住総研研究論文集
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41 巻
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  • 「井内の茅場」の伝統保存と地域住環境の再生への展望
    笹木 篤, 鶴見 武道, 村山 卓志, 宮本 慎宏
    2015 年 41 巻 p. 229-240
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,愛媛県東温市井内に残る伝統的茅場とそれを管理運営する住民組織,「講」について,継承されてきた歴史的経緯と社会的背景を調べ,実態を明らかにした。これまで殆ど顧みられなかった茅場と集落および農村社会との関係を照らし出し,地域的特徴を導き出した。さらに,かつての「講」の現代社会における意味について考察する。
  • 戦後日本の住宅供給における建材行政と建材産業の役割
    加藤 雅久, 若木 和雄, 片山 正
    2015 年 41 巻 p. 241-252
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    戦後日本における住宅供給を支えた建築材料(建材)について,その品質確保の歩みと,それに伴う各種建材試験と標準化の変遷を俯瞰し纏めた。具体的には,昭和30年代から40年代を中心に,日本における建材の品質確保の史的展開を行政史及び建材産業史の視点から明らかにし,建材行政と建材産業の果たした役割を考察した。当該年代は,建材・住宅の大量供給ニーズに応えながら,品質の安定的向上を目指し,建材産業及び住宅産業の基盤を築き上げた歴史的にも意味のある時代といえる。行政と産業は共に工業生産化と技術開発をすすめながら品質や試験方法などを研究し,その成果を着実に標準化していくことで,建材と住宅の質的向上に大きな実績を残した。
  • 「住むための船」から「学ぶための寮」へ移った子どもの視点から
    厚 香苗, 藤原 美樹, 藤川 美代子
    2015 年 41 巻 p. 1-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    水上生活者の子どもを陸で教育することが,水上生活者の陸地定住を促したというステレオタイプな言説があるが,これまで事例研究はほとんど行われてこなかった。そこで本研究では,水上と陸の間に位置していた水上生活者の子ども向けの児童福祉施設について,建築史および文化人類学・民俗学的な方法で,施設利用者である子どもの視点に留意して分析した。そして本研究の調査地における陸地定住は人災,自然災害や法の改正などが契機となっており,児童福祉施設と学校教育は陸上がりを促したというより,子どもの将来の選択肢を広げる役割を果たしたことを指摘した。
  • 岩手県釜石市と陸前高田市を対象として
    小林 茂雄, 角舘 政英, 前 博之
    2015 年 41 巻 p. 13-23
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    東日本大震災を契機として,夜間津波から高台へと安全に避難することの重要性が認識された。本研究では被災した岩手県陸前高田市と釜石市を対象とし,夜間の津波に対する高台避難を促進する照明計画の検討を行った。避難路調査及び,避難場所入口での実験より,高台方向へ連続的に照明を設置することで避難誘導効果が得られることが分かった。高台への避難照明においては,光によって地形や避難場所の特徴を可視化することが主要な手法となる。各々の場所の要求性能に合わせた設計によって,省エネルギーで合理的な光環境の実現が可能となる。
  • 日英の比較を通じて
    田中 雅一, 成定 洋子
    2015 年 41 巻 p. 25-36
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,シェア居住という居住形態を日英の事例を比較することで,両社会における「主体」のあり方について考察を行うことを目的としている。シェア居住は,従来家族と自律・自立する個人という両極の間に位置づけて議論されてきたが,本研究では「相互的な主体性」という概念を参考にシェア居住の可能性を探る。両国の事例について,同居者たちの関係や,相互作用を通じてどのような変化が生じたのかを分析した。他人とともに生活をともにするシェア居住にはさまざまなリスクが認められるが,同時に他者に拓かれた主体の生成においても貴重な機会となっていることが明らかとなった。
  • 「関係としての住生活」の現実と構想
    平井 太郎, 祐成 保志
    2015 年 41 巻 p. 37-48
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では現代日本の集合分調主宅における主体形成の過程を社会学的に分析した。前半では,集合分譲住宅の管理をめぐる法制度にかんする議論の分析とハウジング研究における理論的展開を踏まえ,住宅に関わる主体の変化可能性や複数性に配慮する視点を提起した。それを受け後半では,ある集合分譲住宅における社会学者と居住者双方の反省的な討議の過程を記述したそこでは,かつて管理の客体にすぎないと見なされていた居住者=所有者が組識的に主体化してきた実態を確認したうえで,その主体化の過程をコミュニティ形成ではなくインフォーマルな関係を組み込んだ官僚制化として理解できる可能性を居住者自身とも共有した。
