住宅総合研究財団研究年報
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17 巻
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  • 白濱 謙一, 菅原 義則, 土田 久幸, 川崎 圭子
    1991 年 17 巻 p. 71-81
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     バルカン半島の中部からトルコにかけて,特異な様式の伝統的住居がある。石造りの下階に木構造の上階が載った,いわば混構造の建築である。この型の住居の歴史はおそらくビザンチンにまで遡ると思われる。また,わずかずつ違いを見せながらもその分布する地域は,アルバニア,ギリシア,ユーゴスラビア,ブルガリア,ルーマニアそしてトルコにまたがっており,周知のようにこれらの国々は先ごろまで複雑な国際関係にあった。これまで伝統的住居について,自国の文化の範囲で研究されてはいたが,全地域にまたがる包括的な研究は少ない。当研究室では,かねてから住文化における異文化の移入とその後の変容について興味をもっており,この視点から上記の特異な型の住居文化の動向を探りたいと考えた。研究の内容と方法(a)マケドニア(ユーゴ領)の伝統的住居の現地集落調査(1989年8~9月)(b)スコピエ大学建築学科の資料分析 (C)ギリシア北部とトルコに分布する同型の住居と比較以上より,マケドニアの伝統的住居の類型とその分布を把握し,その特徴を周辺地域と比較してこの地域における住文化の交流の様相を解明することが目的である。研究の結果 次のことがわかった。(1)マケドニア住居は,“chardak”(チャルダック)と称する家具の無いホールを持つ。(2)チャルダックはOH型(Outer hall type)とIH型(Inner hall type)がある。(3)他の地域と比較するとマケドニア住居の規模は小さい。それはキリスト教の1家族型であるためである。(4)NH型(No hall type)とCH型(Center hall type)を含めて4つの型の広域分布図を作成した。(5)OH型は非常に古い型と考えるが,現在でも広く存在しているのは素朴な機能主義を持っていたからであろう。
  • 谷 直樹, 伊東 宗裕, 内田 九州男, 鎌田 道隆, 多治見 左近, 増井 正哉
    1991 年 17 巻 p. 83-94
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,近世の京都・大阪・奈良における「町」共同体の空間構造と社会構造を解明し,わが国の風土や伝統の中で育まれてきた都市居住のシステムを描き出すことを課題とするものである。昨年度は個別の町を取り上げて紹介したが,本年度は京都・大阪・奈良における町の存在形態を相互に比較しながら,近世「町」共同体における都市居住システムの全体像を解明しようとしている。第1に「町」の社会構成と題して,京都・大阪・奈良の人口と家持・借家人の構成比率を,都市レベルと個別の町レベルにおいて統計的に明らかにし,さらに住人の生業,人口動態,町の諸組織などに関する考察を行なった。第2に「町」の空間構成と共有施設と題して,史料に基づいて町の空間構成を復元し,宅地割と建家の状況,町内の共用空間の重なり方,個々の家屋形態(戸建と長屋など),表家と裏家における棲み分けの状況などを検討した。さらに共用空間である道と溝,四辻と木戸,町会所,町橋,町並み規制などに着目し,とくに町会所の建築形態と歴史的変遷を明らかにした。第3に,町式目と勘定仕法と題して,町の独自の法令である町式目に着目し,その内容項目を分類して横断的・編年的に比較検討した。とくに自治機能(隣町との協定),社会的・空間的安定に関する規制(職種規制・借家人規制・建築町並み規制など),生活管理(相互扶助・紛争処理・防火消火システム),共有施設の維持管理,費用負担の方法など,住みよい町づくりをめざした,自発的な居住地管理に関する規定が盛り込まれている点を指摘した。第4に,近世の「町」から近代の町内へと題して,近世的「町」共同体の変質と分解,および近代における居住地管理機能の動向を概観した。最後に近世「町」共同体のあり方が,現代社会に示唆する諸点を指摘して,本研究の結びとした。
  • 炭鉱住宅(明治開拓期~昭和20年代)の分析による一考察
    駒木 定正
    1991 年 17 巻 p. 95-104
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
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     明治政府は,1869年(明治2年)開拓使を設置し北海道開拓に乗り出したが,その1つの柱は石炭採掘であった。1979年(明治12年)開拓使は幌内炭鉱を開坑し,1889年(同22年)には官営から民営(北炭)ヘと引き継いだ。それ以降およそ100年,道内各地に炭鉱が開かれ,有数の炭鉱都市を形成した。しかし,近年相次いで閉山し,開拓以来の施設の取り壊しや資料の散逸が著しい。炭鉱住宅の歴史は,明治開拓期から現代に及ぶものであり,それは,北海道の企業社宅史の代表といえ,さらに住宅史の一端を現わす。また,炭鉱住宅と集落の形成で特徴的なことは,開墾から始められたことにある。そこで,北海道の炭鉱を代表する北炭と三井砂川鉱を対象とし,関係資料の収集,現況実態調査及び主要建築の実測調査を行ない。その特徴と変遷過程について明らかにする。その時代範囲は,自然を開墾した明治開拓期から戦後の昭和20年代最盛期までとした。研究の構成は次のとおりである。①「幌内炭山建物登記書類」について②北炭における鉱夫社宅の変遷について③三井砂川鉱における鉱夫社宅の変遷について④北炭夕張炭鉱・鹿ノ谷地区職員社宅について 官営幌内炭鉱の払下げの登記書類から,「官舎」「抗夫長家」「職工長家」さらに「獄舎」の存在を明らかにした。北炭は,開鉱から「棟割長屋」を鉱夫社宅として積極的に建築し,代表的社宅住宅形式となった。北炭と三井砂川鉱に共通する住宅の変遷は,戦争を契機に居住空間の質的向上をみた点にある。それは政府の炭鉱政策による鉱夫募集と緊密に関係したものであった。北炭の夕張鹿ノ谷職員社宅は,「第一号」社宅を最高の基準と定め,順次規模を縮小した。これは西洋間を設けた初期のものであった。その変遷は鉱夫社宅などに大きな変化はみられない。
  • (続)体験記述にもとづく日本住居現代史と住居論
    小柳津 醇一, 鈴木 成文, 畑 聰一, 初見 学, 在塚 礼子, 友田 博通, 長沢 悟, 曽根 洋子, 笠嶋 泰, 戸部 栄一, 小林 ...
