獣医麻酔外科学雑誌
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26 巻, 4 号
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  • 田口 清, 二ノ宮 青葉, 阿部 紀次, 山田 明夫
    1995 年 26 巻 4 号 p. 87-93
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    8頭の成乳牛に12回の腰椎分節硬膜外麻酔を行った。リドカインの硬膜外注射 (L群) , キシラジン・リドカイン混合液の硬膜外注射 (LX群) , およびリドカインの硬膜外注射と同時にキシラジンを静脈内投与した場合 (LivX群) の鎮痛効果, 鎮静効果および酸・塩基平衡に及ぼす影響を比較した。鎮痛効果の発現時間は3群間に差がみられなかったが, LX群はL群に比べて鎮痛効果の持続時間が延長した。L群の〓部における無痛領域はLX群およびLivX群に比較して狭かった。またLivX群の最大鎮痛領域が得られるまでの時間はL群のそれより短かった。LX群では硬膜外注射後20±11.5分で軽度の鎮静効果が発現し, 100±11.5分持続した。これはLivX群の鎮静効果の持続時間 (40.0±17.3分) より有意に長かった。全群で心拍数の変動は認められなかったが, LX群およびLivX群で硬膜外薬液投与30および60分後に呼吸数の有意な減少がみられた。しかし, LivX群のみに硬膜外薬液投与10分後にPaO2の有意な低下がみられた。キシラジン・リドカイン混合液による腰椎分節硬膜外麻酔はリドカイン単独の硬膜外麻酔に比べて鎮痛効果の持続時間の延長, 〓部のより広範囲の無痛効果, および軽度の鎮静効果が認められた。また, 硬膜外麻酔中の血液ガス値の変動も認められなかった。
  • 田口 清, 二ノ宮 青葉, 阿部 紀次, 山田 明夫
    1995 年 26 巻 4 号 p. 95-100
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    4頭のホルスタイン種乳牛に3種の薬液 (XL群: 2%キシラジン0.0025m1/kgと2%リドカイン4mlの混合液, X群: 2%キシラジン0.0025ml/kgと生理食塩液4mlの混合液, S群: 生理食塩液0.0025ml/kg+4ml) を1週間間隔で各牛に硬膜外投与した。硬膜外薬液投与は第13胸椎・第1腰椎間から硬膜外腔に刺入したTuohy針を介してカテーテルを20cm前方に向けて留置して行い, 硬膜外投与直後に牛を仰臥位保定とした。X群およびXL群では左右体側壁で最大第7胸神経から第3腰神経支配領域の鎮痛効果が得られ, また, 薬液投与後5~30分に第四胃変位整復手術部位である剣状軟骨と臍の中央20×20cm部分の体壁 (正中部) の鎮痛効果が発現した。しかし, X群の2例およびXL群の1例で正中部頭側部分の鎮痛効果が不十分であった。X群およびXL群では硬膜外薬液投与後20および30分に平均血圧が約20%程度下降したが, S群では血圧の変動はみられなかった。すべての群で硬膜外薬液投与10~60分でPaO2の低下がみられたが, 60分で仰臥位保定を解除したところ牛は即座に起立し, 起立10分後にPaO2はbaseline値に復した。
  • 内山 孝志, 久保 厚, 石丸 睦樹, 高橋 敏之, 水野 豊香
    1995 年 26 巻 4 号 p. 101-107
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    6頭の馬を仰臥姿勢においてイソフルラン麻酔 (呼気イソフルラン濃度1.4±0.1%) し, 調節呼吸により動脈血炭酸ガス分圧を40±5mmHgに維持した。この時の4用量 (0.5, 1.0, 2.0および4.0μg/kg/min) のドブタミン投与による循環動態ならびに血液性状 (ヘマトクリットおよび血清総蛋白) の変化を観察した。心拍出量はドブタミン投与により用量依存的な増加傾向を示し, 2.0および4.0μg/kg/min投与時には投与前に比べて著しい増加を示した。心拍数は投与前32.7±1.3bpmであったがドブタミン投与により増加傾向を示し, 4.0μg/kg/min投与時には71.2±16.6bpmであった。一回拍出量はドブタミン0.5~2.0μg/kg/min投与時には用量依存的に増加したが, 4.0μg/kg/min投与時には2.0μg/kg/min投与時に比べて減少傾向を示した。したがって, 今回みられたドブタミン投与による心拍量の増加は, 0.5~2.0μg/kg/minでは心拍数と一回拍出量の両者が増加したことにより, また, 4.0μg/kg/minでは2.0μg/kg/min投与時に比べて心拍数の増加のみに依存したものであることが示唆された。平均動脈圧はドブタミン投与により用量依存的かつ著しい上昇を示した。末梢血管抵抗はドブタミン0.5および1.0μg/kg/min投与時には用量依存的な増加傾向を示したが, 2.0および4.0μg/kg/min投与時にはより少用量の投与時に比べて減少傾向を示した。以上のことから, ドブタミン投与による平均動脈圧の上昇は, 0.5および1.0μg/kg/min投与時には末梢血管抵抗の増加が, 1.0および2.0μg/kg/min投与時には心拍出量の増加が大きく作用していると考えられた。ヘマトクリットはドブタミン投与前には30.8±1.2%であったが, 投与により著しい用量依存的な増加を示し, 4.0μg/kg/min投与時には52.0±1.2%であった。一方, 血清総蛋白はわずかな増加傾向を示したにすぎなかった。
  • 武藤 達士, 西村 亮平, 金 輝律, 松永 悟, 廉澤 剛, 望月 学, 佐々木 伸雄
    1995 年 26 巻 4 号 p. 109-116
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    吸入麻酔導入を動物に応用する場合, 保定に要する時間を短くする必要から, 高濃度の麻酔薬を吸入させる急速導入法 (Rapid Inhalation Induction; RII) が好ましい。そこで5%が最大濃度である市販の気化器を用いて本法を実施した。ビーグル犬24頭に対してイソフラン (OI) , セボフルラン (OS) , イソフルラン+67%笑気 (GOI) , セボフルラン十67%笑気 (GOS) について各麻酔濃度5.0%でRIIを行い, 導内時間, 導入時の体動, 循環器・呼吸器系に及ぼす影響を比較した。その結果, 5%濃度ではイソフルラン群がセボフルラン群よりも導入時間が有意に短かった。さらに笑気を加えた群 (GOI, GOS) では, それぞれ加えない群 (OI, OS) よりも導入時間が短く, 円滑な導入が可能であった。循環動態については全群で導入時の心拍数の上昇が顕著であり, これに伴い心拍出量, 心筋酸素消費量の指標としてのRPPも大きな変化を示した。気管挿管後は1.5MACで維持したところ, 約10分で循環器・呼吸器系ともに安定した値を示した。両麻酔薬のMACは当然異なるため, 単純な比較はできないが, 5%の最大スケールを持つ市販の気化器を用いた場合, 犬に対するGOIを用いたRIIは臨床上有用な導入法の一つになりうると考えられた。
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