住総研研究論文集
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42 巻
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 川田 菜穂子, 平山 洋介
    2016 年 42 巻 p. 215-225
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    『全国消費実態調査』(1989・1994・1999・2004年)の匿名データを用いて家計における住居費負担の動向を把握し,所得格差と相対的貧困の拡大における住居費負担の影響を検討した。住居費負担率は経年に従って増加しており,とくに『公団・公社の借家』や『民営借家』に居住する世帯の負担増が顕著であった。また,住居費控除後所得を基準に貧困率を算出すると,住居費控除前所得を基準にした場合と比較して上昇した。さらに,低所得世帯を対象としたヒアリング調査の事例分析から,狭小・老朽で低廉な借家に居住せざるを得ない世帯や住宅を選好できず住居費負担が過重になる世帯の具体的な生活状況を把握した。
  • 垂水 弘夫, 前田 雅喜, 円井 基史
    2016 年 42 巻 p. 1-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,従来,壁の内層仕上げ材として用いられてきた調湿性を有する材料(珪藻土,珪質頁岩など)を,住宅の 外壁の一部に単層で適用することで,「調湿」ではなく「排湿」性能を有する,つまり屋内の湿気を時系列的に外気へと排 出できる外壁構造を開発した(垂水弘夫:排湿外壁構造,特許第4682334 号,2011 年2 月登録)ので,その排湿効果を実際の住宅に近いレベルで実測・検証することを目的としている。排湿外壁構造は,イ)原材料が自然素材であり土壁として施工される,ロ)屋内外の水蒸気圧力差でもって自律的に排湿できる,ハ)化石燃料由来の電力をエアコンや除湿機において除湿目的で消費することが抑制される,等の特徴を有している。
  • 太田 秀也, 矢田 尚子
    2016 年 42 巻 p. 13-23
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,新たな賃貸住宅データベースを構築するとともに,そのデータベース等により,賃貸住宅の供給形態差異にも着目しつつ,賃貸住宅の供給実態について分析するものである。その結果,既存調査・研究では把握されていない,市町村区域単位や駅圏単位の,築年・駅距離別の賃貸住宅の供給実態を把握することが可能となった。また,賃貸住宅の供給形態の差異による違いに関しては,サブリース業者の企画による賃貸住宅は,駅から遠い地域での供給割合が高く,主要デベロッパーによる賃貸住宅は,駅から近い地域での供給割合が高い点等が確認できた。
  • 小林 克弘, 木下 央, 角野 渉
    2016 年 42 巻 p. 25-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,2014年度重点テーマ「受け継がれる住まい」の一端として,コンバージョン(用途変更・転用)が行われた居住施設に対象として「住まい性」「居住施設としての性格や表現」がどのように受け継がれうるかという点を,実際に現地調査を行ったコンバージョン事例を中心に考察することを目的とする。考察では,「受け継がれる住まい」に関して,大きく空間や機能を変えながら住まいが受け継がれる様を,居住施設がコンバージョンされた事例とコンバージョンされて居住施設になった事例に分けて,外観,内部空間,住居の記憶といった視点を設定して分析を行う。それにより,居住施設の多様な受け継がれ方の一端を明らかにする。
  • 藤井 容子, 若林 清彦
    2016 年 42 巻 p. 37-48
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    高齢者や障がい者が住み慣れた地域で共に暮らしていける社会システムの構築および施設計画の提案に向けて,彼らがひとつ屋根の下で生活し設備も共有する共生型グループホームに着目し,国内外の共生型施設において調査を実施した。その結果を,運営的・財政的支援や入居者参加など社会システムの構築や施設計画への提案,施設・生活の質的向上や施設のあり方の計画理論的検討,求められる空間デザインの3つの視点から分析・考察した。
