住総研研究論文集
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39 巻
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  • 山口県・祝島集落,広島県・宮島集落等々の集落を対象とした考察
    森保 洋之, 橋部 好明, 菊川 照正, 星出 直也, 池田 亜依
    2013 年 39 巻 p. 177-188
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,祝島集落を中心とする瀬戸内の島嶼集落を対象に,集落の持続性の仕組みに係る考察を行い,次の結果を得た。島嶼集落には,(1)相互扶助的な要素が多く,共助・共同社会の意識が強く根付く。(2)地形や風等の厳しい自然環境から,家・通り・まち等をつくり,守る工夫の存在。(3)自然環境を基礎に,家・通り・まち等の空間構成に及ぼす,集落の生活・社会構成要素の存在。(4)限られた土地等の条件の下,互いに支え合いつつ,集落独自の生活・空間構成を形成 ,その仕組みの保有。(5)独自の再生技術により,絶えない集落再生の実行。(6)これらの集落の持続性の仕組みが,その伝承への下支えとして存在。等々が認められる。
  • 建築史料,外交文書ならびに旧華族への聞き取り調査に基づく検討
    奈良岡 聰智, 小川原 正道, 川田 敬一, 土田 宏成, 梶原 克彦, 水野 京子
    2013 年 39 巻 p. 189-200
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,各国の駐日大使館の立地,建築様式,およびその機能について解明することを目的としたものである,駐日大使館については研究の蓄積が浅いため,まずは建築史料,外交文書など,一次的史料やデータを収集することを通して,今後の大使館研究の基盤を構築することを目指した。また,それらの史料情報を得るにあたって,旧華族への聞き取り調査を行った。特に研究対象としたのは,重要な外交上のパートナーであったアメリカ,フランス,およびベルギーの3国である。本研究を通じて,大使館が両国の外交関係を「象徴」する存在として,重要な機能と特徴的な建築を有していたことが確認された。
  • オーラルヒストリーと文献史学による戦後住宅史
    戸田 穣, 権藤 智之, 平井 ゆか
    2013 年 39 巻 p. 201-212
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    建築構法は戦後に成立した学問分野であるが,日本の建築生産の工業化に大きな役割を果たした。建築構法の成立に寄与した内田祥哉は建築構法を設計方法論として理解し,それによって従来の一般構造(在来工法)の合理化を目指していた。しかし建築構法は,60~70 年代の建築の工業化とオープンビルディングの動きを通じて,設計論から建築生産プロセスを包含する生産論へと変化を遂げる。その過程で当初設計方法論と考えられたモデュラーコーディネーションは,建築各部位のライフサイクルに沿って計画を組織化する手法として理解され,建築構法計画の現代的な課題としてサスティナブルが浮上した。
  • アメリカの事例に見る住宅を活用したコミュニティ形成に関する考察
    宮原 真美子, 西出 和彦
    2013 年 39 巻 p. 1-12
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,今後確実に増加すると見られる非定住層である単身者のコミュニティのあり方を,オーナーの住宅で行なわれる異世代・非血縁によるホームシェアから探りその方向性を示唆することを目的とし,ヒアリング及び実測調査を行った。これらの調査から,1). ホームシェア居住者の生活実態,2). ホームシェアの行われている住宅の特徴, 3). 共用部での居住者間の交流時の居方を明らかにした。その結果,ホームシェアでは,共用部の公私の重複性が居住者による空間の使い分けを可能にしていること,また,居住者間の共用部での“居方”から,居住者間で一定の距離を保ちながらお互いのプライバシーを尊重した生活であることを明らかにした。
  • 福田 由美子, 小林 文香, 石垣 文, 山本 幸子, 下倉 玲子
    2013 年 39 巻 p. 13-24
