この報告は10名の担当者が各地において行なった, 牛の卵胞嚢腫 (無発情型, 中間型および思牡狂型) および卵巣機能不全に対する羊の脳下垂体前葉性腺刺激ホルモンであるVetrophin (Abbott) の効果試験をとりまとめたもので, 卵胞嚢腫牛が乳牛79頭, 和牛14頭, 計93頭でVetrophin5~10RUの静注を行ない, 卵巣機能不全が乳牛47頭, 和牛7頭, 計54頭で, 同様に2.5~5RUを投与した.また別に乳牛15頭の卵胞嚢腫を破砕後, 注射しやすいほうの卵巣の実質内に1RUを注射した. これらの成績を要約すると次のとおりである.
1) 卵胞嚢腫の乳牛の治癒率は60~70%以上であったが, 和牛では10RU投与で70%以上の治癒率を示し, 5RUで効果のなかった和牛に, 2~3週後10RUの追注を行なって5/5 (100%) の治癒を認めた.
2) 軽症の卵胞嚢腫にはVetrophinの5RUで十分目的の達せられるものも少なくないが, 大型嚢腫, 多胞性嚢腫, 思牡狂, その他重症のものには10RUを必要とするように思われる. また治療前他種性腺刺激ホルモンを使用したものに対しても5RUでは十分でない傾向がうかがえる.
3) 多くの場合Vetrophin注射後1週間以内に嚢腫の閉鎖黄体化と破裂黄体化が認められ, 新生卵胞のでき方およびその他の諸変化からみて, 治癒機転はHCGと大差がないように思われる. なお治療後第1回の発情回帰までの日数は短かく, 乳牛が平均21.6日, 和牛が平均18.5日であった.
4) 卵巣実質内注射による卵胞嚢腫の治癒頭数は8/15 (53.3%), 受胎頭数は7/8 (87.5%) であったが, 現在Vetrophinの注射量をまして試験を実施中である.
5) 主として卵巣機能減退を対象とした乳牛において, 5RU投与試験の治癒成績は21/26 (80.8%), 受胎確認頭数は14/21 (66.7%) で良好の成績であったが, 2.5~3.0RUの治癒率は低下したので, 卵巣機能不全には5RU投与が望ましいようである. しかし卵巣萎縮などに対しては, さらに検討の要がある.
6) このホルモンは他のホルモンのアンチホルモンとにらみあわせて使用すべきで, 乱用は厳に慎しまねばならない.
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