量や発汗開始時間には年令による差が認められず, むしろ発汗量は体力とよく相関した. 最大酸素摂取量の40%の運動負荷を与えた時の発汗量はすべての年令層で同一であった. 運動に対する機械的な効率は老人と若者の間で差を認めなかったが, 体力が劣っている場合には効率が減少していた. 我々の研究は, 高温時の体温調節に重要な汗腺の機能は加今によって減退するものではなく, むしろ高令者では高温環境における心臓血管系の機能低下がより大きな問題点であることを指摘した.
  • 椿 隆行, 田中 孝夫, 重松 昭生
    原稿種別: 総説
    1986 年 8 巻 2 号 p. 229-238
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    内因性疼痛抑制系にはセロトニン系ニューロンによる下降性抑制系, ノルアドレナリン系ニューロンによる下降性抑制系, 内因性オピオイド系(これは下降性抑制系あるいは触覚で, 駆動される抑制系の一部である可能性がある)等があり, 基本的には末梢神経がらの侵害情報を中枢神経の人口である脊髄後角でコントロールしている. 大脳皮質, 辺縁系, 視床下部からの線維や皮膚からの求心性線維等が中脳中心灰白質を介してこれらの系を駆動する可能性が考えられている. ここでは中脳中心灰白質電気刺激により引き起こされる鎮痛の脊髄における機序を中心に概説した. 中脳中心灰白質刺激によって生じるインパルスの一部は延髄大縫線核のセロトニン含有ニューロンにより中継されて脊髄背外側索を下降し, 脊髄後角に入りシナプス後抑制により後角侵害受容ニュ一ロンの活動を抑制すると考えられる. この鎮痛に内因性オピオイド系が関与している可能性は少ない.
  • ―職業性肺疾患を中心に―
    山田 誠二
    原稿種別: 総説
    1986 年 8 巻 2 号 p. 239-249
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    アメリカにおける産業医学・労働生理学への取り組みの現状を, 国立労働安全衛生研究所(NIOSH)とカリフォルニア大学サンフランシスコ校を主体として紹介するとともに, 労働安全衛生に関するアメリカの国家的克服目標であり, またNIOSHが掲げた10の職業性の疾病および傷害のうちの第一目標である職業性肺疾患(石綿肺, 綿肺, 珪肺, 炭鉱夫塵肺, 肺癌, 職業性喘息と過敏症)に関する最近のトピックスを紹介した. さらに肺疾患の病態生理学的研究として, 気道過敏性と肺水腫に焦点をあて, これらの病態での白血球の役割やアラキドン酸カスケードの関与などのトピックスも紹介した.
  • 大林 雅之
    原稿種別: 人間学
    1986 年 8 巻 2 号 p. 251-256
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は日本における分子生物学の起源に関して若干の考察を試みることである. 日本における分子生物学の進展は長い歴史を持つものではなく, その起源は第二次世界大戦後に求めることができる. その起源として, ここでは次の3つのものを挙げる. (1)「バクテリオファージ」を扱う分子遺伝学の開始, (2)核酸に興味を持った生物学者, 生化学者, そして物理学者らによる研究会の結成, (3)戦前からの伝統を持つ酵素化学研究の再開, 以上の3つである. これらのうち, (1)と(2)は戦後に始まったものと言えるが, (3)については, そこで挙げた酵素化学というものが, 日本では戦前から生化学の主要研究課題の1つであったことに注意しなければならない. 日本において生化学は, 戦前から医学や農学に伝統を保持して発達してきたものである. それ故に, これらの分野が戦後において, 欧米から分子生物学を導入する上で重要な役割を担ったと言える. このような日本における分子生物学と生化学との関係についての研究は, 分子生物学の起源における物理学者の役割を強調する欧米の分子生物学史研究と比較すると, 日本の分子生物学の進展における特徴を明らかにする上で有効であると言えよう.
  • ―受け入れ国側の役割―
    大石 真一
    原稿種別: 人間学
    1986 年 8 巻 2 号 p. 257-266
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    異文化間コミュニケーションの目的は, 異文化の人々と相互に意見を交換することです. 異文化間のコミュニケーションにおいては, 通常受け入れ国の人々は外国からの短期滞在者(例えば, 学会参加者, 留学生, 観光客)や移住者と話し合いをもちます. このような状況では, 受け入れ国側の人々には特別な負担がかかります. このレポートでは, 異文化間コミュニケーションにおける受け入れ国側たる日本の役割を考察しています. 外国人は3つのグループに分けられています. これに対して日本人は受け入れ国民としてこの3つのグループに対して, どのような義務があるかを検討しています. 外国人が異文化の中にあってリラックスできるためには, 受け入れ国民としてのふさわしい態度が重要であることを特に強調するものです.
  • 鈴木 秀郎, 伊藤 幸郎
    原稿種別: 人間学
    1986 年 8 巻 2 号 p. 267-275
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    1985年12月に厚生省の「脳死に関する研究班」の答申が出されたのを機会に, 本学の「体外受精・臓器移植等の基準に関する委員会」および医学概論(総合人間学)の担当者の立場から脳死について考察した. Ⅰ「新しい脳死判定基準について」(分担:鈴木)では研究班の判定基準について概説し, ①全脳死, ②不可逆性を脳死の特徴とすること, 脳死の必要十分条件から血圧低下を除外したのはよいが平坦脳波は必ずしも全脳死を反映しないこと, 人工呼吸器を必要としない植物人間の診療にも, 社会的・経済的問題があることを示すとともに, 臓器移植推進論者が “倫理委員会” をかくれみのに脳死認定を急ごうとする傾向を批判した. Ⅱ「脳死と人間の死」(分担:伊藤)では, 生と死は科学の用語で定義し切れない人間学的な概念であること, 死は特定の時点における事件でなくしてプロセスであり, 脳死を一つの区切りとしても移植とは独立に論ずべきことを強調した.
  • 小川 尚
    原稿種別: 報告
    1986 年 8 巻 2 号 p. 277-287
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    エジプト国アレキサンドリア市における都市廃棄物収集事業改善のための市民協力推進プログラムが, 1985年の夏に行われた収集実験の中で計画され, 実行された. この市民協力推進プログラムは住民指導および収集実験協力要請キャンペーンからなり, 本稿ではそれらを個々に紹介するとともに, 技術面, 費用面および組織・人材面での評価を行った. その結果, 今回開発した市民協力推進プログラムのうち, 地域集会およびモスクや教会における集会には集会場所やコミュニケーションの方法に制約があり, 現状では効果的ではないことがわかったが, その他のものについては, 技術および費用の面でかなり効果的に実施できることが判明した. しかし, 市民協力推進プログラムを計画し, 実施する組織的主体が現在, 市政府にないため, 継続的なプログラムの運営が図れないことが重要な課題であることがわかった. 今後, このような組織体制を確立することが必要である.
  • 高橋 謙
    原稿種別: 報告
    1986 年 8 巻 2 号 p. 289-291
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
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