    1991 年 17 巻 p. 105-114
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
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     本研究は,現代日本住居の意味の解釈と評価を試みるもので,1987年度研究「型の崩壊と生成」の継続研究である。本年度は対象を大都市だけでなく地方都市や農村部にも広げ,現代の日本住居を考える上で不可欠と思われる「型」を描出した。具体的には,大都市の新築建売住宅に多く見られる「都市LDK型」,住宅の近代化を推進してきた「集合住宅型」,地域の伝統を残しながらも今や全国の農村に普及しつつある「地方続き間型」の3つの型である。本研究では,これまでに蓄積した体験記述に加え農村部での見学調査事例も考察の素材とした。本論ではそれぞれの型の形成変容過程とその特質を整埋し,それらを通して見られる現代日本住居の特徴的側面として,(1)空間の開放性・連続性とその閉鎖化・個別化(2)洋室と和室の併存(3)個室化と居間の性格(4)住宅の対社会性に着目して考察した。(1)では,日本住居における開放性・連続性の伝統,洋風化に伴う間仕切壁の導入,続き間座敷の存続と和室洋室の連続,について論考。(2)では,洋風化・イス坐化の流れ,根強いユカ坐生活の存続,洋風居間におけるソファの定型化とユカ坐,LDK型住宅における和室や座敷の存続,について論考。(3)では,空間の機能分化および公私分化の理念の発生,私室確保の意味するもの,居間の形成とその意味,オモテの存続あるいは復活,「オモテ・ウチ」概念と「公・私」概念,について論考。(4)では,接客空間,内と外の関係,戸外に対する閉鎖牲,について論考した。最後に現代日本住居の型の流れを,変容を促す力と持続の力の括抗関係の中で時代ごとに整理し,住居変容のダイナミズムを明らかにした。今後の日本住居の展開は,文化の力の尊重と住み手の主体的な力にかかるとともに,情報の力をいかに効果的に利用するかによるところが大きい。
  • 空間・心埋・イメージ対応の計画試論
    友田 博通, 金子 友美, 高嶋 玲子, 山崎 由美子
    1991 年 17 巻 p. 115-124
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では,伝統的住宅に対する思い出調査,現代の最新住宅に対する居住者意識調査・今後の住宅への憧れ調査により,過去・現在・未来にわたって心象風景や価値観を含むイメージから住宅を考えた。まず過去では,日本の伝統的住宅の流れを心象風景から追い,現代住宅が失った伝統的家空間の意味。現代住宅に残存する廊下の変質を明らかにする。次に現在から,新しい試みの多摩NT南大沢を調査し,一般的な公私分離型より廊下の無いLホール型が若い家族に評価されることを指摘する。同時に,居間の吹抜けを囲む室構成で,居間の中心に階段が下りてくる家を「金持ちの家」,吹抜けの中を空中廊下が走る家を「リゾート気分」,ミニキッチンやシャワーのある屋根裏部屋がある家を「ヨーロッパのアパート」など,「空間が明確な生活イメージをかきたて,本当に空間を気に入った」と感じさせる例を報告する。未来では,5歳童話作用・10歳現実化・15歳具体化・20歳差別化・30~40歳代メディア作用など,年齢別に住宅への憧れイメージを整理する。そして人間の住空間の評価プロセスは,「空間を見てトータルな生活イメージを持ち,その生活イメージから空間を評価する」,「夢があると感じと住みたいと感じること」を明らかにする。これらの検討から,現代の一般的な住宅は,本来文化的であった日本の伝統的な住宅が平等・合理・機能といった観点から手術されて生じた粗野な住まいの原形と視定され,今後は「居住者にイメージを与え夢があると感じさせる住宅」に成熟することが重要と結論される。具体的には,今回の調査からは「居間が吹抜けで居間を囲む室構成を持ち,さらに空間的特徴が付加された型」もその方向の1つであることを提起したが,今後さらに「居住者にイメージを与え夢があると感じさせる住宅」が何か,居住者類型への対応を含めさまざまな形で模索していかなくてはならないと言えよう。
  • 日韓集合住宅事例の比較
    杉山 茂一, 初見 学, 小柳津 醇一, 高岡 えり子, 朴 勇煥, 都 建孝, 金 洙岩
    1991 年 17 巻 p. 125-140
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     韓国の集合住宅は,欧米を範として近代化を推進してきたなかで,かなりの部分で日本と共通牲をもちながら,社会的・歴史的背景の違いから,日本とはやや異なる展開がみられる。これを明らかにしその要因を考察してみることは,日本の集合住宅のこれからの展開の方向を考えるための有効な手掛かりになろう。この研究では,このような意図をもって,日韓集合住宅事例の比較を試みる。比較の対象は,最近の10年間を中心とした大都市圏の中高層住宅である。分析は密度を軸とした項目と住戸平面構成について行なった。密度に関する分析では,住棟高さ,立地,供給主体などと密度の関係,空間性状と各種指標の関係についてみた。