  • 東日本大震災復興住宅の断熱気密施工に関する実態調査
    林 基哉, 本間 義規, 長谷川 兼一
    2015 年 41 巻 p. 49-60
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,東日本大震災の復興住宅の環境性能の向上が,被災者の健康的な生活の基礎となることを最終的な目標としている。震災後3 年が経過し,敷地の確保,材料不足,工賃の高騰が,復興住宅建設の課題となっている中,断熱気密性能等の環境性能の向上と普及のために,以下の研究を行った。地域型復興住宅生産グループへの環境性能に関するアンケート調査では,復興住宅建設の遅れと環境性能の多様性が明らかとなった。復興住宅の環境性能測定でも,気密性能(c値)の多様性:0.27~5.14(cm/㎡)が明らかとなった。簡易気密測定方法の開発と検証では,厨房ファンによる簡易測定の可能性が確認され,簡易気密測定法の普及と気密性能担保の基礎が得られた。
  • 実変動風圧シミュレータとアセンブリ試験体による試験
    ガヴァンスキ 江梨, 植松 康, 奥田 泰雄, 西村 宏明
    2015 年 41 巻 p. 61-72
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    強風災害で頻繁に被害を被る箇所として住宅壁面外装材が挙げられ,これは壁面の特に耐力の検討不足がこの要因の一つであると考えられる。よって本研究では簡便で合理的な外壁システムの耐風性能評価法を確立することで,住宅の壁面システム被害低減を目指した。実際に使用されている壁システムを再現した試験体に対して,強風により建物表面に作用する,不規則に変動する風荷重を作用させる実物大破壊試験を行った結果を基に,より統計的に信頼できる耐力の算定と簡便な試験法の提案を目指した。結果,実物大破壊実験に加えて追加の実験を行う必要性が明確となり,本報告書では現時点までの研究成果と本研究の目的を達成するまでの今後の予定に関して報告する。
  • 持続可能な住宅復興のかたちを展望する
    近藤 民代, 柄谷 友香
    2015 年 41 巻 p. 73-83
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では東日本大震災における自主住宅移転再建に着目し,被災者の自律的で回復力を活かした再建行動の集合が新たな市街地空間の形成につながっていることを実証した。被災者の早期の生活再建という視点で見ると,自主住宅移転再建は大きく寄与したが,市街地空間形成という面からは持続性に課題を抱えている。震災を機に過疎化や高齢化がの加速が進む中で,市街地の拡大化・低密度化はインフラ整備や維持コストの増大,市民のモビリティ・アクセシビリティの低下などの非効率性をもたらしかねない。被災者による自主住宅移転再建を空間的に誘導していく事前・事後の計画技術が求められている。
  • インドネシアのPOSKOを事例として
    本塚 智貴, Titin Fatimah
    2015 年 41 巻 p. 85-96
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,インドネシアで災害発生時に様々な主体により自由な形式で設置されるPOSKO に着目し,被災状況の多様性や時間経過とともに生じる変動への順応性を,近年インドネシアで生じた3つの大規模災害事例を通じて,アダプティブ・ガバナンス概念を用いて,POSKO の有効性を検討した。1)POSKO の特性である仮設であるが故の設置簡便さが機能の増減・被災生活の状況への順応・場所選択の自由さを支持する点,2)一定のエリアを管理する形式をとる運営が各エリア内において支援の不均衡の緩和に自主的に対応することが出来る点を抽出し,POSKO が災害時に有効に働くアダプティブ・ガバナンスを伴っている点を明らかにした。
  • 伊藤 裕久, 菊地 成朋, 箕浦 永子, 伊藤 瑞季
    2015 年 41 巻 p. 97-108
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,博多における地縁的結合の重層に注目しながら,個別の「町」と「流」の内部構造について社会=空間構造の実態と特性,さらに近代への変容過程について解明した。祭礼組織である「流」は近世を通じて地縁的結合の柱として行政機構の末端にも位置づけられていったが,明治期には行政区や学校区による新たな地縁的結合が形成されたことにより,再び祭礼組織として相対化されたことが明らかとなった。博多の社会=空間構造は,「流」による南北通を主軸とした構造から,近代の都市インフラの影響を受けつつ,行政区,学校区,商工人分布ともに東西通を主軸とした構造に変容していった。
  • 「真野まちづくり」の継承と新展開を目指す取り組みを通して
    乾 亨, 深川 光耀, 今野 裕昭, 西堀 喜久夫, 宮西 悠司, 清水 光久, 吉川 健一郎