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,小学校の統廃合により教育の機会が失われた地域はその将来像を描くことは容易ではないとの立場に立ち,統廃合問題を契機として住民が転入者増に向けた活動を行う三つの中山間地域を対象に,持続的な居住支援システムのあり方について検討した。その結果,住民活動団体が行う転入者の受け入れの仕組みや地域生活に馴染むための生活支援の実態とその特性,それら活動による成果を明らかにした。さらに,転入者の受け入れにおける支援システムのモデルを構築した。それに加え,こうした住民活動が展開する上での行政や学校側における課題を整理し,またスケールとして「小学校区」の意義を指摘した。
  • 縄張り越えたマンションリーダーたちの活動を支援する実践研究
    沢田 知子, 染谷 正弘, 曽根 里子, 小田 麻子, 佐久間 満恵子
    2013 年 39 巻 p. 25-36
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,まず我孫子駅近くの工場跡地再開発による「我孫子マンションエリア(大規模マンション4つが集積)」に萌芽する「オープンマインド」なコミュニティ形成活動を「21 世紀型地縁社会」創出モデルと位置づけた。研究目的は,このエリアの複数マンションを対象に,大規模マンションの特徴とされる共用施設の利用状況,集住活動の組織運営体制と活動状況,マンション内外に広がる人間交流実態,マンション間の連携活動の現状等を明らかにし,コミュニティ形成支援の計画に関する実践的・学術的成果を蓄積することとした。研究成果では,大規模マンション集住活動の共通点と我孫子マンションエリアにおける地縁社会創出の方向を明らかにした。
  • 生活スタイルと入浴の質を考慮した入浴支援のあり方の検討
    野口 祐子, 西村 顕
    2013 年 39 巻 p. 37-48
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    障害児・者を対象としたこれまでの研究で,自宅浴室の整備の限界や介助者の負担の問題が明らかになったことから,入浴行為を自宅の中だけで完結させるのではなく,地域に拡大して捉え,安全かつ快適で質の高い入浴環境や支援のあり方を検討するため,アンケート及び訪問調査により実態把握をおこなった。その結果,親の身体的負担や仕事と介助の両立の問題に対して,施設入浴やヘルパーを利用した自宅入浴のニーズが高いことがわかった。そして,これらの利用は,親の支援だけでなく,本人の社会参加や地域での交流にもつながっていることがわかった。今後は施設入浴の回数制限の緩和など親や本人の生活スタイルにあわせた制度づくりが必要である。
  • 町屋敷の空間構成と緑が屋外生活空間の熱環境に及ぼす影響
    髙田 眞人, 梅干野 晃
    2013 年 39 巻 p. 49-59
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,現代東京で地域の気候特性を活かした空間設計手法に関する知見を江戸町人地より得ると同時に,建築史の分野においても夏季の屋外生活空間の熱環境を定量的に明らかにすることを目指し,限定的な条件下ではあるが,江戸時代後期の江戸町人地の町屋敷における空間構成と緑を検討し,これらの影響を定量的に把握することを目的に,複数の町屋敷を対象に夏季表面温度分布を数値シミュレーションより再現し,表面から周辺大気への顕熱負荷をより評価した。結果,低層高密な江戸町人地では町屋敷内の樹木よりも明地・空地の草地が日中の顕熱負荷の低減に貢献すること,および全ての町屋敷が夏季の熱帯夜の発生要因となっていないことを確認した。
  • 姥浦 道生, 石坂 公一, 佐藤 健
    2013 年 39 巻 p. 61-72
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,洪水被害の多発と開発圧力の低下により,土地利用コントロールを通じて市街地の構造自体を水害に強いものへと変えていく必要性と可能性が高まってきている。また,東日本大震災の被災地では,土地利用によって津波リスクをマネジメントするための手法として,土地利用規制が積極的に用いられてきている。そこで本研究では,(1)洪水リスクに対する土地利用コントロールに基づく対応の実態を調査し,その課題を摘出すること(第2章),及び(2)東日本大震災の被災地における津波リスクに対する土地利用コントロールに基づく対応の実態を調査し,その課題の摘出すること(第3章),の二点を目的として行った。
