住宅総合研究財団研究論文集
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32 巻
選択された号の論文の37件中1~37を表示しています
  • 再開発と低所得層の居住活動
    加藤 光一, 李 浩, 中川 洋介, 南 垣碩
    2006 年 32 巻 p. 437-448
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     現在,韓国無許可定着地の存在をソウルでは見出すことは極めて困難だ。スラム・クリアランスが進み,その跡地は高層アパート団地に姿を変えている。そこで,本稿ではかかる韓国無許可定着地の「形成と解消」について検討した。とりわけ,無許可定着地の解消過程がそのまま「再開発」過程であり,様々な社会的矛盾を生み出した。その「再開発」の韓国的特徴と「再開発」のもとで,住民(低所得層)がどのような「生業と営為」であったか,再開発以後,どのような状態にあるかを検討し,韓国無許可定着地の現代的形態を明らかにした。
  • 客家囲龍屋型民居の構成について
    片山 和俊, 茂木 計一郎, 尾登 誠一, 中山 淳, 稲葉 唯史, 木寺 安彦, 陸 元鼎, 黄 浩, 黄 漢民, 李 双龍
    2006 年 32 巻 p. 389-400
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     中国南部地域の福建・江西・広東の省境周辺に広がる客家土楼民居研究。福建省環形土楼が空間的に分かり易く有名だが,他の二省にも様々な類型の土楼民居がある。囲龍屋型民居は広東省客家民居の典型である。民居の空間的な魅力や類型,土楼の内外で行われてきた生活と道具類に対する興味からはじめた研究である。それぞれの民居は遷移という壮大な流れを内包しており,そのメカニズムを探ることがもう一つのテーマとなった。最終的には三省に広がる遷移過程を捉えることを目指しており,そのためには各省にある典型的な民居類型を確認する必要がある。今回の研究対象はその一つであり,考察を通じて客家民居の広東省への広がりを明らかにしたい。
  • 水野 弘之, 櫻井 康宏, 西尾 幸一郎, 井尻 智子, 大場 史
    2006 年 32 巻 p. 401-412
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では,在宅知的障害者の家庭における排泄・入浴などに係わる生活困難に対処するために,住宅改善や暮らし方に関する工夫が有効か否かを,事例調査およびアンケート調査に基づいて検討した。その結果わかったことは次のとおりである。1)上記のような生活困難に対処するために,住宅改善や暮らし方の工夫が少なからず行なわれており,生活困難の軽減や,自立の促進,介護負担の軽減などの様々な効果が生じている。2)排泄・入浴などの生活行為に係わる生活困難の中には,住環境的要因と密接に関係しているものも少なくない。3)改善・工夫が実施された事例の中には,教育・福祉・保健・医療・建築などの分野の関係者・専門家が連携して,知的障害者の個性や家庭の状況に合わせた住宅改善や工夫が実現するように支援し,より大きな効果が生じている事例も存在する。
  • 松原 茂樹, 三浦 研, 鈴木 健二
    2006 年 32 巻 p. 413-424
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     近年,デイサービスのなかでも民家を活用した宅老所と呼ばれる活動が注目されている。宅老所の実態と課題を把握するために25ヵ所の訪問調査と1ヵ所の行動観察調査を行った。その結果,1)NPOが主体であり定員は10人程度が多いこと,2)住み慣れた環境のなか少人数の高齢者が1人ひとりに対応した介護を受けながら自分らしい生活を送ることを理由に民家を選んでいること,3)所要室の確保が困難であること,4)利用者の活動に応じた場所や場が必要であること,などを明らかにした。
  • 民間賃貸コレクティブハウジングの計画から運営段階を対象として
    櫻井 典子, 小谷部 育子, 定行 まり子
    2006 年 32 巻 p. 425-436
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     賃貸の多世代コレクティブハウジング事例を対象とし,居住者組織の質的発達過程における支援組織の成果と課題を明らかにし,欧米の先行事例と比較しながら参加・共生型集住形成における居住者支援組織の役割や支援方法を考察することを目的とした。計画・建設期は,暮らしの理念の明確化と共有化による問題解決,モデル事例の提示と学習,豊富な対話と協働の場の設定,組織形成のためのファシリテーション,専門的技術支援の有効性を認めた。運営期は,居住者組織と事業主への第三者的支援,他事例や専門家とのネットワーク支援の必要性を示した。