    2015 年 41 巻 p. 109-120
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    神戸市真野地区は,約50年にわたり,「真野地区まちづくり推進会」が中心となり,住民主体によるまちづくりを行ってきた地域で,住民自治組織によるまちづくりの先駆的事例として注目されている。しかし,他地域同様,真野地区においても,住民自治組織を牽引するリーダーの高齢化,活動の低迷化,若い世代と地域組織との乖離に直面している。そこで,本研究は,全戸アンケート調査により地域の現状と課題を把握し,アクションリサーチにより組織を活性化させ,新しいリーダーを創出することを主眼とした。その結果,全戸調査により,自治の基礎単位としての町自治会の重要性,子育て世代のまちづくりへの関与の可能性,近年の転入者の二極化傾向が明らかとなった。また,アクションリサーチにより,住民の関心が高まるという成果が挙がった。
  • 原戸 喜代里, 木口 なつみ, 大場 修
    2015 年 41 巻 p. 121-132
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,第二次大戦後の占領期,,京都において将校用家族住宅として接収された住宅を取り上げ,京都府立総合資料館所蔵の連合軍接収住宅関連史料を中心とする史料調査と,現存する遺構調査及び接収住宅の所有者に対し聞き取り調査を行った。京都における接収住宅は,その約半数が占領軍将校家族と日本人家族の同居という形態をとり,接収された住宅は洋風住宅だけでなく和風住宅も含まれていた。これらの住宅が連合軍将校の家族住宅として転用される際,接収住宅の間取りは変更されなかったが,住宅設備については大きく改変された。接収期,日本の住宅に持ち込まれた住生活に対する意識や西洋の生活様式は,接収解除後の日本人の住生活に影響をもたらした。
  • 住戸使用による展開について
    山田 信博, 藤田 忍
    2015 年 41 巻 p. 133-143
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,公営住宅の「住戸」を使用した地域支援活動拠点を対象としている。実態把握により住戸使用の基礎的知見を得て,利用者・団地住民・地域住民の評価から,問題点や有効性を明らかにした。障害者の居住支援,高齢者の生活・見守り支援,地域住民支援など,地域福祉の推進により,今後地域内に求められる支援活動の場として,公営住宅の住戸使用は可能であり,活動に支障はみられない。また,住民コミュニティの活性化など団地再生の効果もみられた。他にも,新設に比べ拠点の設置費や運営費が低く,NPOや社会福祉法人等の団体が活動を開始しやすい。使用戸数の増加に向けて,公営住宅管理主体の積極的な姿勢が求められる。
  • 恒久住宅への円滑な移行を目的とした住環境の分析
    重川 希志依, 田中 聡, 河本 尋子, 佐藤 翔輔
    2015 年 41 巻 p. 145-156
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    東日本大震災では,約13万6千戸の仮設住宅が提供されたが,その半数は民間賃貸住宅の借上げ仮設住宅であった。借上げ仮設住宅入居は長期に及ぶ避難所生活の回避や公的費用削減といった面で大きな役割を果たしていることが明らかとなった。さらに恒久住宅確保に至るプロセスの各所で,被災者自身が主体的選択に基づき,自立した生活再建を成し遂げていた姿が浮き彫りとなった。一方,借上げ仮設住宅の供与に関わった行政は,前例がなくノウハウが不足した状況のため様々な混乱が生じた。本制度は,災害救助法に基づく応急仮設住宅供与の一環として実施されたが,法の枠内で対応することには限界があり,来るべき大規模災害に備え,新たな制度の創設が求められる。
  • 趙 賢株, 髙田 光雄, 大島 祥子, 鈴森 素子, 馬場 正尊
    2015 年 41 巻 p. 157-168
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,公共と民間による住情報支援の現状と課題,住情報支援における公共と民間の役割を検討し,それらを元に住み継ぐという住まい方の実現に向けた住情報支援のあり方を探るものである。主な知見は以下の通りである。公共は,公共が持つ信頼性と中立性に基づき,中低所得者を対象にした居住支援的な情報提供や基礎知識の提供を,民間と公共+民間は,民間のブランド力に基づき,ある程度経済力を持つ層を対象にした個人の問題解決型支援を行っている。一方,公共は,公的な立場として個々のニーズには対応しきれない限界を持ち,民間と公共+民間は,事業性追求による情報の公平性の問題や情報の欠落の問題が生じている。今後,住情報支援における公共と民間の役割分担と連携を考慮しながら,住情報支援の体制を構築することが望ましいと考えられる。
  • 歴史的漁家住宅の遺構調査にもとづくまちづくりへの関与と発展
    駒木 定正, 小林 孝二, 山之内 裕一
    2015 年 41 巻 p. 169-179