  • 中国広東省広州市を事例として
    三橋 伸夫, 栗原 伸治, 湯 国華, 安森 亮雄, 黎 庶旌
    2013 年 39 巻 p. 73-84
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,中国広州市の市街地近郊農村集落において,急激な都市化の下で市街地化が進み,高層かつ高密度な居住地(城中村)が形成された経緯について,経年的な地図情報分析と現地踏査により集落空間変化を実証的に分析するとともに,それが農村土地管理ならびに農村住宅建設に係る法規制の変遷と運用に密接に結びついていることを明らかにした。さらに,配票調査を通じて城中村住民の居住地に対する環境評価と将来ビジョンを分析し,城中村の居住環境整備のあり方を検討した結果,(1)固有の歴史・文化・空間的条件を生かした整備,(2)立地条件と空間変化の特徴をふまえた修復的整備,(3)在来住民・流入住民の共生社会形成に向けた整備,の三点を指摘した。
  • 東京都墨田区民家の地域的特質と変遷を通して
    真鍋 怜子, 中川 武, 小岩 正樹
    2013 年 39 巻 p. 85-96
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,「奥」という概念の再考を動機とし,土間や外部との接点および家族団欒の場と,台所作業場の平面的な関係性を通して,近世末から近代への移行期の夫人の居場所の変遷を捉えることを目的とする。幕末期の旗本夫人・井関隆子による日記を分析し,家族個人間のプライバシーの時代的萌芽を指摘した。墨田区民家においては,台所の空間的な「奥」を深化させる一方,家事労働軽減が目指されても,家庭の中心的な場に一体化されることはなかった。それにより,中廊下型でも居間中心型でもない「江戸期農家の土間・台所の縮小再編型」という特有の住居平面構成を持ち,夫人の新たな居場所が形成されたと見ることのできる可能性を示した。
  • 村川家の遺構と史料からみた近代都市中流知識層の住生活の実態
    浅野 伸子, 伊郷 吉信, 村川 夏子
    2013 年 39 巻 p. 97-108
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    東京帝国大学の教授であった村川堅固は,明治44 年に雑司ヶ谷に自邸を建て,その後,大正4 年から同15 年までの間に勝浦,我孫子,鵠沼に次々と別荘を持った。自邸は,近代に多くみられる中廊下型の平面で,その様式のうち最も初期に建てられたものの一つである。別荘の平面は,我孫子の母屋は武家住宅と同様の形式で,次に建てた鵠沼の家屋は近代和風の雰囲気を持ち,その次の我孫子の新館は全くの独創で,屋内は洋式で生活するように建てた。そこには,堅固の住宅に対する考え方と,それが変化していく様子が窺えるとともに,新しい住まいの形式で良いと判断したものは積極的に取り入れる,都市中流知識層の住宅への考え方があらわれている。
  • 岸岡 のり子, 中島 明子, 大崎 元, 鈴木 浩
    2013 年 39 巻 p. 109-120
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,東京都特別区における低家賃民間賃貸住宅の実態を様々な手法で明らかにし,社会住宅としての活用可能性を検討することを目的としている。調査の結果,(1)特に木造で質の低さが目立ち,(2)単身で低収入の高齢者の割合が高い等の特徴があり,(3)低家賃住宅の町丁目別分布を把握した。また,(4)非市場・半市場物件の質は低いものの「ホームレス移行支援事業」における自立の受け皿として,低家賃住宅ストックの存在が重要な役割を果たした。一方地主家主協会が組織する家主層は,(5)経営規模は零細で家主の高齢化等の経営問題を抱えている。社会住宅化の課題としては,低家賃住宅をアフォーダブル住宅として活用する事例がみられ今後の研究課題を提起した。
  • 仏教僧院を起源とする中庭型集住体を対象として
    サキャ ラタ, 髙田 光雄, 森重 幸子
    2013 年 39 巻 p. 121-132
