住総研研究論文集
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40 巻
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  • 自立支援法移行後の居住実態について
    松田 雄二
    2014 年 40 巻 p. 201-212
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,障害者自立支援法(現障害者総合支援法)による新体系に,旧法上の身体障害者入所授産施設がどのように対応したのか,また新体系に移行することにより利用者にどのような影響が生じたのか,明らかにすることを試みた。結果として,大多数の施設が施設入所支援に移行していること,また施設によっては就労の場に付随した寮として設立されたものがあり,就労を原則として認めない施設入所支援に移行したために就労の継続ができなくなってしまったものがあること,またハード面での制約から現状ではグループホーム・ケアホームを利用した身体障害者の生活の地域移行が困難であることが示された。
  • スマートグリッド構築のための基礎調査
    竹林 芳久, 岡 建雄, 森野 仁夫, 鈴木 道哉
    2014 年 40 巻 p. 1-10
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,地方都市の住生活の低エネルギー化に効果的な方法を明らかにすることを目的に,多賀城市の戸建住宅の交通エネルギーを含む消費エネルギーの実態を調査し,その結果に基づき,住宅断熱の強化,自家用車の電気自動車への変更,太陽光発電の採用による効果を定量的に算定したものである。それらの手法の採用によって,市内の戸建住宅のエネルギー消費を48%低減できることを明らかにした。また,この手法の中で最も効果的であった太陽光発電の課題である電力需要と発電量の時間的なギャップを解消するために電気自動車の蓄電池を利用する方法を検討し,年間で,時間的なギャップの74%を電気自動車の蓄電池で吸収できることを明らかにした。
  • 地方中核都市における行政単位と高齢者の行動実態との比較考察
    西野 辰哉, 沈 振江, 大森 数馬
    2014 年 40 巻 p. 11-22
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では金沢市内5 地区における要支援・要介護, 健康な高齢者175 名の生活圏域の実態を調査し, これを元に日常生活圏域(福祉行政圏域)の規範としての中学校区の妥当性を考察した。調査から高齢者の生活圏の二層性, 徒歩圏の中空化等が明らかになった。次に各地区で現存施設を基点に描いた高齢者の平均的な生活圏例と福祉行政圏域を比較すると, 複数の中学校区をもつ地区や1 中学校区未満でも市周縁の広域学区を含む地区では, 前者による後者のカバー率は低かった。さらに地区社協等の担当範域が小学校区を基本とすることから, いくつかの小学校区をまとめた範域例である点において中学校区は日常生活圏域の規範として有意であると考えられた。
  • 大場 修, 檜垣 友映, 宮下 浩
    2014 年 40 巻 p. 23-34
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本論は佐渡島の町家建築について,遺構調査に基づき農家住宅との関係も含めてその歴史性を検討した。その結果,島内の町家は三類型に大別でき,地名を冠して「両津型」「赤泊型」「相川上町型」と仮称した。両津型は農家由来の在来型町家であるのに対し,赤泊型と相川上町型は外来型町家だと指摘した。外来二類型は出所を異にし,赤泊型は対岸の中越・下越方面から到来した町家形式であるのに対し,相川上町型は近世初頭,鉱山町の形成に伴い持ち込まれた建築文化の伝搬の所産であり,京都起源の町家形式(京都型町家)との関係が想定しうると推論した。本論は佐渡島の町家を通して,日本の町家建築が持つ地域性と普遍性を浮き彫りにした。
  • 機能としての住宅支援からソフトを組み込んだ住まいの支援へ
    葛西 リサ, 上野 勝代
    2014 年 40 巻 p. 35-46
