獣医疫学雑誌
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14 巻, 2 号
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総説
  • 纐纈 雄三, 佐々木 羊介, 市川 大樹, 金子 麻衣
    2010 年 14 巻 2 号 p. 105-117
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    この総説の目的は,養豚を例として,ベンチマーキングのコンセプトと応用を説明することである。養豚では,母豚の繁殖成績,肥育豚の肥育成績,そして財務成績をベンチマーキングすることが推奨されている。ベンチマーキングでは,成績の上位10または25パーセンタイルは目標値として使用されている。また,ベストプラクティス・ベンチマーキングでは,優良農場の測定値が目標値,そして普通農場または全農場の平均値が標準値として使用されている。繁殖農場では,母豚の繁殖成績の中で,年間種付け雌豚当たり離乳子豚数 (PWMFY) が主要な測定値として使用されている。優良農場は,PWMFY の上位10または25パーセンタイルの範囲の農場として選ばれている。PWMFY は,非生産日数,授乳期間,妊娠期間,哺乳中子豚死亡リスク,分娩時生存子豚数,そして一腹当たり離乳子豚数の6つの測定値から構成されている。また補正21日齢総体重は母豚の産乳量の指標でもある。繁殖生産性ではないが,繁殖雌豚の死亡率は,繁殖豚群における群健康と福祉の指標でもある。肥育期は,最も生産コストが発生する時期である。 肥育成績では,平均1日当たり増体量,飼料効率,死亡率が,農場レベル及び群レベルで重要となる。最後に,農場の財務成績を評価することは,企業として成功するためには必須である。総資本利益率,経常利益率,資本回転率という財務成績測定値は,ベンチマーキングとして,同業種または異業種の企業と比較することができる。
原著
  • 榎田 将司, 佐々木 羊介, 高井 康孝, 纐纈 雄三
    2010 年 14 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,生産農場における妊娠後期の雌豚と授乳豚の蹄損傷の発生を比較すること,蹄損傷と産次,初交配日齢,及び生存時間との関連を分析することを目的とした。繁殖雌豚一貫経営農場に,2007年から2008年に6回訪問し,授乳豚舎で飼育されている妊娠後期の雌豚と授乳豚の蹄損傷を観察した。1雌豚当たり,8つの蹄において,それぞれ7部位に4段階の蹄損傷スコア (0, 1,2, 3) を記録した。総蹄損傷スコア (TPLS) は,8つの蹄7部位における蹄損傷スコアの合計と定義した。雌豚はTPLSの上位10パーセンタイルによって,低TPLS (0から5) と高TPLS (6以上) に分類した。統計分析には,混合効果モデルと生存時間分析を用いた。分娩クレートで飼育されている雌豚629頭の内,64.4%は少なくとも1つ蹄損傷を持っていた。平均TPLS (±SEM) は2.6±0.15であった。妊娠後期の雌豚は授乳豚よりもTPLSが高かった (4.1±0.42 vs. 2.1±0.14 ; P<0.05) 。さらに妊娠後期の雌豚と授乳豚のいずれにおいても,TPLSは高い産次でより高くなった(P<0.05) 。初交配日齢とTPLSは,妊娠後期の雌豚 (P=0.08) と授乳豚 (P>0.10) において関連がなかった。生存時間とTPLSは,妊娠後期豚と授乳豚において関連がなかった(P>0.10) 。動物福祉向上の観点から,生産者は雌豚の重篤な蹄損傷を発見するために,分娩クレートで雌豚の蹄を頻繁に確認することが望ましいと考えられる。
  • 佐々木 羊介, 纐纈 雄三
    2010 年 14 巻 2 号 p. 124-129
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,日本の生産農場における雌豚の安楽死率と安楽死リスクの測定,安楽死された雌豚とその他の雌豚における淘汰パターンの比較とした。本研究では,101農場における2001年から2004年に出生した62,742頭の雌豚における生涯記録を用いた。101農場のうち,25農場 (24.8%) が安楽死を行っていた。この25農場において,安楽死雌豚の農場平均割合 (±標準誤差) は1.27±0.38%であり,幅は0.06%から8.44%であった。この25農場における21,094頭の雌豚では,安楽死,死亡,淘汰雌豚の割合は,それぞれ1.7%,9.7%,88.6%であった。安楽死雌豚の平均淘汰産次と生涯生存日数は3.3±0.13産,717.2±18.58日であった。年間安楽死率は0.63%であった。安楽死雌豚348頭のうち,53.7%が起立不能,25.0%が四肢障害という理由によって安楽死されていた。安楽死雌豚は,淘汰雌豚よりも淘汰産次が低く,生涯生存日数が短かったが (P<0.05) ,死亡雌豚とは差がみられなかった。産次0, 1,2の安楽死リスクは,それぞれ0.23%,0.27%,0.23%であった。産次が3から6以上に上がると,安楽死リスクは0.22%から0.59%に上がった。分娩後0, 1,2週における雌豚割合は,安楽死雌豚が2.7%,21.6%,8.4%,死亡雌豚が9.8%,24.1%,11.1%,淘汰雌豚が0.1%,1.3%,2.6%であった。結論として,日本では雌豚への安楽死はあまり行われていなかった。安楽死雌豚の淘汰パターンは死亡雌豚と同様であった。動物福祉の観点から,歩行困難等を示す雌豚は,死亡を待つのでなく,安楽死させることが望ましい。
短報
  • 山根 逸郎, 塚田 英晴, 中村 義男
    2010 年 14 巻 2 号 p. 130-134
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    日本のホルスタイン未経産牛を飼育する放牧場304カ所を対象に,アンケートを用いた調査を行った。調査結果を用いて,放牧場の環境や管理方法などの各種因子の小型ピロプラズマ病,ダニおよびアブ汚染への影響について解析を行った。小型ピロプラズマ病は南の地域で発生が多く,放牧場における小型ピロプラズマ病治療薬の使用や殺ダニ剤の使用と小型ピロプラズマ病汚染との間に関連が認められた。また放牧場のダニ汚染と小型ピロプラズマ病汚染との間に強い関係が認められた。アブは北海道以外の地域においてより頻繁に認められた。今回の調査の結果,小型ピロプラズマ病,ダニおよびアブ汚染に対する適切な予防対策が,わが国の放牧場において今後も求められる事が明らかになった。
資料
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