  • 髙田 光雄, 森重 幸子, 生川 慶一郎
    2016 年 42 巻 p. 49-59
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,所有する京町家が自身の死後に解体されるのではないかという京町家所有者の不安に対して,死後も京町家を所有者の意思に沿った形で住み継いでいくための仕組みとして「承継支援型民事信託」を構想し,その可能性と課題について検討を行うものである。まだ一般的でない民事信託について,京町家所有者の協力を得て実際に信託契約を行い,実務的な課題について実証的に明らかにしている。それを踏まえて,汎用モデルとしての「承継支援型民事信託」のプロセスとスキームを検討し,現状では同一の主体が信託を反復継続して受託できないという限界があるため,民事信託を利用した上で公的主体へと寄付するスキームを提案している。
  • 鈴木 進, 高口 洋人, 中島 裕輔, 松井 郁夫, 滝口 泰弘, 三澤 文子, 久保 隆一, 勝見 紀子, 坂下 雛子
    2016 年 42 巻 p. 61-71
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    既存住宅の断熱改修が注目されつつある中で,民家・町家など大規模で伝統的な造りの住宅においては,日常的な生活ゾーンのみを区切って改修する「ゾーニング改修」が有効な1つの手法と考えられるが,その方法論及び適切な評価法は確立されていない。そこで本研究ではこれらの確立を目的として、ゾーニング改修事例の収集・整理と既存の住宅診断法のゾーニング改修への活用検討を行うとともに、シミュレーションによる改修部位優先度及び熱適性能評価手法の検討を行った。実際にゾーニング改修を検討中の民家でスタディを行った結果、温熱環境把握用に作成したチェックリストは改修ゾーンの検討に有用なものとなったこと、改修部位では天井を優先することが負荷削減の面で有効なこと、UA値評価では非断熱室を仮想外壁として扱う手法が最も有用であることなどが明らかとなった。
  • 薬袋 奈美子, 室田 昌子, 藤澤 美恵子
    2016 年 42 巻 p. 73-84
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    旗竿敷地の発生状況を東京都町田市で確認するとともに,旗竿敷地がもたらす今後の住環境整備に向けての課題を,現地の調査やアンケート調査を踏まえて行った。その結果,旗竿敷地が多いのは土地区画整理事業地の保留地のような計画的な区画分譲地で,不整形のものは傾斜地の住宅供給によりやむを得ず発生するケースが多いことがわかった。また旗竿敷地の居住者は,より良い住環境を求めた近隣地域への転居意向が高いことも明らかになった。また傾斜地などについては,一般の住宅地としての利用を停止するなどの策が挙げられる。
  • 綾木 雅彦, 森田 健, 坪田 一男
    2016 年 42 巻 p. 85-95
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    生活環境内の自然光と人工照明中のブルーライト成分を試作した光センサーを使用して測定した。ブルーライトを発する光源を使用して眼の角膜上皮細胞への光毒性の培養実験を行って,眼障害の可能性と対策について考察した。ブルーライトならびにブルーライトの覚醒度への影響を検証した。新たに作成した網膜電位図記録装置により,ブルーライトに反応する内因性光感受性網膜神経節細胞の電気活性をヒトで記録することに成功し,住環境で曝露するブルーライトの生体反応の新たな検査法を開発することができた。以上の結果から,通常の視力や視野の確保以外にも眼と全身の健康に配慮した照明,遮光が使用されるべきであると結論した。
  • 窪田 亜矢, 田中 大朗, 池田 晃一, 森川 千裕, 李 美沙, 砂塚 大河
    2016 年 42 巻 p. 97-108
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    千葉県浦安市は,1960年代まで小さな漁村集落であった。水害を避けるため限定的な地形を有効に活用する必要があり,密度の高い住空間が展開されていた。工場汚水,地下鉄開通,首都圏の巨大化など多様な影響を強く受けて,漁業は完全になくなり,物理的環境も社会的関係も激変した。木造密集市街地は,大震災時の火災などの突発性リスクからも,高齢化や日中の活動低下という進行性リスクからも,行政の立場からは改善すべき特性となった。しかし,浦安の「ガワ・アン街区」と「ロジ空間」は地域の住文化を支えている。市有地を空地としたまま活用することで,リスクを軽減しつつ,ガワ・アンやロジという空間構造とそれに依る住文化を継承できる可能性がある。
