牛における豚丹毒菌 (
Erysipelothyix属菌) の保菌状況を明らかにする目的で, 1998年9月から1999年8月にかけて山形, 宮城, 長崎および東京の4都県のと畜場で採取した合計1, 236頭の健康牛の扁桃から本菌の分離を試みたところ, 合計79株 (6.4%) の豚丹毒菌が分離された。培地として, これまで伝統的に用いられてきた50μg/mlゲンタマイシン (GM) , 500μg/mlカナマイシン (KM) あるいは0.001%クリスタル紫 (CV) とNaN
3を選択剤として加えた0.1%Tween80加ブレインハートインフユージョン (BHI) 培地で増菌および分離培養を行ったところ, GM・KM加BHI培地で最高の分離率が得られた。また, 分離株および基準株を用いて添加剤の比較検討を行ったところ, 0.1%Tween80, 5%馬血清, 50μg/mlGM, 0.001%CV, 0.1%NaN
3カロブロスによる増菌培養と, 0.1%Tween80, 50μg/mlGM, 0.1%NaN
3加BHI寒天培地による分離培養の組合せが豚丹毒菌の増殖性と雑菌の増殖阻止の程度から最良である (p<0.01) ことが判明した。分離株はすべてがH
2Sを産生し, ゼラチン培地で試験管ブラシ状発育を示した。以上より, 健康牛の扁桃における豚丹毒菌保菌状況と, 菌分離により適した培地が明らかとなった。
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