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究ではネパールの中庭型集住体における共用空間である中庭の管理に着目し,現代に合致した管理システムのあり方について考察した。パタン旧市街地の複数の中庭が含まれる街区を対象とし,各中庭の所有,利用と管理の実態とその主体関係の分析から,以下の知見を得た。1) 共用空間の所有,利用と管理の主体が同一であることが必ずしも合理的な管理システムとはいえない。2) 管理主体を特定の主体に限定したシステムよりも, 多種の主体が存在し, それぞれの利用程度による管理行為を行う共同的な管理システムのほうが, 状況の変化に柔軟に対応できる管理システムといえる。
  • アーカイブとして近代住宅遺産を継承する仕組み
    田村 誠邦, 新堀 学, 山中 新太郎, 清家 剛, 山名 善之, 佐藤 慎也
    2013 年 39 巻 p. 133-142
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    今日,築40年‐50年の住宅建築が諸処の事由により失われていく。これらを保存することに対しての社会一般の関心は徐々に醸成されているにも関わらず,有効な仕組みは存在していない。本研究ではハードな「保存」の周辺に「継承」という行為の領域を考え,そのための条件と仕組みについて,検討を行う。同時に「継承」される対象としての「住宅遺産」の意味付けについて,さまざまな角度から考察を行った。
  • 南海・東南海地震による激甚被害が想定される沿岸集落の事例研究
    田中 正人, 堀田 祐三子
    2013 年 39 巻 p. 143-154
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,和歌山県串本町の沿岸地域居住者を対象にアンケート及びインタビューを実施し,社会関係の保有状況と津波リスク認知や高所移転意向との関連を分析した。主な知見は以下のようである。1)移転意向は居住者によって隔たりがあり,拒否層,消極層,積極層に分かれる。2)拒否層の中心は単身等の小規模・高齢世帯,無就業層であり,その多くは直近の近隣とのみ日常的な共助関係を有している。共助関係は単に人と人との関係ではなく,住み慣れた生活空間上に成立すると考えられる。3)他方,未成年の子のいる若年世帯,自営層は移転を受容する傾向にある。従って,移転誘導施策は若年層と高齢層の分割可能性を持つ。
  • 日常生活における認知・行動からみた健常高齢者との比較から
    鈴木 千絵子
    2013 年 39 巻 p. 155-164
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    アルツハイマー病をはじめとする認知症患者の特徴である記憶障害は,本人にとって困難感を伴うだけでなく日常生活上に様々な影響をもたらす。また高齢になるとそれまでの身体能力に衰えが加わり,その日常生活に変化がみられることが指摘されている。今回,認知症を持つ高齢者において,日常生活している居住空間にはどのような特徴がみられるのか,また認知症を持つ高齢者と持たない高齢者においてどのような点で相違があるのかを明らかにするために,認知症を持つ高齢者とそうでない高齢者のあわせて12例の事例を調査し検討した。これらの調査結果により,認知症の住環境には家族の協力をはじめ,生活支援サービスが重要であることが示唆された。
  • 高齢者福祉・まちなか居住に資する住宅保有とは
    倉橋 透, 石丸 希, 桐生 幸之介, 小出 望美, 清水 隆博, 中村 研二, 樋口 秀, 光多 長温, 村上 卓也, 山田 剛志
    2013 年 39 巻 p. 165-176
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究会では,高齢者福祉やまちなか居住等に資するため,不動産信託や定期借地権を活用する場合のメリットや課題を把握するとともに,実際に制度を普及させるためにはどのような施策が必要か検討した。その結果,今後の課題として,「面積の広い高齢者住宅の供給促進」,「地域主体,コミュニティ主体の取組みによる高齢者住宅の整備に利用できそうな民事信託のモデルの開発」,「本研究で提案した不動産バンクが業としてみなされないような特例の必要性」,「定期借地権を用いた中心市街地の再開発とまちなか居住の促進の事例の蓄積」,「定期所有権についての検討」等があげられる。
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