住戸平面構成については,平面の主要構成要素を図式化し,これと住戸規模との関係を比較した。分析の結果から,共通点として,大都市圏での集合住宅計画の高密度化,住戸面積の拡大,駐車場設置率を高める方向が指摘できる。異なる点としては,高密度化への対応として,韓国の方が高層住宅の導入に積極的であり,高層住宅の居住性への配慮が行き届いている面がある。また,住戸面積の拡大にあたって,日本で隣棟間隔を確保し住戸の奥行きを大きくする方向が一般的なのに対し,韓国では逆の方向を採っている。駐車場の確保にあたって,日本で屋内駐車方式を採用して緑地や広場を確保しようとする方向があるのに対し,韓国では緑地や広場が切り詰められる事例が多い。住戸平面については,日本では住戸面積の拡大にともなって室数を増やすことを優先してきたのに対し,韓国ではむしろ夫婦寝室や台所廻り,サニタリーの充実がはかられている。以上のような分析結果を踏まえて,日韓の研究者間の意見交換を行ない,法規,基準さらには社会通念などの面から,共通点と相違点の要因についての解釈を試みた。
  • 土肥 博至, 筒井 義冨, 鎌田 元弘
    1991 年 17 巻 p. 141-155
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,『都市住民の居住地を近郊混住化農村地域に計画するための基礎的な整備方法を,農村地域の社会的・空間的ストックを生かしたコミュニティ及び居住環境の形成の立場から明らかにすること』を研究の大目的としている。本研究の特徴として,①実態(現状)分析とストック分析の組み合わせ,②空間レベルの段階性,の2点を重視し,単に都市と農村の関係に注目するだけではなく,都市住民を農村に迎え入れることの計画的視点を重視して,できるだけ抽象論を避け,より具体的な手法の確立を念頭において進めている。そこで本論では地域的ストックの読み取りを重視しそれを類型化によって一般化することと現状分析から得られる指標を複合的に用いることの2つの側面を組み合わせることにより,混住化地域を評価する指標としての安定性を獲得するという方法をとっている。 研究の手順は,第1に混住化地域の状況を広域的な観点から考察し,広域レベルでの計画的課題を明らかにしている。また,その結果に基づいて,市町村レベルでの研究対象事例地を選定した。第2に,現実的な計画単位として有効であると考えられる集落を研究対象に据え,はじめに混住化の受け入れ側の条件として集落の空間的ストックを集落形態から読み取り,社会的ストックを「むら柄」として定義している。次に新旧住民の混在形式の検討のために,新旧住民の混在形態について類型化(地域社会類型)を行ない,コミュニティ形成の視点から分類の有効性を検証し,また,空間的側面から新住民居住地形態について検討している。第3に以上の分析結果を指標化し,混住化集落の整備計画の基本的な視点を考察している。また,集落内部における新旧住民の住宅群の混在形式として「混在タイプ」を設定し,その分析から具体的な整備方法について考察している。
  • 広原 盛明, 垂水 英司, 神谷 東輝雄, 中川 達哉, 間野 博, 山本 善積
    1991 年 17 巻 p. 157-170
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     1960年代の高度経済成長期に,地方出身青年のための安上がりの「就職用受け皿住宅」として,大阪衛星都市で爆発的に形成された木賃アパート地域は,いま歴史的ともいえる大きな転換期を迎えている。1つは建物の著しい老朽化に伴う地域全体のブライト化,1つは老朽木賃アパートの高齢者世帯の沈殿とりわけ独居老人の集住傾向が最近になって一段と加速化され,いわば「建物」と「人」の両面から高齢化が進んでいるからである。しかしその一方,木貸アパート地域は高齢者世帯にとって「住みやすい所」でもある。交通が便利で何処へでも気軽に行ける,周辺一帯で日常生活に必要なものは何でもそろう,比較的近くに子供や身内がいるので淋しくない,そして何よりも物価や家賃が安い。その意味で,木賃アパートは確かに建物としては「最低水準以下住宅」であるとしても,低所得層の高齢者世帯にとっては手頃な「アフォーダブル・ハウジング」であり,周辺地域は住み慣れた「コミュニティ」なのである。本研究は,大都市の高齢者世帯集住地域として,最初に神戸市真野地区に代表されるインナーエリアの長屋密集地域を取り上げ(研究8809),次にフリンジエリアに当たる大阪衛星都市の木賃アパート地域を調査した(研究8908)。その結果共通して指摘できることは,両地域は物的環境改善を至上命題とする都市計画視点からは問題視されるブライト地域であっても,高齢者世帯の生活安定を願う福祉的観点からは社会的に極めて重要な役割を果たしているという事実である。高齢者住宅政策にはこれらを統一したアプローチが必要であり,とりわけ高齢者世帯の集住する老朽長屋や木賃アパートの改善に当たっては,単なる「建替え事業」にとどまらず,公共団体による「借り上げ住宅化」,家主と居住者の合意を基礎とした「リフォーム補助制度」,高齢者世帯の安定居住を前提とした「家賃補助」の制度化など,多様な「民間高齢者貸賃住宅の公的管理システム」が要求されるのである。