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本調査では,地域生活移行後のDV 被害者の生活課題を明らかにし,被害者向けアフターケアの先駆事例を取り上げ,その内容,運営課題やその可能性について整理した。具体的には,1)被害者の多くは貧困問題,暴力の後遺症による精神問題を抱えながらも,人的ネットワークを喪失し,地域から孤立する傾向が高いこと,2)多くの民間団体が経済的な保障がない中で被害者のアフターケアを実施している実態があること,3)被害者へのアフターケア構築の可能性として,県独自で被害者のアフターケアを展開する長崎県の事例及び障害者総合支援法の枠組みを使った被害者のアフターフォローの実践について提示した。
  • 在宅介護を行った遺族を対象として
    亀屋 惠三子, 山本 和恵, 武田 輝也
    2014 年 40 巻 p. 47-58
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    長期在宅療養を行ったALS遺族を対象にアンケート調査や事例調査を実施し,療養環境から生活環境へと再編していく過程と要点を明らかにした。主な知見は下記の通りである。1)患者を亡くした高齢の遺族は一人暮らしとなる傾向が強く,生活時間は仕事か外出行動に代替される。2)片付けに要する時間と落ち着くまでの期間は共に1年程度であり,レンタル品の返却や仏事などが片付けのきっかけとなっている。3)患者の逝去後の住まいは,復元・半復元・再構築,変化なしの4パターンに概ね分けられ,再構築を行う人が最も多く,その傾向は都市LDK型の住まいにやや顕著にみられる。以上より,介護中から「その後」の生活を考えた長期的な住まい方を検討する必要があることが示唆された。
  • 50年間の住みこなし方の調査
    田中 傑, 南 一誠, 牧 紀男, 青井 哲人
    2014 年 40 巻 p. 59-70
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は1963年のスコピエ地震後に建設されたプレハブ仮設住宅の居住者が建設後の50年の間に自らの世帯の事情やライフステージの変化,スコピエの気候風土にあわせてどのような改変をおこなったのかを,文献調査とヒアリング調査によって明らかにしたものである。現地での調査を通じて,専有面積の拡大をともなった間取りの大幅な変更や,日照の調節を目的とした庇や置き屋根の設置などが観察された一方,調査対象者の住民たちが現地でいうプレハブ・バラックでの生活への満足やプレハブ・バラックの質の高さを口にすることも判明した。
  • ジェイコブズ都市論の再評価と日本における適用可能性
    宮﨑 洋司, 玉川 英則
    2014 年 40 巻 p. 71-82
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では日本の一般市街地の住みよさ向上策にジェイコブズの都市論が適用可能かをそのロバスト性注1)という観点から考察した。その結果,空間的ロバスト性では大規模あるいは郊外にも彼女の都市論は拡張可能なこと,時間的ロバスト性でも彼女の都市思想は啓蒙団体や実践団体により着実に継承されていることを明らかにした。さらに,技術革新に関する生前の彼女の見方が明らかとなり,それに沿うかのようにSETC の活動があること,宗教学者との書簡のやりとりからは,彼女の都市論は時間という観点からの近代都市計画批判と捉えられることの知見を得た。以上の考察から,(1)郊外地区にも拡張した防災性向上の論理を加味したインフィル型更新と,(2)それを安定的・継続的に継承する人的なアーバン・ハズバンドリー策を提案した。
  • 良好な住環境の保全・創出のための新しい協議制度の探求
    堀 裕典, 田中 暁子
    2014 年 40 巻 p. 83-94
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,日本やアメリカと同じゾーニング制を取り,イギリスやフランスの影響を受けているカナダ諸都市における裁量的デザインレビュー制度の運用実態を明らかにすることを目的とした。研究の方法として,人口50万人以上の都市を対象に,特徴的なケーススタディ都市を選定し,制度の詳細分析と運用実態及び周辺状況との調和について調査を行った。その結果,バンクーバーを除く主要都市で,制度導入の際にトライアル期間を設けていたことや,分権の度合いにより大きな課題がある都市も存在したが,多くの場合,デザインレビュー制度が存在することで,周辺環境へのインパクトを軽減し,事業計画の改善が図られていたということが分かった。