  • 星 卓志, 野澤 康, 藤井 さやか, 渡邊 一成
    2016 年 42 巻 p. 109-120
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,住環境の維持・向上を住民主体のまちづくり活動の一環として進めるためには都市計画提案制度の活用が有効との観点に立ち,全国自治体へのアンケートおよび事例調査により,同制度を効果的に活用し得る条件を探ったものである。 その結果,住環境の悪化への懸念から地区計画等の都市計画提案への取組みを発意してから,提案を提出するまでのプロセスにおいて,一貫して主導的に行動する人材がいることと同時に,行政職員が制度説明,計画案作成や提案書作成等の作業補助などの支援を積極的に行うこと,さらには行政発意では難しい不整形な区域設定でも可とするなどの柔軟性を持つことが有効であることを明らかにした。
  • 矢野 桂司, 中川 等, 髙木 良枝, 佐藤 弘隆, 高橋 彰, 石川 祐一, 松本 文子
    2016 年 42 巻 p. 121-132
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    歴史都市・京都において,都市文化,建築文化を表徴する京町家は,京都らしい景観の維持,地域コミュニティ,住文化の継承を支える重要な資産である。しかし,京町家まちづくり調査では,京町家は年間約2%滅失していることがわかっており,不動産市場や税金等の問題もあり今後も減っていくことが予想される。本研究では,京町家の中でも特に色濃く文化を残す大規模京町家に視点をあて,建築物本体や設え等の調度品類のハード面と共に,日常の暮らし方やメンテナンスの方法,年中行事による調度品類の使い方等のソフト面も含めて次世代に継承するための方法を模索する。
  • 白川 葉子, 高見沢 実, 尹 莊植, 水沼 淑子, 嶋田 昌子
    2016 年 42 巻 p. 133-144
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,外国人居留地としての歴史的背景と資産をもつ横浜山手に現存する個人所有の住宅(洋館)を取り上げ,その土地・建物の履歴・変遷に関する歴史的資料の調査と現所有者・居住者の聞き取り調査を行った。横浜山手には公開施設である「山手西洋館」,学校や教会が所有する元「住宅(洋館)」,個人所有の住宅(洋館)が現存しているが,そのうち個人所有は,21 棟であり,その多くは近年所有者を変えながらも,住まいとして機能し続けている。そしてその建物は,横浜山手において,地域の特徴を形成する重要な要素として,その存在意義を確立しているといえる。
  • 名畑 恵, 延藤 安弘, 新井 信幸
    2016 年 42 巻 p. 145-156
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,仙台市荒浜地区における津波被災住民が願う受け継ぎたいふるさと住文化をレジリエントに回復するプロセスを明らかにすることである。受け継ぎたい住文化資源は,「おまかない」等に象徴される相互扶助のライフスタイル,人間と自然の相互応答のライフスタイル,自然の恵みと恐怖の両面を知り共生関係を紡ぐことである。住居レベルの受け継ぎたい住文化は,縁側,土間,続き間などのつなぎ空間,拠り所の獲得,ブリコラージュへの美意識等の精神的側面,みんなの居場所,環境包摂,野生動物との共生等の他の側面にわたっている。住民はふるさとを想起させる活動を定期的に継続している。今は目標に向かって状況を開く過程にある。
  • 水島 あかね, 浅見 雅之, 玉田 浩之
    2016 年 42 巻 p. 157-168