  • 賃貸集合住宅における賃借人の管理参加
    梶浦 恒男, 平田 陽子, 斉藤 広子
    1991 年 17 巻 p. 171-185
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は(1),(2)をもって完結するが,研究全体の目的は分譲マンションの管理への賃借人の参加を考えるところにある。本稿(1)ではそもそも賃借人の管理へのかかわりはどのように考えるべきかをみるために,賃貸住宅の管理参加の形態とそのような参加がなされる理由を明らかにした。公的賃貸住宅家主と自治会及び民間賃貸住宅経営者への調査から次の点が明らかになった。1)公的賃貸住宅においては,賃借人の管理参加が多く見られるが公団住宅,公社住宅,公営住宅で違いがあり,家主(供給主体)の住宅経営の方針が反映する。公営においては参加が多い。 2)参加の見られる管理行為は,現地での処理が求められるもの,緊急性の強いものに多く,公営においては共用施設(駐車場・集会所など)の運営行為,共用部分の清掃など建物維持管理の現地処理的行為,団地共同生活上の生活管理的行為などであり,施設管理運営の進め方の選択にも賃借人の参加を図っている。3)賃借人の管理参加を行なう理由は,家主側の管理経費の節約にあり,現地処理的行為を居住者に任せることによって,現地要員の配属を省略している。4)賃借人の管理参加は,居住環境の整備に住み手の要求を反映できること,また,団地の居住者活動を活性化し,共同生活の充実を図ることという効果を生んでいる。5)民間賃貸住宅では,公的賃貸住宅に比べて賃借人の管理参加は少ない。その理由は第1に共用施設が少なく住戸数も少ないことから賃借人の管理にかかわる局面が少なくなっていることであり,第2に共同生活上のトラブルがより少ないように賃借人を選定するといった住宅経営の方針が取られているからである。6)以上の賃貸住宅における賃借人の管理参加実態から,分譲マンションの賃借人参加を考える際,かなり幅広い形態が構想し得るといえる。その考察は続編で行なう。
  • 建築物の性格が都市の聴覚的景観に及ぼす影響に関する基礎研究
    鳥越 けい子, 庄野 泰子, 田中 直子, 兼古 勝史
    1991 年 17 巻 p. 187-197
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究の目的は,「響きとしての建築」「響きとしての街なみ」というコンセプトが成立することを実証することにより,建築および景観の研究領域に聴覚的発想を導入することである。神田地域における各種の5つの道を対象としながら,研究の基礎的な方法論的検討を行なった前年度に対し,今年度は神田周辺の東京の5つの地域,浅草,高円寺,上野,月島,深川に調査対象地域を拡大し,それぞれの地域性を支える上で重要な役割を果たしていると考えられる5つの商店街をケーススタディとしながら,各地区の街なみと建築を聴覚的にとらえ,その実態を分析した。その結果,建築は「物体」としてとらえることができるのと同時に「響き」として聴覚的にも存在することが実証され,その場合,「音響的に存在しない本設建築物」「音響的に存在する本設建築物」「音響的に存在するが本設でない建築物」の3つの存在の様相があることを確認した。更に,商店街の「響きとしての街なみ」の構成要因の考察にあたっては,前年度に確認した「建築物の構造的性格」のほか,履物や舗装面の種類などが関連する「交通」,BGMや宣伝放送などの「放送システム」,縁台や屋台などの「その他のしつらえ」,掛声や商談などの「人の声」の4つが重要な契機として導かれた。本研究全体の主な成果には,1)「響きとしての建築」「響きとしての街なみ」という考え方が成立することを実証し,その実態を具体的に把握しながら聴覚的景観研究のいくつかの方法論を導き,整理したこと,2)建築研究領域への聴覚的発想の導入が,人間の活動とのかかわりなどの建築物のソフトな側面に光をあてながら従来の建築のとらえかたを拡大することを明らかにしたこと,3)「聴覚的景観」という概念が都市研究においてそれぞれの地域のよりトータルな理解をもたらす有効な切り口であることを確認したことなどがある。
  • 小出 治, 忠末 裕美, 依田 浩敏
    1991 年 17 巻 p. 199-208
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     近年,臨海部が新しい住宅地として開発されていく中で,それらの新規開発地域と既存市街地とのつながり,臨海部の立地特性,自然環境・生活環境といった日常生活上の基本的な面,臨海部居住における安全性・防犯性を調査・検討しておく必要がある。本研究では,現在の臨海部居住地域から東京都の八潮地区と芝浦地区をサンプルに取り上げ,各地域においてアンケート調査を実施することにより,臨海部居住の実態を把握し,問題点を明らかにすることを目的とする。調査票配布期間は,1989年9月25日~27日,回収期間は同年9月28日~10月7日であり,アンケートの内容は,①居住者像・居住実態,②現住宅・住環境への評価・要求,③臨海部に関する意識と利用実態,④防犯・防災に対する意識及び実際の被害状況,⑤高層住宅に対する評価全般,についてである。臨海部の立地特性のうち職住近接という点においては概して高い評価が得られているが,周辺環境と一体となった開発が実現されているとは言い難い。災害に対しては,「高層往宅」であること,「埋立て地」であることによる地盤の脆弱さ,臨海部という地理的条件から生じる「供給処理施設の遮断」に対する居住者の不安がある。また,犯罪に対しては都市型の犯罪が目立っていることが確認された。
