著者は, 出血性ショック犬に対するGOF麻酔下の調節呼吸が如何なる様式で成されるべきかを検討し, 併せて, その病態を研究するべく, 40ml/kgを急速に脱血させ, 死亡数, 臨床所見, 血圧ガス, 酸・塩基平衡, 血液性状について検討した。さらに, その対策として脱血液の再注入を実施し, その効果についても検討した。
1.調節呼吸下の脱血後無処置群では, 中心静脈圧, 股動脈圧の下降が著しく, 重度の代謝性アシドーシスを呈した。また, 血糖の上昇も著明で, それらの回復は遅れたほか, 気道内圧の上昇, PaO
2, PaCO
2の下降がみられ, 死亡した2例 (10例中) は特にPaCO
2の下降が顕著であった。
2.上記の群に脱血液を再注入すると, 血圧, 気道内圧は明らかに回復し, 代謝性アシドーシスも改善される傾向を示し, 全例とも生存して, 脱血液の再注入効果は明らかであった。一方, PaO
2は, 再注入後さらに下降したが, 笑気・酸素流量比2: 1を1: 1にすることにより改善された。また, 脱血液の代わりに他犬血液と乳酸加リンゲル液を注入した群では, 無処置群と脱血液再注入群の中間的な効果を示した。
3.脱血後のPaCO
2の下降と脱血液再注入後のPaO
2の下降が顕著でPaO
2は笑気・酸素流量比を1: 1にすることにより問題はないが, PaCO
2は換気条件を含めて今後の問題となった。
4.血液性状, 電解質は, 脱血後無処置群, 脱血液再注入群の違いによる著しい変化はみられなかった。
抄録全体を表示