  • アーバンパイロット事業I期の事例研究を通じて
    福原 由美, 角橋 徹也
    2006 年 32 巻 p. 45-56
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究の目的は,EUにおいて包括的・統合的な都市再生手法が形成された背景を,アーバンパイロット事業1期(UPPI)の事例研究から明らかにすることである。さらに,都市再生の持続可能性を向上させる要因について分析し,日本型の街なか居住環境整備への示唆をえた。その結果,①UPPIは,柔軟な枠組みの中で多様な取り組みヶ実験的に行われたため包括的,統合的な再生手法が形成された。②持続可能性を高める要因として,社会経済的な事業を統合的に行うこと,初期段階から多様な主体と連携し協同で運営すること,自立した運営を見据えて助成期間中にマネジメントのできる人材を育成しノウハウを蓄積することが重要であることがわかった。
  • 佐藤 圭二, 海道 清信, 浦山 益郎, 天野 ゆか, 鶴田 佳子, 石田 富男, 松山 明, 石原 宏
    2006 年 32 巻 p. 57-68
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究の目的は「住宅の戸数密度を基本指標として土地利用の計画を立てそれに基づいて住宅地像を描く手法を開発すること」である。研究は,①住戸密度計画の具体性と現実性を示すためにイギリスの開発許可とデザインガイドの制度を把握する,②住戸密度による住宅地像の把握および土地剰用計画としての住戸密度指標の可能性を検討する,③地区レベルの計画として住戸密度による居住地像設定とデザインガイドの有効性を検討する,を行った。結果として,イギリス都市計画における住宅戸数密度の役割が明らかになり,また,目本の土地利用計画技術および住宅地のデザインガイドの基礎として住戸密度が重要な役割を持つことが明らかになった。
  • タイとラオスにまたがるチベット・ビルマ語派のアカ族の比較
    新井 清水, 西本 太, 畑 聰一, ソンパワン サイニャヴォン
    2006 年 32 巻 p. 69-80
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,タイとラオスにまたがって居住するチベット・ビルマ語派の民族集団,アカを対象に,かれらを取りまく社会環境の違いが居住文化におよぼしている影響の諸側面を指摘し,そのうえで,文化変容の地域的メカニズムについて考察することを目的とする,比較研究である。結語として,家屋の内部空間を男性側と女性側とに二分してしまうことは,形式的にはアカ全般に共通するが,空間の意味内容が支族ごとに異なっていること,さらに,国家や地域社会とのかかわり方如何によって,文化の動態勢性が異なることを指摘している。
  • 伊東 龍一, 小野 将史
    2006 年 32 巻 p. 81-92
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,熊本県の民家に関する基本的な資料と整えることを目的として,藩主が参勤交代の折にも使用した豊後街道沿いの民家を調査し,現存民家の調査結果と蒐集した古記録や絵図から,町家,農家,郷土住宅や,藩主休息のための御茶屋などのデータを提示した。とくに大津町の郷土住宅は大型で,江戸時代に遡る上質の住宅が多く,その祖型は,近隣に存在した平行二棟造とは異なる系統の住宅であろうこと,波野の農家は,建物中央にオモテと呼ばれる大きな部屋をもつ点で街道沿いの他地域の民家とは系統が異なること,御茶屋に準ずる休息施設が存在すること等,を明らかにした。
  • 神奈川県小田原市の商店街における人と町と社会の履歴から
    平井 太郎, 田口 太郎, 池田 聖子, 初田 香成
    2006 年 32 巻 p. 93-104
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では,近隣商店街の再生の方途を,住まいと商いとが有機的に複合していた,商店街自身の歴史から分節した。まず東京都心8区の戦後のマクロデータから,問題を歴史的に整理したうえで,神奈川県小田原市の商店街において,店と家族の生活史データを収集・分析した。その結果,幾たびもの社会的な変化の波を,まち人たち自身の知恵によって乗り越えてきた事実が明らかになった。とくに関東大震災・昭和恐慌後には,後の商業高校につながる人材育成組織や,町の価値を高める自治組織など,現在では忘れられかけた方策を掘り起こした。こうした内発的な再生策は現在の商店主たちを刺激し,今後の商店街再生の指針として受け入れられつつある。
  • 住宅発展プロセスと社会構成
    中橋 恵, 新井 勇治, 柱本 元彦