  • その施工・製作の実態と日本近代建築界の発展に果たした役割
    小泉 和子, 前潟 由美子, 菅﨑 千秋, 平賀 あまな
    2014 年 40 巻 p. 95-106
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では旧東宮御所の室内意匠と家具調度品について宮内庁所蔵資料を中心に分析し,天井絵画と家具は海外の室内装飾家が,壁装飾は国内の美術家や織物業者が製作したことを明らかにした。施工は国内の業者や職人が日本の伝統的な技法も取り入れながら本格的な西洋古典様式の室内を完成させたことを明らかにした。また,東宮御所として使用されなかった本建築は戦前期に度々,迎賓館として使用され,その都度,室内の改修や家具調度品の修理,製作が行われたことを明らかにした。造営時に輸入品に頼っていた家具は改修時には国内製で対応できるまでになったことも分かり、技術の発展が見られた。また,本建築完成後の利用状況について考察した。
  • 用途地域外で適用される都市計画法第41条の運用実態に着目して
    松川 寿也, 中出 文平, 樋口 秀
    2014 年 40 巻 p. 107-116
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    市街化調整区域では,建築基準法に基づく形態制限が定められているが,都市計画法第41条は,開発許可の際に必要に応じて形態制限を適用することができる制度である。本研究では,制限の適用に多くの裁量がある都市計画法第41条に着目し,全国的な運用実態を明らかにするとともに,運用上の課題を把握することを目的とする。その結果,都市計画法第41条は,規制が緩和される3411区域で柔軟な形態制限の適用が可能である一方で,運用基準が策定されている場合でも,適切に運用がされていないことが明らかとなった。これらを踏まえて本研究では,今後の都市計画法第41条の在り方を提言した。
  • 超高層集合住宅の広告表現を準拠として
    山本 理奈, 内田 隆三
    2014 年 40 巻 p. 117-128
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は,(1)2000 年以降の東京における超高層集合住宅の通時的な供給動向を分析するとともに,(2)供給量の多い都心湾岸4区の事例を取りあげ,人々に超高層集合住宅の購入を促すようデザインされた広告表現のモードを,消費社会論を援用しながら明らかにすることにある。今回の調査は,広告表現のモードが,利便性,安全性,快適性に関する通常の語りだけでなく,超高層タワーに固有の桁外れの〈大きさ〉や〈高さ〉に由来する不安な語りによって構成されていることを示している。これに加え,マンハッタンの超高層集合住宅における東京とは異なった語りのモードをふまえ,超高層集合住宅に関する比較研究のための分析的な展望を提示する。
  • 気仙沼市本吉町における実践を通じて
    前田 昌弘, 石川 直人, 伊藤 俊介
    2014 年 40 巻 p. 129-140
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は仮設住宅での暑さ・寒さ対策等の住環境改善支援の実践の経験をもとに被災者の支援のあり方を探ったものであり,支援者の限られたリソースにも関わらず支援が成立した要因として以下の2 点を明らかにした。1)支援を提供する側からみた要因:個では解決できない問題への対応を模索する中で,情報共有を基礎として,「間接的支援」を行う関係性が形成された。2)支援を受ける側からみた要因:仮設の住環境および支援をめぐる不確実な状況下での意思決定において他者(支援社/他の居住者)への「信頼」(能力/姿勢にもとづく)が醸成/活用された。
  • 住生活の満足度と住生活資源の関係に着目して
    佐藤 由美, 長谷川 洋, 葛西 リサ
    2014 年 40 巻 p. 141-152
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,住生活の豊かさを示す指標を一般市街地の実態をもとに明らかにすることを目的としたものである。既往研究や統計データ等の分析や,それをもとに一般市街地と計画市街地で居住世帯を対象とした実態調査を実施した。調査結果によると,一般市街地の住生活の豊かさは,(1)住宅の基本性能(広さや日当たり等),(2)住環境の利便性(買い物・通院等),(3)家族との関係性等の指標により直接的に示すことができる。しかし,計画市街地に比べると,住生活資源が多様であることから,属性(人・世帯・住宅)・居住経験・価値観等と複合した二次的な指標を設定することが必要であることが明らかになった。
