Journal of UOEH
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9 巻, 4 号
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  • 中嶋 加代子, 古谷 亜紀, 東 監, 奥野 府夫, 井上 尚英
    原稿種別: 原著
    1987 年 9 巻 4 号 p. 355-359
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    慢性実験ではラットを500ppmの酸化エチレンに6時間ずつ週3回, 12週間暴露し, 対照群と共に, 還元型肝グルタチオン含量を測った. 慢性暴露群では, 肝グルタチオン含量は, 28.9nmoles/mg proteinで, 対照群のそれと差はなかった. 一方, 酸化エチレン2500ppmの濃度に4時間暴露した急性群では肝グルタチオン含量は対照群の5%位に減少した. これらの結果から, 酸化エチレンの代謝の少なくとも一部はグルタチオン抱合が関与していることが示唆された.
  • 田中 勇武
    原稿種別: 原著
    1987 年 9 巻 4 号 p. 361-367
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    ウィスター系雄性ラットを用いて石炭フライアッシュ粒子を吸入暴露し, 肺および肺門リンパ節に滞留する粒子の大きさについて実験的に調べた. 暴露は1日7時間, 週5日で1年間行った. 1日平均の暴露濃度は1.7±0.4mg/m3であった. 肺および肺門リンパ節に滞留したフライアッシュ粒子は, 低温灰化法で処理した後, 電顕によってその直径を計測した. その結果, 幾何学径で2.3μm以下の粒子は肺から肺門リンパ節へ移行することが認められた.
  • 日高 啓, 石野 洋一, 伸山 親, 中田 肇, 岡村 知彦
    原稿種別: 原著
    1987 年 9 巻 4 号 p. 369-377
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    病理組織学的に前立腺癌と確診された35例の99Tc-MDPによる骨シンチグラフィ(以下骨シンチ)所見を, 単純X線検査(以下単純X線)およびtotal acid phosphatase(T. ACP), prostatic acid phosphatase(P. ACP), alkaline phosphatase(ALP)などの血液生化学データと比較検討した. 骨シンチで骨転移と診断できたのは35例中20例(57%)であった. 骨転移巣は, 骨盤, 肋骨, 腰椎, 胸椎に多くみられた. 脊椎では, 転移巣は下部に分布する例が多かった. 単純X線はosteoblastic typeの病変を呈することが多かった. 経過観察では, 骨シンチと単純X線の所見は比較的よく合致した. しかし, 骨シンチ・単純X線と血液生化学データは, 必ずしも合致しなかった. 骨シンチは, 前立腺癌骨転移の経過観察に最も適切な方法と思われた.
  • 石松 維世, 伊規須 英輝, 田中 勇武, 井上 尚英, 秋山 高
    原稿種別: 原著
    1987 年 9 巻 4 号 p. 379-383
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    フェニトロチオン(スミチオン®)をラットに9.5mg/m3の濃度で4時間吸入させ, 赤血球コリンエステラーゼ(ChE)活性と血漿ChE活性の変化, およびin vitroでのフェニトロチオンの両ChE活性への影響を調べた. その結果, in vitroではフェニトロチオンは赤血球ChEと血漿ChEに対し, ほぼ同一の活性抑制効果を示した. 一方, in vitro実験では赤血球ChE活性には変化が見られなかったが, 血漿ChE活性は顕著な低下を示し, さらに低下は約3日間続いた. これより, 生体のフェニトロチオンの急性低濃度暴露の有無については, 赤血球ChE活性ではなく血漿ChE活性が有益な指標となり得ることが示唆された.