    2006 年 32 巻 p. 105-116
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     南イタリアは,ナポリにおける中庭型住宅の持続性に関して,集団性の強い社会構造の視点から論じる。ナポリは,ギリシア時代の都市構成を継承しながら,集合的な性格をもつ中庭型住宅を発展させてきた。また,古代の都市機能の中心であったアゴラは継承されてこなかった。市民のコミュニティ生活は,住宅や修道院の中庭、路地などの空き空間で展開され,モザイクのように拡がっている。このような都市社会の特徴は,中心性を書いた都市構成と密接に関係しているのではないか考え,都市機能,居住スタイル,社会的特徴などから性格の異なるゾーンを選出し,それぞれの中庭住宅の形態的特徴と照らし合わせて検証する。
  • 藤井 明, Dinh Viet Pham, 及川 清昭, 曲渕 英邦, 槻橋 修, 橋本 憲一郎, 田中 陽輔, 本間 健太郎, Quoc ...
    2006 年 32 巻 p. 117-128
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     ベトナム中・南部の高原地帯における少数民族の伝統的な集落・住居を対象に現地調査を行い,それぞれの共同体が持つ居住様式について,空間的な同質性と差違性に着目して,形態学的な特性を明らかにすることが本研究の目的である。調査集落の中から,重荷伝統的な形式が遺っていると思われる住居を対象として,カテゴリーデータとして住居を,サンプルデータとして住居の属性をとり,数量化Ⅲ類を適用した。上位2軸を評価軸としてカテゴリースコアとサンプルスコアを分析した。続いて,座標上の距離を基準とするクラスター分析(ウォード法)を行い,調査住居をグルーピングするとともに,評価軸の表現内容を検証した。
  • 『院宮及私第図』と『諸家亭宅寝殿考証』
    藤田 勝也, 京樂 真帆子, 岩間 香
    2006 年 32 巻 p. 129-140
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
      『院宮及私第図』と『諸家亭宅寝殿考証』は,平安鎌倉時代の公家邸を中心に指図・関連記事を収集した資料集である。本研究ではこれら二書について考察し,主に以下の結論を得た。まず,前者は裏松固禅の編著だが,後者は再検討の必要がある。『院宮及私第図』の成立は『大内裏図考証』と同時期である。邸の復元図も掲載されるが,その主目的はあくまで指図の資料集という点にある。それを反映して図配置の方針が不明確である。そして固禅の住宅史研究には善本収集の制約という限界があったが,絵巻物の選択にあたっては描写される建築の時期や内容が吟味されていた。
  • 近代民家普請における大工・工程・用材・行事
    大場 修, 高木 美佐, 葉賀 伸子
    2006 年 32 巻 p. 141-152
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    明治18年から23年のかけて建てられた旧稲葉家住宅(京丹後市久美浜町)を事例に,多量の普請文書の解析から,職人の就労形態を始め,普請工程,材料の調達,工事計画,普請行事などの実態を明らかにした。その過程で,一貫した直営工場による工事監理体制に近代的特質を認めるとともに,職人の就労形態や普請行事には近世から引き継がれた慣習を読み取った。と仕分け,普請行事の様相から,地域最上層の民家における本宅普請の社会的意味を捉えた。
  • 連棟式都市型住居の高効率居住環境持続システムの解明
    市原 出, 渡邉 美樹
    2006 年 32 巻 p. 153-164
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     イギリスに原形をもつテラスハウスはアメリカやオーストラリアでそれぞれ展開してきた。本研究では,その都市における高効率居住環境を持続してきた仕組みとして,従来から研究されてきた街路側の要素に加え,ミューズ,バックヤードという裏側の要素に着目し,その形態と空間形式及びそれらの変形過程を捕捉する戸によって,その今日的な意味,これからの都市住居における可能性について検討した。その結果,ニューヨークにおいてはミューズの消滅とそれに代わる表側の裏口の出現,オーストラリアにおいてはミューズの変質が確認でき,原形のもつ機能を維持,代替しながら展開されていることが明らかになった。
  • 一連の源氏物語絵を中心に
    赤澤 真理, 石黒 久美子, 土屋 貴裕
    2006 年 32 巻 p. 165-176