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は神戸市塩屋における洋館保存運動の関係者に聞き取りを実施し,保存をめぐる課題を明確にすると同時に,課題の克服に向けた将来への提言を行おうとするものである。洋館の取り壊しの情報を得た地域住民は,保存のための様々な方策を検討したうえで,洋館の買取りの方針を打ち出した。結果的には買取りには至らなかったものの,彼らは短期間のうちに2 つの組織を立ち上げ,買取り・保存・継承のための仕組みを整え,立場の異なる人々を巻き込みながら可能性を探っていった。調査の結果,日常的に塩屋のまちづくりに参画していたメンバーが起点となり人々のネットワークを構築し,独特な保存運動を展開していたことが明らかになった。
  • 多幾山 法子, 井立 直人, 宮本 慎宏, 松本 慎也, 山田 幸正
    2016 年 42 巻 p. 169-178
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本報は,伝統木造建物の耐震要素の1 つである大断面横架材の配置が架構全体の力学特性へ与える影響を把握するため,2 スパンまでの架構試験体に対して実施した静的加力実験やシミュレーション解析から得られた成果を報告するものである。大断面横架材として差鴨居に着目し,この配置を変化させた架構試験体の静的加力実験を実施し,横架材の配置高さや接合部形状が架構全体の力学特性に及ぼす影響を把握するとともに,限界耐力計算で用いられる復元力との差異を確認した。また,実験結果に基づき,バイリニア型の復元力を持つバネを用いて架構を簡単にモデル化し,線形解析を行うことで初期剛性をシミュレーションした。
  • ヒメネス ベルデホ ホアン ラモン, 布野 修司, 井上 遼介, 馬淵 好司
    2016 年 42 巻 p. 179-190
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究のケーススタディは,フィリピンの仮設住宅計画に基づいている。特にTaclobanタクロバン市は,2013年11月8日に発生したヨランダ台風により多大な被害をもたらした。市の70%以上が破壊され,4万戸の住宅が半壊し,2万戸の住宅は全壊した。そのため,タクロバン市と国の国土交通省(DPWH)は北部の土地に,仮設住宅と恒久住宅のプロジェクトを台風の後から開始した。本研究は,このタクロバン市の住宅地の現地調査に基づいている。都市と建築デザインの分析,建設プロセスの分析,そして使用と管理の時間経過の変化を明確にしていく。タクロバンの災害に対する改修のプロセスの中で,仮設住宅は長期使用をする可能性が高いとされる。
  • 葛西 リサ, 室崎 千重
    2016 年 42 巻 p. 191-202
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    母子世帯の生活の安定のためには,住まいとケアが一体的に供給されることが望ましい。本稿では,その一つの方策として,複数の母子世帯が1住戸にて集住し,足りないケアを相互に補い合いながら住まう形を「ケア相互補完型集住」と称し,それへの母子世帯の潜在的ニーズについて明らかにした。その結果,経済的・空間的効率性や母親自身の孤独の解消,子の社会性を養う,母子のみの生活に対する不安の解消等という点がそのメリットとして掲げられ,ケアの相互補完に対する期待度は低かった。また,望ましいケアの調達方法として,ケアの共同購入や地域に子の居場所を作ると言ったものが挙がった。
  • 田中 由乃, 神吉 紀世子, ポリーフカ ヤン, モルクス ヨセフ, フィシャロヴァー ミロスラヴァ, 栗原 幸子
    2016 年 42 巻 p. 203-214
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    チェコの社会主義時代の大規模住宅開発地の一つであるオストラヴァ市Ostrava-Jih地区について,関係者へのインタビュー,アーカイブ資料調査,現地踏査を通じて,現在何が地域の価値として認識されているのかを明らかにすることによって,これまで一般的に評価が高かったとは言い難い社会主義時代の住宅開発地の再価値化を行った。その結果,居住地域の周辺に川や森などの自然が多いことに加え,日常生活に必要な商業施設,公共施設が揃っていることが高く評価されていた一方,近年の社会的立場の弱い人々の急増や空気の悪さが指摘された。更に,地域環境改善のために自ら行動を起こしている住民がいることが明らかになった。
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