  • 王 世燁, 三浦 昌生, 尾島 俊雄, 須藤 諭
    1991 年 17 巻 p. 209-217
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     ここ数年,東京都心部における定住人口減少は非常に深刻である。本研究では,人口減少の激しい東京都中央区の中でも,特にその傾向が著しい東京駅前・銀座地区を取り上げ,この地区の住民を対象としたアンケート調査を行ない,現在の都心における居住状況と住民の意識を把握した上で,人口の減少を食い止め定住を促進するための居住環境改善方策を検討した。地区全体の建物延べ約4000棟のうち34%の建物に住民登録があるが,建物が大規模なほど居住者がいなくなる傾向があり,大規模建築が住民を追い出している形になっている。アンケート調査の結果,この地区の住民像として,自己所有地に建つ建物に1階が商店,2階が住居の形で昔からこの地区に住み,老齢化が進んでいることが明らかとなった。その大多数は人口減少を問題視して人口回復の必要性を訴えており,居住階が低いほど日照環境が悪いと感じている。また,この地区の祭りや行事をよく知っているが,住民がいなくなることは街の歴史を知る者がいなくなることでもある。住戸の外部に対する開放性を示す尺度として住戸の開放面数を定義し,これと居住者の環境に対する意識の関連性を解析した結果,住戸の開放面数が多いほど日照環境に対する評価が高くなる傾向があった。区からの転出理由のひとつとして居住環境の悪さが挙げられる状況から,居住環境改善方策として共同化と住居用容積率緩和による改築案の有効性を検討した。
  • 関西大都市の比較研究
    巽 和夫, 森本 信明, 大森 敏江, 東樋口 護, 秋山 哲一, 髙田 光雄, 野口 美智子, 安 在洛, 毛谷村 英治
    1991 年 17 巻 p. 219-230
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     大都市の都心居住問題は,1970年代の国際的な都市衰退現象の中でインナーシティ問題として注目を集めてきたが,80年代に入って更に深刻化し,わが国の大都市自治体では,都心部の人口定着を目的としたさまざまな施策が講じられてきた。更に,近年,東京都心部のオフィス需要が極めて旺盛となり,地価が高騰したため,住宅の新規建設が困難になったばかりか,既存の居住機能も阻害され,都心居住問題は新たな局面を迎えるに至った。こうした東京の都心居住問題は,他の大都市にも波及しているが,他方,国際的な政治・経済の中心都市としての東京は,わが国では特殊な都市ということもできる。今後の大都市居住を検討するに当たっては,都心居住問題を東京の問題としてとらえるだけでは不十分であり,都市別の差異に注目することも重要である。本研究は,関西の大都市である京都・大阪・神戸について,都心部の機能を比較研究するとともに,それらの居住構造を分析することを通じて,都心居住問題を幅広い視点から考察し,今後の都市政策や住宅供給のあり方を展望しようとするものである。 本年度の研究は,大きく3つの部分から構成される。第1は,都心居住をめぐる基本問題を扱っている。都心の多義性について検討するとともに,都心居住論の課題を整理している。第2は,主として各種既存統計を用いた関西大都市における都心居住の現状分析である。東京圏と関西圏の都心居住者像を明らかにした上で,京都・大阪・神戸の3都市の比較分析を多様な視点から行なっている。第3は,関西3都市の居住者調査による生活者の側からみた都心居往の分析である。アンケート調査に基づくライフスタイル分析から,都心居住者の傾向を全般的に明らかにし,個別のインタビュー調査で個々の問題を掘り下げて考察している。
  • ヨーロッパ編
    藪野 健, 高橋 信之, 藪野 正樹, 伊藤 寛, 尾島 俊雄
    1991 年 17 巻 p. 231-243
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     戦後,わが国の生活水準は著しく向上してきたが,居住環境の水準はまだ低い。特に,都心の居住環境は最低居住水準に達していない世帯がおよそ20%,平均居住水準に達していない世帯が70%以上にも及んでいる。近年のように社会情勢が急速度で進展する中では,社会資本のストックとなる質の高い生活環境を整備することが重要である。このために都心部の再開発や,湾岸地域の再開発等,良好な都心部での生活居住環境の創造こそが肝要である。本研究は,わが国の都市が人間の生活基盤となるにふさわしい環境と,次世代の都市生活者の基本的な生活様式の確立のために,先進欧米諸国の都心居住者の生活実態を調査し,もってわが国の都心居住の生活様式研究に資することを目的として実施したものである。欧米先進諸都市の都心居住の生活様式の実態について,以下の対象都市に関して調査を実施した。①ロンドン,②パリ,③リスポン・バルセロナ,④ベネチア,⑤アテネ。早くから週休2日制が敷かれ,特に夏及び冬の長期休暇が浸透している欧米先進諸国の都市では,自ずとそのライフスタイルについても,居住空間についても,わが国と大きな違いが見られることが予想されていた。特に,都心居住と同時に長期休暇活用のバカンスを前提としたリゾート居住についても,一部調査の対象としてアテネ市海岸部にも歩をすすめた。研究の方法としては,現地の生活者の実際の家庭を訪問し,写真,絵画,スケッチ等を主として,ビジュアルな資料収集を実施した。また,懇談や質問を通して,生活体験や意見などを聴取した。