  • ―確率論的カタストロフィーモデルの適用―
    村田 厚生, 神代 雅晴
    原稿種別: 原著
    1987 年 9 巻 4 号 p. 385-393
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    本論文は, 局所振動・騒音などの作業環境が人間の触覚・聴覚に及ぼす影響およびあいまいな男性/女性図の知覚特性について検討したものである. 局所振動の加速度振幅の増加と共に, 指先の触覚による表面あらさの差に対する判定が不安定になる現象, マスキングノイズレベルの増加と共に, 最小可聴限にほぼ等しいレベルの純音の認識が不安定になる現象, あいまいな男性/女性図に対する認識の双安定性を確率論的カタストロフィーモデルで解析した. そして, これらの解析結果を作業環境管理や官能検査にどのように応用していくかについての指針を与えた.
  • 鵜木 秀明
    原稿種別: 原著
    1987 年 9 巻 4 号 p. 395-400
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    Epstein-Barr Virus(EBV)によるトランスフォーメーション法を用いて作製された非A非B型肝炎関連のモノクローナル抗体48-1と, ヒト生検肝組織240例との反応性について検討した. 酵素抗体間接法(2次抗体:ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgM・F(ab′)2)を用いた観察では, 非A非B型の急性肝炎で24例中15例(62.5%)と高い陽性率を示したのに対し, A型やB型の肝炎ではほとんど反応が見られず, この抗体48-1とヒト非A非B型肝炎との関連性が強く示唆された. また, 染色パターンは, 一部の肝細胞や大型の組織球の細胞質にびまん性顆粒状に染まり, 各小葉に散在して認められた. また, 陽性症例に対して免疫電顕法を用いて観察したが, ベルオキシダーゼ反応産物についての明らかな知見は得られなかった. 今後,ヒトの非A非B型肝炎の抗原抗体系の検索において, この抗体48-1は有用であると考えられた.
  • ―カプトプリルの効果―
    山岸 稔, 金子 光延, 千葉 宏一, 大治 太郎, 郡 建男
    原稿種別: 症例報告
    1987 年 9 巻 4 号 p. 401-410
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    近年, 小児の血圧測定技術の進歩と年令別正常値の確立に呼応して, 高血圧の小児数が増えてきた. これは, 健康児集団ならばこのうちに真の本態性高血圧症がどのくらい含まれているかを明らかにするのが緊急課題であることを示唆しており, われわれもこの調査を進めている. 一方, 症候性高血圧症に対する診断技術も進歩し, 小児期での実態も明らかになりつつある. さらにその治療法も順次確立され, ことに難治性のものもアンジオテンシン変換酵素阻害剤(カプトプリル)によってコントロールが可能となった. この実例として2歳男児の腎血管性高血圧・片腎例, 7歳男児のモヤモヤ病手術後例, 17歳男子の混合結合組織病・クッシング様症候群例を紹介するが, ただしレニン昇圧系への有意の効果(血中アンジオテンシンⅠ・Ⅱおよびアルドステロン各値低下, Ⅰ/Ⅱ比上昇)は第1例のみで認めた. なお, 3例とも最終的治癒を得ることは依然として困難である.
