肝蛭メタセルカリアを非経口, 経口感染せしめた家兎のなかから前, 後躯麻痺や尿閉を起こした症例を発見した.これら家兎について臨床, 剖検, 組織学的変化や虫体の発育, 分布などについて調べ, その結果を次のように要約する.
1.肝蛭メタセルカリアを50個, 背部筋肉に注射した例では早期に殺処分した1頭を除く他の6頭が, 背部皮下注射例では3頭中2頭が前後躯の麻痺で発死または予後不良に陥った.
2.神奈川県津久井郡下の水田から採集したFasciola giganticaのメタセルカリアを, 20ないし50個を経口感染せしめた家兎54頭中4頭 (7.4%) が前, 後躯の麻痺に陥った.
3.前, 後躯麻痺を呈した家兎からは発育が抑制された肝蛭幼若虫を筋肉, 脊髄, 肝などから検出した.また, 脊髄内虫体は12例中7例に認め, このような症状の原因は肝蛭幼若虫の脊髄内迷入によることを立証した.
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