  • 重文民家を支える地域サポーターの育成に向けて
    碓田 智子, 植松 清志, 増田 亜樹, 栗本 康代, 行永 壽二郎, 三田 昌孝, 伊佐 安弥子, 深田 智恵子
    2014 年 40 巻 p. 153-164
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    全国の重文民家の約6割は個人所有であり,維持管理の負担や公開などの点で難しい課題を抱えている。本研究では,1)重文民家の所有者と市町村担当者へのアンケ-ト調査,2)サポ-トモデル事例の調査,3)重文民家の支援者を広げる実践活動を行い,個人所有重文民家を地域で支える可能性を検討した。その結果,高齢の所有者が住みつつ維持管理を担う厳しい実態と,外部支援者による活動は重文民家の居住のレベルや建物の空間条件が関与することを明らかにした。個人所有重文民家を地域で支えていくには,プライバシーや防犯に配慮しつつ重文民家を地域に開き,重文民家の課題や居住文化の価値を地域住民に知ってもらう体験や学習の場をつくることが重要と考えられた。
  • 全羅南道・幸福村プロジェクトの木造住宅施工業者に着目して
    権藤 智之, 蟹澤 宏剛, 金 容善, 金 善旭
    2014 年 40 巻 p. 165-176
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    韓国では現在,鉄筋コンクリート造(以下,RC造)集合住宅居住が一般的であるが,2000年以降,郊外を中心に木造軸組構法住宅の建設が見られるようになり,国や地方自治体も支援している。本研究では,韓国南西部・全羅南道の幸福村事業を対象とし,事業の概要および住宅生産システム,供給される木造軸組構法住宅の特徴を明らかにした。幸福村事業の特徴として,規模の大きさ,伝統的意匠の活用,観光用ではなく居住用の住宅供給であることがあげられる。住宅生産システムでは,施工会社や大工・職人などの主体についてどのような特徴が見られるかをまとめた。住宅の特徴では,伝統的意匠による大断面材の使用や自然素材の積極的な活用を指摘した。
  • 戸建住宅地における過去30年間の住宅と家族の変化の分析
    松本 暢子, 鈴木 佐代, 小川 美由紀
    2014 年 40 巻 p. 177-188
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,戸建住宅が主流の既成市街地における住宅更新について分析している。その結果,当該地区では(1)家族の居住状況に応じた建替えが更新の主流であるものの,近年では家族による居住継承が難しくなっている,(2)相続による敷地分割・住宅建築が行われている,(3)敷地の細分化が進んでおり,敷地が集約されることはない,(4)指定建ぺい率および容積率の充足度が上昇している,(5)敷地形状,道路等が大きく変化しない,を示した。1 年間に2%程度の個別の住宅更新が行われている。しかしそれらが集積しても必ずしも良好な住環境をもたらしている訳でない。良好な住環境の形成には,建築行為の誘導や維持管理への対応が課題であることを指摘した。
  • 木造住宅打音診断システムの開発
    岡崎 泰男, 佐々木 貴信, 中村 昇
    2014 年 40 巻 p. 189-200
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,木造住宅における打診による劣化診断判定の科学的根拠を明らかにすること,および,その結果に基づく劣化診断システムを構築することを目的としている。腐朽した木材,および,腐朽した木材を床・壁仕上げ材で覆った木造住宅の床・壁モデル試験体に対する打音測定および振動解析を行った結果,それぞれの仕様について,腐朽部位の振動特性についての知見を得ることができた。次いで,モデル試験体の結果を用い,健全確率という概念を導入した劣化診断システムを構築し,健全な木造建築に対する検証実験を行った結果,その誤検出率は実用に耐え得るレベルであった。
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