  • 阿部 慎太郎, 三浦 良史, 松隈 秀峻, 田岡 賢雄, 武田 成彰
    原稿種別: 症例報告
    1987 年 9 巻 4 号 p. 411-416
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    肝尾状葉腫瘍との鑑別に苦慮した, 68才女性の後腹膜神経鞘腫の一切除例である. 昭和60年8月超音波, 9月CTにて肝尾状葉と思われる部位にmass lesionを認めたため, 11月産業医科大学病院第三内科に入院, 精査となった. 腹腔動脈造影では,肝左葉の動脈は円孤状の圧排を受けるも腫瘍血管像なく, 右下横隔膜動脈より供給される径7cmの腫瘍濃染像あり, 後腹膜の血管性腫瘍と診断された. 昭和61年1月手術施行. 腫瘍は肝左葉外側区域の後方, 右側は下大静脈に接して存在する径8×6×4.5cmの充実性腫瘍であり, 病理組織学的に良性神経鞘腫と診断された. 後腹膜に原発する神経鞘腫は比較的稀な腫瘍であり, 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 筒井 保博, 森田 翼, 松隈 秀峻, 田岡 賢雄
    原稿種別: 症例報告
    1987 年 9 巻 4 号 p. 417-423
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    我々は, 腹痛・四肢のしびれ・脱力感を主徴とし, 他の臨床症状や検査成績より, Bartter症候群と思われる1例を経験したので報告する. 症例は16歳の女性で昭和61年1月頃より四肢のしびれ, 脱力感があり, 6月頃からしばしば強い腹痛が出現するので当科受診, 低K血症, レニンーアンギオテンシン-アルドステロン系の亢進, および正常血圧等の, Bartter症候群に特徴的とされる所見を認め, 精査治療目的で当科入院となった. 入院後アンギオテンシン-Ⅰは高値にもかかわらず, アンギオテンシン-Ⅱおよび血清アルドステロンが正常化し, 腎生検による組織学的検査では傍糸球体装置の過形成がなかったことから, 同疾患とは異なる病態も考えられた. しかしBartter症候群の基本的病因がGillらのCl再吸収障害説にあるとすれば我々の症例も同症候群の1つの表現型であると思われ, この説は複雑な本症候群の病態を類似疾患も含めてほぼ説明し得ると考えるに至った.
  • 池見 酉次郎
    原稿種別: 人間学
    1987 年 9 巻 4 号 p. 425-429
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    東洋医学では, 昔から, 病気の原因は, そのエコロジカルな側面を含めて, 人の心身をコントロールする自然良能としての生命力「気」の障害であるとされている. 一方, 「気」という言葉は, 内外で俗語的な日常語としてよく用いられている. また, テレパシー, サイコキネシス, 気功師が発する「気」による病気の治療といった超心理的な現象も, 「気」によって起こるとされている. 昨年11月にワシントンで催された第15回科学の統一に関する国際会議の「気の分科会」で, 私は『従来の俗語的な「気」の表現, 科学的な裏づけに乏しい不可思議な現象については, 今後の課題として残しておくこと, 各人に宿る生命力としての「気」を賦活し, それと自然の生命力との交流を促すことによって, 万人の健康な自己実現を助けるような理論と方法の研究に, 焦点を絞るべきこと』を提案し, 大方の賛同を得た.
  • 本多 正昭
    原稿種別: 人間学
    1987 年 9 巻 4 号 p. 431-433
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    池見教授が提唱される医学は, 優れて東洋的な身心一如の医学であり, それはいわば「地にいます母なる神」へと人間実存を全託せんとする医学であろう. ところで一如とは, 厳密には一元論を意味しない. 心と体へのアプローチの方法は明らかに異なる. それゆえ身心一如は単なる一元論でも二元論でもなく, 独特の不一不二的論理構造を有する. 東洋の気も, 単なる精神ではなく, 単なる物質でもなく, またその何れでもあるような宇宙的生命エネルギーであるとすれば, まさにこのような気の理こそ, 不一不二的な即の論理に外ならないであろう.
  • ―武田泰淳の黙示録―
    中野 信子
    原稿種別: 人間学
    1987 年 9 巻 4 号 p. 435-445
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    長年にわたり, 英文学圏において小説の中に表現されたイエス・キリストのイメージを追い続けてきたが, 一番卑近な所に位置する日本文学の中に, 外国文学のそれとは異質な, 日本的風土に根ざしたいろいろなキリスト教が在るという事実を無視できないように思う. 一人の作家の中でキリスト教と仏教とが, 融合と闘争を繰返し乍ら, 独特の世界を創造していった典型として, 武田泰淳を選んでみた. 一方, 黙示録の7つのアジア教会への伝言は, 泰淳の深い, 重苦しい人間理解を説明する一つの契機を与えてくれるように思う. なぜなら, そのメッセージは, 人間というものが未生前から自己破壊というとり返しのつかない運命を負っていることを暗示しているからである. 以下は, 泰淳における実存の重みに関する一考察である.
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