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,近世において上流階級が,古代の寝殿造をどのように理解し,理想の住空間像を構築したのか描き継がれた源氏物語絵を中心とした物語絵の分析を通して,明らかにする。近世の源氏物語絵に描かれた住空間には,当時の上層住宅であった書院造が援用され,絵師や制作状況に従って多様な住空間への憧憬が表出された。そのイメージの源泉は近世の宮廷文化にあった。近世における武家は,源氏物語絵に描かれた住空間を,自らの住まいとして描きこむことで,正当性を主張した。一方,17世紀後半の特定の階層が共有した物語絵には古代の内裏考証が試みられた。
  • 北九州同和向け市営住宅活用計画策定事業を中心に
    小野寺 一成, 内田 雄造, 畠中 洋行, 安部 聡子, 川井 友二
    2006 年 32 巻 p. 177-188
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,地域と一体となったコミュニティの形成を目指した公営住宅の活用に着目し先進事例調査や団地現地調査を行い,北九州市同和向け市営住宅活用計画の差悪亭プロセスや参加者の係わりを分析し,公営住宅の建替え等多様な活用計画のしくみづくりを明らかにしたものである。本活用計画には,住民,行政,プランナーによる協働策定のしくみや,多様な住宅供給を取り入れた団地活用のしくみ,地域コミュニティを大切にした計画実現のそくみなど数々のしくみが盛り込まれており,今日の国の方針や先行事例からみてもせんしんんてきでありかつ内容に富んでいることがわかった。また,これらの結果から今後の公営住宅における建替え等多様な活用のあり方について考察した。
  • その空間構成と利用形態,住宅ストック活用の改変事例について
    丹羽 哲矢, 布野 修司, モハン パント, 山本 麻子, 山田 協太
    2006 年 32 巻 p. 189-200
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では,血縁婚姻関係を持たないもの同士を含む同居を行う住居を共住住居と定義し,事例調査により,その空間構成と利用形態を明らかにした。利用形態の特徴として,①個の空間より,共同で住む事により得られるものを重視する。②生活時間帯にずれにより共用部の適時利用が計られる。③経験者は人/場所を考えながら継続的に居住住居に住む場合がある。④居住者の他住居滞在や定期的に来訪する非同居者の存在があることが確認された。空間構成の特徴として,①個室の確保と同時に共用空間の快適性を求める。②最も広い空間を造り共用空間として利用する。③所有物のうち共用可能なものは共用空間に配置する傾向があることが示された。
  • グレゴリー・エインの郊外建売住宅・団地の変遷
    曾根 陽子, 中村 好文, 木下 庸子, 田中 玄, 亀井 靖子
    2006 年 32 巻 p. 201-212
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     建売住宅団地マー・ヴィスタ・ハウジングは60年近く経過した現在も分譲時のファサードを残し良好な住環境を保っている。建築家グレコリー・エインのオリジナルプランは増築と街並みの変化を最小限に抑えた。さらにマー・ヴィスタは一般の住宅団地にはない密接なコミュニティをもつ。本研究は,マー・ヴィスタの分譲以降の変遷について明らかにすることを目的とし,1)エインの計画意図と現状の概要,2)増改築におけるプランの適応性,3)発達したコミュニティの3点に絞って述べている。
  • 亀屋 惠三子, 山本 和恵, 長澤 治夫
    2006 年 32 巻 p. 213-224
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     ALS患者と家族の生活実態とすまい方について考察した結果,1)在宅療養生活の最たる特徴は家族の10年間にも及ぶ介護時間である事,2)ALS患者は,病状の進行のよってすまい方が変化し,人工呼吸器の装着が転機であること,3)ALS患者のすまい方は,意思表示の可否によって大きく影響を受けている事がわかった。以上より,病期とすまいは一緒に検討されるべき課題であると思われる。また,身体の自由を奪われた患者にとっての意思伝達は,QOLと密接に関係しており,従来の動線計画に加えて,コミュニケーション環境も考慮する必要があると考えられた。これらの知見はALS患者の変容を連続的に見る事によって,初めて明らかに出来たものである。
  • 古山 周太郎, 杉田 早苗, 木村 直紀
    2006 年 32 巻 p. 225-236
