2ヵ月, 雌の雑種犬.ほぼ全身性の脱毛を伴う結節, 腫瘤がみられ, 生検により多発性皮膚肥腔細胞腫と診断した.
全身性16ヵ所に散在する本腫瘍にドライアイス圧抵療法を用いたところ奏効し全治した. 本腫瘍には外科的切除のほか, 本法も簡易にして有効な治療の一つとして試みてよいものと考える.
犬の肥絆細胞腫は周知のように決して稀有な腫瘍ではなく, MÜLLER, ORKINによると犬の皮膚腫瘍中およそ13%を占めるといわれる. ヒトでは類似疾患として色素性薄麻疹 (Cutaneous mastocytosis) があるが, 犬のように腫瘍として単発することは珍しく, 多くは色素斑ないし丘疹としてあらわれる.
しかしUnna型と呼ばれる小児に好発するタイプのなかには臨床上犬のMastocytomaに類似するもの (小結節型) がある.
犬の肥絆細胞 (Mastocyte) は全身各臓器の結合織中に分布するが, とくに皮膚では真皮の表皮直下, 毛包周囲, 血管周囲等の結合織間に多くみられ, その存在は組織化学的にトルイジンブルー染色のメタクロマジーまたはアルシアンブル-染色で明らかにされる.犬のMastocyteはヒトと多少異なり, その細胞顆粒成分にはヘパリン, ピアルロン酸, ヒスタミン, セロトニンが含まれ, 物理的, 化学的刺激に対して容易にこ脱顆粒を起こし, これらの物質を放出する. 周知のようにヘパリンは主に血液の凝固機転にご関係する酸性ムコ多糖類で, セロトニンやヒスタミンはその放出にこより毛細血管透過性亢進や, アナフィラキシー反応のClinical mcdiatorとして作用する. したがって多数のMastocyteの同時崩壊は, ショックからさらに生命の危険すら惹起することがある. また犬の臨床症状は通常包皮, 四肢に半球状の硬い結節ないしは腫瘍として現われ, しばしば表面に紅斑を有し光沢を帯びる.
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