  • 鈴木 浩, 中島 明子, 内田 勝一, 笠原 秀樹, 古川 真理夫, 前田 昭彦, 安斎 俊彦, 金子 道雄, 瀬戸口 剛, 藤田 忍, 佐 ...
    1991 年 17 巻 p. 245-257
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     イギリスの住宅政策は,従来公共住宅主導型のモデルとして評価されてきたが,80年代を通して大きな変動を経験した。とりわけ住宅政策の中心的な役割を担ってきた地方自治体は,政府による住宅予算の削減や持家政策の促進と公営住宅政策の後退の中で,中央政府や地域住民の住宅要求との関係において新たな対応を迫られている。本研究は,このような地方自治体における住宅政策の新たな模索に着目しながら,それが従来の公営住宅を中心としたものから民間部門を含む包括的なものヘ,さらに地域住民の要求により密着した行政サービスシステムヘの転換への試みとして位置づけられることを検証し,今後の自治体住宅政策に求められている基本的要件を明らかにしようとするものである。第1に,80年代イギリス住宅政策の動向を概観しながら,中央政府と地方自治体との権限と役割さらに地方住宅財政システムの変遷を通して,戦後の福祉国家政策の解体と住宅政策における中央統制の強化および市場原理の導入,それに対抗する自治体住宅政策の分権化と包括的な住宅政策への試みを検討し,本研究におけるキーワードである「地域住宅政策」の位置づけを行なっている。第2に,いくつかの地方自治体の住宅行政機構と住宅政策の内容すなわち地域分権化,地域住宅要求の把握,総合的な地域住宅計画の策定,そして住民参加の仕組みを分析し,「地域住宅政策」の枠組みを明らかにした。第3に,「地域住宅政策」の内容と実態をより具体的に把握するために,いくつかの地方自治体における住居管理の内容を分権化の方向と対応させて明らかにした。 結局,本研究では自治体住宅政策はその内容において,①地域住宅要求の把握,②包括的行政サービス,③住民参加,という3つの基本的要件をもつ「地域住宅政策」の確立が求められているという結論を導き出している。
  • 齋木 崇人, Gaudenz Domenig, Vito Bertin, 渋谷 鎮明
    1991 年 17 巻 p. 259-269
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     都市化・国際化社会の進行する中で,地域の伝統的な固有性を保続しながら,周辺域の異なる文化と共存してきた集落空間が再評価されつつある。 本研究はこの歴史的な試練を経てきた集落空間の保続性に着目し,集落空間の秩序形成原理とその技術を明らかにすることを目的としている。対象とした中央ヨーロッパにあるスイス連邦は,文化的差異(たとえば国語として,独語,仏語,伊語,レートロマンシュ語の4つの言語を持つ)がありながら,それぞれの特色を粘り強く保持し共存してきた国である。さらに山地から台地・丘陵・抵地まで多様な集落立地と居住様式が見られる。この多様な文化生態や自然生態の組み合せによって存在する集落空間の共通性と差異性に着目し,比較という研究の基本的方法を使い,集落空間の特性を,その秩序形成技術として考究するものである。この研究を支える最も基本的な概念は「集落」「空間」「秩序」「形成技術」である。研究はこの集落空間を対象に,スイス運邦全域のフィールド調査,その記述,比較,分類,理論化をする手順によって進められた。それは個別の対象集落を観察・記述し得られたデータを比較・分類し,その中から仮説を導き出す,いわば仮説発想法と言ってよいプロセスを繰り返し,その仮説の普遍性を確かめつつ理論を導き出すという方法を基礎としている。初年度は11回に分け延べ48日の現地調査を実施した。それにより得た405集落を立地特性に着目して分類し,26の下位分類をもつ12分類を得た。次いで,12の仮説類型を規定する,自然・文化生態条件として,①気候と災害,②植生と樹林,③地形と生産,④言語と宗教を設定し,Atalas der Schweiz1984を使用して仮説類型集落の共通性と差異性に着目しそれぞれの特性を記述し,あわせて典型集落の柚出を行なった。次年度はこの典型集落の詳細調査を実施し,集落空間の秩序形成技術を明らかにする。
  • タイ・バンコクを例として
    渡辺 定夫, 岩田 司, 安藤 徹哉, 渡辺 誠介
    1991 年 17 巻 p. 271-280
