生の鯨肉および白米飯を等量に混合した高燐低カルシウム飼料で, 生後45日齢の幼犬5頭を12週間飼育して, Osteodystrophia fibrosa発症試験を行なった.これら5頭のうち1頭には8PD 15g, 2頭には5gを毎日飼料に添加して給与した.
BPD 15gおよび5gを添加して飼育した3頭には, 12週間を通して, くる病様の外貌変化は認められなかったが, 無添加の2頭には, 前肢のO型彎曲, 後肢のX型屈曲, 肋軟骨結合部の捻珠状腫脹などの症状が認められた.
血清カルシウムは12週を通して, いずれにも恒常性が維持された.
血清無機燐は5頭ともに発育に伴う生理的減少を示し, 12週において5頭とも正常範囲内であった.
血清アルカリ・フォスファターゼは4~6週から, いずれも高活性を示すようになったが, BPD 15g, 5g添加の各1頭は12週にはほぼ正常値に復した.しかし無添加の2頭と5g添加の1頭は未だ高活性を維持した.とくに無添加の1頭 (No.6) は4週から常に10単位以上の高値を示した.
骨格のX線写真による検査では, 15g添加の1例は, X線吸収率のよい正常骨の像を示した.5g添加の2頭の骨は, 15g添加のそれに比べ, X線の透過度がやや強かったが, とくに顕著ではなかった.しかし無添加の2頭の骨は, いずれもX線の透過度が強く, 明らかに骨石灰化障害が認められた.
BPD無添加の肋骨の組織像は, 骨端軟骨帯の増大, 骨梁の線維化様の変化など, 明らかな石灰化障害が認められた.しかし, 15g添加の骨の組織像は正常の骨形成が認められた.
以上の実験成績から, 極端な高燐低カルシウム飼料による幼犬の飼育でも, BPDを適量添加することによって, Osteodystrophia fibrosaの発症を十分に予防することができ, 生長に伴う増体重に応じて添加量を増加すれば, さらに効果的であることがうかがわれた.
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