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,誠意心象会社グループホームの運営実態と居住形態を把握し,グループホームの世話人からみた居住環境に対する意識・評価を明らかにすることを目的とする。研究の方法は,アンケートとインタビュー方式による全国調査を行い,126ホームから回答を得た。結果として,精神障害者グループホームの居住環境は多様であり,居室についてはプライバシーの確保が,交流室については利用状況に適した広さが必要とされていた。また精神障害者グループホームでは,入居者間で互いの障害を理解して仲間意識が形成され,プライバシーのある空間が入居者間の関係に好影響を与える一方,音漏れ等の環境的問題が入居者の状態に悪影響を及ぼしていた。
  • 国際援助活動における建築人類学の応用
    牧野 冬生, ヘルブリング ユルック, 菊地 靖
    2006 年 32 巻 p. 237-248
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,メトロマニラ貧困地域4地区を対象としてフィールドワークを行い,住居及び居住形態の実態調査を通して,社会構造の変容を捉えることにある。調査結果から,居住者の構成,狭小な生活空間への対応,帰属意識の変容などを読み取り,住民同士あるいは住民とのコミュニティの新たな関係性を生みだす空間特性を把握した。親族関係については,拡大家族や儀礼親族の重要性はいまだ認められる。その一方で核家族を中心とした家族構成を基本としながらも,生活機能をコミュニティに依存せざるを得ない生活実態から,フィリピン都市型ともいうべき新しい社会構造の萌芽的現象を読み取ることができる。
  • 英仏の「社会的排除の克服」を目指す住宅施策の現状と効果
    檜谷 美恵子, 多治見 左近, 小玉 徹, 所 道彦
    2006 年 32 巻 p. 249-260
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,住宅の量,質が一定の水準に達した英仏で試みられている「住宅困窮」問題への接近方法と,そこで採用されている「場」に着目した施策の現状,効果を探ることを課題とし,①「社会的排除」論から導出される「住宅困窮」は,「場」に対する支援を意義づけ,施策対象とすべき「場」を特定するとともに,施策効果を測定する指標の開発を促してきた,②具体の施策には,「居住者のエンパワーメント」と「ソーシャルミックスの実現」という理念が反映されている,③施策評価は着眼点によって異なるが,施策の意義は首肯されている,④日本においても都市内の特定の「場」で「社会的困窮」が着目した施策が要請される状況がある,ことを論じている。
  • 大阪府及び大阪市の事例調査を中心として
    葛西 リサ, 大泉 英次
    2006 年 32 巻 p. 261-271
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     市場原理が貫徹する日本の住宅供給のもとでは,相対的に経済力の低い母子世帯は,低質な住宅に集中する傾向が高く,更にその住居費負担は極めて高くなっている。また,これらの条件は大都市とその周辺の郊外地域では事情が異なり,母子世帯の住生活にも地域格差が生じている。本研究では,母子世帯の居住実態を①居住地の選択,②育児と就労の条件,③最低居住水準そして④住居費負担率の側面から明らかにし,更に,その地域格差を分析した。
  • ブラジル,ペルー,メキシコのケース
    谷口 恵理, 篠江 みゆき, 片桐 瑞季
    2006 年 32 巻 p. 273-284
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,ラテンアメリカにおける貧困層を取り巻く住環境に焦点を当て,基本生活インフラの設置・整備や脆弱なコミュニティーの改善といった取り組みを,主要3力国の例で概観するものである。貧困層の居住者を開発プロセスに何らかのかたちで参加させるという社会開発理論の枠組みでは有効とされる方法を積極的に取り入れているブラジルのリオ,それと対照的に政府の統制下のもと整備を行っているブラジリア連邦区,国家主導で融資を提供しその過程に民間部門(銀行,建設会社)を取り入れ,国家主導の参加型プログラムが行われているペルー,速邦区の機関とNGOによる融資で住宅の建替えを進めているメキシコ市の事例を取り上げた。
  • アフォーダブル・ハウジングによるコミュニティーの公正を達成する戦略について
    フィンレイ ナンシー, ブラック マイケル, 伊藤 潤一
    2006 年 32 巻 p. 285-296
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     アメリカ人へのアフォーダブル・ハウジング(AH)の提供は,限界に達している。本稿では,サンフランシスコ湾岸地域の先駆的なAH戦略を紹介する。コミュニティー開発団体(CDCs)は,30年程前から今日まで,地域及び地区レベルでAH開発を行ってきている。有効なAH開発戦略は,多様な政策課題の連携,アドヴォカシー及び主体的力量の形成という新たな手段を用いることにある。この戦絡は,民間・公共・非営利部門において地域CDCsを地方及び全国組織に組み込む。以下では,AHを他の社会公正に関する政策課題と結びりけ,主体的力量の形成とアドヴォカシーを活用することで,コミュニティー開発の意味を明らかにする。