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     本年度の研究では,前年度研究により作成された1987年の土地利用現況図を主な資料として,以下のような研究作業を行なう。・バンコクの市街地構成を定量的に明らかにするため,都心からの距離と方位ごとについて各住宅地類型の分布特性の考察を行う。・「幹線道路沿線にショップハウスが連続し,その背後に戸建住宅地が広がる」というバンコクに特徴的な市街地構成の特性を明らかにするため,主要幹線道路沿線の両側2.5㎞幅の土地利用を検討する。・「幹線道路沿線にショップハウスが連続し,その背後に戸建住宅地が広がる」というバンコクに特徴的な市街地構成の形成過程を明らかにするため,バンケン・バンカピー区内の対象地区の3時点の土地利用変化の分析を行なう。本年度の研究成果は以下のように整理される。・自然発生的住宅地であるSH,UH,ULは都心周辺に集中しており,各方位に比較的均一に分布している。その集積規模は2~4ha程度の小さなものである。計画的住宅地であるLH,HE,LLは自然発生的住宅地よりも外側に集中しており,市街地の東側に集中している。その集積規模は10~20ha大きい。・幹線道路からの距離と住宅地類型の集中圏の関係は,道路から近い順にSH,UH,HE,LH,LLとなり,「幹線道路沿線にショップハウスが連続し,その背後に戸建住宅地が広がる」という市街地構成を示している。・幹線道路間が離れているバンケン・バンカピー区内では,「幹線道路から離れた部分に大規模な建売り住宅地開発が行なわれ,アクセス道路から拡幅されると共にショップハウスが開発され,地区内幹線道路として機能するようになった」経緯が明らかになった。
  • 加藤 裕久, 吉田 倬郎, 小松 幸夫, 野城 智也
    1991 年 17 巻 p. 281-280
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究の第一の目的は,住宅の寿命分布推定方法に関して理論的検討を加えようとするものである。筆者らは,信頼性理論を援用し生命表の考え方を取入れた寿命推定方法を既に開発している。これはある時点における新築年次別の建物現存数と,その時点1年間の滅失建物の棟数から年次別の滅失率を計算し,それらをある年齢に至るまで順次加えた和を求めて符合をマイナスにし,更にそのエクスポネンシャルをとると,それがその年齢における残存率になるというものである。この方法を応用し,実際の調査を通して分析を行なうと幾つかの問題点が浮上した。それらを列挙すると,①調査結果の信頼度,②調査対象のサンプルサイズ,③分布関数パラメータ推定の自動化,④データ欠落部分の補完法に集約できる。現在これらを解決するために計算機プログラムを幾つか開発し,シミュレーションスタディを行ないつつある。本研究の第二の目的は,以前行なった調査に引続き資料を収集し,住宅寿命に関する分析を行なうことである。調査対象は,県庁所在地の47都市と人口百万人以上である川崎市・北九州市の49都市に存在する,木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造の専用住宅とした。なお,資料は1987年1月1日現在で各都市の固定資産台帳に記載されている新築年次別の建物件数(棟数)と,1987年1年間に除却された建物の新築年次別件数(棟数)である。本年の研究では50%滅失年数および年間総滅失数と総現存数の比である普通滅失率を求め,各地方別の比較分析を行なった。結果は,木造住宅に関しては前回調査と大きく異なることはなく再確認ができた形となった。それ以外の構造の住宅に関しては,サンプル数は少ないが木造住宅とはやや異なる傾向がうかがえた。
  • 木村 建一, 田辺 新一, 岩下 剛
    1991 年 17 巻 p. 291-300
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     実際の室内空間において嗅覚パネルに空気のにおいを嗅がせ,パネルの申告する知覚空気汚染度と,化学物質濃度との比較を行なった。実測に参加したオキュパント(在室者)は計615名であり,また,パネルは93名であった。パネルの知覚空気汚染度評価には,Yaglouの臭気強度スケール,空気の新鮮さを問うスケール,及び不快者率を求めるための,においを受け入れられるか受け人れられないかを問う設問を使用した。また,主観的評価と同時に温湿度,CO,CO2濃度,浮遊粉塵濃度,PMV値の測定を行なった。その結果,CO,CO2,粉塵濃度が低く,ビル管理法の基準値以下の値であっても知覚空気汚染度がかなり高くなる場合が多くみられた。Fangerの提案したolfという知覚空気汚染源強度の単位を用いて,床材,壁材等から放たれるにおいを定量化したところ26人分の体臭と同程度のにおいがこれらの中に潜んでいることがわかった。また,空気温度がパネルの知覚空気汚染度申告に及ぼす影響を考察するために,快適域において温度をいくつか設定し,その環境のもとで空気汚染源物質を発生させ,温度によって臭気評価がどのように変化するかを検討した。女子37名,男子35名,計72名がパネルとして,また,各2名がオキュパント・スモーカーとして実験に参加した。空気汚染源として,生体発散物質(体臭),タバコ煙を用い,室内空気温度20℃,23℃,26℃の3種類のタイプを設定した。また,知覚空気汚染度の評価には,Yaglouの臭気強度スケール,その空気を受け入れられるかどうかの質問,許容度を申告するスケールを用いた。その結果,生体発散物質を知覚空気汚染源とした実験において,20℃~26℃の範囲では室内空気温度の差が臭気感覚の申告値へ及ぼす有意な影響はないことがわかった。また,タバコ煙を主な知覚空気汚染源とした実験において,空気温度(20℃~26℃)が高いほど臭気強度・不快者率が高くなり,許容度申告値は低くなった。