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,北海道における江戸期から1950 年代までの漁家住宅の現況を調査し,地域ごとの特性を分析する。調査対象の漁家住宅は285 件であり,1970 年度に北海道教育委員会が調査した住宅と2010 年度日本建築学会が調査した住宅も加えている。調査の結果,1970 年度の漁家住宅は65 件中30 件が残っていた。最も多く遺存しているのは後志地域であり,27 件中16 件(60%)であった。とくに,ニシン漁家の住宅は地域の文化財に位置づけられていることが判明した。さらに,歴史的な漁家住宅の保存と活用の事例として,小樽市祝津地区と寿都町歌棄のニシン漁家を取り上げる。祝津の茨木家中出張番屋は,NPO の支援によって子供たちの体験学習の場として活用されている。寿都町の佐藤家住宅は現在修理工事とニシン漁に関わる遺構の調査が行われ,今後の活用計画を検討している。
  • 中島 伸, 田中 暁子, 初田 香成
    2015 年 41 巻 p. 181-192
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,城南住宅組合を対象に組合活動を通時的に分析し,住環境を下支えしてきた土地所有の状況など明らかにすることで,住環境の形成・維持へとつながる住民主体のまちづくりへの知見を得ることである。組合の活動記録の一次史料と土地所有形態の変遷を調べることで,理想的田園生活を目指した城南住宅組合は当初こそ別荘利用の形態で住宅地化が進まなかったものの,戦中,戦後より住宅地として居住実態が伴ってくると,当初より定めた規約による各住宅地での環境整備が進んだ。共同借地経営の住宅組合という組織ではあるが,土地所有など前提となる経営基盤が大きく変化する中で,住環境維持を目標にしつつも,居住者のコミュニティ活動を相互補完的に行う中で,組織活動を継続してきていることがわかった。
  • 1950年代にセネガル・ダカール市に供給されたSICAP BAOBAB団地を対象として
    前島 彩子, 田村 順子, 梶原 悠, 奥田 朋仁, 志摩 憲寿
    2015 年 41 巻 p. 193-204
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    欧州諸国により近代住宅団地が供給されたアフリカ都市のうち,セネガルのダカール市を例に,供給当時の近代的全体計画に基づく住宅地の様相を明らかにし,その上で,経年後の様相を重ねて地域的,個別性をうかびあがらせ,近代住宅団地の多様な可能性を問うことを目的とする。まず図面資料の分析により,BAOBAB団地全体(888戸)の供給時の平面計画と1棟の構法,建設活動を明らかにした。次に,一連のエリア(255戸)の住戸形体等の経年後の状況を整理したうえで,条件が統一される賃貸長屋(122戸)の間取り変化について,ネットワークを用いた定量的な分析と空間構成の質的な分析を行い,経年変化に関わる要素を考察した。
  • コミュニティガーデン型の土地利用を対象として
    秋田 典子, 高村 学人, 宗野 隆俊
    2015 年 41 巻 p. 205-216
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    少子高齢化社会においては,公共施設等のインフラの維持・管理活動の担い手として住民自身が公共空間に積極的に関わることが求められている。本研究では,住民の主体的な維持・管理活動により公共的土地利用が行われているコミュニティガーデンを対象に,コミュニティが主体性を確保し,空間の公共性を担保するプロセスを4つの事例から分析した。この結果,コミュニティガーデンという場がコミュニティの主体性を醸成するツールになっていること,また空間の公共性はガーデンづくりという協働作業と運営主体の積極的な地域との関わりによって生み出されていることが明らかになった。一方で,コミュニティガーデンのような一種のテーマ型の活動は,活動のきっかけを行政が設定した場合に「区」などの比較的大きな規模のコミュニティが基盤となることから,活動エリアとコミュニティのエリアの整合性を取ることが難しいことが明らかになった。
  • 住み続けるオーナー家族の主体的ツリー型混住の実態と可能性
    大橋 寿美子, 松本 暢子, 瀬戸口 正樹
    2015 年 41 巻 p. 217-228
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では「賃貸併用住宅」の建設状況や市街地の影響,およびオーナー家族の経年変化に伴う住まい方変化から,賃貸併用住宅の利活用と入居者や近隣とのコミュニティの実態を明らかにし,今後の活用の可能性を考察した。東玉川・奥沢地区では集合住宅の40%前後を占め,増加傾向であった。また1993 年調査を踏まえて提案した,オーナー家族が住み続けるための「もう一つの自宅部」は,独身の子どもの独立先や親の死亡後の賃貸として活用され,家族のバッファ空間となっていた。居住歴が長いオーナーの存在は入居者や近隣および街並みへの配慮がみられ,オーナーを介したツリー型のコミュニティが形成され,地域居住のバッファ空間となる可能性を確認した。
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