  • エネルギー最大負荷の高精度予測のために
    谷本 潤, 萩島 理
    2006 年 32 巻 p. 297-306
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     エネルギー消費に大きな影響を及ぼす居住者の生活スケジュールを多数サンプル生成させる手法を構築した。基となるデータは平均値等の統計情報であり,生成方法の大枠はgenerate & kill的方法による。提示手法はデータの属性に依存しない普遍的生成アルゴリズムである点であり,その精度も従来に較ぺて良好であることが示された。最終的データセットは.ながら行為および在宅フラグの付加,家族の生成など,実際のエネルギー計算に供し得るデータ形式にて提示される。また,生成生活スケジュールにエネルギー消費行動の原単位を貼り付け,エネルギー消費時系列を生成し,これと実測に基づく尾島研原単位データとを比較し,良好な結果が得られた。
  • 地域性と周辺環境に適したTypical Solution Setsと応用
    林 基哉, 須永 修通, 長谷川 兼一
    2006 年 32 巻 p. 307-318
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では,住宅建築のサスティナブル・デザインの意義を認めた上で,最終的に,設計段階でのデザインツールの提案を行う。まず,国内外のサスティナブル・デザインの普及に対する取り組みの状況を整理し,市場性の観点から見た検討を行い,地域性を考慮したデザイン志向が有用であることを指摘した。次に,TSSを「地域の気候条件に適した環境負荷低減のための建築的手法の最適組み合わせ」と定義し,地域性を有したTSS手法を適切に評価する手法を提案した。本研究では,TSS手法の評価に有用であるデータベースの構築を行うとともに,TSS手法の評価プロトコルを提示し,その妥当性を示した。
  • 入居後の事後検証による設計手法へのフィードバックの可能性
    岩村 和夫, 中村 美和子, 矢島 央喜, 三岡 裕和, 中島 立人
    2006 年 32 巻 p. 319-330
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では,まず近年注目され,今後の建築の課題として取り組まれている「環境に配慮した住宅」の実情を1970年代に遡り,建築雑誌から系統的に抽出し,その設計手法及び住宅の種類を類型化した。更に,その中から集合住宅を中心に,個々の設計意図と入居後運用時に見られる居住者の生活や意識の実態との関係について,アンケートやヒアリングにより調査した。その結果,公共賃貸型と民間型では,運営面において居住者の意識の違いがあることがわかった。更に,住人のライフスタイルに適合する要素技術の導入が望まれ,特に周辺環境との調和や管理運営面において,それが「環境共生」型要素技術を持続的に活用する上で大きく影響していることが明らかとなったこのように「環境に配慮した住宅」を類型別事後調査による課題の精査が持続的改善に繋がるものと考えられ,これからの環境共生住宅」における一連の設計手法の中で「ポスト・デザイン」をより重要視することが望まれる。
  • 住宅水回り部品を対象とした施工実験
    三根 直人, 相楽 泰典, 堤 洋樹
    2006 年 32 巻 p. 331-341
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     我が国における住宅の寿命は西欧諸国に比較して短・と言われている。このことは新築住宅を建てるときに古くなった住宅を取り壊す事が頻繁に行われていることを意味する。古い住宅の取り壊しは処分困難な建設廃棄物を生み出す結果となる。この問題を解決するためには,取り壊しによって生じた建築材料や建築部品をリサイクルし再利用する必要がある。しかしながら,現在の建築業界においては一部の資材を除いてリサイクルや再利用のしくみが確立していない。本研究の目的は建築材料・部品の再利用システムを構築することである。このために住宅水周りに用いられる中古の建築部品を対象とした施工実験を行った。本報告では,中古部品の調達と施工実験の結果について述べる。
  • 安藤 邦廣, 黒坂 隆裕, 樋口 貴彦, 濱 定史, 刈内 一博, 小林 久高
    2006 年 32 巻 p. 343-364
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