  • 鎌田 元康, 千田 善孝, 倉渕 隆
    1991 年 17 巻 p. 301-311
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     都市域における住宅は近年急速に高気密化が進んでいる反面,高気密化住宅に対応する換気設備に関する研究は不十分であり,室内空気汚染等の被害の発生する危険性は年々高まりつつある。本研究ではこれらの事情を鑑み,高気密化住宅に適した換気装置の開発を最終目的とするが,今回はまず現状把握を目的とし,集合住宅の居住者を対象としたアンケート調査を実施した。また,局所換気装置の開発を支援するシミュレーターとして,室内空気分布の数値計算予測法を取り上げ,浮力を伴う汚染質の室内拡散性状を計算し,実験との比較に基づき予測精度の検証を行なった。アンケート調査結果からは,暖房放熱器,冷房機に対する評価は運転経費,温度調整機能のみならず,空気清浄度や湿度調整に関する機能が比較的重要視されていること,暖冷房時に換気を励行しているものの,室内外空気の流入流出,外部騒音の侵入を理由に換気したくないと感じる居住者も多く,室内空気汚染,かび,結露などの被害が高頻度で発生していること,現状の局所換気設備に対しては,外気の侵入と換気扇の発生騒音より換気したくないと感じている居住者が多く,給気の温度調整等の配慮や,捕集効率の向上による排気流量の抵減を図り,騒音を低下させる方向で機器開発を進める必要があることが判明した。また,数値計算と模型実験の比較により汚染質発生位置,排気口位置が一定であっても,給気口位置の相違が室全体の汚染質分布を大きく左右する可能性があること,汚染質が浮力を有する場合,特に給気口が上部の条件では,汚染質分布は浮力がない場合とは著しく異なった様相を呈し,浮力の影響を加味した検討が必須であること,数値計算結果は浮力を伴う場合を含めて,全般的に実験結果と良く対応し,換気方法が換気効率に及ぼす影響の検討において,有効な予測手法となり得ることが示された。
  • 吉澤 晋, 飯倉 洋治, 松前 昭廣, 菅原 文子, 小峯 裕己
    1991 年 17 巻 p. 313-329
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     近年,喘息その他のアレルギー性疾患が社会的な問題となって来ている。その原因としては食物以外に,大気汚染,ダニ,花粉,カビ等居住環境に関連した多くのものが挙げられているが,特にカビは住宅の断熱性・気密性の向上と生活様式の変化に関連しでいるものと考えられている。この研究は,カビ・アレルギーの実態,患者の居住環境のカビ汚染の実態,評価方法,成育条件等の調査を通して,被曝量の予測,総合的対策について検討したものである。まず小児アレルギー疾患とカビについて住宅構造との関連について既知の知見をまとめた。住宅室内に成育するカビについての調査を夏季・冬季に行ない,成育する状況およびその主要なカピの属・種を求めた。さらに在来からの知見により,住宅に成育するカビの主要なもののまとめを行なった。住宅の空気経路による被曝の評価のためには,多数の住宅における測定が必要であり,患者家族に測定を依頼するためにパッシプ型の測定器の基本特性を求めた。カビ粒子に対して,12時間程度の被曝を計測する落下法が利用できることが分かった。カビの成育について,壁面の水蒸気圧と結露の影響を実際の住宅で調査を行なった。また,各種の相対湿度に対する建築材料,畳等におけるカビの成育速度,および更に温度変動を与えた時の成育速度への影響等を求めた。最後にこれらの調査に基づいて,住宅室内におけるカビ・アレルギーの防止対策の提案を行なっている。
  • エコサイクルと人間の住まい
    室田 武
    1991 年 17 巻 p. 3-13
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • アクティブな生活のためのパッシブなデザイン
    小玉 祐一郎
    1991 年 17 巻 p. 15-27
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • 住居・集落の居住様式をめぐって
    畑 聰一
    1991 年 17 巻 p. 29-46
    発行日: 1991年
    公開日: 2018/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
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