横浜地区における飼犬386頭, 抑留犬47頭, 猫32頭の血清を集め, 色素試験によるトキソプラズマ抗体の保有率調査を行ない, とくに症状と抗体価との関係について考察した.
このため対象を, トキソプラズマ症に関連があると考えられるあらゆる症状について調査し, これらを過去から現在にいたるまで全く経験しなかったA群 (無症状群-健康群) と, 僅か1症状についてでも経験したものをも含むB群 (有症状群) とに分けて検討した.
1. 飼犬の平均陽性率 (陽性基準, 16倍以上) は29.3%(113/386) であった. しかし, 上記の群別によるA群の陽性率は19.8%(44/222), B群のそれは42.1%(69/164) で後者の方が明らかに高く (X
2=22.6), また抗体価もB群により高いものが多かった.
上述の傾向は, 各年令階層 (1才未満, 1才以上5才未満, 5才以上) においてもそれぞれ明らかであったが, とりわけ幼犬層において著しいことが注目された. またA群ではその陽性率は年令とほぼ平行的に増加する傾向がみられたが, B群では年令に拘わりなく一様に高い値をしめしていた.
性別による差はみられなかった.
B群にみられた症状の主なるものは消化器症状, とくに水様性ないし出血性下痢であり, めやに, 発咳・肺炎などの呼吸器症状がこれに次ぐものであった.
2. 抑留犬の陽性率は42.6%(20/47) で飼犬に比し高いようであったが有意差はない.
3. 猫の陽性率は46.9%(15/32) で飼犬のそれ (29.3%) より高い傾向がみられ, また概して有症状群の方が無症状 (健康) 群よりも高い傾向がみられた. この差は256倍以上の高抗体価をしめしたもので著しいようである (A: 8.7%, B: 44.4%).
症状に関しては例数の少ない憾はあるが, 後躯の麻痺, 慢性下痢, 持続性の発熱などが目立つものとして挙げられる.
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