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     民家研究において未解決な部分の多い板倉構法について,山形県山形市,群馬県片品村,福島県桧枝岐村,長崎県対馬市において構法と立地について詳細な調査を行い,その構法類型を抽出し,変遷についての論考を行った。板倉構法の類型は木材資源の減少に伴って変遷していき,さらに機能や立地形式に対応していることを明らかにした。
  • アジアにおける日本の品質管理技術の普及をめざして
    古阪 秀三, 丁 士昭, リー ボク ナム, ロー フシン, 金多 隆, 岩下 智, 齋藤 隆司
    2006 年 32 巻 p. 355-364
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
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    中国をはじめアジア各国における住宅産業は,国家の発展と機を同一にしながら,建設投資の増加に伴い,高い成長を持続している。しかし.プロジェクト数が増加するとともに.プロジェクトの品質確保が問題となっている。そのため,各国とも日本の品質管理制度をまねて,TQCや工事監理制度などの導入を図っているものの,品質を確保することに成功しているとは言いがたい。その原因は,日本で経験した品質管理活動が十分に実施されていないため,形骸化した品質管理となっていることにその要因があると思われる。一方,日本では,すでにTQC導入以来20年を経過しており,TQCからTOMという形で,住宅を含めた建設プロジェクトにおける品質管理技術の向上に資することに成功している。本研究では.住宅産業におけるアジア各国の品質管理活動を制度面等から比較検討し,その特徴を明らかにしている。
  • 北村 薫子, 神農 悠聖, 原 直也, 大野 治代, 野口 太郎
    2006 年 32 巻 p. 365-376
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
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     本研究は,居住環境に使用される色彩や質感について得られる視覚上の対比効果に関する基礎的知見を得ることを目的としている。視対象と背景との主観的・総合的な違いの程度を対比感と定義し,試料の対比感と等価になるよう無彩色色票を選択する主観評価実験を行った。一方,対比感を左右すると考えられる試料表面の見え方の視標としてデジタルカメラによる測光測色値から背景との輝度対比や色差を算出し,対比感との対応を検討した。一連の考察の結果,有彩色の対比感と等価な輝度対比を求めて色相・彩度の影響の程度を明らかにするとともに,光の入射角度による質感の差異を把握し,測光測色値によって対比感を表現する可能性を示唆した。
  • 住機能の混在する東京の都心高密地区を対象として
    饗庭 伸, 池田 浩敬, 崔 恒, 藤田 香織, 見浪 進, 三原 久徳, 山村 一繁
    2006 年 32 巻 p. 377-388
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
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     本研究は中小規模の建築ストックが密集して存在する千代田区神田地域を対象に,地域社会を主体とした建築ストックの地震リスク情報の共有化手法を開発した。具体的には,基礎的な情報をまとめたGISを構築し,まちスケールの地震リスク情報を作成した。また,3棟の木造建物,10棟の非木造建物を対象に耐震性能の調査を行った。これらの情報をまとめて,地域住民と地震リスク情報を共有化する手法の開発を行った。
  • 原田 陽子
    2006 年 32 巻 p. 5-17
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
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  • 曽我部 昌史, 田中 皇彦
    2006 年 32 巻 p. 19-30
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
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  • 角橋 徹也
    2006 年 32 巻 p. 31-43
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/31
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