犬の心エコー図を行なった結果, 丁寧に剃毛した第4~5肋間部位の胸骨の側縁よりビームを入射させ, 僧帽弁前尖のエコー像が検出でき, またそのビーム方向を前後左右に移行させることにより, 他の心臓各部のエコー像も検出することができた. 僧帽弁前尖は二峰性 (M型) の特徴的なエコー像を示し, 後尖は前尖と対称的に動く振幅のやや少ないエコー像 (W型) を示した. 大動脈弁のエコ-像は, 心周期に一致して動く大動脈の前・後壁両老のエコー像間に, 収縮期には2本に分離して長方形をなし, 拡張期には一致して1本の線として認められた. また, 房・室壁も心周期に一致して規則的に変化するエコー像として認められた. しかし, 三尖弁, 肺動脈弁のエコー像の検出は今回検出した健康犬では困難であった.
また, これら心臓各部のエコー像を確認するため, 人の正常パターンとの比較, Mモードスキャンによる周囲構造物との解剖学的関連性の検討ならびに, 超音波断層法による同一ビーム方向でのMモードエコー像と断層像との比較検討を行なった. その結果, 心臓各部のエコー像として検出された像はそれぞれ各構造物からのものであることを確認した.
心エコー図により得た右心室壁, 心室中隔, 左心室壁, 左心房壁, 大動脈壁の厚さの計測値は, 剖検時の実測値に近似の値を示した.
これらのことから, 心エコー図は犬においても心臓の収縮動態および形状変化の程度を, 非観血的に, 繰り返し, 容易に検査できる方法で, 従来の検査法とは別の角度から, 詳細な所見が得られる方法と思われた.
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