犬糸状虫の外科的摘出, とくに頸静脈からの摘出に際して虫体が傷つくことが少なくない. もし雌虫体が傷つけば子宮内容の虫卵が血液に流入する. この虫卵流入による影響を知るために実験を行なった. 今回は卵子流入による症状, 転帰, 胸部X線像の変化, 肺毛細血管栓塞の有無について調べた. 体重kg当たり0.5隻と1隻分の子宮内虫卵の生理食塩液浮遊液を犬糸状虫非寄生犬7頭, 寄生犬5頭に静注した. 虫卵注入後ただちに重篤な症状を呈し, 非寄生犬では2頭, 寄生犬では3頭が3時間以内に死亡した (寄生犬の1頭は3日間観察後死亡). 胸部X綿像では肺の, とくに背側に均質的な陰影がみられ, 変化は犬糸状虫寄生犬のほうが強かった. 肺の組織像では, 毛細血管に栓塞した虫卵が多数みられた.
犬糸状虫は硬い器具による圧迫, とくに光の尖ったようなものによる僅かな穿刺や, 虫体が異常に振られることなどによって容易に傷つき, 内容が逸出する. 犬糸状虫の摘出時に死の転帰をとり, 剖検においても死因が掴み難い例は, 本実験成績から, 虫体破損による虫卵などの流入によることが考えられる. 犬糸状虫の外科的摘出が多く行なわれている現在, 虫体破損による障害を考える必要がある.
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